舞妓さんと宴会も、京のお茶屋気分も! 創業155年の老舗京料理屋『わた亀』が移転リニューアル

深井元恵

Summary
1.コンセプトは、京料理の特徴である“出合い物”の固定概念を覆す
2.総檜のカウンター席は料理人の所作をゆったり見られる特等席
3.座敷では宮川町の舞妓さんを呼んで宴席も。お茶屋気分が味わえる

花街の風情をいっぱいに感じられるロケーションと佇まい

店は創業155年。京都の仕出し文化を支えてきた老舗『わた亀』の5代目・高見浩さんが、「出合い物の固定概念を覆す」をコンセプトに掲げ、60歳にして西院から京都五花街のひとつ、宮川町へ移ってきたのが、2018年11月9日のこと。

「お客様と対面で、できたてを提供したい」。地元で愛された店の名に安住することなく夢を叶えた、料理人の気概溢れる1軒だ。ちなみに高見さん、某航空会社の機内食も監修していた。

宮川町は特に役者らに贔屓にされた花街。『宮川町 わた亀』は、宮川町に多く見られる独特の景観を形成している路地の隣に建つ、もとお茶屋。軒先には三ツ輪紋の提灯を掛け、屋根の上には守り神の鍾馗(しょうき)さん。花街の町家らしい佇まいに、気分が華やぐ。

格子戸をあけると降るような餅花が迎えてくれる。花街の香りがいっぱいだ。

カウンターは檜の一枚板。料理人にとっての檜舞台さながらに

カウンターは約6mの檜の一枚板で、ネタケースなどもなく、厨房とフラットにつながっている。

「こういうお店がしたったんです。お客様と本当の意味で向かい合い、できたてのお料理を提供し、ダイレクトな反応をいただける店。何も隠すことはないですからね(笑)、お客様から全体が見渡せるようにしました」、と高見さん(写真上)。

その言葉に、老舗の看板を背負い、料理人として40年以上を過ごしてきた自信と誠実さがうかがえる。主人の包丁さばきや美しい所作を間近に見られるカウンターは、料理人にとっては、まさに檜舞台だ。

会席料理の華といえる前菜にもさりげなく出合い物の妙が

ところで『わた亀』は乾物屋として創業し、魚介を扱うようになり、仕出しも担う料理屋に。京都では家に客人を迎えるときなどは料理屋から料理をとる、仕出し文化が今も根付いている。

その京都の人が楽しみにし、京料理の特徴となっているのが出合い物。代表的なものが棒ダラと海老芋を合わせたいも棒や、ニシンや茄子など。高見さんは、「奇をてらわず、けれども新しい出合い物も提供したい。京料理の可能性がさらに広がると思うのです」と話す。たとえば、だし巻き玉子にウニ、キャビアをトッピングする「だし巻き玉子とうにキャビア」といった一品を出している。

基本の献立は、昼は「おまかせ会席」全9品と「京寿司会席」、夜は「おまかせ会席」全10品。高見さんが料理の“華”と表現する前菜(写真上)は、器と料理の調和が見事。この日は乾山写しの雲海の器に文字通り花のごとく盛りつけられている。料理6種類のうち出合い物としては「チシャトウとほうじ茶麩の白和え」。チシャトウはしゃきしゃき、香ばしい生麩はもっちり。豆腐の裏ごしにはクリームチーズでコクをプラス。ささやかな小鉢ながら味と食感のアクセントが絶妙な一品だ。

ほかにも「自家製カラスミ」、一昼夜かけて作る「卵黄のみそ漬け」など、お酒が恋しくなるとり合わせだが、いずれもまろやかでやさしい味わいに仕上げられ、京料理の繊細さを感じる。

天然の魚介を一番おいしい状態で! びわマスなど希少な魚も提供

魚介はもちろん天然魚のみ。京都だからこそいただける魚もある。

琵琶湖周辺でのみ出回るびわマスはそのひとつ。上品な甘さはトロ以上とも。『わた亀』ではこちらを昆布締めにし、脂と甘みを生かすべく半生状にコンフィすることが多い。それをフランス料理のようにソースで味わうのだが、このソースも苺と梅、卵黄を乳化させてかつおオイルなど出合いを駆使したり、九条ネギペーストなどオリジナリティを発揮する(写真上)。

塗りに金蒔絵の器には本日の煮物椀「かにしんじょう」(写真上)。カニの身にホタテ、白身魚を加えて蒸し、しんじょうに。梅人参と柚子がほんのり透けるように薄い大根を飾る奥ゆかしさも、京料理の真骨頂。だしは枕崎産のかつお節と北海道の島の昆布、これにハマグリとカニのだしを加え、ほんのりと海の香りをまとわせる。

ご飯食べの舞妓さんと遭遇するかも。そんな花街らしい楽しみも!

華やかさと、そこに出合い物の面白みを加える職人技は、口の肥えた花街の客筋からも愛され、西院時代の贔屓客も足を伸ばす。場所柄、舞妓さんが同伴でご飯食べに来ることも多い。

座敷では舞妓さんも呼んだ宴席も開けるので、接待や特別の日の食事会にお茶屋さん気分を味わうのもおすすめだ。


【メニュー】
昼のおまかせ会席 8,000円
京寿司会席 5,000円
夜のおまかせ会席 15,000円~
巻玉子とうにキャビア 3,500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜きです

宮川町 わた亀

住所
〒605-0801 京都府京都市東山区宮川筋4-322-1
電話番号
075-561-2211
営業時間
昼 12:00~14:30、夜 17:30~20:00
定休日:不定休

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。