郷土イタリアンがいま熱い!「生パスタ」を思い切り楽しむ、ヴェネツィア郷土の人気イタリアン

2019年04月04日
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郷土イタリアンがいま熱い!「生パスタ」を思い切り楽しむ、ヴェネツィア郷土の人気イタリアン
Summary
1.『ミシュランガイド』に掲載されたフレンチがモダンなヴェネツィア料理を楽しめるイタリアンにリニューアル!
2.自家製の生パスタ「パスタフレスカ」が数種類も楽しめるコースは必食!
3.ワインはもちろん、スピリッツやリキュールなど多彩な組み合わせを楽しめるペアリングもおすすめ!

フレンチからイタリアンへ! 変貌を遂げた理由は?

かつて、八丁堀のこの地に人気のフレンチレストランがあった。当時シェフだった生井祐介さんは広尾でイノベーティブフレンチレストラン『Ode(オード)』を開店。そしてここはなんと、後継のフレンチシェフを迎えるという選択はせず、イタリアンレストラン『stesso e Magari CHIC(ステッソ・エ・ マガーリ・シック』に変貌を遂げた。

「実は、私は19歳からイタリアンレストランで働き、エミリア・ロマーニャ州で食やワインを学びました。なので、変わったという感覚より、戻ったという感じですね」と語るのはオーナーソムリエの星壽仁さん(写真下)。

ヨーロッパの街角にありそうな小洒落た店内、その奥のキッチンで料理を作っているのは石濵一則シェフ(写真下)。イタリア料理の中でも北部・ヴェネト州の料理が得意という。

その“ヴェネト州の料理”とはどのようなものか? と石濵シェフに聞くと、「日本でイタリア料理というとオリーブオイルをイメージされる方も多いと思いますが、この地はそこまでオリーブオイルを多用しません。そして、アドリア海で獲れる新鮮な魚介類を使った料理も多く、乳製品を合わせて素材のうまみを出した味わいも特徴ですね」と教えてくれる。

北イタリア郷土料理と現代のエッセンスの共作“モダン・ヴェネツィア料理”

「パスタ、ピッツァ、カルパッチョ、ビステッカというような、日本でメジャーなイタリアンではなく、うちがお出ししているのは“郷土料理”。つまりちょっと田舎っぽい素朴な料理がベースです」と星さんが言い添える。

今は“肉イタリアン”や“魚介系イタリアン”など、単なるイタリアンレストランではなく、得意とするメニューを標榜するお店が多いが、こちら『stesso e Magari CHIC』の売りは、北イタリアのクラシカルでコンサバティブなメニューに現代のエッセンスを加えて再構築した、モダン・ヴェネツィア料理。中でもお店で手作りしている「パスタフレスカ」は絶品だ。

パスタフレスカ……“生パスタ”と訳されるイタリア語だが、パスタはプリモ・ピアット(第一の皿)。セコンド・ピアット、メイン料理とされる肉や魚よりもおすすめするほどのパスタフレスカとは一体? 全貌を確かめるべく、パスタフレスカを中心としたコースを見せてもらった。

最初は「シェフが一生作り続けたい味」から!

まずは手でつまめるアンティパスト「バッカラマンテカート」(写真上)。クリスピーな生地が山状に重なり合っている。覗き込むとなにやら中に白い具が!

「ヴェネツィアの郷土料理なんですが、僕がメストレにあるバッカラ(干しダラ)専門店『Baccalàdivino』で働いていたこともあり、自分が一生作り続けたい料理という意味も込めて、最初にお出ししています。ベースに干しダラのペーストを使う以外は季節によってアレンジしています」(石濵シェフ)。

バッカラはヴェネツィアではメジャーな食材。これをレモンとローリエで茹で、マンテカーレ(ホイップする・練るの意)し、デュラムセモリナ粉で作ったクリスピーな生地を添えている。イタリアの居酒屋的なバーカロやトラットリアには必ずと言っていいほど置いてあるペースト状のおつまみだが、こんなスタイリッシュな一品になるとは!そして“干した魚”という日本的な素材がベースだからか、素直に食べられる味だ。

ちなみにインパクトのある木のプレートは星さんの自作! 肩の力を抜いて食事ができるよう、ナチュラル素材の食器を折々差し込んでいるのだとか。

次は待望のプリモ・ピアットであるパスタフレスカの「鰯とイカスミのトルテッリ」(写真上)。先ほどのナチュラルなプレートからうって変わって、モダンな黒の器に鮮やかな緑色のソース。見た目だけではどんな味なのか全く想像もつかない。

