オートロックで扉が開く、たった5席の特等席へ! すでに予約が困難な渾身の「天ぷら専門店」【銀座】

2018年07月06日
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オートロックで扉が開く、たった5席の特等席へ! すでに予約が困難な渾身の「天ぷら専門店」【銀座】
Summary
1.毎朝仕入れる食材を使う天ぷらは、旬の野菜と採算度外視の魚介が主役
2.天ぷらの枠を超えて、天ぷらをアレンジした一品も連打。工夫を凝らした別品!
3.たった5席の特等席! 妥協をしない料理人の心意気に惚れる

小さな天ぷら専門店は「指静脈認証」で扉が開く

「天ぷら」を専門に掲げる老舗や名店が多い銀座エリア。敷居の高い店から庶民的な店まで揃うが、いざ「天ぷら」を食べようと企てても、どこへ行けばいいのか悩む。馴染みの天ぷら店を持たぬことを悔やむ。そんな時、ある噂を聞いた。

「たった5席のカウンターしかなくて予約が困難だけど、有名ホテル出身の料理人がいる天ぷら店ができたよ」と。

初夏の陽気を感じる、とある日の正午。予約して銀座のそのビルの前に着くと、パリッとした白衣のスタッフが、「お待ちしておりました」と、迎えてくれた。階段を降りると和風の入り口があり、オートロックになっている。

「指静脈認証で開くので、初来店の方はお迎えさせていただいています」。一見のお客が、ふらりと入店できない仕組みなのだ。ドアが開き、侘び寂びを感じる通路を経て案内されるそこは……

L字のカウンターにたった5席をゆったりと配置した空間。まるで「天ぷらの間」ではないか! 料理人が立つ舞台を囲むように着席すると、思わず「ち、近い」。

こんなに近くで天ぷらを揚げてもらって、その揚げたてを食べるのか!? これから始まる時間を想像しただけで、前のめりになってしまう。写真上の丸い物体は、油が飛ばないよう傘がわりに置かれている銅鍋だ。

個室もあるが、臨場感たっぷりに天ぷらを楽しむなら、ぜひこのカウンターへ。4~5名なら貸切もできるのが魅力で、家族5人のお祝いごとに、ママ友2人が子連れでリフレッシュなどの予約もあると聞き、なるほど! 貸切可能な天ぷら店は、もしや、銀座唯一かもしれない。

天ぷらの王道「エビ」は一番きれいな油で揚げたくて!

ヘルシー志向が定着し、カロリーを気にして揚げものを好まない人が増えているが、献立の主役は旬の野菜で、使う油は極めて上質、さらに天ぷらだけでなく華やかな一品料理をちりばめたコースは、従来の天ぷら店の印象を見事なまでに覆してくれる。

「老舗や名店が多い銀座で、昨年末に暖簾をあげさせていただきました。新参者ですが、認めていただけるよう、培ってきたことに新しいアイデアをプラスしています」。

そう語るのは、『プリンスホテル』など有名ホテルで腕を磨き、ふぐ料理専門店など和食畑を歩んできた料理人、尾畑秀雄さん。

席に着くと、尾畑さんはまず、木箱に並んだ今日の食材(写真上)を見せてくれる。みずみずしい野菜、ピチピチの魚介を前に、またもや前のめりになってしまう。

毎朝築地より仕入れる旬の野菜や魚介は、季節の移り変わりとともに毎日変化する。「春は山菜づくしで野生のパワーを味わっていただきました。コシアブラ、ワラビ、コゴミなど。スタッフの田舎から届くので、そりゃ新鮮でした。夏に向かって、万願寺とうがらし、水ナスや赤ナスも出てきますね」(尾畑さん)。

続いて、かわいい木桶に入った車エビが登場。天ぷらと言ったら思い浮かべる、天ぷらの王様とも言うべきエビだが、こちらの店で使うエビは、その日一番いい車エビ。この日は鹿児島産だった。

