余韻までおいしいイタリアンに心を掴まれる!食べ進むごとに期待が高まる、自由が丘の注目店『igora』

2019年08月23日
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余韻までおいしいイタリアンに心を掴まれる!食べ進むごとに期待が高まる、自由が丘の注目店『igora』
Summary
1.自由が丘駅と九品仏駅の間に、注目のイタリアン『igora(イゴラ)』がオープン
2.三軒茶屋『Bricca』や渋谷『リストランテG』で研鑽を積んだシェフが独立
3.「次の一品がほしくなる」ほどよい塩加減とやさしい味わいが魅力

目が離せない一軒! 東京・自由が丘に誕生した、やさしいイタリア料理店『igora』

小学生のころから料理が大好きだった少年。成長とともに、いつしか料理人になりたいという夢を抱くようになるが、10代のうちはその道に進むことなく、地元・福岡の大学へ進学。しかし、どうしてもその夢を諦めきれず、23歳で上京したことをきっかけに、坂井務さん(写真下)の料理人としてのキャリアはスタートした。

イタリア修業中は、畑を手伝いながらワインについての見識も深める

最初に入店したのは渋谷のイタリアン『リストランテG』(現在は閉店)。サービスからはじめて実地で学びながら、1~2年周期でいくつかの店を転々とすることで見識を深め、30歳になったタイミングで渡欧。イタリア中部のトスカーナ、北東部のフリウリを筆頭にいくつかの都市を回って料理の修業をすると同時に、ワインの生産者を訪れて畑仕事を手伝うなどし、目で見て、肌で感じることで知識を磨いた。

ワインへの知識欲はイタリアだけに飽き足らず、坂井シェフの足をフランスにも運ばせた。フランスとスイスの国境近くにあるジュラ地方で自然な造りにこだわったワイン生産を続ける鏡健二郎夫妻のもとを訪ね、住み込みで修業させてもらったこともある。

帰国後も都内イタリアンで研鑽を積み、2019年7月に独立

帰国後は、三軒茶屋を代表する人気イタリアン『Bricca(ブリッカ)』を1年ほど手伝った後、南青山『リヴァ デリ エトゥルスキ』に勤務しながら開店準備を進め、2019年7月26日、ついに念願だった自身のお店をオープンした。

「無知の知」を大切に、学ぶ姿勢を保ち続けたい

店名は『igora(イゴラ)』。
命名のヒントとなったのは、イタリアでの修業時、あるワイン生産者が口にしたこんな言葉だった。

「わたしたちは何を学ぶにしても、まずは自分が無知であることを自覚しなければならない。自分が無知であることを知ることこそ、『知』へとつながるものだ。わたしはワインについてまだまだ知らないことだらけだけど、あと1,000年生きられたら、少しはワインのことがわかるかもしれないのに」。

自らの専門分野で偉大な業績を残している人でさえ、このような姿勢で目の前の一つひとつに向き合っていることに感銘を受けた坂井シェフ。イタリア語の「ignoranza(イニョランツァ:無知)」から5つのアルファベットを抜き取り、言葉の響きとしても覚えやすい『igora』と命名したのだ。

ワイン生産者への敬意をセラーに込める

さらに、自身が陶酔したワインの魅力を少しでも多くの人に知ってもらおうと、店内には700本近くのワインを収納できるセラー室、および200本近く収納できるセラーを完備。自然派のものを中心に、実に1,000本近くものワインの収納スペースを確保している。

料理は、コース、アラカルトともに対応しているが、その日ある食材を活かして提供するコースが特におすすめ。予算に合わせておまかせで作ってくれるので、苦手な食材や好みを伝えた上で、どんなものが出てくるかワクワクしながら待つのも、『igora』ならではの愉しみ方。

イカ飯に着想を得た前菜は、はじけるような弾力とフレッシュな酸味

この日、前菜として用意してくれた一品目は、「白イカとお米のサラダ」。
水路に竹炭を敷き詰め、ミネラル豊富な水で育った「城下竹炭米」と、アンチョビ、ケイパー、おかひじきを、炊いた胴体に詰めた後、まるごとオーブンで焼いた白イカは、まるでイカ飯のような見た目。

