西荻窪『オステリア トレパッツィ』は極上のイタリア郷土料理を堪能できる秘密の隠れ家だった!

西荻窪の本格イタリアン『Osteria Tre Pazzi (オステリア トレ パッツィ)』をご紹介。イタリア郷土料理を主軸にした豊富なメニューが楽しめる『オステリア トレ パッツィ』は、人気店出身のシェフ&ソムリエ兄弟が営むお店。自慢はトスカーナ州の郷土料理と手打ちパスタ。全18席とこぢんまりしたお店ながら、店内はいつも活気でいっぱい。土日祝はランチ営業もしているのでシーンに合わせて活用したい!

2020年11月05日
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西荻窪『オステリア トレパッツィ』は極上のイタリア郷土料理を堪能できる秘密の隠れ家だった!
Summary
1.人気店出身のシェフ&ソムリエ兄弟がついに独立! 西荻窪『オステリア トレ パッツィ』
2.シンプルでありながら上質、かつリーズナブルなイタリア郷土料理が早くも大人気
3.料理人出身のソムリエによる、丁寧な料理とワインの説明も好評

人気店出身のシェフ&ソムリエ兄弟がついに独立!

予約の取れない人気店として知られていた『Trattoria Ciccio(トラットリア チッチョ)』(吉祥寺)のシェフ・松原達志さんがついに独立。2020年6月7日、西荻窪に本格イタリアン『Osteria Tre Pazzi (オステリア トレ パッツィ)』をオープンした。

ソムリエとサービスを担当しているのは、人気店『Bistro Hutch(ビストロ ハッチ)』のソムリエ兼店長だった、達志さんの弟、松原憲作さん。コロナ禍最中のオープンにもかかわらず、吉祥寺時代のファンが殺到し、早くも賑わいを見せている。

『オステリア トレ パッツィ』があるのは、JR中央線「西荻窪」駅南口の商店街から徒歩3分ほどのところ。西荻窪らしい個性的な商店も点在し、少し歩くと住宅街に入る静かな通りだ。

店内は白をベースにした、すっきりとシンプルな空間。ソファー席側の壁の、イタリア製タイルを使用したレリーフが美しい。L字型のカウンターは10席、テーブル8席と、かなり余裕のある配置だ。

「僕と弟の2人だけでやるとなると、カバーできる人数はマックスでも18人。だから席数を増やすよりも、お客さんが居心地のいい空間を広くとることと、2人が働きやすい機能面を充実させることを優先させようと決めていました」と語るのは、シェフの松原達志さん(写真上・左)。

料理が完成するとキッチンから達志さんが「憲ちゃん、おねがい」とやさしく声をかけ、憲作さん(写真上・右)が「あいよ!」と明るく答える。そんな2人の仲睦まじい雰囲気が、親しみやすく温かい店の雰囲気を作っている。

「母親が料理好きで、子どものころに、当時はまだ珍しかった手打ちのラザニアを作って食べさせてくれました。僕たち2人が料理の道に進んだのは、間違いなくそんな母親の影響ですね」(達志さん)

あくまでも、軸足は「イタリア郷土料理」

達志さんはイタリアのフィレンツェでの修業経験もあり、トスカーナ地方の郷土料理を得意としている。

常に心がけていることは、「あくまでも、軸足はイタリア郷土料理に置くこと」。イタリア料理は自分の国の食文化ではないので、勝手にアレンジするのは失礼だと考えているからだ。

「もちろん、食材や水はイタリアとは違いますし、日本人特有の好みもありますので、そこはアジャスト(調整)していかなければなりません。でもイタリア郷土料理からかけ離れた、創作イタリアンはやらないと決めています」(達志さん)

そんな達志さんのポリシーを端的に表しているのが、イタリア・ピエモンテ州の郷土料理「ボリート」をもとにした前菜「牛タンのカツレツ」(写真上)。ボリートとは、大きな塊肉を野菜とともに長時間茹でた料理。大量の肉をシンプルかつ豪快に食べるのを好むイタリア人にとっては定番人気のメニューだ。

だが、そのままでは素朴すぎて日本人には受けない。そこで思いついたのが、日本人の好きな「カツレツ」にすること。ボリートに添えられる定番ソース「サルサヴェルデソース(イタリアンパセリにアンチョビ、ニンニク、ケッパーなどを加えて撹拌したソース)」とともに、塩、マスタードを添えている。付け合わせは、マッシュポテトと葉野菜。

皮付きの牛タンをハーブ入りのマリネ液に漬けこんだ後、6~7時間ほど香味野菜とともに煮込む。皮が自然にはがれるまでしっかり煮込んだら、衣をつけてこんがり揚げ、半分にカット。

見た瞬間は牛タンの厚みに驚き、次にナイフの重みだけで切れていくようなやわらかさに驚く。噛んだ瞬間の衣の香ばしいカリカリ感と、噛みしめた時の牛タンの湧きあがるようなジューシーさのコントラストがたまらない。

「オープンして3カ月たち、そろそろ落ち着いたのでメニューを変えたいと思っているんですが、『これだけは絶対にはずさないでほしい!』とおっしゃるお客様が多くて、定番になりそうです(笑)」(憲作さん)

極太のモチモチ麺にからむ、ニンニク・唐辛子・トマトの黄金トリオ

トスカーナ州でよく食べられている手打ちパスタも、達志さん自慢の一品。

断面が正方形をした卵麺「トンナレッリ」で作ったシンプルなパスタ料理「トンナレッリ カチョ・エ・ペペ」も定番人気だが、「ぜひこれも味わってみてほしい」と作ってくれたのが「ピチ カッレッティエーラ」(写真上)。

