日本発リキュール「星子」を作り、時代を作ってきた人物のバー

【連載】幸食のすゝめ #006  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2015年12月07日
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日本発リキュール「星子」を作り、時代を作ってきた人物のバー
Summary
・東京の夜を遊んできたなら誰もが知る人物
・語る言葉、すべてが伝説
・日本の四季を一つの瓶に

幸食のすゝめ#006 愛された梅には幸いが住む、渋谷桜丘。

行きつけのバーを持つ大人は幸いである。いや、そうではない、自分のバーを持った時に、人は大人になるのだ。バーについて考える時、ロバート・フロストが詩を定義した言葉を思い出す。
「人がそれを忘れたら貧しくなるようなものを思い出すひとつの方法」。
確かに、詩や音楽、あらゆる芸術は、なくても生きていけるものだ。バーは、その最たるもの。しかし、バー(やフランスのカフェ)がなければ、都市の文化は生まれなかっただろう。文化は点からは生まれない。いくつもの点が重なり合い、ひとつの線に繋がる時、文化が生まれる。そして、その架け橋がバーテンダーという存在だ。

東京の夜を遊んで来た大人たちなら、誰もがデニーという名前を耳にしたことがあるはずだ。70年代、『黒いジャガー』や『タクシードライバー』さながらのNYから帰り、原宿に伝説の「シネマクラブ」を開いた人物。その後、芋洗坂の「東風(トンフー)」、仙台坂の「スターバンク」を立ち上げ、並行して「玉椿」、「ADコラシアム」、「芝浦GOLD」のオープニングに参画、いつも時代の先端を走り続ける。東京カルチャーが生まれるシーンには、いつも彼の存在があった。

1990年には、バッファロー・チップスで開催された「スタージス50周年」イベントに参加するため、店を後輩たちに托し国際ナンバーを付けた品川ナンバーのハーレーで渡米。数ヶ月をかけたハーレーの旅の相棒は、ネイティブアメリカンから「イエローイーグル」という称号を与えられた人物。数年前に自らが荒野の鷲となった、原宿ゴローズの高橋吾郎氏だ。その旅は6千枚を超えるポジで記録され、2人を慕う若者たちの手で近年出版される予定だという。(現在の店「Bar the hand」の一角には、当時のデニーの雄姿も飾られている。)

そして、ギンズバーグが死んだ1997年、16年続いた「howl」を外苑前に開店。その時、デニーにはひとつの野望があった。「世界の都市にはそれぞれ独自のリキュールがある。メイド・イン・ジャパンのリキュール、どうして日本のリキュールがないんだろう?リキュールはその国の文化や風土、つまりテロワールによって生み出されるもの。四季折々の美しい自然と豊かな食文化を持つ日本から、世界に誇れるリキュールを発信したい」。その後、17年の研究期間と、8年に渡るバーでのモニタリングを重ね、ついに2005年、日本初の日本発リキュール「星子」が誕生する。

日本の四季を瓶詰めしたリキュール

星子の原料は梅、理由は最も日本らしい果実だからだ。中国や台湾、韓国などにも梅の木は多いが、むしろ果実は杏に近い。クエン酸由来の酸味を強く持つのは日本産のみ、それには四季と土壌の特性が影響している。中でも大きな要素は、実が膨らむ頃に降る恵みの雨、「梅雨」の存在だ。星子は、その年に採れた梅から厳選された粒だけを用いた無添加・単純濾過の梅リキュール、梅酒ではない。
ひとたび含めば、口中を梅の香が漂い、やがてその向うに丁字や八角などのスパイスが複雑に香り立ち、マリアージュする。それは、日本でもない、アジアでもない、地球という星のフレーバーだ。

オリジネイターの手からカクテルを

「Bar the hand」は2014年10月、渋谷の喧噪から離れた桜丘と南平台を分かつ路地にオープン。星子の作者デニーが立つカウンターのほか、紺碧のタイルに覆われたテーブル席と、茶室に習った低い躙り口を持つ個室も完備する。

だが、ここの白眉は作者本人がつくる星子カクテルだ。星子のフローズンダイキリ「ホーホケキョ」、星子のモヒートである「星音(ホシノオト)」は、星子同様、世界に誇るカクテルだ。陽光も、降りしきる雨も、頬を打つ風も、日本の四季そのままを1本の瓶に封じ込めた星子は、ネットでも注文可能。5月に予約して、ひたすら11月の解禁を待つ至福は贅沢の極みだ。

もし我慢できなくなったら、桜丘に駆けよう。そこには、デニーが丹精を込めた様々な年の星子が待つ。愛された梅には、幸いが住んでいる。

<メニュー>
星子ミスト1,000円、星音1,500円、ホーホケキョ1,500円、予算4,000円位

※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら

Bar The hand (バーザハンド)

住所
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町30-10 青野ビル2F
電話番号
03-6452-5898
営業時間
19:00~翌3:00
定休日
定休日  日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/8hpwrtev0000/
公式サイト
http://www.hoshiko.jp/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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森一起
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杉本佳子
ファッションジャーナリスト兼美容食研究家