未来を担う若手料理人たちが東北の食文化と郷土料理の豊かさを再発見!【日本博レポート】PR

2021年03月26日
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未来を担う若手料理人たちが東北の食文化と郷土料理の豊かさを再発見!【日本博レポート】PR
Summary
1. 若手料理人の精鋭が集う『CLUB RED』が、日本の美を発信する『日本博』とコラボレーション!
2. 日本の宝! 食文化の豊かさと知恵が詰まった東北の郷土料理を再発見し、その魅力を発信
3. 若き料理人が考える、未来に伝えたい“次世代の郷土料理”とは

郷土料理の魅力を未来に発信するイベントを開催

四季折々の豊かな自然に恵まれた日本には、それぞれの地域の気候風土や歴史、文化に育まれてきた多彩な郷土料理がある。
“昔からあるもの”として埋もれがちな郷土料理。その魅力を再発見し、“次世代の郷土料理”に昇華し、未来に発信するプロジェクトに若き料理人たちが挑んだ。

文化庁と独立行政法人日本芸術文化振興会が主催する「日本博」(*1)の一環として行われた「日本博×CLUB RED 日本を旅するダイニング in 東北」だ。

舞台となったのは、東北、山形県庄内地方。参加したのは、日本最大級の料理コンペティション『RED U-35』で、優秀な成績をおさめた若き料理人たちが集うクリエティブラボ「CLUB RED」(*2)に所属する、東北ゆかりの料理人6名からなるスペシャルチーム。和食や中華、フレンチ、イタリアンと異なるジャンルの精鋭が集まった。

またオブザーバーとして、RED U-35総合プロデューサーの小山薫堂氏、RED U-35審査員の狐野扶実子氏、国立民族学博物館名誉教授の熊倉功夫氏のほか、舞台となった鶴岡市で活躍する料理人3名が加わった。

■CLUB RED料理人
成田陽平氏(青森県弘前市出身/日本料理/『菊乃井 本店』京都府)
酒井研野氏(青森県黒石市出身/日本料理/『研野』京都府)
菅田幹郎氏(岩手県遠野市出身/イタリア料理/『おのひづめ』岩手県)
早川光氏 (秋田県鹿角市出身/イタリア料理/『XEX 東京 Salvatore Cuomo Bros.』東京都)
廣川拓渡氏(新潟県新発田市出身/フランス料理/『イーストギャラリー』東京都)
福嶋拓氏 (山形県米沢市出身/中国料理/『chinois蓮歩』埼玉県)

■オブザーバー
小山薫堂氏(放送作家/RED U-35総合プロデューサー)
狐野扶実子氏(食プロデューサー/RED U-35審査員)
熊倉功夫氏(国立民族学博物館名誉教授)

■サポーター
齋藤翔太氏(山形県鶴岡市出身/日本料理/『庄内ざっこ』山形県)
有坂公寿氏(秋田県角館町(現仙北市)出身/フランス料理/『ポム・ド・テール』山形県)
五十嵐督敬氏(山形県鶴岡市出身/イタリア料理/『ブランブラン・ガストロパブ』山形県)

“学び”、“探る”を経て、新たな郷土料理の創造へ

チームでは、「Labo#1勉強の会」、「Labo#2探訪の会」、「Labo#3試作の会」と郷土料理をより深く知り、その成果をコース料理として表現するためのラボを実施。

「Labo#1勉強の会」では、和食のユネスコ無形文化遺産登録に尽力した、国立民族学博物館名誉教授・熊倉功夫氏に登壇いただき、郷土料理について学んだ。

そして1回目のラボでの知識をもとに、「Labo#2探訪の会」として、舞台となる山形県鶴岡市を訪問。山や川、平野、海といった多様な地形から生まれる、多彩な食材に恵まれた鶴岡市は、まさに食材の宝庫。2日間に渡って、郷土料理に使われる食材や調理方法、保存法などに実際に触れ、知識を深めた。

目指すゴールは、これまでの学びや体験をベースに、東北の郷土料理の魅力をコース料理で表現すること。「Labo#3試作の会」では、オブザーバー2名も参加し、料理人各々がチャレンジした一皿からなるコース料理の試食会を実施。さらなるブラッシュアップを目指して、様々な意見が熱く交わされた。

