日本食材のおいしさを「イタリア料理」で再発見!和の食材と器を楽しむ、銀座の隠れ家イタリアン『いぞら』

銀座でピザがおいしいイタリアンをお探しなら、銀座コリドー街裏の『いぞら』がおすすめ! まるでタイムトリップしたかのような古民家風の外観は、ディナータイムに行けば雰囲気抜群。高コスパでボリュームのあるランチセットも人気です。日本全国から厳選した和食材と器で楽しむイタリアンは、まさに五感が喜ぶおいしさ。普段使いはもちろん、デートや女子会、誕生日や記念日にも重宝するレストランです。

桑原恵美子

Summary
1.銀座コリドー街の路地裏に佇む、和の趣き溢れるイタリアン『いぞら』
2.日本各地の伝統食材を使い、「日本の魅力」を再発見できる新しいイタリア料理を提案
3.日本の工芸品やアート作品を使った空間、器のコレクションも見どころ
(※取材・撮影は2020年3月に実施したものです)

日本の伝統食材の魅力を再発見できる、銀座の隠れ家イタリアン

バブル時代に“イタメシ”と呼ばれブームになったイタリア料理が日本に定着し、洗練された“東京イタリアン”に進化。近年はイタリアで修業したシェフが作るマニアックなイタリア郷土料理の店が人気を集めている。

そんな中、銀座に店を構える『いぞら』は、そうしたイタリア郷土料理とは一線を画す、新しい「日本のイタリアン」の誕生を感じさせる店だ。

『いぞら』の母体ともいえるのが、1999年に白金台にオープンした人気イタリアン『ISOLA』。

同店の魅力は、本格派イタリアンでありながら、日本の四季折々の食材を使うこと。多くの産地や生産者を訪ねる中で、日本の伝統食材の魅力を改めて感じ、「『ISOLA』の原点であるイタリアンというフィルターを通して、日本食材の魅力を再発見できる店を作りたい」という想いからオープンした店だという。

『いぞら』があるのは、泰明小学校とコリドー街の間の、ひっそりした路地裏。

遠くからも見える大きな提灯が目印だ。この提灯には、店内にも飾られている江戸時代末期の浮世絵師・歌川国芳の「金魚シリーズ」の金魚たちがあしらわれている。古き良き趣きを感じる焼杉の外壁、白木の引き戸は、和食店を思わせる店構え、看板はオーナーである下山雄司さんと長く親交のある京都「大徳寺」住職の山田和尚の書。

紅型(びんがた・沖縄の伝統染色技法)の暖簾をくぐると、いきなり渋い風合いのピッツァ窯が目に飛び込んでくる。

窯を覆うのは、“いぶし瓦”とも呼ばれ、姫路城にも使われている伝統的な瓦「光洋製瓦(こうようせいが)」。美しいだけではなく熱を逃がしにくいのが特徴だ。

1階はカウンターが6席と、4人掛けのテーブルが1卓。軽くつまみながら飲みたい時はこのカウンターがオススメ。

2階の壁には、下山オーナーのアイデアで、葛飾北斎、歌川広重の名作、歌川国芳の金魚の九連作(写真上・右)が飾られている。モダンな色使いと日本の伝統的な美意識が融合した、独特の雰囲気のある空間だ。

イタリア料理のパーツを和の食材に置き換えることで、新たな味わいが生まれる

『いぞら』の料理の特徴は、イタリアンで使用する食材を和の食材に置き換えることで、新たな味わいを生み出していること。

例えば、「佐賀県産ホワイトアスパラと比内地鶏卵のビスマルク風 有田ぶどう山椒と白醤油のバターソース」(写真上)。

イタリアでは、茹でたアスパラガスにポーチドエッグとチーズを乗せ、アンチョビとケイパーを添える「アスパラガスのビスマルク風」が春の定番料理。

『いぞら』では、薬味のケイパーの代わりに和歌山県有田川町産のブドウ山椒を、アンチョビの代わりに白醤油を使用している。ブドウ山椒は一般の山椒よりも大粒で、柑橘類のような爽やかな香りが特徴。発祥の地である有田川町産のものは特に大粒で香りが高く、「緑のダイヤ」とも呼ばれている。

