『賛否両論』で研鑽した店主が独立! あおい有紀アナも絶賛 恵比寿『蕎麦懐石 義 恵比寿』

利き酒師、一級フードアナリストの資格をもち、大の日本酒好きとして各メディアで活躍中のフリーアナウンサー・あおい有紀が、選りすぐりの和酒のお店を訪れ、お店とお酒、人の魅力に迫る!
# 蕎麦懐石×日本酒 義 恵比寿

Summary
1.恵比寿ガーデンプレイスのほど近くに佇む、和酒充実の手打ち蕎麦割烹
2.店主は有名店『賛否両論』の支店で料理長を務めた腕利き!
3.工夫に満ちた丁寧な料理と、おいしさを増幅させる和酒。締めはやはり手打ち蕎麦で

自他共に認める日本酒好きのフリーアナウンサー「あおい有紀」が“和酒”の魅力を発信!

いまや空前の和酒ブーム! 日本酒や焼酎、日本ワインなどの“和酒”が楽しめるお店が急増している。けれども本当においしい魅力的なお店は? そのお店のお酒や料理はどう楽しめばいいの?

利き酒師、焼酎利き酒師、一級フードアナリストなどの資格をもち、大のお酒好きとして各メディアで活躍中のフリーアナウンサー、あおい有紀さんが自分の足で探し歩いた「とっておきのお店」を訪れ、選りすぐりのお酒と料理を実際に味わいながらじっくりとその魅力に迫ります。

恵比寿ガーデンプレイスのほど近くに佇む、和酒充実の手打ち蕎麦割烹

こんにちは。あおい有紀です。
今回ご紹介するのは、今年2018年5月にオープンしたばかりの『蕎麦懐石 義 恵比寿』という蕎麦懐石のお店です。JR恵比寿駅から5~6分ほど歩いて、階段を降りた半地下にあります。

階段を降りると白い壁に「義」の一文字、存在感があるデザインですね。中へご案内しましょう。

真新しい雰囲気の店内は、清潔感あふれる白木の長いカウンターが魅力的です。入り口側にはそば打ち専用のブースが設けられています。こちらの店主の齋藤義展(よしのぶ)さんは、有名割烹『賛否両論』で6年修業され、支店の『賛否両論メンズ館(現在の店名:賛否両論 はなれ)』の料理長も務められた方。『メンズ館』時代にはよく伺い、日本酒女子会を企画したこともあったりと、とてもお世話になっていました。齋藤さん独立後、早速こちらの店にも伺いましたら予想以上に素晴らしく、ぜひ今回ご紹介させていただきたいと思ったんです。

店主はあの有名和食店『賛否両論』出身。工夫に満ちた料理には、どんなお酒が合う?

一品目は「白菜豆腐 白子のせ だしのジュレがけ」(写真上)。
きざんでじっくり炒め、水分を引き出し、うまみを引き出した白菜をピューレ状にし、ごま豆腐のように葛で練りあげて固めた、やわらかな寄せものです。上には蕎麦だしのジュレと白子があしらわれています。とてもやわらかいのでお箸とスプーンを使ってひと口。優しい味わい! 白菜の甘みに、だしのきいたジュレのうまみが重なります。これに白子のクリーミーさが溶け合って、しみじみと至福。

合わせたお酒は、山形『新藤酒造店』の「裏・雅山流(がさんりゅう)」。冷やでいただきます。
最近の日本酒のラベルにはこのように、銘柄に「裏」と書かれたもの(これに対して裏と書かれていないものを「表」とよびます)がありますが、「裏」は「表」に対しては甘み少なめのすっきりしたタイプが多いのです。

そんなに華やかすぎていなくて、すっきりと飲めるタイプのお酒。ラベルを見てみると、酒米に雄町(おまち)※ が使われているんですね。だからうまみもあるんですけど、すーっと流れていく感じ。重くないから、スターターとしてもぴったりです。
白菜豆腐と合わせると、白菜のうまみとだしのうまみ、白子のまろやかさに、すっきりした味わいがよく合います。パンチのあるうまみというよりは、上品なうまみがきれいに重なっていきます。お酒はこの料理の一部のように溶け込んで、心地よいですね。

「前菜には、香りが華やかなほうがいいと思いまして」、と齋藤さん。「といっても、華やかすぎてしまうと、和食と合わせづらい。その中でお料理を引き立ててくれるけれど、香りも楽しめるようなお酒を選びました」。お酒はこだわりの酒屋さんからご指南をいただきながら選んでいるそう。

