【特集】なぜ今、「マニアック中華」が流行っているのか。そこには、日本人ならではの2つの理由があった

2019年07月08日
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【特集】なぜ今、「マニアック中華」が流行っているのか。そこには、日本人ならではの2つの理由があった
Summary
1.中国料理の体系「中国八大料理(八大菜系)」とは?
2.中国料理ブームは、よりマイナーな湖南・雲南・貴州・台南地方へシフト中
3.予約困難店から個性派店まで、大注目のマニアック中華料理店4選

空前の「中国料理ブーム」が到来中!

日本でもお馴染みの中国料理。そもそも「中国料理」と「中華料理」は全くの別物である、というのはご存知だろうか。「中国料理」は本場中国で食べられている料理を指し、「中華料理」は日本人向けにアレンジが加えられた日本独自の料理をいう。

中国料理のなかでも、ここ数年、全国的にブームになっているのが「四川料理」だ。

“しびれ料理”とも呼ばれ、ピリリとしびれるような辛みを持つスパイス「花椒(ホアジャオ)」や唐辛子を多用するのが四川料理の特徴。そんな四川料理は2017年頃から瞬く間に人気グルメとなり、東京・新宿で毎年開催されている「四川フェス」は、連日大盛況。その注目度の高さは歴然だ。

「四川料理」といえば、広東料理、山東料理、江蘇料理と並ぶ「中国四大料理」に含まれるが、本場中国ではさらに細かく分けた「中国八大料理」が一般的な分類。

そして、よりマニアックな美味を求めるグルマンが熱視線を注ぐのが、その「中国八大料理」からもはずれるほどにマイナーな「少数派民族料理」だ。

これからは、よりマイナーな地域の「マニアック中華」に注目が集まる!

日本での認知度はまだ低いが、中国の辺境にある郷土料理や、貴州省や雲南省などの少数派民族の料理(をベースにした料理)を提供する店は、日本国内にも点在している。本稿では、それらを「マニアック中華」と呼ぶことにしよう。

dressing編集部がオススメする「マニアック中華料理店」 はのちほど紹介するとして、まずは「中国四大料理」、「中国八大料理」についておさらいしていこう。
全体像を掴んだところで、ディープな「マニアック中華」の世界に足を踏み入れていただきたい。

【目次】
1:「中国四大料理」をおさらい!
 1-1:山東料理とは
 1-2:四川料理とは
 1-3:広東料理とは
 1-4:江蘇料理とは

2:「中国八大料理」、全部言える?
 2-1:福建料理とは
 2-2:浙江料理とは
 2-3:湖南料理とは
 2-4:安徽料理とは

3:まだまだある!「マニアック中華」
 3-1:雲南料理とは
 3-2:台南料理とは
 3-3:貴州料理とは

4:なぜこんなに分岐しているのか?
5:なぜ今、「マニアック中華」に人気が集まるのか
6:dressingおすすめのマニアック中華料理店

【1】いまさら聞けない「中国四大料理」をおさらい

中国は日本の約26倍の広大な面積を誇り、漢民族を含めて56もの民族で構成されている。

食文化においても、「南淡・北鹹・東酸・西辣(東部は酸っぱく、西部は辛く、南部はあっさり、北部は塩気が強い)」と言われ、最も大きい分類として「広東料理(かんとん/南方系)」、「山東料理(さんとん/北方系)」、「江蘇料理(こうそ/東方系)」、「四川料理(しせん/西方系)」の4つに分かれる。

■広東料理(かんとんりょうり)

広東は温暖な気候で、海にも面しているため水陸ともに食材に恵まれた地域。「4本足のものであれば、机以外なんでも食べる」と言われるほど、実にさまざまな素材を料理に使う。

鎖国政策をとっていた清の時代でも、唯一外交に積極的だったため、ケチャップやソースなどの調味料、フカヒレやツバメの巣などの高級な乾物、プリンやパイなどの製菓技術など、西欧の食文化をいち早く取り入れることができた。

調理法としては、焼き物・蒸し物が得意。日本でもお馴染み「飲茶(ヤムチャ)」は広東料理の代表格だ。

<特徴を一言で言うと?>
蒸し料理にすぐれ、外国の技術や食材を説教的に取り入れている

<主な料理>
小龍包、焼乳猪(子豚の丸焼き)

■山東料理(さんとんりょうり)

