スペインの天才料理人が迫る!究極の美食探求ドキュメンタリー映画『世界が愛した料理人』がついに日本公開

dressing編集部

Summary
1.主人公は、スペイン史上最年少で『ミシュランガイド』で三つ星に輝いたエネコ・アチャ氏
2.公開に先駆けて、エネコ氏監修のモダンバスクレストラン『ENEKO Tokyo』にて、来日トークショー開催
3.スペイン、フランス、日本を代表する一流シェフたちが語る、料理への想いとは−−−−

料理界が最も注目する、世界一のモダンバスクレストラン『ENEKO』

近年、世界最高峰のレストランの裏側に迫るガストロノミーの世界をテーマとした映画が人々の関心をひくなか、今秋、待望の日本公開を迎えた美食探求ドキュメンタリー映画がある。

主人公は、『アスルメンディ』オーナーシェフのエネコ・アチャ氏(写真上)。1977年、スペイン・バスク地方の西側に位置するビスカヤ県に生まれた。ホテル学校を卒業後、『ムガリッツ』をはじめ『マルティン・ベラサテギ』など名だたるバスクのレストランで研鑽を積み、25歳の若さにして第3回スペイン若手料理人選手権で優勝。一躍注目を集めるなか2005年に独立し、スペイン史上最年少にして『ミシュランガイド スペイン&ポルトガル 2013』で三つ星に輝いた。以来、6年連続で三つ星を保持するだけでなく、米誌『エリート・トラベラー』の“世界のTOP100レストラン 2017”で1位に輝いた、スペインが誇る気鋭の料理人である。

今回の舞台となる『アスルメンディ』(写真上)は、スペインのバスク地方、ビルバオ郊外ララベツにある。自然溢れる敷地内には、同店のほかにカジュアルなバスクビストロ『エネコ・ララベツ』と、エネコ氏の伯父が営むワイナリーが併設されている。その広大な自然のなかでエネコ氏が追求するのは、“サスティナブル(=持続可能)”なレストランであること。ガラス張りのモダンな建物はリサイクル素材を駆使して建設、生ゴミのリサイクル、溜めた雨水を利用できるよう独自の循環型システムを開発するなど環境に配慮した取り組みが評され、2014年、2018年の「世界のベストレストラン50」では最も持続可能性が高い店に選ばれた。

これほどまでに自然を大切にする理由を訊くと、バスク人に生まれたプライドにあると言う。「バスク地方は日本と同様、海も山もあって素材が豊か。バスクの料理には、環境のすべてが表れるのです。だからこそ、バスク人はみな与えられた環境に感謝し大切にしています。自然を支配するのではなく、後世に遺さなければなりません」。

バスクの魂と郷土を味わえるレストラン『エネコ東京』

エネコ氏が、バスクの魂と料理への愛を世界に広めるべく選んだ場所は東京・六本木。ハイレベルなレストランが軒を連ねる街の一角に、2017年、エネコ氏監修のモダンバスクレストラン『エネコ東京』が誕生した。

併設されたシンプルモダンなバーに並ぶ、チャコリと呼ばれるバスク産のワインに誘われながら凛とそびえる純白の建物を進むと、緑に囲まれた開放的な中庭が優しく迎えてくれる。

コースの始まりは“ピクニック”!

レストランへ足を運ぶと、ダイニングテーブルへ通されるのが通常だろう。だが、同店ではリラックスして料理を堪能できるように遊び心が施されている。まず、案内されたのは“グリーンハウス”と呼ばれる、新緑の生い茂るナチュラルな空間。そこには、レトロで可愛らしいピクニックバスケットが用意されている。開けてみると……

中から、3種のフィンガーフードが現れる。ランチは5~6品、ディナーなら7~13品と盛りだくさんなコース構成を最後まで楽しんでもらえるようにというエネコ氏からのメッセージが込められている。

まずは、ウナギのタルタルとアンチョビのエマルションをサンドした「鰻のブリオッシュ」(写真奥)をひと口。乳化させたソースを意味するエマルションは、エネコ氏の料理を象徴する技法の一つである。