次世代に伝えたい宝、日本の郷土料理の魅力とは

3つのラボを重ね、料理人6名が一体となり、ついにコース料理が完成。その全貌がRED U-35公式WEBサイト内の『日本を旅するダイニング in 東北』ページで公開されている。

チームのリーダーを務めたのは、京都『菊乃井 本店』の成田陽平さん。青森県出身の成田さんは、フランス料理の道を志すも、修業のために訪れていたパリで、『菊乃井 本店』の店主・村田吉弘氏と出会い、日本料理の世界に入ったという異色の存在だ。

成田さんは、郷土料理は、未来に伝えていきたい日本の宝だと強調する。

「日本は、南北に長く気候風土も様々です。同じ東北でも、私の出身の青森と、舞台となった山形とでは文化も違い、郷土料理も異なります。けれど、作物を塩蔵したり、干物にしたりするなどの厳しい冬を乗り切る知恵が、郷土料理にたくさん詰まっているのは同じです。その土地の自然や、人々の暮らしに根付いた郷土料理は、日本の宝だと思いました。地域固有の食材と共に、郷土料理の文化を未来につなげていきたいですね」

さて、異なるジャンルの料理人が集い、1つのコースを作り上げるには、多くの試行錯誤と葛藤があったという。

「一番大事にしたのはテーマです。それぞれのジャンルのよさを生かしつつ、一貫性のあるメッセージを伝えたいと思いました。テーマは『出羽三山の過去、現在、未来』。山形県村山地方・庄内地方に広がる出羽三山は、それぞれの山が過去、現在、未来を表すとされ、3つの山を巡ることを“生まれかわりの旅”と呼びます。過去から受け継がれてきた郷土料理を、現代の料理に生かし、未来に伝えていく。そんなコースを目指しました」(成田さん)

では、さっそく各料理人が作り上げた一皿を紹介していこう。

ふっくら身も心も温まる椀物に感動

成田さんが担当したのは、コースの一皿目「寒鱈うずみ豆腐椀」。山形には、寒ダラを骨ごとぶつ切りにして、鍋に入れて煮込む「どんがら汁」という郷土料理があるが、この料理をベースに、豆腐の上からお粥をかけるという京都の郷土料理「うずみ豆腐」のアイデアを取り入れた。

椀種は、寒ダラの白子を裏ごししたものに、クズを入れた白子豆腐。だしは、タラのアラから取り、タラのくせを和らげるために白味噌を加えている。だしと、米を粥状にやわらかくしたものと合わせ、豆腐の上からかけている。

薬味に添えているのは、山形の在来野菜、庄内あさつきと、特産品の岩のり。シャキシャキとした食感とピリッとした辛みが、小気味よいアクセントだ。

「最初に供する料理なので、寒い季節、お客様に温まってもらおうと考えました。寒ダラは東北の冬の貴重な栄養源で、山形だけでなく、秋田や青森にも似たような料理があります」

成田さんは、寒ダラを余すところなく使うため、だしを取った後のアラを身だけほぐして、山椒の実と炊き合わせて、ご飯にぴったりの「鱈ちりめん山椒」も作った。

春の気配を感じるビジュアルの美しい前菜

2品目を担当するのは、成田さんと同じ青森県出身で、日本料理を専門とする酒井研野さん。『菊乃井 本店』で10年修業した後、京都の中華の名店『京、静華』で、中国料理の古典から日本料理の原点を探り、今春独立し日本料理『研野』を開業した。

酒井さんが作ったのは、春をイメージした冷たい前菜「春を待つ」。日本各地の郷土料理で使われている鯉を造りにし、山形の在来野菜である宝谷かぶのシャーベットを雪に見立て、鯉にふんわりかぶせ、ツクシなど春の野草を添えている。

「鯉は、昔は郷土料理では煮物で食べられることが多かったのですが、現代は流通が発達して、鮮度の良いものが手に入ります。滋味深く、清らかな味わいに驚かされます」

視察に訪れた鶴岡で、印象的だったのが宝谷かぶの生産者だったという。

「ご高齢にもかかわらず、収益になりにくい宝谷かぶを、日本で唯一守り育てていることに感銘を受けました。収穫は秋になるのですが、どうしても使いたかったため、すりおろして冷凍保存し、料理にはシャーベット状にして使用しました」

