あの『リ・カーリカ』が新たな挑戦!ラボ併設の進化系レストラン『リ・カーリカ ランド』が学芸大学に誕生

【連載】幸食のすゝめ #108 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2020年11月09日
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あの『リ・カーリカ』が新たな挑戦!ラボ併設の進化系レストラン『リ・カーリカ ランド』が学芸大学に誕生
Summary
1.『リ・カーリカ』堤亮輔シェフの新たな挑戦! 学芸大学に新店『リ・カーリカ ランド』が誕生
2.レストラン、物販スペース、ラボ、ワークショップetc…さまざまな顔を持つ新しい空間
3.堤シェフが目指すのは、「店だけじゃなく、家に帰ってからも楽しめるような場所」

幸食のすゝめ#108、ひらかれた食卓には幸いが住む、学芸大学

「え、まだおなか目立たないね!?(予定日は)来年の春くらい!?」

新店『Ri.caricaランド(リ・カーリカ ランド)』の開店日に駆けつけた、『あつあつ リカーリカ』時代からの常連の女性2人が若いスタッフに声を掛ける。

「そうでもないよ、ま、いつもこんな感じのスタイルだから分かりにくいけど」

カットオフのスウェットの裾をエプロンの上にオンして、日差しの中で微笑む彼女の表情には、もう母親らしい優しさが溢れている。その後ろには、1歳の息子をおんぶした(スタッフの)花ちゃんがオフィスと店を行き来している。

こんな優しさに包まれた風景を、飲食店の中で見たことはない。かつて酒場やバー、レストランは男たちの戦場だった。先輩の技を目で盗み、寡黙に働く。努力の果ての独立を目指して、日常の幸せに目をつぶる…。

女性が帰ってこられる職場づくりを

「長い間、一緒に頑張って来た女性スタッフが、妊娠して出産したら『さようなら』って、そんな飲食の世界ってイヤだなって常々思っていたんです。産休・育休後に復帰する女性たちが帰ってこれる場所を作りたかった」(堤亮輔シェフ・写真下)

一般的な飲食業界のイメージは、若い内は短いスパンで色々な店を渡り歩き、自転車通勤で深夜まで働き、最終的に独立をすれば成功者。しかし、それは決して理想的な働き方ではないはずだ。女性たちばかりでなく、若い層全体が少しずつ飲食業界から遠ざかっていったのは飲食全般に付きまとうマイナスイメージのせいに違いない。

『Ri.caricaランド』は、飲食業界の仕組みを優しさという側面から少しずつ変えていく新しい「祖国」なのかもしれない。ウディ・ガスリーが作り、アメリカ第2の国歌と呼ばれる『This land is your land(我が祖国)』は、次のような言葉で終わる。

「This land was made for you and me.(この国はあなたとわたしのために創られたんだ)」

目黒通りに生まれたばかりの『Ri.caricaランド』は、『リ・カーリカ』、『カンティーナ カーリカ・リ』、『あつあつ リ・カーリカ』に続いて堤シェフが造り出したショップ・ラボ・オフィスを兼ねたまったく新しい空間、笑顔に包まれた夢の祖国だ。

店から家へ、幸せなストーリーを繋ぐ

「35歳までに店を作る、3店舗まで経営するということは最初から考えていました。1年早く、34歳で独立して、店も3店舗になった。それぞれの店の周年が、ちょうど7・5・3だったから盛大にお祭りをやろう! そう思っている矢先、コロナになって、自粛期間がやって来た。僕らもテイクアウトやデリバリーをやって試行錯誤しました」

でも、その中で見えてくるものもあったという。通常は子連れなのでレストランに行けない家族たちが、テイクアウトのセットをすごく喜んでくれた。いつもはショップやデパートで買っているワインを、顔なじみの店のスタッフから買えることで宅飲みの楽しみが広がった。家庭の時間を楽しんでもらうために、レシピも伝えやすいようにした。

『Ri.caricaランド』の物販スペースは、そんな客たちの想いの延長線上にある。

「店だけじゃなく、家に帰ってからも楽しめるような場所にしたかったんです。おいしいワインを見つけたら、お土産に買って帰ったり、店で食べたメニューの食材を買って帰って、翌日家族に作ってあげたり…。そんな幸せのストーリーを描けるような場所になりたい」

プロが選び抜いたイタリアの自然派ワイン、塩、醤油、オリーブオイル、ビネガー、海苔、チーズ、パスタ、野菜…。無添加で身体に優しい、生産者の顔が見えるものばかりだ。

これから少しずつレシピも付けて、店のメニューを再現できるようにする。スタッフの花ちゃん特製のパンや、新スタッフのパティシェールが作る焼き菓子類も充実させる。

将来的には家庭でも店の味を楽しんでもらえるよう、冷凍パスタの開発も進めている。「みんなの幸せ指数を増やしたい」という堤シェフならではのアイデアだ。

朝と昼、まったく違う食堂へ

朝9時、『Ri.caricaランド』の1日は「あなたの健康を守る朝粥」(写真上)から始まる。もちろん、ただの朝粥ではない。

イタリアンらしく、極薄生ハム「クラッタ」を粥が熱い内にのせて食べる。その後は、選び抜かれた薬味が待っている。

ニラと山椒のペースト&発酵塩漬け「SIMON LEMON(サイモンレモン)」、北海道『福田農園』の干しの王様しいたけの含め煮、佐賀『三福海苔』の香味干しとドライトマト、那須高原『おやま』の平飼い半熟卵の巽(たつみ)醤油漬け、家族で造った真っ当な趙家(ちょうや)キムチ、山形『ひつじや』のいぶりがっこ、『川原町泉屋』の鮎のなれずしと鮎うるか、兵庫『元気のたねKFV』のドライ納豆、自家製発酵水キムチ。