「麺が攻撃的なまでに太いでしょう(笑)。だからオイルベースの軽いソースは合わないんです。ガーリックを効かせたトマトソースや、これからの季節だったら猪肉のラグーなどの重いお肉系のソースと相性がいいんですよ」(達志さん)

確かに、フォークに絡めることができないほどの重量感で、歯に食い込むような噛みごたえは、まさに「攻撃的」。だが、しっかり噛みしめる分、麦本来の甘みや香りが実によくわかる。

その小麦の甘みにぴったりなのが、唐辛子の辛みとニンニクの香りのパンチが効いたシンプルなトマトソース。トマトソースの味が消えた後に、噛みしめた麺の小麦の香りが残り、最後にたっぷり入れたペコリーノチーズのコクが広がる。これも牛タン同様、手打ちパスタの新しい世界を見せてくれるような一皿だ。

「お客さんの歓声があがる豚肉を探し求めました」(達志さん)

この日の料理で最もインパクトが大きかったのは、低温調理ならではの鮮やかなピンク色、白金豚特有のきめ細かな肉質が美しい「白金豚の低温ロースト」(写真上)。

たっぷりした厚みの豚肉を表面だけ焼き固め、芯の部分が50℃を超えない程度の低温でゆっくり加熱している。側面にアクセントとなる香草入りの焼きパン粉をまぶして、側面からナイフを入れて、きれいに2枚にカット。

しっかりと厚みがありながら、豚肉とは思えないふんわりしたやわらかさ、力強いうまみ、そして噛むたびに口の中で滝のように流れる肉汁…。「驚いたでしょう」と達志さんと憲作さんがニコニコ、顔を見合わせている。

「いろいろな豚肉で試しましたが、食べた瞬間にお客さんから歓声が上がるのはこの肉だけでした」(達志さん)

うまみは非常に強いがクセのない肉質なので、添えられた燻製塩を付けると、がらりと味の印象が変わる。これはぜひ一度食べてみてほしい。

デザートのおすすめは、カカオ70%のチョコレートを使っている「チョコレートのテリーヌ」(写真上)。粉類をまったく使っていないので、どっしり重厚な味わい。酸味の強いパッションソースがよく合う、大人のデザートだ。

ワイン選びの基本は、自分たちの舌と、造り手へのリスペクト

ワインは「自分たちがおいしいと思うものだけ」を選んでいる。

「飲んでみておいしかったのが自然派ワイン、ということはよくありますが、最初から自然派ワインでなければとは思っていません。ただ結果的にですが、おいしいと感じるのは小さいワイン蔵のものが多いですね」(憲作さん)

憲作さんのワインの説明から感じられるのは、造り手へのリスペクト。

たとえば、同店でハウスワイン的に置いているのが「ゾルッティ」(写真上)。軽くて飲みやすいのに、濃いうまみの余韻が長く残るのが特徴だ。

このワインの原料である「マルヴァジア」という品種のブドウから造られるワインは一般的に軽い味わいになり、このカテゴリーでは価格がカジュアルになる。それを悔しく思ったこのワインの生産者が、精一杯うまみを引き出すためにぎりぎりまで成熟させて、手摘みして造っているワインだという。

そうした生産者の熱い想いをさらりと伝える憲作さんの説明がまたお見事! 説明を聞いているうちに、そのワインへの愛着や蔵元への興味も湧いてくる。

「僕は100%の料理を作ることを目指していますが、弟の説明はそれにプラスアルファして120%に感じさせてくれる」と、達志さんも憲作さんのサービスを高評価する。

また最近、見かけることが多くなった「ノンアルコールワイン」だが、実は、ブドウジュースにワイン風の香料を添加したものと、ワインを造った後、低温で蒸留してアルコール分だけを抜いている「脱アルコールワイン」の2種類があり、同店ではより本物のワインの味わいに近い「脱アルコールワイン」を提供している。飲んでみると確かに普通のワインよりも軽い味わいではあるが、口に含んだ後の味がワインと同じように変化し、最後に酸味がふんわり残る。

▲同店で提供している脱アルコールワインの「カールユング メルロー」(左)と「カールユング リースリング」(右)

「今の店が、僕たちの理想の店です」

達志さんのシンプルだが上質で力強い料理と、憲作さんの明るく温かな接客、料理とワイン説明の熱量、それらがすべて融合して、最高に幸せな空間をつくっている。あくまでもオステリアなので、堅苦しいコースは設けず、基本的にはアラカルト料理だけを提供するスタイル。そして、兄弟でストレスなく継続できるように、自分たちがやれる範囲のことを一所懸命やっていきたいと2人は語る。

どんな店にしていきたいか、という問いに対して達志さんは、きっぱりこう答えた。

「10年くらい前から、自分たちがやるならこんな店というコンセプトを描いてきました。今やれていることは、そこからブレていない。今の店が僕たちの理想の店です」

【メニュー】
牛タンのカツレツ 1,500円
ピチ カッレッティエーラ 1,400円
白金豚の低温ロースト 3,200円 
チョコレートのテリーヌ 600円

グラスワイン 650円~
ノンアルコールワイン 700円~

撮影: 岡崎慶嗣

オステリア トレパッツィ

住所
〒167-0053 東京都杉並区西荻南3-15-1 MUビル 1F
電話番号
03-4361-5515
営業時間
12:00~15:00(L.O.14:00)※ランチは土日祝日のみ、17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日
水曜日、不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/kfgmzf2n0000/
公式サイト
https://www.facebook.com/Osteria-Tre-Pazzi-107273787685977/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。