中国で最も歴史が長いのが山東料理。調理技法も最も豊富とされ、非常に難易度の高い料理だ。

なかでも、淡泊で上品なコンソメスープと、純白で濃厚な白濁スープの調合に長けており、味付けは塩気が強め。ネギ、生姜、ニンニクを使って香りづけすることが多い。

北京ダックでお馴染みの北京料理の源とも言われ、明・清時代の宮廷料理では山東料理が主流を占めていたという。

<特徴を一言で言うと?>
柔らかい歯ごたえと塩辛い味付け

<主な料理>
ナマコ料理、一品官燕(燕の巣のスープ)

■江蘇料理(こうそりょうり)

煮込み料理が多いのが特徴。少ない水分で、弱火かつ長時間で煮込む調理法を得意とする。

とはいえ、形が崩れるほどに柔らかくすることはなく、食材そのもののうまみを活かした料理が多い。全体的に淡泊な味わい。

<特徴を一言で言うと?>
旬食材そのもののうまみを生かした煮込み料理が豊富

<主な料理>
水晶肴肉(豚肉塩漬け煮こごり固め)、松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)

■四川料理(しせんりょうり)

四川は周囲を山に囲まれた広大な盆地であり、年間を通して天気が崩れやすく、湿気が多い。そのような気候の中で、食欲をうながすために山椒や唐辛子などの香辛料を多用するようになったのが四川料理のルーツだ。

また、内陸に位置しているために海から遠く、新鮮な海産物を扱うのが難しいというハンデがあることで発達したのが乾燥食品。アワビやホタテなどの貝類も、乾燥させたものが調理に使われることがほとんど。

<特徴を一言で言うと?>
山椒や唐辛子を多用した、ピリッと刺激的な味わい

<主な料理>
麻婆豆腐、担々麺、回鍋肉など

【2】「中国八大料理」、全部言える?

「中国四大料理」をさらに細かく分けたものが「中国八大料理」。
上記で説明した四大料理以外に、「福建(ふっけん)料理」「浙江(せっこう)料理」「湖南(こなん)料理」「安徽(あんき)料理」がある。

■福建料理(ふっけんりょうり)

華南地方に位置しており、雨量に恵まれた温暖な気候。海岸の地であることから、新鮮な海の幸をふんだんに使用し、とくに海鮮スープの種類が多い。また、包丁技術にも優れていて、繊細かつ鮮やかな盛り付けも特徴。

「紅糟(ホンザオ)」という真っ赤な色をした麹や、小エビを発酵させた調味料など、ユニークな食材も多い。

<特徴を一言で言うと?>
新鮮な海の幸をふんだんに使用し、食材そのものを活かした日本人好みの味

<主な料理>
仏跳墻(山海の珍味の瓶詰め蒸し)、太平燕(アヒルの茹で卵を入れたスープワンタン)、肉燕(小麦粉に豚肉を練りこんだ麺)

■浙江料理(せっこうりょうり)

杭州(コウシュウ)、寧波(ニンポー)、紹興の料理を代表とする浙江料理。

特有の丘陵地帯や、ユネスコの世界文化遺産にも登録される「西湖(シーフー)」で採れた野菜や魚介などを使い、素材の味を最大限に引き出したあっさりとした味付けの料理が多い。

<特徴を一言で言うと?>
全体的にさっぱりしているがやや塩辛い味付けで、鮮やかな盛り付けが特徴

<主な料理>
東坡肉(豚肉の角煮)、龍井蝦仁(エビの龍井茶炒め)、叫花鶏(鶏の泥包み焼き)

■湖南料理(こなんりょうり)

四川と同様に湿気が多い地域で、食欲を促すために唐辛子を多く用いる。

「四川人不怕辣、湖南人辣不怕、貴州人怕不辣」という言葉があり、訳すと「四川人は辛さを恐れず、湖南人は辛くないことを恐れる」という意味。

四川の麻辣(マーラー)に対し、湖南は酸辣(スゥァンラー)。ピリッとした辛さだけでなく、辛さの中にも酸味を伴うのが特徴。発酵、塩漬け、燻製などの保存食品も発達している。

<特徴を一言で言うと?>
「中国で一番辛い」とも言われ、とにかく酸っぱ辛い料理が多い

<主な料理>
湖南鱼子豆腐(発酵させた川魚の白子や卵巣で作る麻婆豆腐)、刹椒魚頭(鯛の頭の発酵唐辛子蒸し)

■安徽料理(あんきりょうり)

山が多い安徽省。今でこそ工業が発達しているが、昔は農業が盛んだったため、野菜や豆類を使った料理が多い。
家畜や狩猟でとれる肉類、川魚や淡水魚を使用することも多く、保存のために塩漬けや燻製なども多用。

