「一人で飲んでいると物欲しそうに見られて嫌だ」とバーについて語る女性は少なくない。逆に一人でふらっと入って来た女性客に、目が釘付けになったことがある男性は多いのではないか。酒を目当てに行く場所であっても、男と女の偶然の出会いを期待することは否定できない。だが、気分転換に立ち寄ったバーで、見知らぬ男性からしつこくされるのは女性にとって災い以外のなにものでもない。そんな独り飲みが好きな女性におすすめなのが銀座にあるガスライトEVEである。
女性初の世界チャンピオンが店長
店長を務める高橋直美さんは、「パレスホテル東京」「ガスライト本店」を経て、2015年11月にオープンした「ガスライトEVE」の店長となった。国内の数々のカクテルコンテストで優秀な成績をおさめ、2012年には全国バーテンダー技能競技大会で総合優勝を果たした。さらに2013年には、ワールドカクテルコンペティションのチェコ・プラハ大会に日本代表として出場。見事、プレ・ディナーカクテル部門で優勝して、日本人女性バーテンダーとして初の世界チャンピオンに輝いた。女性というキーワードにこだわらずとも、高橋さんの作るカクテルを目当てに客は訪れる。
孤独に酒を楽しめる広い造り
銀座のバーは狭いところが多い。化粧室に席を立つとき、カウンターに並んで座る客にぶつからないように、気を遣いながら横歩きしなければならない店さえある。日本で一番高い地価を考えれば無理のない話なのだが、ガスライトEVEは驚くほど広い。カウンターに座っていても、後ろは人がすれ違えるほど。隣の席との間も十分なスペースがあり、身を寄せ合うように座る必要がない。いわゆるパーソナルゾーンが確保されているため、ほかの客と不必要に言葉を交わすことがなくて済む。独り飲みの女性客にとって快適である所以だ。
バーテンダーが全員女性であるというのも珍しい。客席も同様。女性が半数近くを占めることも珍しくないという。同じ銀座のBAR保志IRIS(イーリス)も女性バーテンダーの店というふれこみだが、たまに男性スタッフが混じることがある。
もし、一人で訪れた女性客が、ほかの男性客にからまれることがあったとしても、店長をはじめとしたスタッフが目を光らせている。どんなに女性客が多いからといって、それを目当てに行けば失望して帰ることになるだろう。裏を返せば、物欲しそうに見られずに、女一人でも純粋に酒を楽しめる空間として希有な存在なのだ。
隅々まで磨き上げた気持ちのいい空間
「銀座はバーの激戦区です。だから記憶に残るサービスをしたいと思っています」
店長の高橋さんの言葉に迷いはない。客席から見てカウンターの一番右奥に、バックヤードへの出入り口がある。スタッフは扉を開ける前に、必ずノックをする。目の前に座る席の客に気を遣ってか、決して大きい音で叩くのではなく、小気味のいいリズムでコンコンと響かせる。まるで良く稽古された舞台のように、スタッフの動きがスムーズだ。おそらく、高橋さんはかなり厳しくスタッフに指導しているのではないかと想像させる。
印象的なサービスは接客にとどまらない。徹底した掃除が、この店のセールスポイントだ。カウンターだけではなく、イスの脚も毎日拭いているというから驚きだ。客の足があたるカウンターの下の部分にいたるまで磨き上げている。このためスタッフは全員、13時には店に入る。夜遅くなることから、他のバーでは15時過ぎの出社を認めているところが少なくない。
では、カクテルコンテストを控えているときはどうするのだろうか。閉店後に朝まで練習するのが一般的だ。これに対してガスライトEVEでは、午前中に出勤して取り組むのだという。
バーで味わうと同じ銘柄のウイスキーのロックでも、普段とは味が違うという話を良く耳にする。使うグラスや氷の問題もあるが、何よりも空間そのものを、どこまで客のために整えるかに心をくだく。バーで飲む酒は舌でだけ味わうのではない。五感を満足させなければならない。
今晩もいい女がカウンターで一人カクテルを飲んでいる。声をかけたい気持ちをぐっと堪えて、世界チャンピオンの酒を楽しもう。
チャージ1,000円 サービス料10%
ジントニック1,300円 パローネ1,500円
料金はすべて税込
ガスライトEVE
- 電話番号
- 03-6274-6393
- 営業時間
- 18:00~翌3:00、土・祝17:00~23時
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。