恵比寿で今シーズン最後のウマウマウーなカキフライをいただく

【連載】クレイジーケンバンド小野瀬雅生の想う店・想う味 第11回 クレイジーケンバンドのギターにして、その食情報の確かさで多くのグルメなファンも持つ、小野瀬雅生さん。彼の愛する店、どうしても食べたくなる料理を教えていただく。

2016年03月03日
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恵比寿で今シーズン最後のウマウマウーなカキフライをいただく
Summary
1.フレッシュで軽いカキフライが絶品
2.鎌倉野菜や海老やパスタも!
3.恵比寿五叉路でオープン7年の人気店

私が子供の頃に住んでいたのは神奈川県横浜市港北区、母方の実家でした。母と祖父の二人暮らしだったところに、父が引っ越してきて同居すると云うスタイル。祖母は私が生まれる前に亡くなっておりました。その実家に建て増しをして、そこに父と母が住むようになり、そして私と弟が生まれました。

母は結婚前に百貨店専属のデザイナーをしており、結婚して退社後は父と子供服などの縫製をする会社を設立し、以前務めていた百貨店に製品を納めていました。祖父にしてみれば自分の娘がどこやらの馬の骨と一緒になって、出て行くのならともかくその馬の骨が転がり込んできて、庭に建て増しをして同居なんてよく受け入れたものだと思います。

食べたらスグに「ウマい」と感じるカキフライとは?

祖父は近所でも評判の変わり者で、近所付き合いも殆どせず、ゴミの中に目覚まし時計(勿論動かない)などが捨ててあれば拾って帰ってきて、物置に100個近くしまい込んでいるような人物。父親も本牧の米軍住宅に出入りして物資をどうのこうのしていた人物で、ラジオで聞いている音楽もポップスやラテンやジャズ。父もやっぱり変わっていました。そんな変わり者同士が一つ屋根の下に住むようになるなんて、関係性が微妙ですよね。私も子供心にその微妙さを感じていましたが、まあ子供ですから関心はもっと他にあって深刻には受け止めておりませんでした。

そんな微妙な関係が一瞬ほぐれたのが、父親が台所に入って料理をした時。どこでどう覚えたのか父親は料理の心得があって、当時としてはあまり家庭ではお馴染みでない天ぷらやフライなどの揚げものを作ってくれました。特に祖父が感心していたのがカキフライ。牡蠣の剥き身を買ってきて、小麦粉と溶き卵とパン粉で衣を付けて、油で揚げる。アツアツの揚げたてを頬ばると牡蠣の滋味が口の中に迸って、それはそれはウマかったのなんの。好き嫌いが多くて、変わった味のモノは頑として受け付けなかった子供の頃の私でも、これはたまらなくウマイと思いましたもの。もちろん祖父もこれはウマイと声を出してカキフライを次々と頬ばる。普段あまり感想や感謝を表さない祖父が、美味しかった、ありがとう、と口に出していたそのシーンを何故か鮮明に覚えています。それはもう40数年前の事。今の私はその当時の父親の年齢を遙かに上回って、祖父の年齢に近付いています。時は流れる。光陰矢のごとし、か。いやはや。

夏と冬のどちらが好きなのかと問われれば冬と答えます。暑い暑いと文句をたれても寒いとはあまり云わないタイプの人間です。冬には美味しいモノがいっぱいありますが、中でも牡蠣は大好物。今はさすがにやりませんが生牡蠣ダース単位食いとか盛大にやらかしていた時期も御座います。

生もイイですが焼いたのも調理したのもみんな大好きで、その極めつけはカキフライ。カキフライが美味しいお店は色々知っておりますが、この度ご紹介するのは東京恵比寿にあります『FISH HOUSE OYSTER BAR 本店』のカキフライ。

老舗洋食店の丁寧に仕事をされたカキフライの崇高さも大好きですが、こちらのフレッシュな牡蠣を使ったカキフライの絶妙な軽やかさには感心する事頻り。火が通る事で牡蠣の旨みが弓を引くように凝縮され、サクッと衣が口に解けると同時に海の豊かさの矢がヒュッと放たれます。シングルコイルピックアップのギターをフェンダーツインリバーブアンプに直結してバキッと鳴らした感じ。早い。ウマイと感じるのが凄く早い。ストラトキャスターよりテレキャスター。シンプルに鋭く早い。

カキフライの牡蠣にもシーズンがあって、この日に戴きましたのはコンディションがドンズバ。地球が生まれた時から歌い続けられている海のメロディーが私には聞こえました。決して幻聴ではありません。

牡蠣には赤ワインを

そして添えられたタルタルソースがまた絶妙。牡蠣の旨みをナイスアシスト。トワンギーなリバーブ。深くかけても味の輪郭がぼやけない。悶絶するほどウマウマウー。カキフライの若きチャンピオン、ここにあり。お相手はワインがイイ。赤ワインだと合わせにくいと申される方もいらっしゃいますが、私は牡蠣に赤ワインの取り合わせが大好き。渋みとかがクローズアップされるのが却って楽しみ。生でも焼きでもフライでも赤が好き。シャンパンもイイですけどね。どっちなんだ結局。

生牡蠣は云わずもがな。瑞々しくグラマラスな牡蠣がたっぷりスタンバイしています。すっきりしたのから濃厚なのまで。海の様々なメロディーのバリエーションをたっぷり堪能出来ます。ああ、シアワセ。たまりませんわん。

こちらのお店のもう一つのお気に入りポイントは野菜。月に7、8度ほど鎌倉に足を運んで仕入れて来るという香り高い鎌倉野菜のカラフルさ、力強さ、大らかさ。渋みも苦みも心地好い。大地のメロディーも身体にみなぎるような気分になります。

他にもシュリンプもチャウダーもパスタもリゾットもたまらなくウマイ。自分の身体が全部音楽になってしまったような満足感に浸れます。ブラボー。

『FISH HOUSE OYSTER BAR 本店』はオープンして7年。野球選手ならレギュラーポジションを取って働き盛りの中堅選手。これからもずっと応援します。美味しかったです! 御馳走様でした!

FISH HOUSE OYSTER BAR

住所
〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-3-11 Belle恵比寿M1F
電話番号
050-3462-0322
営業時間
月~金 17:00~24:00(L.O.23:00)(23時はお食事のラストオーダーとさせていただいております。) 土・日・祝 15:00~23:00(L.O.23:00)
定休日
不定休日あり
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/gaj7900/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。