松陰神社の穴場フレンチを発見! プチ贅沢な『ビストロ トロワキャール』はグルメな大人の隠れ家

世田谷線・松陰神社前の『BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)』は、10年以上愛されるフレンチビストロ。ランチ・ディナーともにコースのみを提供する同店は、一品一品丁寧に作りこんだ料理が多くのお客の心を掴んでいる。2020年8月現在は昼夜それぞれ3組までご案内。落ち着いた空間で頂く絶品のフランス料理は、日常使いから特別なデートまで、心地よい時間を過ごせること間違いなし。

2020年09月25日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • 松陰神社
  • 東京
  • フレンチ
  • ビストロ
  • ワイン
松陰神社の穴場フレンチを発見! プチ贅沢な『ビストロ トロワキャール』はグルメな大人の隠れ家
Summary
1.松陰神社で10年愛されるフレンチビストロ『BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)』
2.多くのリピーターが信頼を寄せる、一品一品丁寧に作り込んだ料理の数々
3.現在は昼夜それぞれ3組&おまかせコースのみ

常連たちから熱い支持。夫婦で営む松陰神社のフレンチビストロ

東急田園都市線「三軒茶屋」から世田谷線に乗り、3駅目にある「松陰神社前」。

昭和の時代を彷彿させる昔ながらの商店街には、古くから愛される商店に混じって、ここ10年でオープンした個人店も見られる。

近年、新たなカルチャーを携え一層注目度を増すこの街で、多くの常連客に愛されるフレンチビストロがある。駅の北口からすぐの場所にある『BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)』だ。

お店を切り盛りするのは、オーナーシェフの木下聡二郎さん(写真上・左)と奥様の真由美さん(同・右)。

シェフは19歳から25歳まで和食店で勤務したのち、フレンチに転身。スーシェフ、メインシェフを務めたのち、2010年10月に『ビストロ トロワキャール』をオープンさせた。ちなみにご夫妻は前職のフランス料理店時代に、同僚として出会ったそう。

今でこそ遠くから足を運ぶ人も多い松陰神社エリアだが、『ビストロ トロワキャール』がオープンした10年前は違った。

単なる住宅街だった松陰神社にありながら、手間を惜しまず丁寧に仕上げる木下シェフの料理と、ご夫妻が醸し出す肩肘張らないアットホームな雰囲気がキラリと光り、地道にお客を獲得。その結果、10年経った今でも客足が絶えない人気店となった。

フランス料理への熱量の高さがひしひしと感じられる木下シェフの料理

「シェフおまかせコース」で提供されるある日の前菜は、野生のメス鴨と飼育されたアヒルのオスの交配種「クロワゼ鴨」を使用した「クロワゼ鴨のガランティーヌ ビーツのヴィネグレット 黒イチジク添え」(写真上)。

クロワゼ鴨を背中から開き、縦方向に内側へ巻くことで、一つの断面に胸肉とモモ肉を共存させている。中には内臓ミンチにフォワグラ、豚の挽肉ミンチにフランス産のトランペット茸とジロール茸、ピスタチオを入れ、低温で茹で冷菜に仕上げる。

ヴィネガーとオリーブオイルをベースに塩コショウで味付けしたフレンチドレッシングの定番「ヴィネグレット」を、ビーツで鮮やかに仕立てた。そこに、ソースと同系色で今が旬の黒イチジク、トマト、紫キャベツ、ラディッシュなどを添え、美しい一皿に仕上げている。

交配種であるクロワゼ鴨は、野生鴨特有の身の締まった赤身、そして飼育のアヒル特有のやわらかい肉質という両方の良いとこどりを実現した味わい。一羽丸ごと余すことなく使用することで、モモ肉、胸肉の味わいをグラデーションで感じることができる。

うまみを吸ったピスタチオはインゲンのような食感で、2種のキノコと豚のミンチが食感にアクセントをプラス。とろける食感で甘美な甘さの黒イチジクや、酸味のあるビーツのヴィネグレット(冷たいソースの一種)といただくことで、より一層鴨のうまみが際立つ。

