池尻大橋のフレンチ『calme(カルム)』は何度でも行きたくなる大人の隠れ家レストラン

目黒区・池尻大橋にある“時のないフランス料理屋”『calme(カルム)』をご紹介。メニューはコース料理が基本、アラカルトはコースから抜粋されていますが、おすすめはなんといっても6皿で構成されるコース料理(4,900円)。有名フレンチレストランで修業を積んだ実力派シェフの本場のフランス料理をカジュアルに味わえます。時、空気、人、料理、ワイン、すべてがすばらしいので、足繁く通いたくなります。

2016年09月07日
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池尻大橋のフレンチ『calme(カルム)』は何度でも行きたくなる大人の隠れ家レストラン
Summary
1.目黒区大橋にある“時のないフランス料理屋”『calme(カルム)』(池尻大橋)
2.フレンチの要、ソース作りを得意とするシェフの才能あふれる料理とは?
3.コンダクターのワインとシェフの料理のマリアージュが起こす化学反応がすごすぎる!

時が止まったかのように心地よく、良い“気”がめぐるフランス料理屋

喧騒を忘れさせるくらい穏やかな時間が流れる一角がある。氷川神社からの澄んだ空気が立ち止まってくれる気持ちの良い場所、そこに『カルム』が店を構える。

店に入ってひと息つくと、なぜかここだけが別世界のような不思議な感覚に陥る。そう、まるで時が止まったようだ。窓から見えるのは中目黒へ続く道、テールランプの流線型を眺めながら聴こえてくる心地良い音楽に心を委ねてみる。

カウンターの向こうでは、おいしそうな音と匂いが立ち込めるキッチンで無駄な動きひとつせず、シェフが料理を作っている。そこへ「食前酒は召し上がりますか?」と店主がメニューを持ってきた。

まずはシャンパーニュを頼む。メニューを見るとコースが基本、アラカルトはコースから抜粋されている。オーダーをしてから料理を待つ間、店主である佐野敏高氏に話を訊いてみることにする。

日本屈指のグランメゾン『アピシウス』でシェフ植松裕喜氏と出会い、フランス料理とワインが織りなす一期一会を一緒に作っていくことになった。そして、都会の激動の中にある凪という意味を持つこの店をオープンしたそうだ。

才能あふれるシェフが作るのはキャリアを生かして先を行く料理

今回は4品をオーダー。はじめにきたスペシャリテである「名物 美味豆乳のブランマンジェ オマールのコンソメゼリー ずわい蟹と雲丹」が絶品だ。

偶然に出逢えたと言う臭みがまったくしない豆乳、甘いニュアンスはゼリーにしたオマール、ずわい蟹、雲丹から、それに対比するようにピリリと効いた西洋山葵がアクセント。“極上の味わい”という言葉が頭をよぎる。

修業先であった『アピシウス』のスペシャリテへのオマージュでもあるこの料理が名刺代わりとは! シェフの計り知れない才能を感じずにはいられない。

合わせたのはオーストラリアのヤウマという生産者の「無理しないで」というネーミングのワイン。本当に日本語で書いてあるのが面白い(漢字の書き方が微妙ではあるが)。飲んでいて優しさにあふれ、そこからうまみを引きだしてくるところが、食感は柔らかいけれど主張がある雲丹に似たものを感じさせる。

またライチの香りで甘いかと思いきや意外にもキリッとしていて、そのギャップに驚かされるところは西洋山葵に通ずる。相当な褐色だが抜栓した直後は澄んでいるそうだ。2日くらいおいて緊張を解くと褐色になり、香りも開いて飲み頃になる。このメッセージ性が最初に一杯にはもってこいだ。

フレンチの世界では野菜が主役の皿が少ない。そこで考えたのがこの「夏野菜のエチュべ コリアンダーの香り」だ。いわゆる蒸し煮なのだが、いちばんの決め手は火入れ。一歩間違えるとクテクテになり、食感のコントラストがなくなってしまう。切り方を変え、火にいれるタイミングをずらすことによって見事にまとめあげている。

そして足りない油脂分はフロマージュブランで補う。エシャロットとハーブを加え、香り高いソースは単調な味の野菜を飽きさせることがない。

関西の食材というイメージが強い鱧を東京のフレンチに取り入れるのも斬新。魚は食材の中で季節感があるので“夏”とわかる鱧を選んだと言う。鱧といえば湯引き。いかに和の食材をフレンチに転換するかが勝負なので、魚のアラでとっただしでゆっくり泳がせ皮目のゼラチン質を引きだした。

体に良いものをとソースはモロヘイヤ。ネバネバした濃い味が鱧によく合う。さらにベルモットをエシャロットとマッシュルームで煮詰めたものに、魚のだしと生クリームを加えて泡立てたソースで周りを覆い、ふんわりした印象をつける。このソースが素晴らしい!