調理法では、蒸し料理や煮込み料理が好まれる。塩、醤油、油を多く使うため、やや濃い目の味付け。

<特徴を一言で言うと?>
蒸す、煮込むといった調理法が好まれ、味付けはやや濃い目

<主な料理>
毛豆腐(豆腐にカビをはやした発酵食品)、符離集焼鶏(鶏の丸ごと煮込み)

【3】まだまだあります! マニアック中華

「中国八大料理」にも含まれない、中国の中でもよりマイナー地域の郷土料理。それぞれの概要を掴んでおけば、いざ食べたときの驚きや愉しみがより深まるはず。

■雲南料理(うんなんりょうり)

四川省に隣接し、標高1,500~2,000メートルに位置する雲南省は、手付かずの自然が至る所に残された地域。

“植物王国”“キノコの故郷”などと呼ばれるほど、野菜、山菜、キノコが豊富に採れる。また、米の種類もインディカ米・赤米・黒米と多い。

なかでも、キノコの火鍋は美容効果への期待もあり、女性から支持を受ける。

<主な料理>
野生菌火锅(キノコの火鍋)、過橋米線(米からできた麺を入れた熱々のスープ)

■貴州料理(きしゅうりょうり)

貴州料理は、現地の少数派民族の食文化と、外来の食文化が混ざり合ってできた料理。

山の幸に恵まれたが、内陸にあるために塩がとれず、交通の便もよくなかったことから、塩の代わりとして唐辛子や酢、さらには穀物などを用いた酸味料が作られた。そのため、辛みと酸味の強い料理が多い。
また、「蘸水(チャンスイ)」と呼ばれるつけダレを使った料理が多いことも特徴。

<主な料理>
糟辣脆皮魚(魚の紅焼料理)、辣子鶏(鶏の唐揚げピリ辛炒め)

■ウイグル料理

中国西部、ユーラシア大陸の中心に位置する「東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)」で食されている料理。

イスラム教の教えに従って豚肉は使用せず、肉は牛肉やマトンが中心。それらの肉と小麦粉を使った独自の料理が発達している。

<主な料理>
シシ カワプ(羊肉の串焼き)、ラグメン(羊肉入りの辛い餡かけ麺)

■台南料理(たいなんりょうり)

台南は、台湾最古の街。海に囲まれているので、海の幸、山の幸、果物が豊富で、食材に恵まれている。

元は福建料理を発祥とし、日本料理の影響も受けながら、独自の食文化が発展してきた。油が少なく、醤油ベースのさっぱりとした味わいの料理が多く、日本人の口にも合いやすい。

<主な料理>
坦仔麺(小麦粉麺と海老だしのさっぱりとしたスープ)、サバヒー料理(台湾特産の魚を使った料理)

【4】そもそもなぜ、こんなにも分岐したのか?

広い国土を持つ中国では、地域によって気候や風土が大きく異なるため、それぞれの環境に合った料理が誕生した。
また、紀元前1,000年頃の書物『周礼』には、膳夫・酒人・酒官など、王の飲食に携わる役割を持った人が、宮殿に揃っていたことが記してあるほか、医者よりも「食医」のほうが重要である旨も記載されている。それほどに、中国では昔から、「食」や「料理人」の役割が重視されていたことがうかがえる。

その後、「中国八大料理」という大きな分類ができたわけだが、その理由としては、清朝末期から中華民国初期にかけて、地方出身の多くの人材がお抱えの料理人を連れて地方役人になったことが有力とされている。

【5】なぜ今、「マニアック中華」に人気が集まるのか

dressing編集部は、マニアック中華に人気が集まる理由として、大きく2点あると考える。一つ目は、中国人と日本人、それぞれの“料理へのスタンス”が異なる点だ。

上記で説明したとおり、中国では時代の移り変わりによってさまざまな特徴をもった料理の“宗派”が誕生した。ひと口に「中国料理」といっても、その特徴は多岐に渡るのだ。
そして何千年もの間、地域ごとに、独自の食文化が守られ続けてきた。

それはなぜか。

理由としては、中国では地方料理の区別が厳密であるということが挙げられるだろう。
つまり、「広東料理の店が麻婆豆腐(四川料理)を出す」ようなことは、まずありえないのだ。伝統的な味と調理法を忠実に守り続けるのが、中国料理人のスタイルといえる。

その点、日本人はさまざまな文化を融合させるのが得意な人種。

とりわけ「食」に関しては、中国料理をベースにした「焼き餃子」や「ラーメン」、イタリアンをベースにした「ナポリタン」など、海外の文化を積極的に取り入れた、オリジナリティ溢れる食文化を形成している。
意外と知られていないが、中華料理店で使われているターンテーブル(中央が回るテーブル)も日本発祥だ。