甘鯛のヴァプールなど、技術の詰まったバランスのよいソースを添えて

シェフの丁寧な仕事ぶりは、特にメイン料理のソースに見られる。ヴィネガーの酸味、煮詰めたワインの甘み、丁寧に作られたフォンやフュメのうまみ、香りなど技術が詰まった最高のバランスのソースを作り上げてメインの食材を引き立てているのだ。

「山口 萩 甘鯛のヴァプール ソースヴェルモット 白ナスのフォンダン」(写真上)もそのひとつ。

魚料理の基本ソースでもあるソースヴァンブランを応用したソースヴェルモットは、白ワインを数十種類の薬草で香り付けしたヴェルモット酒に、エシャロットとマッシュルームを加えて煮詰め、フュメドポワソン(甘鯛のだし)を加え、さらに煮詰め生クリームを足し、シノワで濾してソースのベースにする。

これにバターを加え仕上げたものがソースヴェルモットとなるが、ワインの酸味によるキレを出し、より香りを際立たせるため提供直前にもう一度ヴェルモット酒を煮詰め、まだ暑さの残る季節ということで仕上げにフレッシュなハーブを加えた。その結果、清涼感あふれるハーブの香りに酸味が爽やかなソースに仕上がる。

白ナスのフォンダンは、白ナスに少量のマッシュルームを合わせ、水と塩とバターのみでゆっくり蒸し煮に。ひと晩塩をあてた山口県産甘鯛は、尾に近い部分の身をホタテと合わせてムースにし、そのムースを甘鯛の身でクルクルと巻き上げ、沸騰しない程度の温度に保ちゆっくり蒸気で蒸し上げている。

プルップルの甘鯛は中にもホタテと合わせた身のムースが詰まっているので、うまみいっぱい。とろける食感の白ナスフォンダンもシンプルながらバターの豊かな味わいを存分に吸っていて、甘鯛のヴァプールを上品に引き立てる。

同じ土地の食材を合わせることで、味わいにまとまりを出す

「創作や派手な皿は作らず、フランス料理の技術がつまったきちんとしたフランス料理をモットーにしています。基本を積み重ねていくとおいしい料理ができると思うので」と木下シェフが言う通り、基本に忠実で硬派な料理は、肉料理でも感じられる。

この日のメインの肉料理は塩、コショウで下味をつけたブルターニュ産の仔牛モモ肉を、シンプルにバターのみで焼き上げた「仔牛モモ肉のロティ」(写真上)。

ソースは、肉を焼いたフライパンの油のみを除き、エシャロットと赤ワインビネガーを入れ、ヘラでうまみをこそげ取ってからマディラ酒を加え煮詰めたらフォンドボーを足し、最後にブルターニュのブランデーを足す。

「仔牛がブルターニュだったので、同じ地方のブランデーを加えました。料理って土地で合わせると、まとまってくるんですよね」と木下シェフ。

さらにセップ(イタリアンではポルチーニ)を炒めたア・ラ・クレーム(クリーム煮)を、根セロリのピュレとともに仔牛に添える。

美しいロゼ色に焼き上がった仔牛モモ肉のロティは、ナイフを入れるとじんわり肉汁が浮き出る最高の焼き加減。モモ肉は脂身が少なく歯切れの良い食感で、みずみずしくしっとり。香ばしくうまみが強いセップのア・ラ・クレームとも、香り高くほんのり酸味のきいたソースマディラともよく合い、ワインを誘う。

デザートやワインのセレクトは奥様・真由美さんが担当

『ビストロ トロワキャール』のワイン担当は真由美さん。グラスは800円〜で赤・白それぞれ常時3種類は用意があるほか、ボトルは40種類ほどリストにラインナップ。しかし在庫が1本しかないようなワインリストに載っていないワインが、実は80種類ほど置いてあるという。味の好みや要望、予算を伝えれば料理に合わせたワインを丁寧に提案してくれる。

デザートを考案するのも真由美さん。この日は桃をメインに据えた「桃のムースとマリネ レモングラスのジュレ 蔵王ヨーグルトのソルベ フランボワーズのメレンゲ添え」(写真上)だ。

自家製の桃のムースに、ピーチリキュールとシロップでマリネした桃、レモングラスのジュレに桃のグラニテ、蔵王ヨーグルトのソルベをのせ、最後にフランボワーズのメレンゲをトッピングしている。