二品目は揚げ物。写真上の左が「帆立と銀杏の新丈おかきあげ」で、右が「蓮根饅頭」。
帆立のほうはひと口食べると、ふわふわの食感にびっくり! 魚のすり身に、粗く切った帆立と銀杏を混ぜ込んで厚めに切り、上新粉の衣をつけて揚げてあります。サクッ、カリッとした衣の中がとてもやわらかくて、かむほどに帆立のうまみと甘みが広がります。

蓮根饅頭はすりおろしとみじん切りのレンコンを混ぜてあるので、ところどころにシャキッとした歯触りがアクセント。すだちと塩でシンプルにいただきます。こちらはもっちり、ねっとりした口当たりと、シャキシャキ食感がおいしい。どちらも上品なお味で、いくらでも食べられてしまいそうです。

合わせたお酒は埼玉『神亀酒造』の「神亀(しんかめ) 純米酒」を。あえて常温でのペアリングです。ヨーグルトのような乳酸系の香りがして、口当たりはまろやか。丸みのある、やわらかい感じのお酒ですね。それでいてボディのあるタイプの純米酒です。

「米のうまみがあるから、自分にとってこのお酒は“ご飯”のイメージなんです。揚げ物を食べながら、ご飯を一緒に食べていただいているイメージで選びました」と齋藤さん。なるほど、天ぷらとお酒を合わせて天丼になるような? たしかに、米らしいうまみがしっかりと感じられますから、おもしろいです。

揚げ物といただくと……これはおいしい! お酒と合わせると、お料理を優しく包み込んでくれる感じですね。まったく違和感なくスーッといけます。神亀だけで飲むと濃いかな、ちょっと苦手かなと思う方でも、揚げ物と合わせて飲んでみると印象が変わるかも。

『神亀酒造』は埼玉県でも早くから純米酒にこだわりをもつ蔵元で、とくにお燗酒に合うように酒造りをされています。寒い季節はお燗でもよさそうですが、この常温もとてもおいしいですね。

三品目には向付として、魚と肉の「お造りの盛り合わせ」(写真上)をご用意いただきました。贅沢です!

魚はカマス、本マグロの中トロ、ハタ、平目。お造り用の醤油のほか、マグロの手前には、これだけでお酒が進みそうな「九条ネギと塩昆布の醤油漬け」も添えてあります。菊花の甘酢漬けもさっぱりとした口直しに。
肉は焼いた合鴨ロースとフォワグラの味噌漬けに、柿を添えて。切り口のピンク色が美しい鴨ロースは、鴨の胸肉を一度ローストしてうまみを閉じこめ、70~80℃の醤油地に50分間漬けてゆっくりと火を通したもの。フォワグラは砂糖とみりんで一晩マリネし、ラップで巻いて70℃の湯に漬けて加熱してから西京味噌に漬け込んだそう。

このお皿に合わせるお酒は、2種類選んでいただいています。広島『天寶一』の「天寶一(てんぽういち) 純米吟醸」と、長野『伴野酒造』の「ボーミッシェル」。こちらはビートルズの「ミッシェル」を聞かせながら仕込んだという個性的なお酒。まったくタイプの違う2つのお酒を合わせると、どうなるのでしょうか。

まずは「天寶一」から。
香りも甘さも控えめ。辛口で、すっとキレのある味わいです。純米らしく米のうまみもありますが、甘さ控えめの“ザ・食中酒”。飽きずに飲み続けられそうなタイプ。

お刺身との相性はもちろん抜群なのですが、フォワグラを口にしてからこのお酒をひと口味わうと、フォワグラの脂が締まる感じがします。さらに一緒に味わっていくにつれて、フォワグラとお酒がやさしく手を取り合い、西京味噌の甘みとフォワグラのうまみが…お酒と一体となって口の中でふくらみますね。

もうひとつは「ボーミッシェル」。
ワインボトルのような外観からも伝わるとおり個性的なタイプの日本酒で、柑橘の甘酸っぱい味わいが特徴のお酒です。香りは控えめ。度数も9度と低く、お酒が苦手な人にも飲みやすそう。
この甘酸っぱさをフォワグラと合わせてもらいたいという趣向ですね。フルーツと相性がよさそうなので、添えられた柿が合います。フォワグラや柿の甘みが口に広がっていくような印象です。

こちらのお酒は甘さがあるので、お刺身との相性としてはどうかな、肉のほうが合うなと思いましたが、わさびを合わせると、ぴりっと感が出て、より合いやすくなりました。

お造りといっても、いろいろな味のものが盛り合わせてあるので、お酒2種類がちょうどいいかもしれません。タイプの違うお酒をあれこれと組み合わせると楽しくなってきます!

