東横線のグルメな穴場、元住吉にはパクチー好き垂涎の台湾料理の秘境があった

【連載】幸食のすゝめ #018  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2016年05月26日
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東横線のグルメな穴場、元住吉にはパクチー好き垂涎の台湾料理の秘境があった
Summary
1.横浜中華街のあの台湾料理店が元住吉に移転
2.台湾に行かずとも食べられる現地そのものの味
3.パクチー好きならたまらないパクチーの盛り

幸食のすゝめ#018、香菜の山には幸いが住む、元住吉。

「パクチー、平気ぃ?」。カウンター前の小皿を手に取りながら、店主の美(メイ)さんが先ほど入ってきたカップルに声をかける。ボーダーの彼が「はい!」と答えると、小皿いっぱいのパクチーがサービスでテーブルに運ばれる。中華系では香菜(シャンツァイ)、カレーの国ではコリアンダー、アジアではパクチー。八重山諸島の南に位置する温暖な台湾でも、清涼感と独特の風味を持つパクチーは代表的な香味野菜だ。わずか500円の至福、魯肉(ルーロー)飯の上にも惜しげなくパクチーが盛られて来る。

8年前、台湾から来日した美さんは、横浜中華街では珍しい台湾料理の専門店『生福園』に入店。シェフと共に厨房に入り、小学3年生の頃から覚えた台湾の家庭料理に腕を奮う。すぐに、中華街で最もネイティブな美味しさと称賛され、ほろほろと柔らかい大きな豚の角煮が載った魯肉飯は店の名物メニューになった。店オリジナルの極辛麺、ミルク麺も評判になり、全国各地から強者たちが駆けつけ、20倍や40倍に挑戦した。

数年後、店は元住吉に移転、やがて経営者が美さんに変わった時点で、店名も『台湾小吃 美(メイ)』に変えた。料理の味もさらに現地のものに近づけ、一切の日本的なアレンジを加えないメニューは口コミで少しずつ有名になって行く。台湾旅行で覚えた味が忘れられない日本人ばかりでなく、今では故郷の味を求めてくる台湾の家族連れも多い。台湾の屋台でしか食べられない臭豆腐も定期的に台湾に渡って仕入れてくるし、弾力と味が全然違うというキクラゲも台湾からの本場物だ。

近年、様変わりして、住みたい街の上位に突然ランクインした武蔵小杉の隣り駅、元住吉は不思議な街だ。東口は、ドロシーや臆病なライオン、ブリキの木こりたちのイラストが飾られた「オズ通り商店街」。関東では珍しい『ひらお』系の博多てんぷらや、数々の飲食店が並んでいる。一方、西口に出ると、今度は驢馬、犬、猫、鶏の可愛いブロンズ像に迎えられる。こちらは「ブレーメン商店街」、像はドイツのブレーメンにあるロイド・パサージュ商店街から送られた「ブレーメンの音楽隊」だ。そこから、歩くことわずか2分。今度は、完璧な台湾が待っている。

痺れた辛さの向うから訪れるオリエンタルな至福

台湾ビールか紹興酒を頼むと、なぜかお手製の糠漬けを出してくれる。冷菜四姉妹などの前菜を頼むと、すぐに美さんが満面の笑みでテーブルにやって来る。「辛いの好き?、この自家製の辣油付けるともっと美味しくなる、味変わるよ」。赤を通り越して黒に近い美オリジナル辣油は、花椒の香りが心地よく、ほんの少し加えるだけで劇的に味が変わり旨みを増す。でも、とてつもなく辛い。顔から吹出してくる汗を拭っていると、「辛いのダメなの?大丈夫?」と美さんが悪戯っぽい笑顔で話しかけてくる。その微笑みは、中村ゆりかや渡辺直美に通じる台湾ビューティ独特のキュートさだ。

そのまま台湾のラビリンスに迷い込む元住吉の一夜

バイミーシーやホンーミーシー、川七(チャンチー)、沖縄でオオタニワタリと呼ばれる山蘇(サンスー)など、その季節にしか味わえない台湾野菜は国内の契約農家から取り寄せている。シンプルな味付けなのに滋味深い味わいは、一度食べると癖になる美味しさだ。おなじみの大根餅やシジミ醤油漬け、もち粟を月桃の葉で巻いたチマキなど何かが微妙に違っていて、どれを食べても抜群に旨い。

魯肉飯に麺やスープが付くセットも一日中980円という安さだ。夜になると、ダンシングリズムで酒を飲み、陽気に話し、よく笑う美さんの人柄に惹かれて客たちが集まってくる。まるで、台湾の夜市に紛れ込んだような楽しさ、台湾の民家にホームステイしたような優しさ。『美』、元住吉のリトル台湾、香菜の山には幸いが住んでいる。

<メニュー>

All Time Set 魯肉飯+肉そぼろ麺、キクラゲとネギ和え+汁なし麺、魯肉飯+野菜スープ、etc.980円
季節野菜炒め1,200円、水餃子600円、ミルク麺(2倍)1,000円(20倍~)1,200円
各種煮込料理800円、煮玉子100円、冷菜四姉妹980円

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。

※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら

台湾小吃 美(タイワンシャオチー メイ)

住所
〒211-0025 川崎市中原区木月1-33-21
電話番号
044-434-3423
営業時間
17:30~24:00、土・日11:30~14:30、17:30~24:00
定休日
定休日 火曜
公式サイト
http://seifukuen.jimdo.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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森一起
ライター/作詞家/ミュージシャン