優れた仕事は健康から。渋谷の一般公開社員食堂『UB1 TABLE』は舌と身体に嬉しい食のオアシス

【連載】幸食のすゝめ #089 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2019年05月23日
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優れた仕事は健康から。渋谷の一般公開社員食堂『UB1 TABLE』は舌と身体に嬉しい食のオアシス
Summary
1.IT企業『ユナイテッド株式会社』がオープンした社員食堂『UB1 TABLE』を、一般にも公開
2.食への意識が高いレストランでしか見かけない、こだわりの食材が使われる豊かな社食
3.日替わり3種、どれも1,000円。ご飯と味噌汁お代わり自由、しかもドリンクバー付き

幸食のすゝめ#089、開かれた社食には幸いが住む、渋谷。

「このパスタ、ペンネ・アラビアータだっけ?コレが食べたくて、デリプレートにしたんだけど、野菜の量すごいよね」
「めっちゃ野菜!めっちゃ健康になりそうじゃん」。

近隣のクリエイターだろうか、2人でやって来た20代と思われる男女が色とりどりの野菜で埋め尽くされた、男性のデリプレートを見てはしゃいでいる。意外にも、メガネ女子は男前なチキンカレーだ。

ペンネやクスクス、鶏の唐揚げや、うどんコロッケなど、『UB1 TABLE』のデリプレートには、必ず1つ以上の炭水化物や揚げ物が付く。「野菜がたっぷり摂れて栄養価が高い安心安全なランチ」がコンセプトだからといって、いたずらにストイックな食堂にはしたくない。何よりも、食べることには楽しさが不可欠だからだ。しかも、炭水化物も実は重要な栄養素のひとつ。このワンプレートだけで、しっかり栄養バランスが摂れる。

ある日のデリプレート中のメニュー、食べる輸血と言われるほど栄養素が豊富なビーツのマリネには、キヌアやキノコ、レッドキャベツのほかクランベリーも入っている。

ほかにも、デリプレートに盛り付けられたメニューの多くは、おかずにもなるしっかりとした味付けだ。だから、ご飯を付けて定食として食べている人たちも多い。
楽しく、おいしく食べて健康になれる。『UB1 TABLE』は、食事することの喜びに満ちている。

IT企業『ユナイテッド株式会社』が社員食堂『UB1 TABLE』を開いたのは、もちろん元々は社員のためだ。平均年齢30.7歳という若い社員たちは、自分たちのデスクで、出来合いの弁当やカップ麺で簡単に昼食を済ませる姿が目立っていた。
自分がいつまでも健康であり続けると信じて疑わない世代、食事の大切さに気が付かないのは当然のことかもしれない。だったら、会社が気をつけられないだろうか?その思いは、やがて近隣で働く人たちのランチニーズにも繋がっていった。

健康な食を発信することで、地域とのつながりも大切にしたい。街に開かれた社員食堂、『UB1 TABLE』のスタートだ。

メニューは日替わりで3種、どれも1,000円。定食とデリプレート、丼の中から選ぶ。ご飯とスープはお代わり自由で、ドリンクバーも付いている。

渋谷と表参道の真ん中、岡本太郎のオブジェで有名だった旧「こどもの城」のほど近く、この場所でこの価格は貴重。使われている野菜や食材を考えれば、限りなくリーズナブルだ。
食への意識が高いレストランでしか見かけない、こだわりの食材にごく普通に出会える社食。
開かれた社食のミラクルを支えたのは、プロデューサーを任された森枝幹さんの為せる業だ。

シドニーの和風フレンチレストラン『Tetsuya’s』で修行後に帰国した森枝シェフは、国内の割烹やホテルなどを経て、2014年に『Salmon & Trout』を開業。全国の食通たちが通い詰める予約困難のレストランで、いつも「食のその先」を見つめてきた。さまざまな飲食店のプロデュースにも関わり、近年、レモンサワーブームの火付け役となった新宿ゴールデン街『The OPEN BOOK』の味の設計も森枝マジックの代表的な一例だ。

食の可能性を広げるチャレンジ

『Salmon & Trout』では、ブラックバスやカミツキガメなど、これまで食材として馴染みが薄い素材を用いて話題を呼んだ。しかし、それは奇をてらった訳ではなく、特定の食材ばかりに人気が集中することや、乱獲へのアンチテーゼ。同時に新たな食材を発掘することで、人がおいしいと感じる範囲を常に拡張し、食の可能性を広げてきた。

しかし、社食はレストランのように、食マインドが高い人だけが訪れる場所ではない。だから、おいしくて誰もが食べたくなるメニューに気を配り、薄い味わいやシンプルな味付けで、素材そのもののおいしさに気付く場所を目指す。
 
「でも、鶏の唐揚げとカレーライスの人気には、やっぱりかなわないんです」と苦笑する森枝シェフ。
栄養価が高いケールのサラダを出した時には、「紙みたい」という意見が出て閉口した。

食材の調達こそがフィロソフィー

調味料の味にならされてしまった、現代人の味覚。だからこそ、食材の調達には全力を尽くす。
生産現場との関わり方そのものがフィロソフィーの表明であり、何よりも味そのものがおいしいからだ。
現在、米は茨城県『鈴木農園』の無農薬米、雑穀は岩手県『尾田川農園』、野菜は千葉県『くくりの森』、鶏は菜彩鶏(さいさいどり)と大山ドリ。
豚は北海道の遊ぶた、市場で人気が高いロース部分を外して一頭買いし、魚はすべて海のエコラベルであるMSC認証やASC認証のものを使う。

食材のどれをとっても、意識が高いレストランで出逢う食材ばかりだ。毎日、おいしいと思って食べ続けているだけで健康に向かい、素材重視の食志向に変わって行く…。

『UB1 TABLE』の料理を食べ続けている内に、舌と身体に起こる小さな変化。それは、食の未来を変える静かな革命、自然環境を守り、フードロスを無くすための大きなきっかけに違いない。


開かれた社食には、幸いが住んでいる。

【メニュー】
日替わりメニュー
定食 / 丼 / デリプレート1,000円 (takeaway) 900円
全てのメニューにスープ、ドリンクバーが付きます。(テイクアウトは除く)
ご飯、スープ、ドリンクはすべてお替り自由です。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です

UB1 TABLE(ユービーワンテーブル)

住所
〒150-0002東京都渋谷区渋谷1-2-5 MFPR渋谷ビルB1F
電話番号

なし
営業時間
11:30~14:30(L.O.14:00)
定休日
土日祝日休
公式サイト
https://ub1table.jp/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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