【連載】肉の兵法 第一回

肉に向かうときに雑になってはならぬ。どこでどんな肉を食べるのか、組み立てるのが大人のたしなみであり、男の作法。「大人の肉ドリル」著者である松浦達也氏が旨い店の肉をさらに旨く食べるための作法を解説する。

2015年09月14日
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【連載】肉の兵法 第一回
Summary
・黒毛の松阪牛から土佐や熊本のあか牛までさまざまな和牛の赤身肉を
・300g以上の塊肉を備長炭で焼く
・他にも豊富な肉メニュー

本日の攻略肉~神田明神下で「極上お肉の炭火焼き」~

口に運んだ瞬間、幸福感のあまりため息をつくような肉に出会うのは難しい。というのも、そこには解決すべきふたつの課題があるからだ。ひとつは肉、もうひとつは自分。この両者を攻略できてこそ、目の前の肉は最上のものになる。肉(メニュー)を見極め、己(注文)をととのえる。そうすれば百戦危うからず、である。

一人客にやさしく、肉の火入れは10.00点!!

少人数だけど、塊肉が食べたい。最近ではそう思った瞬間、神田明神下のこちらに電話をかけてしまう。1Fは全席カウンターでラストオーダーは23時と、しつらえから営業時間までも一人客にやさしい店舗設計。そして何より! 塊肉を数十分かけて炭火で焼きあげる、日替わりのスペシャリテ「極上お肉の炭火焼き」があるからだ。

牛の種類は黒毛の松阪牛から土佐や熊本のあか牛までさまざまだが、部位はランプ、イチボ、シンタマといった赤身が多い。その肉を300gという単位で焼く。これ以下の単位はない。肉に適切な火入れをするには、ある程度のサイズが必要なのは肉好きならご承知のとおり。

そしてこの店、とにかく火入れの安定感が尋常ではない。備長炭を熱源に、表面に焼き目をつけては、ときどき休ませながら数十分。肉がパンパンに張った状態まで来たら、少し休ませて引きあげる。カットした肉の断面がググッと盛り上がるような絶妙の焼き加減。差し出された皿の上で緋色に輝く肉は、もうエロ美しいことこの上なし。皿にドリップを垂らしてなるものかという、気合かつジャストの焼き加減でピタリと着地。10.00点!

他では食べられないスパイス遣い

店主の中秋陽一氏は、国内のレストランで働いたのち渡仏した。複数の星つき店舗で「気づけばいつも肉ばかり(笑)」という数年間の修業の後に帰国。2009年に東横線の学芸大学駅で開業した後、2013年には神田明神下に移転し、1年半はサービスに専念した。そして今年の2月、オーナーシェフとして再度厨房に立つようになったのを機に、メニューを一新し、「肉」のほうへと思いきり舵を切った。

店内の黒板には、目移りするほど豊富な肉のメニューが記されている。一皿のボリュームが多いので、まずはここでしっかり悩みたい。決めきれなければ、まずは「自家製シャルキュトリー お肉の前菜盛り合わせ」から入るべし。ガーリックソーセージや牛のブレザオラなど7~8種の加工肉がドン! 「他で食べられない味を」とロースハムはクローブ、コリアンダー、スターアニスという、ハムとしては思い切ったスパイス使いで中毒性も高い。ちなみにこの盛り合わせ、ハーフで注文してもゆうに2人前の量があり、味と量の両面から攻めてくる。

肉でがっつり行くなら、肉の前菜盛り合わせ(ハーフ)から塊肉へ。バランス重視ならサラダから塊肉へ。メインが300gあるので、一人ならこれで大満足。2人でも、肉の前菜盛り合わせとサラダに、塊肉でだいたい十分だろう。足りなければ、馬肉のタルタルなどを足せばいい。

それ以上の人数なら、もうこんな原稿を読んでいないで、とっとと予約を取って、こちら「à table(ア・ターブル)」のメニューと正対すべし。仔羊の背肉や窒息鴨のロースト、パテ・ド・カンパーニュ、肉好きが3人以上集まれば、どうせ誰かれ構わず好きなものを注文しはじめるのだから。

<メニュー>
極上お肉の炭火焼き(この日は仙台牛A5ランイチ300gで)7,500円
自家製シャルキュトリー(お肉の前菜盛り合わせ)3,200円など

本日の肉の兵法

まずは、塊肉の相手役を決めるべし!

<攻略法>
・一人の場合(肉がっつり派)
自家製シャルキュトリー お肉の前菜盛り合わせ(ハーフ)
極上お肉の炭火焼き

・一人の場合(バランス重視派)
魚のコンフィを添えたニース風サラダ
極上お肉の炭火焼き

・二人の場合 
自家製シャルキュトリー お肉の前菜盛り合わせ(ハーフ)
魚のコンフィを添えたニース風サラダ
会津産馬肉モモのタルタル
極上お肉の炭火焼き

・三人以上
自家製シャルキュトリー お肉の前菜盛り合わせ(フルサイズ)
魚のコンフィを添えたニース風サラダ
会津産馬肉モモのタルタル
極上お肉の炭火焼き
その他、気になったメニュー

※松浦達也さんのスペシャルな記事『高田馬場のとっておき酒場は、あのサイトにも載っていない「もつ煮込み」の聖域だった』はこちら

à table(ア・ターブル)

住所
〒113-0034 東京都文京区湯島3-1-1 木村ビル1F
電話番号
03-5812-2828
営業時間
17:30~1:00(L.O.23:00)
定休日
定休日 日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/r2rk2j2m0000/
公式サイト
http://atable-y.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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編集者/ライター/フードアクティビスト
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グルメライター/フードアナリスト/調理師