「肉の名峰」こと『肉山』はそんなに旨いのか? 予約困難な味を生む秘密を探る(上級編)

2016年03月23日
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「肉の名峰」こと『肉山』はそんなに旨いのか? 予約困難な味を生む秘密を探る(上級編)
Summary
1.肉の芯温を58℃に調整するテクニックが生んだ旨さ
2.『アンティカ・オステリア・デル・ポンテ』と『オステリア・ヴィンチェロ』の技
3.常連という言葉を嫌い一見客も区別せずもてなす

なぜ、決して便利とは言えない場所にあり、単に塊肉を焼いて提供するだけに思える『肉山』に客が殺到するのか。
食の評論家の中には、この店を決して誉めない人もいる。果たして本当に評価に値しないのだろうか。

確かに数種類の肉を焼いて、切って皿に盛るだけというスタイルなので、料理だと認めたくないという意見があるのはわからないではない。
しかし、初級編でも触れたように、『肉山』の真骨頂は、レアでありながら中まで温かく、決して生ではない赤身肉の焼き方にある。「牛肉は内部が58℃になるように調整していますから」とオーナーの光山英明氏は胸を張る。
単純な調理をしているように見えて、実はそこに繊細な工夫があるのだ。

高さを調整しながら焼く独自のスタイル

実際にどのように肉を焼いているのか。
まず、炭火が赤くなったら、少し高いところに置いた網の上に、木箱にしまっておいた肉の塊を置く。
強火の遠火状態である。
全体に焼き色がついたら、網を炭火ギリギリまでに低くして、頻繁に返しながら焼く。

「この段階は一時も目を離さない」と光山氏。
表面がこんがりと仕上がり、肉汁をとじこめることになる。さらにもう一度、網を高い位置に戻して仕上げる。タイミングを見計らって肉をバッドに移し、アルミホイルで覆って余熱を入れる。このとき芯の部分が58℃になるように計算されているというわけだ。

工程を言葉にすれば簡単だが、実際には肉の大きさに合わせて時間を計り、五感をとぎすませてタイミングを見極める。最初のうちはキッチンタイマーに頼っていたが、焼いているもの、寝かせているものなど、複数の工程を同時進行するため、タイマーが鳴っても、どの工程を終えていいのか混乱したことが珍しくなかったとしている。
「オープンしたばかりのころは30点程度のものしか提供できていなかったと思う。いま、ようやく100点をつけられるようになった」と光山氏は振り返る。

焼き方を伝授したのは2人の師匠

『肉山』では、焼き上がった塊をあらかじめスライスして、皿に盛りつけて提供する。箸で食べるスタイルだ。外側はこんがりと香ばしく仕上がっているのに対して、中は鮮やかな赤を残しており、ちょっと見ただけでは火があまり通っていないように思える。だが、実際に噛みしめると、あたたかい肉汁があふれる。決して血がしたたっているわけではない。その証拠に生臭さはまったくない。ステーキハウスでレアを選択して、口の中に鉄のような味を感じたことはないだろうか。『肉山』ではそんなことはなく、旨みが口の中に広がる。融点の低い(低温で溶ける)脂肪を多く含む霜降り肉なら珍しくもないが、赤身肉で同じように仕上げるのは至難の業だ。

この焼き方を伝授したのは、東京・丸の内にある「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」と、東京・新宿にある「オステリア・ヴィンチェロ」の2人のシェフである。
2012年11月の開店より前の話だ。光山氏は頭を下げて、肉の焼き方をどうすればいいかを乞うた。あまりの熱心さに、2人が協力して肉山スタイルの焼き方を完成させた。
さらに、営業を開始してからも工夫を重ね完全に自分のものにするまで、1年以上かかったという。

予約に裏技は?

『肉山』は毎月1日に予約を受け付ける。しかし、正午の予約電話スタート時から何度電話をかけても、話し中で簡単につながることはなかなかない。有名アーティストのチケット争奪戦のようだが、多くて1日63席という限定数から考えればもっと厳しい競争かもしれない。
だが、中には1カ月に数回、『肉山』へ足を運んだという話を聞くことがある。常連客になれば優遇してもらえるのだろうか。
「リピーターとか常連という言葉が嫌いなんです。まったく区別していませんよ」と光山氏は説明する。
では、どうして頻繁に食べに行ける客が存在するのだろう。
他の人気店同様、来店時に次の予約をして帰るケースがあるからだ。
その場合、テーブル席7名、もしくは21名で貸し切りの予約をするケースが多い。
そうして得た『肉山』の予約を仲間と共有し来店しているというわけだ。そのような友達つながりが多ければ、『肉山』へ行く機会も必然的に増えるだろう。

ただ、初めての客と、何度か利用したことがある客との一番の違いは、貸し切り予約がとれるかどうかである。
確かに、一度も来たことのない客に、電話予約を受けた段階で21席を用意するというのは店としてもリスクが高い。
『肉山』へ出かけるためには、とにかく電話をしてチャンスを待つか、次の予約をしてきた友人を探すのが結局のところ近道というわけだ。
また、初級編でも触れたが、Facebookで店主・光山氏をフォローしていると、キャンセル待ちの投稿が出ることがあるので、すかさずそれを狙うという手もある。ただし、これも1分以内に埋まってしまう。

もう一つ、常連になれば特別なメニューが食べられるという噂がある。
これについては「そんなことは絶対ありません」と光山氏は否定する。仕入れの関係で、コースの中のメニューが変わるだけで、頻繁に来るお客さんだからといって普段は出さないものを提供することはないという。たまに、他の店とコラボレーションしたメニューを提供するイベントを除けば、通常営業で差がつけられることはない。だれにもやさしいのが『肉山』のモットーなのだ。

なぜ吉祥寺で赤身肉食べたいのか。そこに『肉山』があるからである。

肉山 (ニクヤマ)

住所
〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-1-20 藤野ビル2F
電話番号
0422-27-1635
営業時間
平日2部制17:00~、20:00~、土・日3部制12:00~、17:00~、20:00~ ※完全予約制
定休日
不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/40fc0d8z0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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松尾大
くるなびエディトリアルプロデューサー