鮨ツウたちが「通いたい鮨店」に続々と指名! ネタもシャリも大きな“男鮨” 『冨所』【御成門】

#鮨の名店

佐川 碧

Summary
1.『ミシュランガイド東京』で10年連続星に輝く『鮨 真』出身の大将が握る“男鮨”!
2.多くの鮨ツウたちが「通いたい新規店」にご指名!
3.白身・赤身・〆ネタから煮物まで、ひそやかに加えられたひと仕事はお見事!

鮨ツウが続々「定期訪問店」に追加する店とは?

鮨好きは年間を通して、自分の行きつけの鮨屋に通う。そしてその合間に新店を開拓する人も多いものだが、その開拓先から「ここはリピートしてみよう」と思える味に出逢えるのはごく僅か。鮨ツウから聞くに、年間を通して1~2店新発見があればいいほうだ。

しかし、こちらの『冨所』は多くの鮨ツウが「ここは定期訪問店に追加!」と名を挙げるという現象を起こしている。

そんな『冨所』とはいかに?

小物までぬかりなし! こだわりの店内

最寄りは都営地下鉄三田線 御成門駅、または新橋駅からも徒歩圏内。大通りを進み、銀座や汐留とは違う、高層ではないオフィスやマンションがある一角に、ぽつんと引き戸が見える。

が、のれんも看板もない。

「予算が回らないから暖簾はナシですよ~」。そう静かに笑うのは大将の佐藤浩二さん(写真上)。

いやいや、そんな問題ではないはず。その証拠にツケ場の背面に注目してほしい。

なんとこの150年ほど前の骨董品である和箪笥にぴったり合う壁をわざわざ設えたそうだ(写真上)。

そして鮨屋の命であるカウンターは木曽檜の厚みのある一枚板。「毎日熱湯をかけて、しっかり拭きあげています。ツケ台はサラダ油を塗って仕上げ、べっ甲色になるまで育てようかと……」と佐藤さん。

大物以外にも、このこだわりは細部にまで渡る。

椅子はファーニチャーマニアから支持の高い『天童木工』。佐藤さんが「長時間座っても疲れないものを」とセレクトしたそうだ。

そして壁の丸柱、ハンガー掛けのすす竹(囲炉裏に掛かっている竹のこと)、そこに掛かっているハンガー専門店『NAKATA HANGER(ナカタハンガー)』のハンガーなど、お客に目につき、触れるものはすべて佐藤さんのお眼鏡にかなったものばかり!

前面に出ないこだわりの“ひと仕事”が施された握り

さて、そんなこだわりの男・佐藤さんの鮨における経歴とはいうと……。

「西麻布にある『鮨 真』で魚のことを教えてもらいました。目利き、捌き方、仕事の仕方……一通りですね。そして職人同士のつながりの大事さや接客の重要性を学べたことも大きいです」と語るその姿は、まるで出身校の話をしているように穏やかだ。

「私の鮨の基本は、いい魚を仕入れ、どう出すか。これに尽きます。さぁお召し上がりください」。そう言って浅いあめ色のツケ台に出されたのは千葉県・鴨川産の「さわら」(写真上)。

ほんのり舌に感じる脂がうまいさわらだが、薬味もないのにこのほのかに香るものは? と、うかがうと……

「タマネギ醤油に5分くらい浅漬けしています(写真上)。煮切りだけでもおいしいんですが、薬味があると味が締まる。でもニンニクだときつくなってしまうので、少しまろやかなタマネギを選びました」(佐藤さん)。

なるほど、ちょっと個性のあるさわらの秘密はわかった。


ところで、ネタに少量かませたワサビをおろした板、少々大きくはないか?

