ジビエ「エゾ鹿のロースト」の旨さに感嘆!西麻布のビストロ『ル ブトン』

【腕利き料理人が通ううまい店】世の食いしん坊たちを魅了する腕利き料理人こそ、選ばれし生粋の食いしん坊。好奇心を刺激しに、疲れた身体を癒やしに通う店には、間違いない味と心意気がある。料理人から料理人へ、バトンを受け継いでとっておきの一軒を追う。

2018年10月10日
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ジビエ「エゾ鹿のロースト」の旨さに感嘆!西麻布のビストロ『ル ブトン』
Summary
【サマリー】
1.季節の味とワインのマリアージュが魅力の『コンフル』井原摩耶シェフが通う店
2.「いいものをいい状態で、適した調理を」シェフとしての基本姿勢を学んだフレンチビストロ
3.魚介スープは丁寧にうまみを引き出し、鹿肉には根セロリを合わせて。オリジナリティの奥に光る伝統

連載 第9話:『bistro-confl.(ビストロ・コンフル)』シェフ 井原摩耶さんが通う店

料理人から料理人へ、バトンを受け継いでとっておきの一軒を追う連載【腕利き料理人が通ううまい店】。

豚モツ料理で有名な『久遠の空』の遠山隆昌さんからバトンを受け継いだのは、駒沢大学のフレンチビストロ『コンフル』のメインシェフ、井原摩耶さん。『コンフル』はチームワークが生み出す信頼の味と居心地のよさ、必食の定番メニューと季節の食材を散りばめたラインナップがニーズをとらえ、おひとりさまでもゆるりと楽しめる大人の居場所。ゲストの胃袋をぎゅっとつかむ井原シェフが日頃通うのは、研修に訪れ、常に教えを求めるシェフが腕をふるうフレンチビストロだという。味、姿勢に影響を与える店とは。

ここからは、井原さん自らに語っていただきます!

落ち着いた木目の外観。シェフと距離の近いフロアは毎晩活気に満ちる

東京メトロ千代田線乃木坂駅や表参道駅から徒歩15分あまり。西麻布の街道沿いに、私が通うフレンチビストロ『Le Bouton(ル ブトン)』はあります。カウンター中心のフロアは連日にぎわっていて、みなさん杉山将章シェフの料理に魅了されています。もちろん私もそのひとりです。
 
杉山シェフと知り合ったのは3年ほど前、『コンフル』のスタッフに教えてもらったのがきっかけでした。フランスのエスプリが息づくカフェレストラン『オーバカナル』で働いていたという共通点もあって親しくさせていただき、味わいはもちろん店の雰囲気など、自分がめざしたい理想像のひとつに出逢えたという思いが強かったです。その後杉山シェフから学びを受けたいと研修に訪れたり、季節が変わるごとに友人や仕事仲間と食事しに来たりしています。

カウンター越しにシェフと話せるスタイルは『コンフル』と同じですが、カウンターと厨房の高さが違うので、シェフの手さばきや鍋の様子も手に取るようにわかり、より臨場感があります。その姿を見ているだけでも勉強になります。
『ル ブトン』の料理は2つの黒板にずらりと並んだメニューから選ぶスタイル。季節の食材によって、ラインナップは変化していきます。

基本は2人前ですが、シェフがおなか具合をさりげなく確認しながらポーションを柔軟に変化させているので、無理なく楽しめるのもポイント。今回は、『ル ブトン』の秋展開のメニューからマイベスト3の料理を紹介します!

第3位:「炙り〆サバとナスピューレ、パクチー」

去年食べて感動したひと皿。また登場する時期を待っていました。
下に敷かれているのが「キャビア・ド・オーベルジーヌ」。ナスをローストして粗くたたき、ピューレ状にしたフランスの家庭料理です。季節の味にしっかりとクラッシックな技が反映されていて、初心にかえります。自分の料理の考え方や手順、味のズレはないか、確認したくなる一品でもあります。

▲直前にバーナーで炙り、キャビア・ド・オーベルジーヌにのせ、パクチーをトッピング。

「このナスのピューレはキャビア・ド・オーベルジーヌの発展系みたいなもので、にんにくとクミンを加えています」と杉山シェフ。
なるほど。〆サバは酸味がやわらかく脂がとろけてスパイス香るピューレとなじみ、パクチーの風味がふわっと漂います。フランスはアフリカ大陸が近いので、このようなエキゾチックな料理文化もあり、魅力的。このサバは、何で〆ているのでしょう?
「皮目だけ塩をして30分くらいおいて洗い、少し甘めの白バルサミコ酢で〆ています」。惜しみなく教えてくださるシェフ。ついつい細かいことまで聞いてしまいます。

