【築地市場移転】現場の人が語る移転の問題点と、失いたくない築地の味

2016年09月07日
カテゴリ
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【築地市場移転】現場の人が語る移転の問題点と、失いたくない築地の味
Summary
1.築地市場移転まであとわずか! 移転問題について中の人に聞いてみた
2.観光地なだけじゃない! 築地の歴史と役割についておさらい
3.築地の中の人御用達『刺身Bar 河岸頭』の海鮮丼がお得&ウマすぎる

豊洲への移転を控えている築地市場。築地を取り巻く現状と今後の展望について、市場で働く人はどう考えているのか。東京都中央卸市場で、水産の仲卸業を営む株式会社丸健の代表取締役・梅澤浩氏に話を聞いた。

梅澤氏が代表を務める株式会社丸健(以下、丸健)は、マグロ以外の海産物を取り扱っている。高級魚のアマダイやノドグロをはじめ、アワビや本ズワイカニなど豊富な魚貝類が並ぶ。丸健はミシュラン三つ星店をはじめ、高級寿司屋やホテルを中心に海産物を卸していて、業界内では「丸健から卸してもらえるようになれば一流店」といわれるほど。多くの料理人から信頼を得ている丸健も、築地から豊洲に移転する予定だ。

■どうして築地は今、移転しなければならないのか

築地市場とは、東京都内に数箇所ある東京都中央卸売市場のひとつ。日本の食市場として、価格決定機能を持つ市場=建値市場の役割も担っている。築地市場のはじまりは江戸時代にさかのぼる。道路ではなく水路が大動脈とされていたころ、日本橋のあたりに魚河岸として建てられていた。その後、日本橋魚河岸が関東大震災の影響をうけたことにより、現在の場所に開場した。

築地市場は、開放型の構造のため気温や風雨の影響を受けやすく、衛生面が不十分と言った問題を抱えてきた。店舗あたりのスペースもかなり狭く、口に入れる食材を一時的に屋外に置かざるを得ない場所もある。また、建物自体の老朽化も問題視されていた。店舗が十分なスペースを確保でき、衛生的にも問題のない市場を作れる敷地面積があること、交通の便が良いことなどを考慮し、東京都が豊洲への移転を決めた。

開場予定の豊洲市場は、ゆりかもめの市場前駅が最寄りである。十分な広さの土地を保有し、搬入から搬出まで物流システム確立させて作業の効率化をはかる。「日本の食の心臓として、届けるべきところに海産物を適正価格で届けるのが築地市場の役目。加えて、きちんと整備されたところで食品を売り買いするのも、食の安心と安全を守るために重要なことと思う。築地移転は、時代の流れに沿ったものだ」と梅澤さんは語る。

■豊洲移転は未知数、仲卸業者からの不安の声も

しかしながら、仲卸業者の中では不安の声もあがっている。全体の敷地面積は築地の約二倍になるのに対し、店舗ごとの作業できるスペースが狭くなるのだ。築地市場は、店舗と店舗の間に仕切りがなく開放的な作りになっていたが、新しい市場では、店舗ごとに壁の設置があるという。各店舗への流し台の設置が義務付けられことも、スペースが狭くなる理由のひとつ。実際に、マグロなど大物の魚を扱う店ではスペースが足りず、包丁が引けないという悲鳴があがっている。

「移転に伴う仲卸業者の金銭的な負担もかなり大きい。移転の荷造りや新しい店舗の設備投資は個々で行なわなければならない。また、あまりメディアでは触れられてないが買い付けにくる客にとって豊洲という場所が遠いと言う問題もある。土地と働く人たちが合うか、移転先で今まで以上の商売ができるかは、移転してみないとわからない。ただ、現在のニーズに合った衛生的で安全な施設は、どのみち必要。これから先また100年続く市場を作っていくことが大切」と梅澤さんは語る。