山形の代表的な郷土料理「芋煮」を中国料理仕立てに

3品目には、中国料理を専門とする福嶋拓さんの料理が登場。福嶋さんは、今回舞台となった山形県出身。中華料理の名店『Wakiya一笑美茶樓』で修業した後、独立し、川越市で『chinois蓮歩』をオープンした。

同じ山形でも、出身の米沢市と鶴岡市では、使う食材や味付けなどに違いがあり、新鮮に感じたという福嶋さん。山形の郷土料理「芋煮」を中国料理として再構築し、温かい前菜「中国式芋煮 庄内風」を提案した。

ベースにしたのは、獅子頭(シーズートウ)という肉団子の中国料理。芋煮に使われる里芋と豚肉で団子を作り、中には、視察で訪れた「三井農場」の鴨のレバーをコンフィし、レバー味噌にしたものを詰めている。ショウガと白味噌を合わせ、やわらかくした里芋でとろみをつけたものを、ソースとして添えている。

「舞台となる鶴岡市に合わせて、味噌味の芋煮にこだわりました。芋煮は、身近な存在で、私自身、小さい頃から毎年、芋煮会に参加し、楽しい思い出がたくさんあります。同じ郷土料理なのに、味付けや食材が異なることが興味深いですね」と福嶋さん。

庶民的な郷土料理が洗練されたイタリア料理へと変身

「今回のプロジェクトを通して、知らなかったことをたくさん学びました。」と語る早川光さん。秋田県出身で、現在、洗練されたイタリア料理が評判の名レストラン『XEX 東京Salvatore Cuomo Bros.』で料理長として腕を振るっている。

早川さんが担当したのは、4品目のパスタ「猪と庄内小麦のピチ イタリア風ひっぱりうどん」だ。

「山形県には“ひっぱりうどん”という郷土料理があります。イタリア料理にも、うどんとよく似た配合の“ピチ”というパスタがあります。“ピチ”もひっぱって、転がして練って作るんですよ。そのパスタ料理を東北の食材を使って、再構築してみました」(早川さん)

鶴岡市「叶野農場」で収穫された庄内産小麦を使用し、モチモチとした食感のパスタを作成。このパスタに、山形で獲れたイノシシを部位ごとに合わせて火入れし、煮込んだものを合わせている。トッピングには、煮込む際に使用した山形の日本酒に合うチーズを削ってかけている。日本の郷土料理が、イタリア料理に変身を遂げているのが見事!

山形のテロワールを表現した一皿

いよいよメイン2品が登場。魚料理は、フランス料理の廣川拓渡さんが担当。廣川さんは、新潟県出身。新潟や都内のホテルで研鑽を積んだ後、『イーストギャラリー』の料理長を務めている。

山形県の県魚、サクラマスで作った「サクラマスのミキュイ 蕗の薹のタプナード」。サクラマスはコンフィにし、絶妙な加減で半生(ミキュイ)状態に火入れする。このサクラマスを、さらにパートフィローという薄い生地で巻き、外側はパリッと、中はしっとりと仕上げている。ソースには、春の野菜、フキノトウと、庄内特産の「あみえび醤油」を使ったタプナードソースを合わせている。

「山形や鶴岡の自然の豊かさや景色、そういった山形のテロワールを一皿の中に感じていただければと思います」と語る廣川さん。今回のプロジェクトを通じて、先人たちの知恵に大いに学びがあったという。

「これからも様々な地方を訪れ、地元の食材や、郷土料理の知恵を学んで、料理に
生かしていきたいですね」

「三井農場」の庄内鴨を使ったメインの肉料理

メインの肉料理は、岩手県出身の菅田幹郎さんが担当。菅田さんは、地元岩手で和と洋の両方で修業を積み、現在は遠野市でイタリアンレストラン『おのひづめ』のシェフとして腕を振るっている。菅田さん自身で畑を耕し、実家の牧場で育った乳牛や肉牛を使い、地産地消にこだわった料理は、遠方からわざわざ訪れる人がいるほどの評判を呼んでいる。

