京都『MOTOI』出身パティシエが、作りたてデザートコースとワインの店『西洋茶屋 山本』をオープン!

茶野真智子

Summary
1.『ミシュランガイド京都2019』にて一つ星に輝いたフランス料理・京都『MOTOI』のシェフパティシエが独立
2.和と洋の素材を融合させたデザートのできたてのおいしさを味わえる
3.ソムリエでもあるシェフがセレクトしたワインとのペアリングを楽しめる

五感で堪能できる「アシェットデセール」をフルコースで

「アシェットデセール」とは、レストランのフルコースの終盤に出てくる、数種類のスイーツが美しく盛り付けられた「皿盛りデザート」のこと。プレートの上でパティシエがセンスや技術を発揮して表現する世界はまさにアート。熱々やひんやり、ふわふわ、サクサクといったできたてならではの味わいを、五感で堪能できるのが魅力だ。

特に最近話題となっているのが、そんなアシェットデセールをコース仕立てで楽しめる店だ。2018年7月に、京都・梅小路公園そばにオープンした『Dessert&Wine(デザート アンド ワイン) 西洋茶屋 山本』もそのひとつ。

元喫茶店をリノベーションしたというレトロな外観に掲げられたのれんをくぐると、中はバーを思わせる、シックな大人空間が広がっている。カウンターがメイン(一部テーブル席あり)で、手際よくデザートが仕上げられていく様子が目の前で楽しめる。

神戸『ラヴニュー』や京都『MOTOI』を経て独立

同店のオーナーパティシエは山本智弘さん(写真下)。兵庫県加古川出身で、製菓専門学校を卒業後、神戸・北野にあるチョコレートを得意とするパティスリー『L'AVENUE(ラヴニュー)』をはじめ、本場のフランス、ホテルなどで経験を積んだ。その後は、『ミシュランガイド京都・大阪+鳥取 2019』にて一つ星に輝いたフランス料理、京都『MOTOI(モトイ)』でシェフパティシエとして活躍した経歴の持ち主。

『MOTOI』でアシェットデセールを学ぶと同時に、ソムリエ免許も取得。「元々、洋菓子の道を決めたころから、いずれは自身の店を持ちたいという目標がありました」と語る山本さん。

自身の店ではアシェットデセールスタイルを採用し、ぜひそれを「コース」仕立てでやりたいと考えた。
「買って帰って、家で食べることが多いスイーツですが、アシェットデセールなら、作り立てをご提供できるため、冷たいアイスクリームと温かいチョコレートソースなど、異なる温度の異なる素材を一緒に盛ることができます」(山本さん)。さらに「コース」ならさまざまなお菓子の“一番おいしい瞬間”を提供できると思ったから。

フランス菓子に和の素材が融合

西洋茶屋という店名の通り、和と洋の融合が楽しめる構成になっているのも特徴。

「フランスで過ごして、ヨーロッパと日本の素材の違いを肌で感じました。ここでは、リンゴと大葉を組み合わせたり、ほうじ茶や七味を使ったり…。西洋のお菓子を日本の素材でよりよいもの、違ったものを表現していきたいと思います」。

メニューは月ごとに替わるデザートのコース(全4品)のみだが、3種のワインが楽しめるペアリングがスタンバイする。では『Dessert&Wine 西洋茶屋 山本』のデザートコースをご紹介していこう。

スパークリングワインに合う塩味の小菓子からスタート

まずアミューズとして登場するのは塩味の小菓子(写真上)。アシェットデセールのコースだから、甘いと思いきや塩味なのはなぜ?と思っていると、「これから続く甘いお菓子を最後までおいしくご堪能していただく口を作っていただくために、まずは塩気のあるお菓子をご用意しています」と山本さん。

写真上・左手前は「グジェール」。チーズを練り込んだ風味のよいシュー生地に、雪をまとったかのようにチーズがたっぷりと振りかけられた小菓子だ。
その奥・プレートの中央は「ケーク・サレ・ジャポネ」。スポンジ生地の中に漬物が入っている一品だ。取材時にいただいたケーキに入っていたのは大根の漬物。甘さを抑えた生地のふわふわ感と、大根のシャクシャクとした食感との組み合わせが実に心地よく、やさしい塩味がゆっくりと訪れる。漬物は他にも、ウリ、水菜、京都の伝統的な漬物「すぐき」などが季節に合わせて入れられる。