■移転しない場外市場

80年続いた築地市場の歴史が終わるわけではない。場外市場の店舗は、そのまま築地で商いを続けていく。業務用の街として栄えた場外市場も、今では観光客が増加し、業務用の商品を小分けにして販売する店も増えた。また、寿司や海鮮丼など食事のできる店を増やしたり、買い物しやすい環境に整えたりなど時代とともに変化してきている。さらに10月には食の新スポットとなる『築地魚河岸(つきじうおがし)』がオープン。買った食材をその場で食べることができるスペースも作られる予定だ。
築地市場の移転が場外市場の飲食店に影響をあたえることは確かである。しかしながら、場外市場は築地の歴史を守りながら、新たに日本の食のスポットとして進化を遂げようとしている。

株式会社丸健も10月にオープンする新施設『築地魚河岸』に入店を決めている。「築地では食材と同様に、食のプロを相手に磨き抜いた技術も一緒に売る掛け合いの文化がある。場外市場でも、これからの日本の食文化に貢献していきたい」と梅澤さんは語る。

■築地歴25年の梅澤社長お墨付き! 築地で一番うまい海鮮丼が食べられるお店

築地で働く人も、私たちと同じように築地グルメを楽しむものなのだろうか。実は、信頼をおけるお店は限られているらしい。今回は、場外市場にある、梅澤さん御用達のお店『刺身Bar 河岸頭』に連れてきてもらった。場外に店を構えるこの店は、昼は丼もの、夜はコースのみの店。店主の橋本睦之さんは、もともと市場でマグロのセリや荷下しをしていた経歴を持つ。

■築地に来たら必食!コスパ上等の極上海鮮丼「築地場外丼」

丸健から仕入れたばかりの新鮮な魚を使った海鮮丼は、高級魚がふんだんに使われている贅沢な逸品。

丼は2段に分かれており、上段は市場で買い付けてきた海鮮が、まるで宝石のようにきらきらと輝いている。本日のネタの種類は、マコガレイ、黒ムツ、マカジキ、イサキ、タイ、サーモン、生シラス、白イカ、大トロ、ウニ、イクラ、ボタンエビ。ボリュームに思わず笑みがこぼれる!

下の丼は、鮮やかなちらし寿司となっている。酢はゼリー状にし、竹の器に別盛りとなっている。竹器の中にも大ぶりのエビ、ホタテ。これは、お好みでご飯と混ぜて酢飯としても味わえるという仕掛けである。「酢飯にすると魚のうまみを酢の甘みがかき消してしまう。なので、うちは海鮮丼を酢飯では出さない。まずは、そのままの魚のうまみを楽しんでもらい、途中からお好みで酢飯にして、ちらし寿司の風味を楽しんでもらいたいです」と店長の橋本さん。仕事柄、漁師めしのような豪快な料理を食べてきた橋本さんだからこそ、本当においしい魚の食べ方を知っている。

イクラは上段・下段の両方にふんだんに散らされている。大ぶりのボタンエビは、プリプリした新鮮な歯ごたえ。甘みの増したウニもこの丼でたっぷり味わうことができる。かなりのボリュームがあるが、魚のおいしさにノックアウトされ、小柄な女性でもぺろりと食べきってしまう方がほとんどだ。

多くの人が支えあい、長い信頼関係の中で築き上げられた築地の歴史。市場の移転問題も抱える中、場外は多くの店舗がそのまま残る。梅澤さんは、「豊洲移転後も築地には、『築地魚河岸』など新しい施設が建ちます。食文化としての『築地』の活気とにぎわいは継承し、未来に向けて再スタートですね」と笑顔で語った。
(取材・文/矢野詩織)

メニュー 
築地場外丼  3,240円(税込)

刺身Bar 河岸頭

住所
〒103-0000 東京都中央区築地4丁目12-2 ライオンズマンション東銀座 B1階
電話番号
03-6383-4597
営業時間
11:00~14:00、18:00~23:00(料理L.O. 23:00 ドリンクL.O. 23:00)
定休日
定休日 無休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/rpv2dzem0000/
公式サイト
https://kashigashira.fjtec.co.jp

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