聞けば、まさしくイカ飯に着想を得たそうで、「イタリアンに限らずいろんな料理が発想の元になるし、せっかく日本でお店をやっているのだから、日本の食材を活かしたメニューもどんどん生み出していきたいですね」と坂井シェフ。

甘みが強くコリコリの白イカは、豊洲市場で最高級の食材をそろえる『ウエケン』から仕入れたもの。坂井シェフ自身も毎日のように市場へ足を運び、納得いく食材のみを仕入れているのだとか。

胴体には、アンチョビやケイパーが効いたスパイシーな具材がぎっしりと詰まっていて重厚な味わい。イカの弾力も強いので食べごたえ抜群だ。細かくカットしたタマネギの酢漬けと自家製セミドライトマトのさっぱり感を足せば、夏らしくフレッシュな口当たり。華やかな風味のオレンジワイン「PRARUAR(プラルアール)」とのマリアージュを楽しみながら、次の一皿を待つ時間は至福のひとときだ。

“生”のモツを使った煮込みは驚くほどにやわらかく、うまみが凝縮

2つ目の前菜は、「ギアラの煮込み 木の芽のソース」。
モツを香味野菜といっしょに煮込んだフィレンツェ名物「ランプレドット」を、国産の“生”のギアラで完成させた後、心地よい苦みの木の芽で作ったソースを添えたうまみたっぷりの一品。

冷凍での販売が多い内臓だが、坂井シェフが生のものにこだわる理由は、いたってシンプル。「フレッシュのほうが断然おいしいから」。
臭みがなく濃厚なうまみに満ちたギアラは、ゆっくりと時間をかけて低温で火を通しているため、驚くほどやわらか。

コラーゲンたっぷりで口周りがオイリーになるのに、しつこさは全然ない。ただ純粋に、うまみだけが口の中に残るのだ。木の芽ソースを添えればまた違った表情。全体がきゅっと引き締まり、苦みの効いた大人な味わいを楽しめる。

甘みを引き出した「トウモロコシ」のパスタは、やさしく余韻の残る味わい

続いてはパスタメニューから2品ご紹介しよう。

まず1品目は、今が旬の夏野菜が主役の「タリオリーニ とうもろこしのソース」。
無農薬農家から仕入れたとうもろこしを、皮の青臭さがつかないよう、皮を剥いでから45分間蒸すことで甘みを存分に引き出した後、バターと塩のみで味付けしたソースを自家製タリオリーニに絡めた一皿だ。

上にかかっているのは、マレーシア産「MARICHA(マリチャ)」のコショウ。グリーンペッパーのような見た目で香りは山椒のようにスパイシー。甘くやさしい味のトウモロコシソースにアクセントを利かせるために、通常の黒コショウではなくこちらをチョイスしているのだとか。

実のゴロゴロ感を程よく残したソース、卵を入れた生地で作った平打ちパスタともにほっこりとさせられる口当たり。食べ終わるとなんとも名残惜しく、翌日にもまた思い返して食べたくなる味だ。

同店で味わえるパスタメニューは、ソースに合わせて乾麺と自家製麺を使い分け。卵をたっぷり使い、モッチリと弾力のある食感に仕上げた自家製麺を使ったパスタをもう一品紹介しよう。

モッチリ食感のラビオリの中には、枝豆とリコッタチーズ

枝豆の食感とバターの香りがクセになる「枝豆とリコッタチーズのラビオリと茗荷バター」。
枝豆豆腐に着想を得て、乳脂肪分が少ないリコッタチーズと組み合わせてラビオリの具材に。イタリアでは定番のセージバターをアレンジして、セージではなくミョウガで香りづけしたバターのソースと和えた、和のエッセンスが香るパスタメニューだ。

