バターとセージに包まれた仔鹿のレバー、ウサギのスープ、、、

【連載】マッキー牧元の「ある一週間」 第8週  日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。彼はどんなものを食べて一週間を過ごしているのか。「教えていいよ」という部分だけを少しのぞき見させていただく。

2015年11月07日
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バターとセージに包まれた仔鹿のレバー、ウサギのスープ、、、
Summary
・夏季限定の軽井沢
・予約の取れない亀戸
・高知で細麺と新子
・香港の味を銀座で

9月26日「都会では味わえない」

パチン、パチンッ。
どん栗が地に落ち、割れる音が響く。
澄んだ風が頬を撫でる。
木々の香りが、鼻腔をくすぐる。
緑と青空が眼前に広がる。
肌で季節を感じながらいただく料理は、感謝の念を深くする。
「今日は昨日より寒いから、昨日とは違う調えをしようと、我々も、肌で感じながら料理をさせていただいております」。
目で楽しみ、舌で味わう、日本料理の両徳を膨らます徳がここにはある。
無機物に囲われた都会では味わえない、幸せがここにある。
軽井沢招福楼にて。

桂乃茶や 招福楼軽井沢店 <8~9月夏季限定>

住所
〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉2115
電話番号
0267-42-9805
営業時間
11:30~15:00、17:00~21:30
定休日
定休日 不定休、要予約 ※夏季限定:本記事に掲載された情報は、来店日時点のものです。
公式サイト
http://www.shofukuro.jp/karuizawa.html

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

9月27日「あのレバーではない」

そのレバーは、清く、澄んだ味がした。
ぐっと歯が入ると、甘みがそっとこぼれる。
微かな微かな鉄分を感じさせながらも、加熱されているのに、微塵も雑味がない。
血の匂いがない。
レバーを食べて、気持ちが猛々しくなっていく気配がない。
バターのコクとセージの香りに包まれながら、純な甘みだけが、舌にゆるゆる広がっていく。
甘みの余韻がいつまでも続いて、心を溶かしてしまう。
「僕は永遠に旅たつね」。子供の鹿がそう語りかけた。
食べていいのかと、誰かが頭の中で囁く。
いけないものを食べてしまったような、後ろめたさと、命への深い感謝が去来する。
仔鹿のレバー。

スープなのに、噛んでいた。
肉を頬張り、食らっていた。
うさぎ二羽半と野菜を、弱火で4時間煮たスープである。
塩と水だけで、イタリア産のうさぎのエキスを抽出していく。
急がず慌てず、じとじとと。
ゆっくりと溶け出した味には、無理がない。
肉や骨に眠っていた養分が、いつのまにか水に溶け込んでいく。
きっとうさぎは、知らず知らずのうちに、自らの養分を投げ出したのだろう。
高山シェフは、4時間経ち、すべてを引き出せた、その頂点を見極めて火を止め、すぐさま器に盛る。
一口目は、優しく思いやりを込めた火加減ゆえの、安寧な味わいである。
しかしその安寧な奥底から、うさぎの滋味が顔を出す。
まるでうさぎを手で持ち、かじりついたような味わいが、口の中を満たす。
野を駆け巡るうさぎが、舌の上で身悶える。
どこまでも優しく、どこまでも凛々しい。
そしてどこまでも、慈しみ深い。
野生とは、自然とは、そういうものだ。

メゼババ

住所
〒136-0071 東京都江東区亀戸6-26-5
電話番号
03-3636-5550
営業時間
17:00~翌2:00
定休日
定休日 不定休

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

10月3日一軒目「ラーメンとうどんの間」

「よしなら、メニューにはないけど、どこでも食べたことない奴作ったる」。そういってヨコジイは動き出した.
飲んだ後に肉はいらんやろ。うどんにしよかと思っても、ラーメンも食べたい。これはラーメンとうどんの中間なんや」。
二口食べて「おれはうまい。初めて食べる組み合わせや」というと、ヨコジイは、子供のような顔になって、嬉しそうに笑った。
蒲鉾とちくわに天かす、そして鶏肉に細めん。
透き通ったスープが優しく、アルコールを中和させながら胃袋に消えていく。
高知の「よこじい」。高知の可愛い不良じいさんの店にて。

餃子家よこじい

住所
〒780-0841  高知県高知市帯屋町1-3-9
電話番号
088-873-1678

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

10月3日二軒目「これも“新子”」

年の頃なら、16歳くらいだろうか。
若々しさに満ちた味には、恥じらいがあって、それが舌を焦らす。
噛めば、微かにモチッと歯の間で弾み、まだ色気はないが、これから伸びようとする命の息吹が溢れ出る。
その切なさがいい。
一瞬を切り取った、いたいけな刹那がいい。
仏手柑の皮の香りが、その切なさに優しく寄り添って、命をいただくありがたさを膨らます。
この時期にしかない「新子」、ソウダガツオの子供である。

もはやその姿は、凛として、手をつけるのをためらうほど神々しい。
冬を迎えて脂を溜め込む前であるこの時期のカツオは、色気と潔さが入り交じった、自然の不思議を抱えている。
この上なく新鮮で、噛めばねっちりと舌にしなだれ、品のある脂の甘みの奥に、ひっそりとたくましい鉄分が眠っている。
一片の刺身が、意志を持ったかのように崩れていき、僕はカツオとディープキスをしている錯覚に陥って、溶けてしまった。
高知「ゆう喜屋」にて。

ゆう喜屋

住所
〒780-0841  高知県高知市帯屋町1-9-25
営業時間
088-873-0388
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/6jt1rje20000/

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10月3日三軒目「ねっとりシャコ」

初めてお目見えした、香港のシャコである.
「風沙頼尿蝦」。香港風スパイス揚げにしていただいた。
その味わいはシャコではない。みっちりとオレンジ色の卵が詰まったその味わいは、渡蟹のように甘い。
いや、渡蟹のようなねっとりとした甘みがある。
これは人を虜にするわけだな。

赤坂璃宮

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル5F
電話番号
050-3491-0761
営業時間
月~土 ランチ:11:30~15:00(L.O.15:00) 日・祝日 11:30~16:00(L.O.16:00) 月~土 ディナー:17:30~22:00(L.O.22:00) 日・祝日 16:00~20:30(L.O.20:30)
定休日
年中無休 ※(年末年始を除く)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/g043401/

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