「エビは一番きれいな油で揚げたくて」と、先付に続く、トップバッターとして登場する。

コースが始まる直前に運ばれてくる、大根おろし(写真上・手前左)、カツオと昆布のやわらかな風味を放つだし(同・手前右)、トリュフ塩(同・右奥)。好みで使うのだが、まずは何も使わずに、素材、衣、油だけの、飾らない天ぷらを味わいたい。

車エビの頭と殻はじっくり揚げて、美濃焼の器で供される。「エビの頭と殻専用の器を探していて、見つけました」と尾畑さん。コツコツと集めた大切な器も使っているので、器談義にも花が咲きそうだ。

最高の素材、ブレない衣、質の高い油、そして揚げのワザが一体化

尾畑さんの天ぷらは、衣が薄いのが特徴だ。「たくさん食べてもらうこと、素材の味を最大限に伝えることを考えると、薄いほうがいいんです」という。

小麦粉は北海道産。卵は宮崎県産。素材がいいのはもちろん、双方の相性が優れていてなめらかに混ざり合う。薄い衣をまとった素材が、たっぷりの油で軽やかに踊っているのだろう。揚げたての熱々を頬張ると、サクッとするが、やさしい食感に仕上がっている。

油は、「太白ごま油」「太香ごま油」そして、貴重な「JUNKO OIL」をブレンドする。ビタミンEや大豆レシチン、オメガ3系脂肪酸も豊富で、油を敬遠している人も油の質の良さを知れば、安心だろう。とにかく軽く、身体にすっと馴染むのだ。

「いい素材を仕入れ、ブレない衣と油があって、僕はただ揚げているだけです」と、尾畑さん。あまりにも謙虚なひと言に、返す言葉が見つからず、揚げ続ける手元をただただ見惚れる時間が過ぎていく。

「天ぷらなので、時々さっぱりしていただきたくて」と、コースにちりばめられた小鉢が魅力的。「箸休め」と表現するにはもったいない一品が揃う。

北海道・昆布森産の毛ガニ、イチジク、沖縄のスイートコーンを使った先付。和牛トモサンカクと旬菜を合わせ、ナッツが香るわさびドレッシングで合えた一品。出始めの秋田のジュンサイ、オクラ、春菊からなる一品(写真上)など。

また、揚げたての天ぷらをそのままではなく、「わっ!」と思いもつかないアレンジで登場させることも。写真上は、ナスの天ぷらにフグの白子を乗せ、カニと海苔のあんがかかった一品。「おお〜、そう来たか!」と、心の中で叫んでしまう。

「創作料理にはしたくないけれど、コースの流れの中でお客様を飽きさせないよう工夫しています。そして、つい、創作してしまって……」。

さらに一品料理は、日本酒を飲む人、ワインを飲む人で変化するという心配り。そんな尾畑さんの心意気は、お客の心をしっかり掴み、開店以来、毎月必ず地方から通う常連客もいるという。

なお、お酒は、ビールもワインもラインナップしているが、辛口を中心にセレクトする日本酒が圧倒的に人気で、常時10種類ほど揃える。

妥協なし! 渾身の「天ぷら」が楽しめます

〆の食事は「天丼」(写真上)。ご飯の上に、アナゴ、豆キンキ、キス、レンコン。さらに、イクラの醤油漬けとアワビの肝が乗る。

まずは「天丼」として、サクサクの天ぷらと、ふっくら炊き上がったご飯を楽しみ、途中でだしを注ぎ、「出汁茶漬け」と、二度楽しめる〆のご飯。あれよあれよとお椀は空っぽに。

「妥協することなく、これまで培ってきたこと、新しくひらめくアイデアで、常にたくさんの引き出しを用意して、臨場感たっぷりに楽しんでいただきたい」と、語る尾畑さん(写真上・左)と、尾畑さんの右腕を務める新潟県出身の小林巧さん(同・右)。

帰り際、再訪を約束して指静脈認証を登録。次回は小林さんのお迎えがなくても、オートロックを開くことができるのだ。

店名と連絡先は下記にあるので、大切な人を誘って、すぐ予約してみては?

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小田中雅子
ライター
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ライター/作詞家/ミュージシャン