2品目は、しっとりと甘いフォワグラのムースに、レモングラスを煮詰めたソースをのせた「レモングラ」(写真右)。「本店のある『アスルメンディ』近郊は、柑橘が名物なんです。大航海時代にバスクを通った海賊が、壊血病を抑えるために、村の柑橘を盗んで旅を続けたという謂(いわ)れがあります。この物語からインスピレーションを受けて、東京ではスダチを器にして提供しています」とエネコ氏。

3品目は、ブラジルのカクテル・カイピリーニャにインスパイアされたノンアルコールの食べるカクテル「カイピリーチャ」(写真左)。小花が飾られたカカオバターの円球は、口に入れるとパキッと弾けて甘酸っぱいパッションフルーツとチャコリを合わせたジュースが流れ出す。

ピクニックのお供は、エネコ氏の伯父が手がける希少なバスク地方土着の白ワイン・チャコリ「ゴルカ・イザギーレ」(写真上)。同店では、ウェルカムドリンクにぴったりな微炭酸ですっきりとした飲み口のチャコリから、2018年のワイン国際コンクールで金賞を獲ったデザートワイン「ARIMA」を含む4種を取り扱っている。

ひと癖あるフィンガーフードと本国同様のプレゼンテーションに、前菜から期待が一気にふくらむ。ほのかな酸と食前酒で食欲も掻き立てられたころ、2階にあるメインダイニングへと導かれる。

バスクの風景が飾られた内廊下の奥へと進むと、スペインの赤色を基調としたダイニングルーム(写真左)へとたどり着く。なお、取材時はイベントのため、会場となる地下1階に潜むバンケットルーム(写真右)へ通していただいた。

ひと口のスペシャリテに込められたバスクの伝統と文化

供されたのは、エネコ氏のスペシャリテ「有機卵とトリュフ」(写真上)。

「トリュフ卵は、『アスルメンディ』近郊で卵農家を営む生産者へのリスペクトから生まれました。バスクには、トリュフと卵を同じ容器で保存することで、トリュフの香りを卵に移すという伝統的な料理があります。しかし、これではせっかくの卵の鮮度と味が落ちてしまう…。幼少の頃から食べてきたバスクの味を変えることなく、最高の食材を活かすことができないかと考えた末、たどり着いたのがこの方法でした」と話すエネコ氏の右手には“注射器”が見える。

スプーンにのった黄身に、そーっと楊枝で穴を開けて、注射器で吸う。こうしてできた隙間に、真空の瓶に入れたトリュフを圧力釜で3時間ほど蒸して抽出したトリュフソースを注入すると、バイカラーな卵の完成である。

使用する卵は、マグロやカツオから抽出した良質な魚油やヨモギ、パプリカなどが入った飼料を食べて育った、茨城県産「森のたまご」。鮮度と風味にこだわった卵は、色ツヤが美しく、だしのようなうまみが強い。冷たい黄身と温かいトリュフソースが舌に馴染み、妖艶な香りでお客の五感を魅了する。

「ゲストの前でデモンストレーションしたのは、『エネコ東京』店が初めてなんです。あまりに好評で、今では本国でもパフォーマンスをしています」とエネコ氏は話す。

バスクと日本の距離を忘れさせるメニューに一新

続く前菜は、本国で人気高いバスクの伝統料理「バスク風キノコ」(写真上)。スペインが原産のエリンギは、日本の3倍くらい巨大で太い。薄く糸切りにして炒めたエリンギに、キノコのエマルションと、生ハムのうまみを抽出したクリームと黄身を合わせて揚げた半熟卵の天ぷらが寄り添う。絡めて食べると、濃厚なカルボナーラのよう。ピンセットでつまんでいただくプレゼンテーションに驚嘆の声があがる。

温前菜「オマール海老 コーヒー風味バター」(写真上)は、闘牛やスペインの国色を表す一品である。ポイントは、クチナシやビーツの果汁で色付けされた真紅色のエマルションに浮かぶ、赤い半球。