その柔軟性は、「マニアック中華」を扱う日本の中国料理店も同様。つまり、中国人の“マニアックな食文化”と、日本人による“自由な調理技術”の融合が楽しめることが、グルマンに受けている理由といえるだろう。

「マニアック中華」は、ググったところで想像が追い付かない

もう一点の理由。
それは、「大概のことは、ググれば解決する」今の時代にある。

飲食店選びにしても同様。その料理がどんな味なのか気になれば、インターネットで検索し、口コミや画像を見ておおよその予想をつけることができ、だれもが「知った気」になれる。

しかし、マニアック中華(少数派民族料理)に使用されるのは、日本人にとって馴染みのない食材ばかり。どんな香りか、どんな風味か、どんな食感か、いくら調べたところで、想像がなかなか追い付かないのだ。

そんなところに好奇心を刺激されたグルマンたちが、「食べてみよう」とアクションを起こし、その深すぎる美味にハマっていくのである。

【6】dressing編集部が厳選! マニアック中華料理店4選

では、編集部がオススメするマニアック中華料理店を紹介しよう。
オープンから1年たらずで予約困難店に急成長した新店や、店主自らが現地で仕入れたマニアックな食材を日本人向けにアレンジする人気店など、個性豊かなお店ばかり。
深すぎる「マニアック中華」の世界を、さっそく覗いてみよう。

■蓮香(レンシャン)

「マニアック中華」の中でも特定の少数民族料理にとらわれず、シェフ自らが中国・辺境の地に訪れ、そこで出逢った田舎料理を表現しているお店。

蓮香

住所
東京都港区白金4-1-7 1F
電話番号
050-3373-1510
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
18:30~21:00
定休日
不定休日あり
ぐるなび
http://r.gnavi.co.jp/dadd1w870000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

■南三(ミナミ)

中国の雲南・湖南・台南という3つの“南”の食をベースにした独創的な料理が楽しめる。まだオープンして1年にもかかわらず、予約困難として知られる新星。

南方中華料理 南三

住所
〒160-0007 東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビル2F B
電話番号
03-5361-8363
営業時間
18:00~23:00
定休日
日曜、祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/1x6kvajb0000/
公式サイト
https://www.facebook.com/tokyoyeshi/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

■茶馬燕(チャーマーエン)

中国西南部の少数民族料理が愉しめる一軒。神奈川県・藤沢という立地ながら、新たな食との出逢いを求める食通を中心に全国からお客が訪れる。

中国旬菜 茶馬燕

住所
神奈川県藤沢市南藤沢20-15 第一興産6F
電話番号
050-3468-9455
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
ランチ 11:30~14:00
※平日は予約のみ

月・火・木~日
ディナー 17:30~21:00
定休日
水曜日
ぐるなび
http://r.gnavi.co.jp/898tfvc80000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

■香辣里(シャンラーリー)

羊料理で有名な『味坊(あじぼう)』がオープンした湖南料理店。酸味のある辛さが特徴の湖南料理だが、同店では辛さ以外の魅力を「ハーブ中華」「発酵中華」「燻製中華」と、わかりやすく表現して提供している。

湖南菜 香辣里

住所
東京都世田谷区太子堂4-23-11 GEMS三軒茶屋7F
電話番号
050-3314-3979
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~金
11:30~15:00
(L.O.14:30)
18:00~24:00
(L.O.23:30)

土・日・祝日
11:30~24:00
(L.O.23:30)
定休日
ぐるなび
http://r.gnavi.co.jp/p12u5rze0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

今最も注目すべきグルメジャンル「マニアック中華」。
マニアックといえど、日本人シェフによって試行錯誤を繰り返された料理の数々は、いずれも感動を覚えるほどに美味。まだ体験したことがないという方は、好奇心の赴くままに、「マニアック中華」の世界に足を踏み入れてみてほしい。



【参考文献】
・キクロス出版『中国料理の食卓作法』(一般社団法人 日本ホテル・レストランサービス技能協会)
・柴田書店『よくわかる中国料理基礎の基礎』
・株式会社エイ出版社『FOOD DICTIONARY 中華』
・地球の歩き方(https://www.arukikata.co.jp/)
・東建コーポレーション株式会社(https://www.cookdoor.jp/chinese-food/dictionary/)
・美中国(http://www.travelchina.gov.cn/jp/index/index.shtml)
・チャイナネットオンライン(http://beijing.china.org.cn/japanese/index.htm)

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dressing編集部