ソテーしたホワイトアスパラガスの上にポーチドエッグ、生ハム、パルミジャーノレッジャーノを薄く削ったものとおろしたものをたっぷり乗せる。

チーズと卵の濃厚さが、大粒のブドウ山椒の爽やかな香りによって軽やかな味わいに変身。卵に、どこかホッとするようなやさしいうまみを感じるのは、白醤油を使用しているからだろう。和の食材をポイント的に使うだけで、これだけ料理の印象が変わるとは驚きだ。

「イタリア郷土料理の伝統を守りつつ、日本の食材の良さをプラスしていきたい」 

『いぞら』で腕を振るう小林哲雄シェフ(写真上)は、大学卒業後、和食料理人からキャリアをスタートし、イタリアンに転身。国内のイタリア料理店で研鑽を積みつつ、26歳と36歳のタイミングでイタリア修業へ。

『ミシュランガイド2020』で二つ星を獲得するナポリの『Taverna Estia(タヴェルナ・エスティア)』をはじめ、北ピエモンテ、トスカーナなどのリストランテでも働き、本場のイタリア郷土料理の魅力に触れた。2度目の帰国後、東銀座『Ippolito(イッポリート)』(現在は閉店)などのシェフを経て、『いぞら』のシェフに就任。

小林シェフが肝に銘じているのは、「アレンジをしても、イタリアで先人たちが作り続けてきた郷土料理から大きくはずれたことはしない」ということ。あくまでもイタリア郷土料理の本質を見失わず、イタリア郷土料理の良さに、日本の食材の良さをプラスしていくことを心がけているそうだ。 

アンチョビ代わりに梅干しを使用したピッツァ

こちらの店でぜひ味わってほしい料理のひとつが、本場で修業してきた小林シェフが作るナポリ風ピッツァだ。

一般的に、ナポリ風ピッツァ生地は塩分が強いため、日本人向けには塩分を控えて作っている店が多い。だが、小林シェフはナポリそのままの塩と水の分量で作り、その分、ソースで塩分を調整している。

この店でしか食べられないスペシャリテ「広島産牡蠣と紀州南高梅肉のピッツァ、青紫蘇のジェノベーゼ」(写真上)。

生地を1日寝かせて発酵させ、十分うまみを引き出してから、青紫蘇(あおじそ)のジェノベーゼソース、広島産牡蠣、モッツァレラチーズを乗せ、薪窯で薪の香りをつけながら、ごく短時間で焼き上げている。

最後に、南高梅(なんこうばい)の梅干しをトッピング。

「梅干しは少しの分量の差で味の印象がまるで変わるため、量にはとても気を遣います」(小林シェフ)

しっかりした塩味で小麦のうまみをたっぷり引き出した生地は、やわらかくモチモチ。きつね色に焼けた部分からは薪の香ばしい香りが感じられ、「生地だけでも十分!」と思えるほどのおいしさ。

その絶品の生地を、青紫蘇のジェノベーゼソースの爽やかさ、牡蠣のうまみがさらに際立たせる。だが食べ終わって、最後に口の中に残るのは、梅干し特有のまろやかで奥深いうまみ。「このピッツァの影の主役は梅干しではないか」と思えるほど、新鮮なあと味だ。初夏には、牡蠣が鮎に変わるというが、それも楽しみ。

パスタには、毎朝ひいたマグロ節のだしを使用

イタリアンといえばパスタだが、『いぞら』ではほぼすべてのパスタにマグロ節を使用。鰹節のだしよりもうまみが強いが、魚臭さは少なめ。色も淡いので料理が美しく仕上がるからだ。

同店の仕込みは和食店さながらに、毎朝、マグロ節でだしを引くことから始まるという。

「富山湾産ホタルイカと能登魚醤、根ぜりのスパゲッティ」(写真上)。

セリは、根の部分まで食べることができる「根ぜり」を使用。根の部分に、甘みと香りが凝縮しているためだ。かすかなとろみがあり、シャクシャクとした独特の食感からも“和”を感じる。ホタルイカと魚醤の相性のよさは言わずもがなだが、個性の強い食材同士を見事にまとめているのが、マグロだしのうまみだ。

トマトと麦味噌の相性の良さに感動!

