横浜、クレイジーケンバンド小野瀬雅生さんの私的No.1カレー

不味かったカレーの思い出から始めます。正確にはカレーではなくカレー未満なのですが。今から40年前近く、横浜市内の高校に入学してすぐに新入生全員で合宿所のようなところにバスで連れて行かれ、そこでいきなり夕食を自炊しろと云うミッションが与えられました。メニューはカレー。材料は用意されていたのでタマネギを切ったりジャガイモの皮を剥いたりしていたのですが、ふと気がつくと肝心のカレールーが用意されていない。どういうこっちゃ。

結局我々には一片のカレールーも与えられず、何故か少量用意されていた味噌で味付けをする事に。ところが全体量に対して味噌が異様に少なく、旨味をサポートするダシの素の類いも皆無。醤油や塩もない。高校入学数日にして何なんだこの試練。鍋に出来上がった不完全な汁物を食べてみた。不味い。涙が出そうになるくらい不味い。材料の不備からその不味かった事まで覚えているけれど、その後で夕食はどうしたのか記憶が途切れている。食べなかったのか。どうだったのか。今度同窓会があったらみんなに訊いてみよう。

子供の頃から色々なカレーを食べて来ました。甘いの、辛いの、シンプルなの、具沢山なの、凄くウマイの、まあまあウマイの、フツーなの。カレーは大体にしてウマイ。まず外れはない。人生で幾つかありましたけれどもね、外れ。冒頭のヤツはカレーの体をなしていないので論外です。ハマったカレーも幾つかあります。大阪のインデアンカレー。この最初甘く感じた後に時間差で物凄い辛さに攻められると云うカレーにハマり、全店舗制覇（全部で9つだったかな）なんて事もやりました。今から10年ほど前に東京で出店した時は本当に嬉しかった。今でも大阪に行くと無性に食べたくなります。ちなみにルー増し全卵入りです。

レトルトはハウスカレーマルシェの中辛。異論は受け付けません。スジャータのやつもちょっと好き。幻のカレーは、新宿伊勢丹の入口から地下に向かう階段の途中にあったカレー店のカレー。子供にはちょっとキビシイ辛さでしたが香りは素晴らしく良かった。誰か覚えていないかなそのカレー。

そして現在もクレイジーケンバンドで一緒に演奏している剣さんと廣石さんに誘われて1990年にZAZOUと云うバンドに加入して、一緒に行ったロンドンで食べたカレーは辛かった。本格的インドカレー初体験。特にエビのカレーが辛かったのを覚えています。それ以来、剣さんと廣石さんとずっと一緒にバンドやってます。バンドの事もカレーの事もとてもじゃないですが語りきれません。いつかたっぷりと聞いてやってください。

そんな私のナンバーワンカレーは横浜の六角橋にあります「サリサリカリー」のカレーです。電車ですと東急東横線の白楽駅利用。東白楽駅からも行けます。こちらのカレーはパキスタンのパンジャーブ地方の家庭料理をマスターがアレンジ無しでそのまま再現。水を一切使わずに野菜の水分だけで煮込みます。

鶏肉の繊維がほぐれてコンビーフ状になったら出来上がり。味付けは岩塩とスパイスのみ。途轍もなく深い旨み。最初に食べた時のときめきが、今でも食べる度に感じられます。辛さもスパイシーさも軽快。唯一無二の味。そして何か決定的に懐かしい感じが存在する。それが何なのか未だにわからないけれど、心も身体も満足感に包まれます。

サラダとチャイの3点セットで1,000円。私はこのセットを地球上で最も納得の行く1,000円の使い道と評しております。ウマウマウーの王様のウマウマ王。お店の看板などに余計な事が色々書いてあって入りづらく思えましょうが、味は1000％保証します。美味しかったです！ 御馳走様でした！