合わせるワインは「MUSCADET COTES DE GRANDLIEU SUR LIE HERBADILLA 2007」。時を経たミュスカデはめずらしいですね。甘くやわらかな吟醸香で、後口はすっきり。サバとよく合います。

第2位:「スープ・ド・ポワソン 魚のスープ」

ビストロの定番ともいえる、魚介のスープです。その日の魚介のアラを数種類と、トマトなどの野菜を合わせてじっくり煮込んで作ります。写真の色からも伝わるように、とても濃厚。ていねいな仕事がストレートに伝わってくる一品。

▲魚は相模湾や築地から。今日は車エビ、穴子など。金目鯛のあらなどを焼いて加えることも。

とろっとして濃厚! このとろみは、穴子のゼラチン質ですね。
『ル ブトン』のスペシャリテに「江戸前穴子パイ」という料理(これも決まって食べるお気に入りのひとつ)があって、そのアラが使われています。

「スープ・ド・ポワソン」は、『オーバカナル』時代から培ってきた原点回帰の味。野菜の量は少なめで魚介の味が濃く、いろいろなうまみが押し寄せてきます。合わせるのは「Chateau de la Charriere Santenay Sous la Roche 2014」。味わいの濃いシャルドネが、エビの風味とぴったりです。

「スープ・ド・ポワソンは、フランスのビストロに昔から必ずあって今も残る料理。ベースは僕自身も修業で身につけてきたものですが、魚介が変わったり、煮込み具合や調味を気候や季節に合わせたり、今も日々試行錯誤、自分なりの解釈を重ねながらオリジナリティを追求しています」と杉山シェフ。基本を熟知した技術の“先”、私も見つけていきたいです。

第1位:「北海道産 エゾ鹿のロースト」

いよいよメインの登場です! 鉄板でじっくりと焼かれた鹿肉は、しっとりとしてピュアな味わい。臭みがないので、鹿肉料理定番の甘酸っぱいソースではなくシンプルな赤ワインソースを合わせています。

▲信頼する北海道の業者から、質のいい鹿モモ肉を塊で入手している

▲極厚の鉄板でじっくり火入れ。中心は美しいピンク色、肉質がきめ細やかでしっとり。

ナスとともに添えてあるのは鹿肉に定番の付け合わせで、フランス産根セロリのピューレ。口に含むと香りがふわっと広がり、肉のおいしさを引き立てます。赤ワインソースは黒こしょうが入っていて、スパイシーな南仏の赤ワイン「Domaine de la Rochelierre Fitou Privilege」との調和もすばらしい。

杉山シェフは、調味料もご自分で作られます。例えば隠れ人気のナポリタンは、お客様のご要望で作ったメニュー。肝となるトマトケチャップは、自家製です。

「お客様のリクエストが自分を成長させてくれます。料理人としての“筋力”がついていく感じ」と杉山シェフ。研修では、料理もお教えいただきましたが、冷蔵庫をきれいに保ち、食材にあった保存法、鮮度を保つ下ごしらえなど、いいものをいい状態で提供する基本姿勢を学べたことにとても感謝しています。

絶え間ない探究心で、伝統に+αのエッセンスを加えていく杉山シェフ。心が広く、尊敬する大人像のひとりです。経験を積んで、地に足をつけて成長していきたい。今日もまた目標が見えた料理、シェフ、ごちそうさまでした。これからもよろしくお願いします!

【編集後記】
井原さんは撮影中も食材の産地や扱い方など気になることを質問され、杉山シェフは惜しみなく丁寧にこたえていく。おふたりの料理に対する真摯な姿勢が信頼関係を育んでいます。ビストロの伝統料理「スープ・ド・ポワソン」は超濃厚で存在感絶大! 骨の髄までおいしく食べるフランス人の心意気がずしっと届く一品でした。

撮影:榊智朗


【メニュー】
炙り〆サバとナスピューレ、パクチー 1,600円
スープ・ド・ポワソン 魚のスープ 1,500円
北海道産 エゾ鹿のロースト 3,200円
※上記はすべて通常ポーション(2人前)の価格。1人前もご用意できます。
グラスワイン 1,200円~
※価格はすべて税別、別途サービス料5%

Le Bouton

住所
東京都港区西麻布2-15-1 1F
電話番号
050-5487-3315
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~土
18:00~23:00
(L.O.23:00)
定休日
日曜日
第1月曜日、第3月曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/3vsthmh80000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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