桃リキュールとフレッシュな桃の香りが芳(かぐわ)しく、トロッととろけるジューシーな桃にひんやりシャリシャリ食感のグラニテやすっきりとした味わいのヨーグルトのソルベが爽やか。サクサク食感で甘酸っぱいフランボワーズのメレンゲを、溶けてきたソルベにつけてもおいしい。

常連から人気の自家製バゲットは、お持ち帰りもOK

そしてコースと合わせていただきたいのが、毎日焼き上げるバゲット。

「フランス料理を引き立てるバゲットでありつつも、そのまま食べてもおいしいと思ってもらえるよう工夫しました。日本人の舌に合う水分量多めのバゲットを、白いパンと全粒粉パンの2種用意しています」とシェフが言うように、外側はパリパリで中はフワフワ、もっちり&しっとり。

独自にブレンドした小麦に「高千穂発酵バター」を使用し、芳醇なバターの香りとジューシーな味わいのバゲットに仕上げている。

そのおいしさから、バゲットだけを注文して持ち帰る常連さんや、レストランを利用した帰りに持ち帰る人もいるという。オープンキッチンということもあり、パンを焼いている際に漂う良い香りに誘惑される人も多いのだろう。

店内をリニューアル。お客を気遣う衛生対策も万全

そんな『ビストロ トロワキャール』、この8月に内装をリニューアルした。長年探した末に見つけたオリエンタルな壁紙や、温かみのある照明、ディスプレイなど、一つひとつ夫妻の想い入れが詰まっている。

リニューアルでは衛生対策の一環で、カウンター席はアルコール除菌しやすいよう革に張り替え、テーブル席で使用しているチェアのカバーも刷新した。2020年8月現在はカウンター席を一時廃止しており、テーブル席も一つ空けるなど、席間も安心出来る間隔にしている。

また、お客の案内は一度に3組まで。入店時にすぐ化粧室へ案内し手を洗ってもらい、アルコール消毒を促す。料理もアラカルトは一時中断し、昼夜共にお任せメニューのみに絞った。

「緊急事態宣言解除後、初めて外食するのがうちのお店と言ってくださる方が多くて。その方たちに失礼のないよう、基本的に予約を必須にして、安心して食事を楽しめる空間づくりと対策を行っています」(真由美さん)と常連想いな対応は一貫している。

予約をすれば、各種メニューのテイクアウトも可能

もう一つ感染症対策の一環で始めたのがテイクアウトだ。電話かFacebook、Instagramのメッセージで予約することで、前菜、メインディッシュを持ち帰りできる。1週間ほど日持ちする真空パックメニューも、前日までの予約でテイクアウト可能だ。

店名の“トロワキャール”は、日本語で4分の3という意味。

「お店に必要な要素っておいしい料理、お酒、おもてなしという三要素があって、これにお客さんが加わることで初めて完成する。お客さんと一緒にお店を作っていきたいという想いを込めてこの店名をつけました。この想いは10年経った今でも変わりませんね」と木下夫妻。

お客も店もお互いに敬意を払い、尊敬の念を抱き信頼関係を築く。忘れかけていたホスピタリティの真髄をここで改めて感じさせられた。


【メニュー】
▼コース
・トロワキャールコース ランチ 一人2,800円〜
・シェフおまかせランチコース 一人4,500円〜
・トロワキャールコース ディナー 一人4,500円〜
・シェフおまかせコース ディナー 一人6,500円〜
(ディナーは別途アミューズ・パン代チャージとして500円)

▼ドリンク
・グラスワイン800円〜
・ボトルワイン 3,500円〜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税別です
 
撮影:岡本寿(テイクアウトメニューのみ店舗提供写真)

BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)

住所
東京都世田谷区若林4-21-4 2F
電話番号
050-5487-5356
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
木~日・祝日
ランチ 12:00~15:00
(L.O.13:30)
平日のランチは前日までにご予約をお願いします。
ディナーの予約や仕込み状況により臨時休業になる場合があります。

火~日・祝日
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:00)
定休日
月曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/923njstn0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。