メインディッシュの「山の香と鴨の形」では、菅田さんが選んだ「三井農場」の庄内鴨を使用。3カ月間じっくりとストレスなく育てられた鴨は、上質な脂と、うまみが強くやわらかな肉質が特徴。この鴨のよさを最大限生かしてシンプルにロースト。火入れするときに稲わらで薫香を付け、滋味豊かな味わいを深めている。

自身も牛を育てている菅田さんは、生産者の取り組みに共感できることを大事にしているという。
「三井農場では、鴨の飼料として山形の米を使っていました。ですから、米にフォーカスし、稲わらを使って、薫香をつけました。命と正面から向き合うことは、難しいことです。三井農場さんの鴨の飼育から、命に真摯に向き合う姿がひしひしと伝わってきました」

郷土料理には未来につながる知恵が詰まっている

料理のジャンルはそれぞれ異なるが、2020年9月から半年近くかけて、郷土料理を再発見し、その魅力を発信する旅を続けてきた6人の料理人たち。そして、彼らの活動を見守ってきた「日本博 x CLUB RED」の3人のオブザーバー。

そのうちの一人、和食のユネスコ無形文化遺産登録に尽力された、国立民族学博物館名誉教授・熊倉功夫氏は日本の郷土料理の重要性を強調している。

また、2人のオブザーバーに、今回の試みを振り返って料理人たちの取り組みや、これからの郷土料理について尋ねた。

『日本博 x CLUB RED』料理監修を務めた狐野扶実子さんは、食ジャーナリストや、料理プロデューサーとして世界中で活躍。『RED U-35』では審査員を務めている。

狐野さんは、今回のプロジェクトを振り返って、料理人6名がチーム一丸となって取り組んだことがプロジェクトの成功につながったと感想を述べている。また「郷土料理には未来へのヒントが隠されている」と語る。

「郷土料理には、現代の私たちが取り組まなければならない、SDGsのような課題へのヒントが隠されていると思います。その良さを昔のものとして懐かしむのではなく、今の私たちも楽しめる料理に再構築して伝えていく。今回の取り組みを通して、そのことを確信できたのではないでしょうか」

放送作家として斬新なテレビ番組を次々と世に送り出してきた小山薫堂さん。RED U-35総合プロデューサーでもある小山さんは、今回のプロジェクトの総合監修を務め、料理人たちが完成させたコースについて、その素晴らしさを絶賛した。

「全く違うジャンルの皆さんがタッグを組み、別々に料理を作ったのに、東北の郷土料理の魅力を伝えるという流れが、コースとして見事に表現できていることに驚きました。一方で、自分らしいストーリーや個性が表現できていることが素晴らしい!」

今回のプロジェクトの成果を踏まえて、さらなる発展を小山さんは期待する。

「今回、料理人の皆さんは、まるで宝物を探すような感覚で郷土料理に触れ、地元の人たちも気がつかなかったような魅力や可能性を引き出したかと思います。これからは、さらに食という舞台で、その地域の文化や芸術、エンタテインメントを食に取り入れて、発信できればと思います」と結んでくれた。

■日本博×CLUB RED 日本を旅するダイニング in 東北
【主催】文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、株式会社エヌケービー
【企画運営】RED U-35(RYORININ’s EMERGING DREAM U-35)実行委員会、株式会社ぐるなび
【後援】鶴岡市、鶴岡食文化創造都市推進協議会

*1 日本博とは
「日本人と自然」を総合テーマとして、日本全国で舞台公演や展示会を開催し、日本の文化芸術に流れる日本の美を国内外に発信していく“美と文化の祭典”
公式WEBサイト
https://japanculturalexpo.bunka.go.jp/

*2 RED U-35とは
新時代の若き才能を発掘するために、35歳以下のプロの料理人を対象に行われる日本最大級の料理人コンペティション。優秀な成績をおさめた料理人は、相互の交流を深め、経験や発信の場となる活動を行なっていく『CLUB RED』のメンバーとして登録される。
公式WEBサイト
https://www.redu35.jp/