大注目の「ハイエンド日本酒」がこれ! 【酔鯨(すいげい)初の泡からロンドンIWC金賞作品まで】

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#海外を目指す「プレミアム日本酒」

2018年11月19日
カテゴリ
コラム
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  • 日本酒
大注目の「ハイエンド日本酒」がこれ! 【酔鯨(すいげい)初の泡からロンドンIWC金賞作品まで】
Summary
1.日本酒の海外への出荷量は7年連続で過去最高を更新!
2.「酔鯨」が発信し続ける「日本酒ハイエンドシリーズ」とは?
3.「酔鯨」の新作「日本酒」がすばらしい【酒ナビゲーター】

海外を目指す「プレミアム日本酒」の世界【酒ナビゲーター・岩瀬大二】

以前、当コラムでも紹介したように、現在、日本酒の世界は面白いトピックスがたくさんある(こちら)。

造り手の世代交代による新しい息吹や、地元の米にこだわるテロワール回帰、品質向上による生酒の流通といった造り手・送り手の努力、クラフト的な日本酒にこだわる飲食店やクールなネオ角打ち、利き酒放題店、各国料理とのコラボレーション、様々な日本酒イベントといった飲む側の楽しさの拡大もある。とても元気、という印象は強い。

しかし、数字は残酷だ。国内の日本酒需要は、近年半分以下に減っているという深刻な状況にある。また国内においてはビール、発泡酒、缶チューハイなど新ジャンル、焼酎、ワイン、ウィスキーその他すべての酒類の中で日本酒が占める割合はわずか6%だ(2016年酒類課税移出数量:国税庁)。

国酒だった日本酒は選択肢の中のひとつにしかすぎない。健康志向の高まり、若年層・高齢層問わずに酒もライトな嗜好へのシフト、食の多様化、昭和の時代から一部残る日本酒の悪いイメージなど原因は複合的だ。

僕は日本酒関連の記事も多く書いてきたし、ワイン学校で日本酒の講座を受け持っていた。そこでの「実感マーケティング」としては、ワイン好きからの日本酒への関心は高まっていて、トピックスも豊富、イベントの集客もいい。イメージも良化しているだろうし、造り手に取材をしても意欲に満ち溢れている。だから、もっと数字に跳ね返っているのかと思っていたが、量という意味では実感と離れたものになっていた。

このまま市場は収縮してしまうのだろうか? いや、造り手たちの意欲や新しい風が反映されている市場がある。海外のマーケットだ。海外への出荷量は、7年連続で過去最高を更新しているのだという。輸出先でみるとアメリカを始め、欧米諸国での伸びもいい。これは世界的に和食が受け入れられているという状況とセットで考えるとわかりやすい。

なぜ日本酒が海外で売れているのか?

今まで、海外において和食といっても日本の資本でもなくイミテーションに近い和食屋が多く、そこには本物の職人がいるわけでもないし、技術や精神を伝授されたわけでもない。本質があってのローカライズや創作なら全く問題ないし、むしろ新しい世界が開けて結構なのだが、実態は残念なものだった。

それが最近では、日本発の和食店が増え、また各国のファインダイニングで和食のスタイルや哲学を反映したフュージョン料理やこれを取り入れて進化する料理も増えてきた。そうなれば、ペアリングとしてはちゃんとした日本酒が求められるのは必然だろう。

実際、取材などで海外を訪問すると、日本酒について質問を受けることが多くなった。また、来日するワイン生産者やソムリエたちも同様だ。僕の名刺、海外の方向けの英語版には、ワインの他に「sake」という文字も入っているが、これに反応する方が多い。造りの話から楽しみ方までみなさん熱心に聞いてくれる。そしてこちらからも逆に質問をしたり、一緒に酒を飲んだりすると大体彼らの好きな傾向が見えてくる。彼らにとってはワインも日本酒も同じ土俵……いやステージか、そういう存在になりつつある。

高知の『酔鯨酒造』の日本酒「ハイエンドシリーズ」とは?

その好機を全国の酒蔵で捉えている人々がいる。高知の代表的な酒蔵である『酔鯨酒造』もそのひとつ。高知という地名だけで、勇躍(ゆうやく)世界に打って出ようという野心を感じる方もいるだろうが、僕の中では、高知の酒が今のワイン的な日本酒のイメージとは合致していなかったので、意外に感じた。

高知といえば淡麗辛口。典型的といってはなんだが昔ながらの日本のお酒の代表、その牙城(がじょう)のようにさえ思っていた。もちろんそんな古いイメージはここ数年、高知のいくつかの酒蔵の造る酒を味わって、僕の考えも変わってきていたのだが「酔鯨」となれば話は別だ。高知の酒場で高知名物の「どろめ」(いわしの稚魚)や「チャンバラ貝」(マガキガイ)にもちろん分厚いカツオのたたきを堪能しながらぐいぐいあおる、そこにはやっぱり「酔鯨」がなくちゃ。

もちろんその文化は大切にしながらも「酔鯨」ブランドは世界の市場を目指した。『酔鯨酒造』の大倉広邦社長(写真上)はこう宣言する。

「私たちは、世界中が注目する2020年東京オリンピックに向けて、国酒である日本酒を現代のライフスタイルに合わせた新しい表現方法で、もっと国内外に日本酒のおいしさ・楽しさをPRできないかという想いで、日々新たな酒造りを行っています」

その新たな酒造りを代表するのが、世界戦略品と位置付ける「ハイエンドシリーズ」(写真上)だ。大倉社長のキャリアは、ワインと日本酒、焼酎を同様に扱う日本を代表する酒店のひとつ『横浜君嶋屋』からスタート。その後大手ビールメーカーでも働き高知に戻ってきた。世界と別の酒と都会での酒の飲まれ方などの動向はしっかりキャッチされている。そこからの発想が「ハイエンドシリーズ」には反映されているのだろう。

「酔鯨」初の泡からロンドンIWC金賞作品まで、大注目の日本酒がこれ!