そして、三日月型のプレート上部に盛り付けられているのは「カレー風味のノワゼット」(写真上・右)。キャラメリゼの具合で香ばしさが異なる2種の味を交互に楽しめる。

合わせるのはフランス・アルザス地方のスパークリングワイン「クレマン・ダルザス」。「シャンパンと同じ瓶内二次発酵で辛口ですが、香りが少し華やかなのが特長です」と山本さん。漬物、またはチーズの塩味や、カレーのスパイシーさは、どれもスパークリングワインにぴったり。

熱々のショコラショーがムースにとろ~り

口の中が塩辛くなったところで、「ピスタチオのムースとフランボワーズのショコラショー」(写真上)が登場。

ふわふわのピスタチオムースに、ピスタチオのメレンゲやカリカリのフランボワーズをトッピングしたのち、供される直前に熱々のフランボワーズのショコラショー(ホットチョコレート)がとろ~りと注がれる。

ショコラショーはフランボワーズの酸味にチョコレートの甘みとコクがたまらない。熱々のショコラショーが絡んだムースは、口の中でとろける魅惑の食感だ。

この一皿には、山梨県甲州市『ダイヤモンド酒造』の赤ワイン「シャンテY.Aティント」をペアリング。フランボワーズのベリーとワインのベリー感の相乗効果が、一層おいしく感じさせてくれる。

甘みを増した柿は力強いシャルドネと合わせて

グランデセール(メインの品)は、季節のフルーツを使ったメインのデザートで、この日は「代白柿(だいしろかき)のマリネとチーズケーキ リュバーブのソース」(写真上)がテーブルへ。
代白柿とは、渋柿を室(むろ)という部屋で、ガスを利用して渋みを抜いた京都独特の柿のこと。それをシャーベット状にしたのちに、ハチミツとローストしたココナッツでマリネされている。

スプーンですくって口に入れると、甘さ抜群!トロトロとした柔らかな果肉が、口の中でとろけていく至福の時間が楽しめる。レモンが爽やかに香るメレンゲとチーズケーキ、酸味のあるリュバーブソースと絡めながら、ぜひ味わっていただきたい。

この一皿に合わせるワインは、アメリカのシャルドネ。「柿との相性がよく、レモンやリュバーブの酸味、ほんのり感じるバニラの香りとのマリアージュを楽しんでいただきたいですね」(山本さん)。

焼きたてのおいしさをいただきます

締めとなるお茶菓子は、甘い小菓子5品(写真上)。この日、漆(うるし)塗りのお椀のフタを開けてお目見えしたのは、写真上・中央より左まわりに、京都産の蒸留酒・ジンと紅茶を使った鮮やかな緑色のマカロン、その下にはベイクドショコラ、その左上にはスパークリングワインのメレンゲ、そして朝焼きのカヌレとフィナンシェ。

随所にお酒を散りばめたソムリエならではの内容。どの品もオーブンから焼き上げられてすぐの状態なので、外側がカリっと香ばしく、内側がしっとりして食感の違いを楽しめるのも、同店ならではだ。

「私がやりたいと思ったことすべてを一皿ひと皿で表現しているので、色んなお客様に足を運んでいただけるとうれしいですね」と山本さん。

まるでアートのような美しさ、最後まで飽きさせない構成、目の前でスイーツが仕上がっていくライブ感、そして何より、できたてのおいしさを味わえる瞬間…。自分へのご褒美に、ちょっと贅沢な気分を味わいに。『Dessert&Wine 西洋茶屋 山本』でとっておきの時間を過ごしてみてはいかがだろうか。


撮影:前田博史


【メニュー】
デザートのコース 2,000円
ワインペアリング(コースに合わせて3種) 1,800円、ハーフ1,200円
ワイン、珈琲、紅茶など 500円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

Dessert&Wine(デザート アンド ワイン) 西洋茶屋 山本

住所
〒600-8835 京都府京都市下京区観喜寺町19-1 七条澤井ビル1F
電話番号
080-7744-0631
営業時間
昼の部:13:00~17:00(L.O.16:00)、夜の部:18:00~22:00(L.O.21:00)※仕込んだ物がなくなり次第、閉店を早める場合が御座います。
定休日:水曜
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/2mdr5ebp0000/
公式サイト
公式ページhttps://www.instagram.com/patissier.man/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。