食べてみると、ラビオリの一種である“トルテッリ”にイカスミが練り込まれ、中には静岡県・駿河湾産の鰯(イワシ)のラグーが包まれている。

咀嚼することで口内いっぱいに海の豊かな風味が広がり、モダンな見た目を裏切る味わいに驚く。
そして上にかかっているソースは蛤のだしと菜の花を合わせたもの! 日本の春の味とイタリアンの融合だ。
「見た目はモダン、食べるとぜいたくな魚介のうまみ、そしてほのかに感じる春の風味」と三位一体の味わいが楽しめ、ここから始まるパスタフレスカへの期待を盛り上げてくれる。

クラシカルな技法はそのままに、現代と旬を閉じ込めた一皿

次もパスタフレスカ、「手長エビのタリオリーニ」(写真上)。やや幅広のタリオリーニは日本のイタリアンレストランでもよく見かけるパスタだが、それでは終わらない。

厚さを変えることで食感を強く残したというタリオリーニと、トマトとエビの濃厚さが凝縮されたソース、添えられた海老の身の組み合わせは、まさにベストバランス。ヴェネツィア的に直球のパスタであるこちらは、シェフのイタリア修業時代、毎日フレッシュなスカンピを調理していたことから思いついた一品。

手長エビは鰯と同じ、駿河湾から届いた新鮮なものだそう。海老を丸ごと使った、フォトジェニックで大胆な盛り付けも目に楽しい!

次もパスタフレスカは続く。「タラの煮込みポレンタのマルタリアーティ」(写真下)。一般的には煮込み料理などに添えてあるポレンタだが……。

「ホワイトシチューのようなベシャメルベースの煮込み料理をソースに、パスタ生地にポレンタを練り込んでパスタフレスカに仕立てました。“バッカラ アッラ ヴィチェンティーナ”という郷土料理がベースで、一品目と同じ干しダラが味のポイントですね」(石濵シェフ)

ふわっと消え、口に風味だけ残る泡仕立てのソースに、素朴な味わいのポレンタがおいしい。

「数多ある外国料理の中でも、イタリア料理は特に日本人の味覚に合うと言われてます。その証拠に、イタリア料理が日本で紹介されて以来、全国どんな都市でもと言ってもいいほどイタリアンレストランがある。中でもヴェネツィア料理は海の幸や山の幸を豊富に使い、素材の味を生かした日本の家庭料理と似ている。そこも相性の良い理由のひとつでしょう」と星さん。

野菜は農家から直送! 素材の豊かな味をじっくり味わいたい

さて、最後の料理は驚くほどのグリーン! 「スナップエンドウとグアンチャーレのリゾット」(写真下)だ。

パスタフレスカが続いたので、最後は日本人の口になじんだお米の料理を、ということで出していただいたこちらのリゾットは、まぶしいほどにフレッシュなスナップえんどうがいっぱい!

こんなに野菜が瑞々しい理由をうかがうと、「栃木の農家さんから、その日使う分だけの野菜を毎朝直送してもらっています。ランチはサラダをメインにしたコースもお出ししているのですが、みなさん野菜のおいしさを喜んでくれます」(星さん)。

そんなスナップえんどうがたっぷりあしらわれたリゾットは、春らしい爽快な味とほのかなコクが同居する。こちらはヴェネツィアの郷土料理で、グリーンピースとパンチェッタのリゾットのような“リージ エ ビージ”から着想を得たレシピ。

「今朝、極上のスナップえんどうが届いたので、スナップえんどうをメインに、パンチェッタをグアンチャーレ(豚の頬肉の塩漬けを熟成させたもの)のスライスに置き換えてみました」(石濵シェフ)

ひと口食べると、スナップえんどうそのものの風味で口中がいっぱいになるが、さらにほのかに感じる野菜のうまみ。その味の秘密をうかがうと、なんと、さやの部分をブイヨンとパウダーにしてリゾットに加えてあるそう。なるほど! 素人でも作れるリゾットだが、その味の奥行きの出し方にプロの矜持を感じる。

「ほのかなリッチさも欲しいけど、堅苦しくない空間。スタイリッシュすぎないカトラリーやお皿。料理も郷土料理をベースにホッとできるようでありながら、ここでしか食べられない味を提供できたらと思っています」と語る星さん。

その言葉通り、ペアリングに使うお酒もイタリアのワインから、スピリッツやリキュール類まで多種に渡る。この多彩さもこのお店の魅力の一つであろう。

オフィスやマンションに囲まれた静かな街並みに佇む『stesso e Magari CHIC』の扉は、今日もたくさん訪れるお客のために明るく開いている。


【メニュー】
▼コース
ランチ 3,000円~
ディナー 10,000円~
▼ドリンク
グラスワイン 1,200円~
他にシャンパン、焼酎、ビール、ソフトドリンクなど
ペアリングコース 5,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜きです

CHIC peut-etre

住所
東京都中央区八丁堀3-6-3 高野サンパレスビル1F
電話番号
050-5487-9184
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
金・土・祝日
ランチ 12:00~14:30
(L.O.13:00)

火~土・祝日
ディナー 18:00~21:00
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定休日
月曜日・日曜日
ぐるなび
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