住宅街のひそかなデートスポット
北参道の穏やかな住宅街に、そっと温かい灯りをともすレストラン『L’Octave(ロクターヴ)』。2015年9月にオープンしたばかりで、カウンター7席と4名がけテーブルが一卓という、こぢんまりと可愛らしい空間。ウッド調で、本棚もあるまるでおうちの様にまとまりある雰囲気が、キュートな女性とのほっこりデートにもってこいではないだろうか。
オープンキッチンに一人で立ち、料理からワインまですべてを一人でこなすのは、小林隼人(こばやし はやと)シェフ。彼は、かつて東京中の美食家を魅了した幻のシャトーレストランを皮切りに、数々のフランスの星付きレストランで修業を積み、そして帰国後は東京の三つ星レストランにて二番手を務めたのち、満を持して独立開業を成し遂げた。店名の由来は西洋音楽の音階を表す「オクターヴ」。音楽好きのシェフが奏でる料理のメロディをぜひ体感してほしい。
一皿一皿が食のアトラクション
シェフの料理コンセプトは、「一皿一皿に遊び心を加えた、自分にしかできない料理」。小さくも遊び心あふれるチャーミングな仕掛けたちが、シェフの手によって料理に加えられると、ものを言わない料理がまるで音楽を奏でるかのように顔色を変え、食べ手に心躍る食事を体感させてくれる。それは食のアトラクションだ。
たとえば、季節の食材を使ったシェフおまかせコース(8,800円)では、最初にでてくる料理がなんと小さな缶詰だ。驚くなかれ、それは缶詰の形をした小さな陶器で、蓋を開けると中からアミューズブーシュが現れる。米ナス・信州サーモンのタルタル・心地良い酸味のクレームエペスが緻密に層をなし、その上に雲丹・キャビア・穂紫蘇が飾られた一品。小さなスプーンですくって一口、すべての食材の塩味・甘味・苦味・うま味・酸味が一体となって口内を支配し、食べ手の心を刺激する。見た目の可愛らしさだけではなく、その小さな缶詰の中にきちんと構成された料理としての完成度も高い。そして、兵庫県室津産の牡蠣のグラタンが岩塩の上で炎を上げたり、長崎県対馬の穴子を使った一皿では、穴子が一つのアルファベットとなって皿の上にCongre(フランス語で穴子)の文字が描かれていたりと、ちょっとした仕掛けなのだが、いちいち楽しませてくれる。
料理が奏でる無限のメロディ
ただ、それらは奇抜さだけを求める無意味な演出ではない。シンプルに「美味しい」ことが大前提であると、シェフは言う。食材の組み合わせや、料理と仕掛けの組み合わせは、音と音の組み合わせが生む音楽のメロディと同じことだ。基本の和音に加えるちょっとしたアクセントが、心地良い楽曲となって聞き手の耳にとどく。様々なオクターヴ(音階)の組み合わせによって、無限のメロディが奏でられるのと同様に、食材の組み合わせや見せ方次第で、料理も無限の可能性が生まれるのだ。音楽と料理という二つの芸術性を持ち合わせる小林シェフの料理は、五感をフル稼働して楽しむべき食のアトラクションだ。
L'Octave Hayato KOBAYASHI (ロクターヴ)
- 電話番号
- 03-5770-8827
- 営業時間
- LUNCH 11:45~(13:00 L.O.)※土日祝日のみ DINNER TIME 18:00~(21:00 L.O.)
- 定休日
- 定休日 水曜日 (祝日の場合は営業)
- 公式サイト
- http://www.loctave.com/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。