フレンチ界の偉才 渡辺雄一郎シェフが通う「看板のない酒場」

【腕利き料理人が通ううまい店】世の食いしん坊たちを魅了する腕利き料理人こそ、選ばれし生粋の食いしん坊。好奇心を刺激しに、疲れた身体を癒しに通う店には、間違いない味と心意気がある。料理人から料理人へ、バトンを受け継いでとっておきの一軒を追う。

2018年01月17日
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フレンチ界の偉才 渡辺雄一郎シェフが通う「看板のない酒場」
Summary
1.『ジョエル・ロブション』から自身の店『Nabeno-Ism』へ。第1話は、フランス料理に情熱を注ぐ渡辺雄一郎シェフが通う店
2.日本各地の酒場を食べ飲み歩いた大野尚人さんが理想の酒場を具現化
3.必ず飲むレモンサワー、歯切れのよい肉やわさびの効いた煮穴子、そして〆の一品まで。洗練された味に舌鼓

連載 第1話:『Nabeno-Ism』渡辺雄一郎シェフが通う店

料理人から料理人へ、バトンを受け継いでとっておきの一軒を追う連載【腕利き料理人が通ううまい店】。

初回を飾るのは、2016年、満を持して自身の店『Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)』を立ち上げたフランス料理シェフの渡辺雄一郎氏。初版『ミシュランガイド東京 2008』以来連続で三つ星に輝き続ける『シャトーレストラン ジョエル・ロブション』を守り続けてきたその腕は、東京浅草・駒形という地と融合し、新たな世界を生み出している。プライベートでは、いったいどんな店に通うのか。聞くと出てきたのはバーのような酒場というから驚く。渡辺シェフを唸らせる秘密とは?
ここからは渡辺シェフ自らに語っていただきます!

店名のない入り口。その向こうに美味なるものが…

店の場所は門前仲町。母校の辻調理師専門学校に講師として伺ったとき、同期の教授に勧められたのがきっかけでした。同業者の紹介は確かですからね、早速行ってみたら「なんだこれは!」と衝撃が走りました。酒もつまみも、いちいちおいしくて…。聞いてみると、オーナーの大野尚人さんは酒場好きが高じて料理を勉強し、自身が考える大衆酒場を現実のものにしたというからすごい。食べる人の視点で考えられているから、どれも間違いないんです。

ここは大野さんが開いた2つ目のお店『酒肆 一村(しゅし いっそん)』。ビルの2階にあって、看板はありません。では中に入りましょうか。

▲木の厚い扉を開いて進んでいくと、赤いスツールが印象的な、ほどよい大きさの空間が現れる。

店に入ると、カウンターの奥で粛々と仕事をされている大野さんの姿が目に止まります。仲間と来ることもありますが、仕事帰りにふと立ち寄るときはカウンターへ。まずは「レモンサワー」の「名代(なだい)」を注文します。このレモンサワーがすごくおいしい!

5種類あるジンベースのレモンサワー。この味に逢いたくて

『酒肆 一村』の看板ともいえるレモンサワーは、「名代」「塩味」「甘味」「辛味」「苦味」の5種類あって、僕はまず「名代」を飲みます。ジンベースで、トニックウォーターや炭酸水、レモン果汁などが絶妙な配合で注がれ、仕上げにレモンの皮をひねって香りづけ。そのフレッシュな香りとキリッとした飲み口が最高なんです。氷の大きさも、グラスとのバランスだけでなく、飲み終わる時間まで計算されていると思います。続く2杯目は酒粕塩を使った「塩味」がお決まり。では、つまみを頼んでいくとしましょう。

極めた加熱術で、肉のうまみを最大限に引き出す

『酒肆 一村』のつまみは50種以上あります。このラインナップを常に準備されているのもすごい。今回は、悩みに悩んで3つをセレクトしました。

甲乙つけがたいけれど第3位は「カツサンド改(豚カツ)」(写真上)。

この肉の火入れは、極めに極めた加熱術だと感じます。肉のおいしさもそうですが、サクッと歯切れがいいんです。肉の厚みは2.5cmほど、薄めの衣でじっくり二度揚げしているそう。丁寧な仕事です。

僕は手前から食べ始めて、最後に甘くまろやかな脂身を味わいます。肉のうまさを引き立てる、主張しすぎない無添加ソースも大野さんのこだわり。レモンサワーとの相性もいいし、添えてあるぶ厚いガリも味の切り替えをしてくれて、ふた切れペロッといけます。

食べ手の気持ちに寄り添った、シンプルなつまみ

第2位は「煮穴子塩ワサビ」(写真上)。煮穴子は寿司屋や日本料理店に代表される品ですが、ちゃんとしたものが酒場で食べられるのが嬉しいです。

まず、素材の選び方がすばらしい。ほどよい大きさで、聞くと1尾200g程度のものを仕入れているとか。そして、「これを味わってほしい」というシンプルな盛り付け! フランス料理のそれとは別物だけれど、頭の中がリセットされるというか、おいしいもののあるべき姿を考えさせてくれるんです。

食べるときは、尾のほうと厚みのある部分を交互に、風味や食感の違いを楽しんでいきます。添えてあるわさびがこれまた良くて、フレッシュな香りと、切れ味のよい辛さがにくい。こだわった素材を厳選されていると思います。大野さん曰く「何を食べて欲しいか、食べ手にシンプルに伝えたいので、余計なものはできるだけ削ぎ落とします。あと、自分は『味を切る』と表現するんですが、わさびなど味をスパッと変える素材を添えることが多いです」とのこと。食べ手の気持ちに寄り添う大野さんの姿勢、いつも刺激になります!

そして次は第1位。お互い地元が千葉だから、この料理にたどり着いたのかもしれません。素材のポテンシャル、初心を思い出す仕事ぶり。〆を飾る1品です!


※『酒肆 一村』大野さんに『dressing』プレミアム読者限定のご来店時特典を特別にご用意いただきました!

渡辺シェフが最もお勧めしたい、気になる第1位の料理とともにチェック!

第1位は…!

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須永久美
ライター