四品目はいよいよ、おしのぎとして締めの手打ち蕎麦が登場します。蕎麦はせいろか、いくらおろし蕎麦から選ぶことができますが、今回は「いくらおろし蕎麦」(写真上)を。

運ばれた蕎麦の華やかな彩りにびっくり! シンプルなせいろ蕎麦を供されるお店が多いと思いますが、こちらのお店では必ず1品は、こうした季節の華やかな蕎麦を用意されています。「お客さまにより楽しんでいただきたくて、こうした盛り付けにしています」と齋藤さん。

蕎麦の種類は季節ごとに変えていて、イクラの前は九条葱を使ったあえそばや、桜海老をすり流しにしてソースにしたり、ウニをのせることもあるそう。毎回楽しんでいただければという思いが表れています。蕎麦は北海道・砂川産の蕎麦を殻ごと挽きぐるみ(殻ごと石臼で挽くこと)にした蕎麦粉と小麦粉を1対9であわせた9割蕎麦。つゆは修業先の『賛否両論』のものを元にした、やや濃いめの上品なだしがベースです。

もちろん、蕎麦にもお酒を合わせます。選んでいただいたのは宮城『阿部勘酒造』の「阿部勘 特別純米酒」。

ひと口目は、香りと味がおだやかな印象ですね。これが中盤にかけてうまみが膨らみ、余韻が長い。ほどよい酸もあります。
いくらおろし蕎麦と合わせると、イクラのうまみが、このお酒のボディのあるうまみと合わさり、おいしさの相乗効果を出しています。

店主の齋藤義展さんは1981年生まれの37歳。アメリカに留学中、NYの『雅(まさ)』で修業したことから料理の道に。TVで見た笠原将弘さんに魅かれ、帰国後いったん地元の埼玉県の蕎麦割烹で蕎麦を学んだ後、2012年から『賛否両論』で6年修業後、独立されました。アメリカでの留学経験で英語が話せるのを強みに、いつかは海外で店を開きたいという夢をお持ちです。海外では寿司や天ぷらに比べ、蕎麦はあまり有名でないので、蕎麦のおいしさをもっと世界に広めたいのだそう。お店にはフランス人をはじめ、海外からのお客さまが来られるそうですが、みなさん味の経験値が高く、好奇心も旺盛な方が多いそうで、齋藤さんの蕎麦も喜んでいただいているとか。

師匠の笠原さんは、独立後こちらに来店され励ましてくれる、齋藤さんにとって今も大切な存在。先輩たちもすでに何度も食事に来てくれるのだとか。よき師匠や仲間との出会いに恵まれ、培った腕と海外経験を生かし、世界に目を向けていらっしゃる齋藤さん。今はまだ自分のお店が軌道に乗ることが目標だと思いますが、いつかぜひ、夢を実現させてほしいと思います。ありがとうございました!

(※)雄町…日本最古の酒米とも呼ばれる、歴史の古い酒造好適米の一種で、山田錦などの優良品種のルーツとして知られる。濃厚で力強い甘みとコクがあり、幅のある複雑な味わいが特徴。現在、生産量の95%を岡山県産が占めている。

編集協力:糸田麻里子(フードライター・エディター)
撮影:佐々木雅久

【メニュー】
おまかせコース 5,500円(8品)
ランチコース 3,500円(6品)
日本酒 1,100円~(1合)
生ビール 700円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。


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※『dressing』プレミアム読者限定の読者プレゼントあり※

『蕎麦懐石 義 恵比寿』齋藤シェフに、dressing読者へプレゼントをご用意いただきました。
特典をゲットして、あおい有紀さんおすすめの店『蕎麦懐石 義 恵比寿』の料理とお酒を堪能しましょう!

※取材時にいただきましたご来店時特典は、2019年1月31日(木) まで有効です。

ご来店時特典は…! (続きは「今すぐ続きを読む」へ)

蕎麦懐石 義 恵比寿

住所
東京都目黒区三田2-3-20 B1
電話番号
050-5487-6933
営業時間
水・土
12:00~14:00

月~土・祝日
18:00~21:00
定休日:日曜日
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/r9wj496k0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

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