ふわふわの泡なのに味と香りがしっかりと立っている。鱧の骨切りも完璧! シェフが和食出身かと間違えそうなくらいだ。

2杯目のワインにはフランスはブルゴーニュのアリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールの「シャブリ ヴァンダンジャー ムスケ 2012年 マグナム」を。

透明感、温かさ、ガラスのような美しさがあり、喉を通る時はスルリと行くがあとで香りがふわりと戻ってくる。鱧も淡白だが後でうまみが広がる。そこにこのワインを飲むと鱧の味が一気に変わるのである。からだにスッと入ってくるので飲んでいて疲れない。1杯目と同様、このマリアージュにも優しさを感じる。

ところでこのグラス、底の形が変わっているのがわかるだろうか。株式会社 樹の「樹オールマイティグラス」である。これで飲むとワインの輪郭が崩れるそう。つまり“こういう味だよね”っていうイメージが覆されるのだという。

どういう効果があるかというと、ワインの味が不安定になった分、料理の味が安定する。合わせて初めて成立するといった、まさにマリアージュを堪能するグラスなのである。

メインの豚は2種類の部位を使っている。新潟県 もち豚の「バラ」は白ワインとブイヨンでブレゼ(煮込み)している。皮付きの豚はゼラチン質が多くとろんとしてコラーゲンがたっぷり。対する沖縄県 アグー豚の「モモ」は筋肉がしまり噛みごたえ十分。異なる食感を楽しめる皿だ。

遠火でゆっくり火入れするためしっとりと仕上がり、それぞれ肉本来の甘みとコクが際立つ。また、添えた沖縄の野菜の茹で汁で溶いたマスタードソースがただものではない!

白ワインにフォン・ド・ヴォーを加えマスタードの辛みで逆に甘さを引き立たせているのである。本当にソースが得意なのだと納得した。

同じ志を持つシェフとコンダクターの完璧なマリアージュ

すべての皿にいえるのはとても手が込んでいるということ。見た目がシンプルであっても、ひと手間もふた手間もかけて素材を輝かせている。

「クラシックを知った上で軽い表現にしている」とシェフ自身が言うように、フレンチの真髄を大切にしながら肩肘張らずに楽しめる料理なのである。メニューのインスピレーションはどこからくるのかと問うと、何を作りたいというのはあまりなく、この食材はこうやったら面白いかも?というイメージを作り、フランス料理の古典書などでその食材におけるテクニックの定義を確認してみる。そこから自分らしいアレンジをしていくのだそう。

「毎日同じコースを作ることで料理の精度をあげるのが僕にとって大切です」と言う植松シェフ。継続しておいしく出せるかどうかが重要なのだと。そうするには天候や客によって微調整が必要。だから同じ料理を作っている感覚ではないそうだ。

若きシェフは目指す料理のヴィジョンが確立しており、そのためには自分を縛らない。壁に突き当たった時には回り道ができるのだ。それが彼の料理の可能性をどんどん広げ、我々の舌を喜ばせてくれるのである。

非日常の中の日常が好きという佐野氏。フランス料理の芸術を日常の中に入れるといった新しい世界を創り上げた。奥の個室はちょっぴり謎めいた秘密基地、テーブル席からは都会の動いている借景を眺めながら、カウンターからはシェフが主役のライブ感あふれる舞台を観ながら食事ができる他に類を見ない場所。時、空気、人、料理、ワイン、すべてをまとめ美しい音を奏でるマエストロに次に訪れた時に言われる「おかえりなさい」。足繁く通いたくなる店ができた。

(メニュー)
コース(6品)/4,900円
名物 美味豆乳のブランマンジェ オマールのコンソメゼリー ずわい蟹と雲丹/1,200円
夏野菜のエチュペ コリアンダーの香り/1,000円
骨切り鱧のポシェ 冬瓜とノイリープラットの美しい泡/1,700円
豚バラ肉ともものブレゼ/1,800円
オーストラリア ヤウマ「無理しないで」/グラス900円
フランス アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール「シャブリ ヴァンダンジャー ムスケ 2012年 マグナム/グラス950円
※テーブルチャージ/600円
※価格すべて税抜

calme

住所
東京都目黒区大橋1-2-5 新村ビル2F
電話番号
050-5487-0230
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~金
ディナー 18:00~23:30
(L.O.22:00)


ランチ 12:00~15:00
(L.O.13:30)
ディナー 18:00~22:30
(L.O.21:30)
定休日
日曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/2pnv3p590000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。