去る10月26日、恵比寿の閑静な住宅街に1,100坪もの広大なガーデンを望むフレンチレストラン『Q.E.D.CLUB』。2018年のお披露目となった「SUIGEIE.S.L EVENT」という、年に一度の新商品の発表と新作の日本酒に合わせた料理とのマリアージュを楽しむ会に参加し、その心意気を感じてきた。

「酔鯨」の地元・高知から取り寄せた厳選素材を、『ミシュランガイド』で二つ星に輝いたフレンチの名店出身の大村龍一郎シェフが、約3カ月間の準備を要し、「酔鯨」とフレンチのマリアージュを行うという。期待感と共に、好奇心も高まる。

肝心の日本酒だが、ここでお披露目されたのは新作の3酒。

まず、「酔鯨」初のスパークリング コンセプトモデル「Drunken Whale Spark-RED」(写真上・右)。赤い鯨のしっぽがアイコン。洋食とのマリアージュを楽しめるスパークリングを目指したが、その工夫の結果は意外なもので、高知産のトマトを加え酸味をもたらすという。

これは僕も常々思っていたことだが、日本酒のスパークリングはどうしても甘みが重く出てしまう傾向にあって、酸味が出てこない。泡なのにバランスとしては重い方向にいくのだが、これをトマトというアイデアで鮮やかにクリアした。まだまだコスト面などで課題は多いと正直なところを話してくれたが、期待していい作品だと感じた。ハーフボトルで発売予定で、これはカップルが2杯程度ずつ飲みきれる手軽な量とのことで、こういうコンセプトがちゃんとあるのはうれしい。

2つめは「純米大吟醸 弥」(写真上・左)。赤いラインの鯨のしっぽがアイコン。720mlで7,000円(税別)とブルゴーニュの白ワインのある程度のクラスとコンペになる価格帯だ。アロマティックで華やかさをまとった作品で、カニやエビを使った素材の甘みとからめたい料理や白身魚系の料理でも甘みやコクのある料理との相性も良さそうだ。

この日は、ゴマサバをメインに新高梨と燻りがっこという複雑なうまみの料理(写真上)だったが、あわせると軽やかに感じた。兵庫・山田錦でもこういう表現ができるのかと感心。爽やかな中にも濃密なフルーツも感じられる。グラスはしっかりしたものではなく、薄はりのシャルドネグラスだとより繊細な官能という相反する面白さが感じられるかもしれない。

3つめは「Premium 純米大吟醸 DAITO 2018」(写真上)。2018年ロンドンIWC(インターナショナルワインチャレンジ)で金賞受賞。国際的な評価を手にした作品だ。兵庫の山田錦の中でも特別な区画で栽培された米を使用し、「酔鯨」の持つ技術を駆使して仕上げたという。

中身はもちろんだが外観にもこだわった。他のアイテムが鯨のしっぽのアイコンなのに対して、こちらは豪華で緻密なゴールド。デザイン&ディレクションは、世界的な金箔アーティスト裕人 礫翔(ひろと らくしょう)氏が担当。720ml 20,000円(税別)という価格は、強気というよりも、目指すべきものを現実的に積み上げた結果ということなのだろう。

高知の淡麗辛口とフレンチのメインとしっかり絡み合う濃密さのバランスがいい。この日の料理は牛ヒレと米茄子を蕗味噌のペーストでまとめた、かなり濃厚な料理(写真上)だったが、深みがありながらもみずみずしさを残した米茄子と「DAITO」の隠れたキラキラした表情とよくあっていた。一瞬、重いかなと感じたが、あとからその爽やかでキラキラした明るい酸が追いかけ、余韻で交じり合ったときに、思わず笑顔になってしまった。

現状では世界の市場において評価される日本酒のテイストや嗜好はまだ狭い。やや甘みが強めに感じられるソフトタッチのものというのか…。それだけではないと言いたいところだが、まずは成功できるスタイルがリードしていくのは、市場を拓くうえでも重要だろう。

ただ行き過ぎた成功はそのレッテルを剥がすのが大変。ワインと日本を考えると「ドイツの甘口白」「イタリアの軽い白」「スペイン・リオハの重い赤」「カリフォルニアの重厚」「チリの安いカベルネソーヴィニヨン」など、成功が大きすぎて多様性を認めてもらえないという苦労を背負ったケースは多い。

今回の「酔鯨」の「ハイエンドシリーズ」はどれも、今までの成功例とは少し違うと感じた。それは、傾向や流行だけに寄せるのではなく、どこか高知の酒らしさがそこにあるからなのかもしれない。流れに逆らうというのでもなく、流れにのっかるだけというわけでもなく。煌びやかなしつらえのイベントだったが、しっかり「酔鯨」というブランドを守っているんだなと感じられたのがうれしかった。

写真提供:PIXTA(一部)

酔鯨酒造株式会社

住所
〒781-0270 高知県高知市長浜566-1
電話番号
088-841-4080
公式サイト
https://www.suigei-net.com/company

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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