「ゆっくり、大きな円を描くようにすりおろすと優しい味のワサビになる。そのためにこのサイズなんです(写真上)」とのこと。

確かにこのワサビ、ネタ自身のうまみも、施した仕事も邪魔しない、ほどよい辛みだ。

続いては定番、熊本県・天草産の「小肌」(写真上)。

小肌を食べる前は“酸っぱいぞ!”と身体が準備するものだが、これはなにやら酢の当たりが丸い。その秘密は、締めてから1週間ほど寝かせて、酢を回しながら味の角を取っているからだそう。

大きめに切りつけたネタの理由は「好み」だから

ところで、なかなかネタの切りつけが大きい。佐藤さんに問いてみると、「自分が大きめのネタが好きなので、口いっぱいにうまみを感じてもらおうと、刺身も握りもやや大ぶりにお出ししています」。

シャリをまるで包むようなサイズのネタの乗った握りを口にほおばる口福! 大きい握りが正解なわけでもないが、やはり食べごたえがあるのはうれしくなるもの。そしてそれが大将の“好き”なものならなおさら。

好きだから食べてほしい、という気持ちは人の味覚をよりおいしく刺激する。

つまみでも、握りでも必食のネタは「タコ」!

佐藤さんに一番好きなネタは? と聞くと、「タコです! 大きくて短足のタコが自分の好みでして、市場に行っては探しています」。

ではその、佐藤さんの“好きなタコ”を出してください!

今日は神奈川県・佐島産、3.4kgくらいのもの(写真上)。

わざと噛みごたえを残すため、王道の柔らか煮などにはせず、塩のみで40分茹で、フックにかけて自然に冷ますという。

くっきりした輪郭が美しい断面、ブツンと歯をおろす快感、そしてタコにしかないこの押し戻すような食感がおいしい!

「タコってこんなにおいしかったんだ」と素直に思える、直球にタコそのものの味!

次いで、茨城県・鹿島産の「ハマグリ」(写真上)。仕上げの甘ツメはなく、貝の磯っぽいうまみがダイレクトに感じられる一品だ。

煮物は王道の味付けか、と思いきや、ちょっとだけ予想を外すような仕事をしているのも、ここ『冨所』の鮨の特徴であろう。

食べごたえ・ほどけ方・ネタとの相性、どれもすばらしいバランス型のシャリ

さて、ここまで生の魚や締めもの、煮ものと握りを食べてきたが……すばらしいのはそのシャリである。存在感がきちんとあり、食べごたえもある、なのにどこか控えめだ。

「自分の出身地である北海道・蘭越町産のササニシキの親戚種である、通称“助六”を使っています。シャリ用のもので、粒が大きいんですよ。うちは羽釜(写真上)で一回に一升炊いているんですが、このお米はシャリ向きに固く仕上がるけど、芯は残らないのでとてもいいんです!」と佐藤さん。

粒が大きい、それでほろっと崩れる食感と食べごたえが同居しているのか! そこに老舗のメーカー『ヨコイ』の赤酢で調味した強すぎないシャリは、どのようなネタにも合うバランス型だ。

押しの強くないシャリにした理由を聞くと、「うちはカツオやマグロなどの大魚より、今日お出ししたさわらなど魚体の小さめのものがメイン。あまり強いシャリでは合いません」。

そんな『冨所』の鮨に合わせるお酒なら、と佐藤さんがすすめるのは、こちらも同じく北海道産の「上川大雪」(写真上)。

蔵に直接出向き、仕込みも教えてもらったという杜氏さんの作品はキリリと冷やしていただきたい、旨口の日本酒だ。

大きな和箪笥がそっと鮨を握るさまを見守り、BGMもない、大通りから離れた静謐なこの空間は、大将の“好き”という気持ちが込められたネタが今日も、そして明日も揃っているだろう。


【メニュー】
▼食事
昼 おきまり 6,000円
夜 おまかせ 18,000円
▼ドリンク 
日本酒 一合 1,000円~
(他にワイン、シャンパン、焼酎、ビール、ソフトドリンクなどあり)
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です

冨所(とみどころ)

住所
〒105-0004 東京都港区新橋6-13-3
電話番号
03-6876-0646
営業時間
昼 12:00~、夜 17:00~
定休日:不定休

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。