「アメリケーヌソースを塗ったオブラートを4層に重ねて揚げたものです。オブラートといえば、薬を飲むときに使用するのもで、日本では料理に使うことはほとんどありませんが、海老せんべいのようなパリッと軽い食感を表現するために、エネコ氏が長年探し求めて巡り合ったのが日本製のものでした」と話してくれるのは、『エネコ東京』で総料理長を務める磯島仁氏(写真左)。レストラン『クイーンアリス』で15年間、研鑽したのち『日比谷パレス』の料理長を歴任した実力派だ。

エネコ氏が信頼を置く磯島氏が最も大切にしているのは、料理を通してバスクの文化を伝えること。そのため、1周年を迎えた同店では、今秋からメニューが一新される。

故郷の伝統を守りつつ新しいものを生み出し続ける料理の根源について、エネコ氏はこう語る。

「どこの国の料理もすばらしいですが、私の中の魂からでてくる料理は、母と祖母から教わった家庭料理でした。また、有名な料理人だけでなく、地元で愛されるシェフや、家族のためだけに料理を作る人々もリスペクトし、影響を受けています。私の作る料理は複雑そうに見えますが、実はとてもシンプルなものばかりなんです」。

食材の産地は本国と違っても、できあがった全ての料理にはエネコ氏が生まれ育ったバスクの文化が潜んでいる。

フランス料理界の巨匠から世界最高齢の三つ星料理人が語る、豪華な映像をお見逃しなく!

さて、エネコ氏が料理の真髄を極めるべく、日本の名店や築地市場をめぐる美食ドキュメンタリー映画『世界が愛した料理人』が、ついに日本で公開された。

劇中では、フランス料理界の巨匠、故ジョエル・ロブション氏をはじめ、バスクの三つ星レストラン『ラサルテ』のマルティン・ベラサテギ氏や、スペインを代表するレストラン『サンパウ』のカルメ・ルスカイェーダ氏、世界最高齢の三つ星料理人である『すきやばし次郎』の小野二郎氏と息子の禎一氏ほか、世界最高峰のプロフェッショナルたちが登場。料理哲学や和食の精神を語る姿も見逃せない。

一切の妥協を許さない彼が、旅の果てに見つけたものとは……。

最後に、鑑賞を楽しみにしてくださる方々へエネコ氏からメッセージをいただいた。
「映画を観て、レストランや食への興味を持っていただけたら幸いです。『アスルメンディ』でも『エネコ東京』でも、自分の家のように歓迎します!」。

タイトル:『世界が愛した料理人』
公式サイト:http://sekai-ryori.com
公開表記:9月22日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
監修:アンヘル・パラ、ホセ・アントニオ・ブランコ
出演:エネコ・アチャ『アスルメンディ』、マルティン・ベラサテギ『ラサルテ』、カルメ・ルスカイェーダ『サンパウ』、故ジョエル・ロブション『ジョエル・ロブション』、石田廣義・石田登美子『壬生』、山本征治『龍吟』、小野二郎・小野禎一『すきやばし次郎』、服部幸應、マッキー牧元、マイケル・エリス『ミシュランガイド』
配給・宣伝:アンプラグド
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【メニュー】
・ランチコース
TOKI-ON 5,000円
ARDATZA 7,000円
・ディナーコース
BIDEA 9,500円
HELMUGA 13,500円
LUZEA 20,000円
・ワインペアリングコース 3種 3,500円、5種 5,000円
・チャコリ(バスク白ワイン) グラス 1,100円~、ボトル 6,500円~
※価格は税別、サービス料10%別

ENEKO Tokyo(エネコ東京)

住所
〒106-0031 東京都港区西麻布3-16-28 TOKI-ON西麻布
電話番号
03-3475-4122
営業時間
レストラン:ランチ12:00~15:00(L.O.14:00)、ディナー18:00~22:30(L.O.20:00)/ エネコバール:17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:レストラン:月曜日定休、年末年始、土日祝は要問い合わせ / エネコバール:月曜日、年末年始、土日祝
公式サイト
公式ページhttps://eneko.tokyo/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。