おうちでカクテルを楽しもう!【賢人・岩瀬大二】
家でカクテルを楽しみたい。そう思ったきっかけはいろいろあるだろう。バーが恋しい。おこもりの中で食と酒に変化を。映画を見ているうちに、そこに登場するカクテルが素敵。
私はたまたま「007とシャンパーニュ、ワイン、ウィスキーの関係」という執筆のためダニエル・クレイグ版ボンドを見返していたのだが、「ウォッカ・マティーニを舌がしびれるほど冷やして」というセリフに思わず、「それ、今飲みたい」と口走った。
ゴードン・ジンにウォッカを加え、度数、刺激、すべてに強烈な1杯。ボンドと共に味わえば自分もヒリヒリとしたその場面に入り込めるだろうか、などと妄想。
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カクテルは非日常感をもたらせてくれる酒だ。バーという舞台装置、バーテンダーという名優であり監督。その流儀であったり技巧であったりもカクテルの香りや味となって私たちを喜ばせてくれる。
となればやっぱり外で…となるところだが、実は家飲みでもとても楽しいものなのだ。実際、すでに皆さんはカクテルを家で楽しんでいるのではないだろうか。
ハイボール、焼酎ハイボールに缶チューハイ、レモンサワー。これもある種のカクテル、いやしっかりカクテル。酒場気分を家で気軽に楽しんで、ちょっとしたつまみを酒場のそれに変えてくれるカクテルだ。
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だからバーで楽しんでいたカクテルを家で飲むことも楽しい。恋しい空間を思い出しながらでもいいし、(これは私のことだが)どうせそんなテクニックはないのだから自由に自分好みのカクテルを楽しんでもいい。
前置きが長くなった。家でカクテルを楽しむための「そもそもカクテルってどんなもの?」「だからこれだけあればあとは適当に」「道具とグラスは最低限でもOK」「こんな組み合わせでもっと楽しくなる」を紹介していこう。楽しく気軽に非日常、ちょっとこじゃれた日常、どちらも楽しんでいただきたい。
そもそもカクテルってどんなもの?
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超絶シンプルに言えば「カクテル=酒+副材料」だ。例えばスコッチ・ウィスキー(酒)+ソーダと氷(副材料)。これでカクテルの出来上がり。定番カクテルの「ソルティ・ドッグ」なら、ウォッカ(酒)+グレープフルーツ・ジュースと塩少々(副材料)。
もう少し複雑にすると、酒は「ベースとなる酒」とそれを補ったり広げたりする「ベースを生かす酒」に別れる。私の好きなカクテル「ネグローニ」は、音楽フェスでいうところのダブルヘッドライナー的にドライ・ジンとカンパリがあり、これにベースを生かすスイート・ベルモットが加わる(分量は3酒同量)。酒+酒のカクテルも多数存在する。
副材料はジュースや炭酸水などの割モノと、レモンピールやオリーブといった香りづけやデコレーションに分かれる。
だからこれだけあればあとは適当に
そう、組み合わせは自由だ。この方程式が頭に入っていればいい。「ネグローニ」はカンパリこそその物語からはキープしたいが(このカクテルの発祥にとても重要な役割を果たしている)、ドライ・ジンはメーカーや生産者によって味わいが違うのでお好きなものを選んでいいし、「007」がやったように本来ジンだけをベースにするマティーニにウォッカを加えてもいい。ジュースやデコレーションを変えれば無限のレシピが生まれる。牛乳やコーヒー、抹茶。誰に評価してもらいたい、ではなく、自分だけの楽しみならそれでいいじゃないか。名前も勝手に決めてしまおう。
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その入口としていくつかのベースとなる酒を用意しておくといい。まずは自分の好みを探っていく。「6大エース」とも言えるベースは、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラ、ウィスキー、ブランデー。いずれも定番品とクラフト的なものがあるがまずは定番から。そして定番ならミニボトルも豊富にある。お試しにはちょうどいい。ちなみにワインやビール、焼酎、日本酒も立派なベース。
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サブ的酒でありながらリキュール類はカクテルの楽しみでもある。ちょっとハードルが高いかもしれないが、これはカクテルのレシピ(WEBでも十分情報が取得できる)を参照しながら好みのカクテルにあわせて少しずつ増やしていこう。
一応定番として、また日本で人気のものとして挙げるとすれば、万能選手のコアントロー、オレンジ系のグラン・マルニエ、青色が鮮やかなブルー・キュラソー、桃が香りつつ爽やかなオリジナル・ピーチツリー、サザン・カンフォート、ココナッツリキュールのマリブ、ハーブ系のペルノ、リカール、シャルトリューズあたりは、はじめてのカクテルを楽しく、助けてくれるだろう。いずれも1杯に使う量は少量。それぞれ1本あれば随分と長く楽しめる。
割材や香りづけは、オレンジ、グレープフルーツなどのフルーツジュースに炭酸など、家に普段あるようなものも利用できる。
道具とグラスは最低限でもOK
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カクテルと言えばバーテンダーのシェーカーを振る姿が思い出される。シェーカーも揃えないといけないのか? バーテンダーの動きにはそれぞれ意味がある。シェークするべきカクテル、ステア(混ぜる)することが良いものなど。
いきなりシェーカーを買って振るというのも気分的にはありだけれど、まずはグラスに氷やそれぞれのものを入れてステアする。ここから始めるのでも十分。実際、シェークには混ぜる、冷やす、加水する、まろやかにするという効果が求められるが、正しくやらないとただバラバラのものが出てくるだけ。
それから家だとかなり音が気になる。シェークの世界にハマり始めてから道具を購入するということでもいいだろう。
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グラスは短時間で飲むショートカクテル用と時間をかけて飲むためのロングカクテル用がある。余裕があればショートカクテル用のグラスがあったほうがいい。
マティーニやギムレットをはじめとするスタンダードカクテルはタンブラーやロンググラスよりも明確に適している。もちろん気分的にも。大は小を兼ねないので、ここだけはこだわっていただきたい。といっても高価なものではなく軽い材質の安価なものでまずは十分。洗い物の気兼ねはあまりしたくないものだ。これもハマってから次のステップへ。
こんな組み合わせでもっと楽しくなる
ただ道具は気分を上げるにはいい小道具。カタチからはいるというのもある種のモチベーションなのでご自由に。実は私もそのタイプだ。マティーニでオリーブを指すのも爪楊枝よりは金串の方がかっこいい。非日常感がこんなところにも宿る、かもしれないと思いながら。
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この流れで言えば、そのオリーブにこだわってみるのも面白い。イチゴのカクテルならお取り寄せのイチゴを比べてみる。なんとも贅沢だ。
そしてこの環境下であれば飲食店のテイクアウトやデリバリーと組み合わせるのも面白い。テイクアウトのインドカレーとあわせるカクテルを考えてみる。スパイス系や薬草系のリキュールとベースになるジンは、インド洋に思いを馳せてのボンベイ・サファイア。ロコモコ丼などのアイランダー料理やシーフード系なら海を感じるブルー系のカクテルも楽しい。
テイクアウトやデリバリーにカクテルを合わせれば、それだけで今いる場所で旅先のホテルのレストランやビーチバーになる。好きな映画を見ながらも同様だ。家にいるからこそ楽しめるカクテルがあるのだ。
*写真提供元:PIXTA(一部)
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