銀座の星に願いを。世界一のバーテンダーが作る夢が叶うカクテル

東京・NY・パリ、世界の食トレンドの最前線を走る街を中心に、国内外を問わず、「次に食べるべきもの」「こんど行きたい店」をクローズアップしていきます。

2016年01月15日
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銀座の星に願いを。世界一のバーテンダーが作る夢が叶うカクテル
Summary
1.世界一のバーテンダーが作る定番カクテル「マンハッタン」に隠された個性とは?
2.予算は1万円を目安に!飲み過ぎ注意
3.流れ星に願いをかけると、夢が叶うかもしれない名物カクテル

いま銀座で最も有名なバーが保志である。オーナーの保志雄一氏は、1998年に日本バーテンダー協会全国技能大会で総合優勝を果たし、2001年にはインターナショナル・バーテンダーズ・コンペティションで総合優勝して世界一となった。嵐の相葉雅紀主演のテレビドラマ「バーテンダー」の技術指導をしたのも保志氏だ。銀座に6つの系列店があり、各店舗にコンテストの上位入賞者のバーテンダーが在籍する。
本店は銀座の雑居ビルの8階に居を構える。エレベーターが8階に着いたとき、初めての客の心拍数はマックスになるだろう。ところがいざ中に入ってみれば、ホワイトコートを着たバーテンダーが人なつっこい笑顔で迎える。照明もイメージしていたよりはるかに明るい。カクテル初心者にこそ敷居をまたいでほしいアットホームな店なのだ。

自分の気分を伝えてバーテンダーに任せてみる

最初の一杯を何にするか。バックバーにずらりと並んだ酒を見れば、迷って当然だ。007の映画鑑賞後ならば、ジェームズ・ボンドのように「ウオッカマティーニをシェイクで」と頼みたくなるだろう。だが、一番賢いのは自分がいまどんな気分でいて、どんな味が好きなのかを伝えること。優秀なバーテンダーなら、自分が持つ数多くの引き出しの中から、その日の客に一番ふさわしいカクテルを瞬時に提案してくれるはずだ。

バーでカクテルをあまり注文したことがないと値段が気になるだろう。ホテルのバーのようにカクテルメニューが用意されているわけではない。不思議なことにどの客も値段を確かめずに注文している。銀座のバーの平均的な予算は1杯1,500円程度で、保志の場合は1,800円からとなっている。これに加えてチャージが1,500円、10%のサービス料がかかる。軽くつまんで3杯程度お任せで飲んで1万円前後だと思えばいい。バーは雰囲気も味のうち。細かく値段を確認しながら飲むのは野暮である。もし懐が心配なら、応対してくれるバーテンダーにこっそりと予算を告げておくといい。その意味では寿司店のカウンターと似ている。

こんなにすっきりしたマンハッタンがあったなんて・・・!

さて、話をカウンターに戻そう。「前から思いを寄せていた女性と、これから初めて夕食を食べにいくのでドキドキしている」と伝えたとする。バーテンダーは静かにうなずくと「マンハッタンではいかがでしょう」と提案する。カクテル初心者でも名前を聞いたことがあるのではないか。スタンダードの中でも有名な一品。ライウイスキーがベースで、赤いチェリーが浮かんだ甘いイメージのカクテルである。もっとドライなものが飲みたいと言いたくなるかもしれないが、ここはお任せしてみる。

カクテルが完成する前に、小皿で供されるのはチェリーで、鮮やかな赤色をしたマラスキーノと、レンガ色をしたグリオットの両方が並んでいる。これをつまみながら飲んで欲しいとの説明が終わる頃に、ショートグラスが目の前に差し出され、マンハッタンが注がれる。チェリーを沈め、レモンピールで香り付けして完成となる。

なみなみと注がれた液体を口から迎えにいく。決してマナー違反ではないのだそうだ。グラスを倒すよりはマシである。一口含んで、あまり甘くないことに驚く。アルコール度数が低いのではないかと思わせるほどさっぱりしている。しかし喉を通って空っぽの胃袋に到着すれば、夕暮れの街の灯火のようにそこだけが暖かくなる。断じて弱い酒ではない。

バーテンダーの力量を判断するならスタンダードカクテルで

教科書のようにレシピが決まっているスタンダードカクテルでは、バーテンダーの個性が出ないと思うのは間違いだ。むしろ、自分のお気に入りのスタンダードを見つけて、いろいろな店で注文してみれば、バーテンダーによる差がはっきりするだろう。保志氏によれば、どのウイスキーを使うかといった銘柄選択の問題だけではなく、ちょっとしたさじ加減が重要なのだという。
たとえばマンハッタンでは、夏に注文を受けたときは、よりシャープになるように合わせるベルモットの量を少なめにする。逆に冬はベルモットを多めにする。
ほかのカクテルでも同様に、たとえばレモンジュースを使うものは必ず味見をして、バランスを整えるようにしている。これは一流のバーテンダーならだれでもやっていることなのだが、味に差がつくのは職人としての技量が違うからである。
マラスキーノとグリオットを食べ比べながら、口の中に広がるチェリーの甘さを、すっきりとしたマンハッタンで流すことを繰り返していたら、あっという間に飲み干してしまった。
ところでなぜマンハッタンだったのか。デートへの甘い期待をドライな味わいで引き締めてみてはというアドバイスだったのか。正解があるわけではない。客の気分に合わせたものを提案できるかどうかは、カクテルを作る技量と並んで、バーテンダーを判断する大切なポイントだ。

東京・銀座で星に願いを

98年に保志氏が優勝したときのオリジナルカクテルが「フォーリング・スター」である。

ウエーヴスタイルといって、ショートグラスには波模様が塩で描かれている。そこにホワイトラムをベースに、パイナップルのリキュール、オレンジとグレープフルーツのジュースを加え、さらにブルーキュラソーを2ティースプーン入れてシェイクする。グラスにはあらかじめ星型にくりぬいたレモンの皮が沈めてあり、シェイカーから透明な緑色になった液体を注ぐと、まさに流れ星のようにグラスの中で弧を描くという演出だ。
実名は出せないが、とある有名なスポーツ選手が世界大会の前に「保志」に寄って、このカクテルに願いをかけたら実際に優勝したという逸話がある。

グラスの真上から眺めれば、確かな技術でシャーベット状になっていることが分かる。セクシーな甘さは南国の夜の海辺を思い出させる。見とれていて願いごとをするのを忘れたなら、もう一度訪れればいい。本当の夜空と違って、流れ星はいつでも出番を待っている。

チャージ1,500円 サービス料10%
マンハッタン1,800円 フォーリングスター1,800円 フルーツカクテル2,000円から

※価格はすべて税込

BAR保志

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座6-3-7 AOKITOWER8階
電話番号
03-3573-8887
営業時間
平日19時〜翌3時 土日祝日18時〜翌1時
定休日
定休日 無休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/cbet21r50000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。