名店クラスの味と気さくで自由なムード。日常以上特別未満のコの字酒場は居酒屋の進化形・野毛『金井商店』

【連載】幸食のすゝめ #086 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2019年03月21日
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名店クラスの味と気さくで自由なムード。日常以上特別未満のコの字酒場は居酒屋の進化形・野毛『金井商店』
Summary
1.数々の繁盛店を手掛けた設計士との出会い。横浜・野毛に誕生したコの字カウンターの居酒屋
2.自然派も網羅したワインや選び抜かれた日本酒、自家製レモンサワーなどジャンルを越えた豊富なドリンク
3.心地いい音楽と空間のなかで自由に愉しむ、うまい酒と料理

幸食のすゝめ#086、グラスの星屑には幸いが住む、野毛。

「俺、設計士なんだよね」、その言葉から急に物語が展開し始めた。
場所は鎌倉の『祖餐(そさん)』。自然派ワインに造詣が深い石井英史さんと妻の美穂さんが営む、古民家をリノベーションした小さなワインバーだ。
店の中央に大きなテーブルが置かれていて、訪れた客たちは知らない同士で卓を囲む。
そのシチュエーションは、静かで凛とした店の空気と共鳴しながら、やがて集った客たちのコミュニケーションを繫いでいく。

初めて自分たちの店を造ろうとしていた金井竜さんと友里さんは、実現間近になって、自分たちの夢を形にしてくれる設計士を探し倦(あぐ)ねていた。
都内や横浜市内のお好み焼き屋、バー、イタリアンダイニング、幅広い業態の飲食を経験し、5軒の店の店舗立ち上げも経験した。現在、渋谷で予約が取れない店として有名な『酒井商会』もその1つだ。
だからこそ、夢の集大成ともいうべき店の実現に慎重になっていた。
そんな時、目の前に現れたのが数々の人気店の設計を手がけた矢野寛明さんだった。
その瞬間、『金井商店』の物語は、2人の夢からリアリティへと変わって行った。

「『(大衆ビストロ)ジル』って知ってる?『シナトラ』とか『ビートル』とか…」、すべて都内の超繁盛店だった。
この人に任せてみよう、2人の心の中のインスピレーションが繋がった。
それからは毎晩のように、店のアイデアについて、電話で何時間も矢野さんと話し合った。
椅子の色、高さ、肘おき、ビールタップ、カウンターの形状、導線…。
店内に流れる音楽や、スピーカーの種類にまで話は及んだ。
これまで経験してきたすべてを、自分たちの店に詰め込みたかった。

「俺はさぁ、魔法使いじゃないんだから。もっと要素をまとめようよ」、とうとう矢野さんから駄目出しが出て、もう一度、1から考え直した。
自分たちがやりたいものって、なんだろう? 答えは「居酒屋」だった。

そのリクエストを受けて、矢野さんが提案したのは、店の中央にコの字カウンターを配することだった。
歴史を重ねた有名な居酒屋には、必ずと言っていいほど存在感あるコの字カウンターが存在する。

コの字カウンター上で存在感を放つ6つのタップを持つビアサーバーは、冷蔵庫の天板を抜いて、米『マイクロマティック社』の機器を繫いだ。樽冷蔵式のサーバーから注がれるクラフトビールの味は、早くもビール党たちの話題になっている。

もちろん、自然派も網羅したワインや選び抜かれた日本酒、コアントローを垂らした自家製レモンサワーなど、ドリンク類のバラエティも豊富。ジャンルを越えたドリンク選び、そこにも居酒屋というスピリットが貫かれている。

何物にも縛られない、居酒屋という名の解放区

「イタリアンの店に納豆キムチがあったらおかしいし、ピッツェリアならイタリアワインとか、そういう縛りに囚われたくないんです。ウチはオリーブオイルも使うけど、ゴマ油も使う。酒も、料理も、居酒屋って、とにかく自由なんです」。
自由だから、これまで関わった店へのオマージュメニューも敬意を込めて再現する。

渋谷『酒井商会』の看板メニューの1つ、ハムカツは、「渋谷の厚切ハムカツ」として酒場の激戦区・野毛でも人気メニューになっている。
「おつまみピータンにかかってる腐乳のソースおいしいね」、客が話しかけると、
「それねぇ、少し手伝ってた『タンメン・カントナ』の味なんですよ」、悪戯っぽい笑顔で金井さんが答える。

日常以上特別未満、それは最良の居酒屋の定義

天井際に置かれたJBLの大きなスピーカーは、真空管アンプに繫がれている。
流れる音は、ファンクやジャズ、ロック、何れもグルーヴ感に満ちたものだ。
片方の壁には、プロジェクターから投影された洋画。野球やサッカーの季節には、スポーツもライブで流すという。

2人が尊敬する『酒井商会』や『KAN』などの名居酒屋クラスの味と、スポーツバーなみの気さくで自由なムード。
メニューに書かれた、「日常以上特別未満」という店のスローガン。
それは何よりも、たくさんの酒場が連なる横浜の野毛という地域性にぴったりフィットしている。

夫はコの字カウンター、妻はコンパクトな厨房のコンロ奥。交錯しない導線が、たった2人とは思えない高パフォーマンスを発揮する。

てきぱきした妻の動きと、開放感に溢れ、どこまでもしなやかな夫の接客、うまい酒と料理、心地いい音楽…。
半透明になったカウンター上の吊戸棚には、無数のグラスホルダー。
ほろ酔い加減になりながら頭上を見つめると、グラス越しの光が数え切れない星屑に見えてくる。

グラスの星屑には、幸いが住んでいる。

【メニュー】
つまみぐい盛り 880円
金井商店のポテサラ 580円
牛肉とドライトマトのきんぴら 680円
渋谷の厚切りハムカツ 780円
八丁味噌香る洋風もつ煮 780円
おつまみピータン 480円
生姜香るスペアリブ土鍋ごはん 1,280円
金井商店のレモンサワー 580円 
ハイボール 580円
日本酒 680円~
ビール各種 S 580円/M 980円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。

※『dressing』プレミアム読者限定の読者プレゼントあり※

『金井商店』より、dressing読者へプレゼントをご用意いただきました。
特典をゲットして、森一起さんおすすめの店『金井商店』の料理とお酒を堪能しましょう!

※取材時にいただきましたご来店時特典は、2019/4/21(日) まで有効です。

ご来店時特典は…! (続きは「今すぐ続きを読む」へ)

金井商店

住所
〒231-0064 神奈川県横浜市中区野毛町1-15 はやせビル1F
電話番号
045-334-7703
営業時間
18:00~24:00
定休日
不定休
公式サイト
https://www.facebook.com/%E9%87%91%E4%BA%95%E5%95%86%E5%BA%97-1458982214232871/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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