「五島列島美豚と春野菜、自家製麦味噌トマトの朴葉焼き」(写真上)は、飛騨高山地方の郷土料理である「朴葉(ほうば)焼き」をイタリア風にアレンジした料理。

朴の葉に麦味噌、トマト、白胡麻ペースト、日本酒などをミックスした「自家製麦味噌トマト」を乗せ、ソテーした五島列島美豚、タケノコ、マイタケ、菜の花、スナップエンドウ、ミニトマトを乗せている。

「自家製麦味噌トマト」は、小林シェフが田楽味噌にヒントを得て作ったソース。トマトの甘みと麦味噌の甘みが見事に融合し、そこにプチトマトの酸味が加わると絶妙のバランスに。粒が残った麦味噌のプチプチとした食感も楽しい。麦味噌のおいしさを再発見した思いだ。

繊細な和の食材を邪魔しない、繊細な味わいのイタリアンワインが豊富

『いぞら』で扱うワインはイタリア産のみ。和の食材の繊細さを邪魔しない、さっぱりした風味のイタリア中部から北部のものを多く揃えている。

器(写真上)は、オーナー自らが日本全国の窯元まで出向き、選んだものばかり。

素朴で温かみを感じる沖縄の陶器「やちむん」や、大胆でモダンな模様の島根や鳥取の民藝、個人作家の器など、さまざまな器と出逢えることも同店の魅力。小林シェフは、器から料理のインスピレーションを得ることも多いのだそう。

「日本人の感性に合った、新しいイタリア料理を創造していきたい」

「食材の力を大事にし、食材そのものと向き合うことを大事にする、日本人の感性に合ったイタリアン。この店でしか作れないイタリアンを、お客様といっしょに作り上げていきたい。オープンして3年目になって、僕たちがやりたいこととお客様のニーズがかみ合ってきているような気がします」(小林シェフ)

本場イタリアでの修業直後は、イタリア郷土料理からはずれた料理を認めない時期があったそうだが、「もっと自由にイタリア料理を考えられるようになった今のほうが、ずっと楽しい」と、嬉しそうな笑顔。

和の食材を使ったイタリアンは珍しくなく、その多くが違和感なく融合している。

だが、『いぞら』の料理で使われている和食材には、イタリア料理に寄り添いながらも埋没しないパワーがあり、日本の伝統的な食材がひそかに持っている強さを再認識させられる。

それはまた、日本各地の食材の生産者と『いぞら』が時間をかけて築き上げてきた、絆の強さでもあるのだろう。


【メニュー】
佐賀県産ホワイトアスパラと比内地鶏卵のビスマルク風 有田ぶどう山椒と白醤油のバターソース 2,600円
広島産牡蠣と紀州南高梅肉、青紫蘇のジェノベーゼ 2,500円
富山湾産ホタルイカと能登魚醤、根ぜりのスパゲッティ 2,400円
五島列島美豚と春野菜、自家製麦味噌トマトの朴葉焼き 3,400円

グラスワイン 650円~
ボトルワイン 6,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです
※本記事の取材・撮影は2020年3月に実施いたしました

いぞら

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座6-3-14
電話番号
03-5537-7371
営業時間
11:30~20:00(L.O.20:00)
定休日:不定休日あり 年末年始(2019年12月30日~2020年1月3日)
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/9fpwdx8c0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。