モッチリした歯触りのラビオリと、つぶつぶ食感の枝豆は絶妙な組み合わせ。つるんと口の中に入るのに、噛むたびにチーズやバターのうまみが口中に広がっていく。

ミョウガの香りを宿したバターは夏の息吹。季節が移り変わった後も、「あの味をまた来年の夏も楽しみたいな」と思ってしまいそうだ。

加熱したあと適度に休ませた肉は、口当たりやわらかでうまみたっぷり

ラスト一品は、「牛ハラミのロースト ワインビネガーで漬けた島ラッキョウ」。
手の込んだソースなどと合わせることはなく、シンプルに火を通した上質な肉がまとっているのはオリーブオイルとコショウのみ。フライパンで表面に焼き色を付け、オーブンで加熱した後に休ませた肉は、うまみが凝縮されていてやわらかな口当たり。

島ラッキョウを漬けているワインビネガーは、イタリア・フリウリ地方の「シルク アチェート・ディ・ウーヴァ」。自家栽培したブドウを皮ごと浸し込んで醸造したワインを原料に、酢酸発酵させた後、3年から4年熟成させた代物で、肉を食べ進める途中で頬張ると、口の中をさっぱりとさせてくれる。

共通するのは、「次の一品を食べたくなる」ような味わい

前菜からメインまですべての料理に共通しているのは、豊潤な味わいでありながら“くどさ”がないということ。
坂井シェフ自身、このことを意識して料理しているそうで、「次の一品を食べたくなる塩加減ややさしい味わいを心がけています。ワインと同じで、一杯だけで完結するのではなく、次がほしくなるような料理だと思っていただけたらうれしいですね」とコメントする。

椅子やテーブルはミリ単位でこだわり、お客の居心地のよさを追求

お客がくつろげるパーフェクトな高さを追求したカウンターテーブルは、アサメラ(チークの一種)の一枚板を使った特注品。坂井シェフもお気に入りの居酒屋『高太郎(東京・桜が丘)』のカウンターの“高さ”を再現させてもらったそうで、カウンターのみならず、テーブル席までが一枚の板で仕上げられている。椅子の高さと角度にもこだわり、ミリ単位で既存品を「お直し」した徹底ぶり。

ゲストを迎えるテーブルセッティングの一つであるプレート(写真上)も、一枚一枚が特注品。坂井シェフが器店で偶然出逢った佐賀県の陶芸作家・川口武亮さんの作品に一目惚れし、すぐさまオーダーの連絡を入れたという。

包丁は、この道50年以上の名工・坂下勝美氏が手掛けたもので、日本刀のように美しい本焼のもの。黒檀(こくたん)、象牙、本花梨の瘤(こぶ)のスタイリッシュなデザインで、七角形の持ち手が坂井シェフの掌に馴染む。横幅1.2mもの大きな銀杏のまな板は、開店祝いにと坂下氏がプレゼントしてくれたものだ。

周囲への感謝の想いが、もてなしの心に変わる

「大学卒業後にスタートした分、人より出遅れている」と話してくれた坂井シェフだが、そのハンデをすっかりカバーするほど、一品一品の料理もおもてなしも愛情に満ちている。それどころか、応援してくれている大勢の人への感謝の気持ちを忘れず、一人ひとりからの愛を素直に受け取り、その愛をお客へと還元し続けている点にも脱帽だ。

一度の来店でも身に染みるほどの大きな愛ゆえ、ぜひともお店に足を運んで、坂井シェフの料理とおもてなしのあたたかさを体感してほしい。


撮影:岡崎慶嗣


【メニュー】
コース 5,000円から予算に応じて
※本記事に掲載されたメニューは、すべて5,000円程度のコースに含まれたものです。メニューはその日の食材によって変わります。その他、アラカルトメニューの用意もあります
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

igora(イゴラ)

住所
東京都世田谷区奥沢6-22-10 ハルシェール自由ヶ丘1F
電話番号
050-5488-0473
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月・火・木~日
ディナー 18:00~22:00
(L.O.21:00)
定休日
水曜日
年末年始(2020年1月6日~2020年1月9日)
毎週水曜日+不定休2日ほど
ぐるなび
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公式サイト
https://www.facebook.com/igora_okusawa-374171313125300/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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