添えられるお茶は神戸の紅茶専門店『Uf-fu(ウーフ)』のルイボスティーと、何から何まで健康的で選び抜かれた逸品ばかりだ。

国産の食材で、東京発のイタリアンを紡いできた堤シェフの歴史がその一つひとつに刻まれている。しかも、そのほとんどをショップで購入できるのも嬉しすぎる配慮だ。

昼の12時から14時半、『Ri.caricaランド』はカレー屋になる。カレーを愛しすぎた伊藤和道シェフが、コロナ禍のテイクアウトとして考え好評だったメニューだ。

一見インドカレー、しかし韓国の「水キムチ」や和の発酵高菜、海苔の香味干し、ドライ納豆が散りばめられ、上質なペコリーノチーズも添えられる。その発酵とスパイスのジャムセッションは、東西どこにも属さない伊藤ワールド。『Ri.caricaランド』ならではの、食材の個性が身体を癒やす「発酵スパイスカレー」だ。

そんな伊藤シェフ(写真上・右)、『Ri.caricaランド』では料理研究開発部長という顔を持っている。堤シェフを中心に、新メニューなどを試作していくラボの核になる存在だ。

ラボ併設のイートインという可能性

14時半にカレー屋が終わると、バーが始まる18時まで『Ri.caricaランド』はスタッフたちのラボとして機能する。そこでは、経営者としての側面が多くなり、最近はなかなか料理する姿が見られなかった堤シェフが各店舗の料理人たちと、自由に意見を出し合いながら新作メニューを生み出していく。

「3店舗が軌道に乗ると、僕自身が料理する場所がなくなった。それに、これまでのメニュー開発では、各店舗のシェフが考えたメニューを試食して、僕が考えたアイデアをプラスしながら完成まで持っていく。それって時間のロスが多いし、無駄な作業や経費も生まれてくる」

だったら、いっそ同じ場所で一緒に考えて、互いの意見をプレゼンテーションしながら仕上げて行こう。もし若いコたちが新しい料理を考えたら提案してほしいし、もし素晴らしければ採用して、それが本人たちのモチベーションに繋がっていく。ラボの可能性は単なる料理の実験場を超えて、大きく広がっていくだろう。

「新しい企画を考えるためのオフィスと、いつでもアイデアを形にできるラボ。ここは僕らのチームが、お客さんとスタッフ、そして街、みんなの幸せ指数を増やしていくための基地なんです」

生活の幸せ指数を少しずつ増やしたい

そして、夜18時。目黒通りに輝く『Ri.caricaランド』の明かりは、自粛時代を越え、まだまだ不安な気持ちが無くならない人たちが、1杯のおいしいワインと身体に優しい食を求めてやってくる街の灯台のように見える。この時間からは『タベレルBAR』、自然派ワインに魅せられて名古屋から上京したユリさん(写真上)が店長を務めるワインバーの時間だ。

『タベレルBAR』の名前の通り、少しずつ楽しめる上質なメニューが用意されている。旬の野菜や、朝粥でも活躍したドライ納豆や海苔香味干しなどを使い、味と食感に変化を持たせた「おひたし」(写真上・左)や「極薄クラッタとプロシュート」(同・右)の盛り合わせ。

冷たいおつまみは、写真の左上から時計回りに「(アマゾン)カカオトーストと(生の)イチジクバター」、「塩漬けシラウオとバターのブルスケッタ」、「アモールポレンタとピーマンとサラミ」など常時いくつか用意され、「ミルク爆弾モッツァレラ」など、なかなか出逢えない銘品も揃う。

温かいおつまみには、「ほっこり煮た豆」や「羊の蒸し餃子」など軽い食事になりそうなものも用意される。しっかりと食事したければ、「牛丼」や「ご飯セット」もある。極限まで無駄を省かれたメニューは、すべて女性のスタッフたちの手で仕上げられ、広いテーブルへ運ばれる。

もちろんユリさんに相談すれば、7年の間にストックされてきた貴重なバックヴィンテージのワインにもお目にかかれる。ここでお気に入りのワインを見つけたら、買って帰ることもできる。

この先、他店のシェフを呼んでのコラボイベントや試飲会、飲食に限らないポップアップやワークショップなど、さまざまな試みができるひらけた空間にしたいという。

目黒通りの『Ri.caricaランド』、「みんなの生活を、少しだけ豊かにしたい」という堤シェフの想いが詰まった小さな「祖国」は、飲食業界を、街をきっと明るく照らしていくだろう。

ひらかれた食卓には、幸いが住んでいる。

【メニュー】
・あなたの健康を守る朝粥 1,500円

・発酵スパイスカレー 1,500円

・極薄クラッタとプロシュートコットタルトゥーフォ 2,400円
・スナック盛り合わせ 700円
・半熟茹で卵とカラスミ 700円
・カカオトーストとイチジクバター 600円
・アモールポレンタとピーマンとサラミ 600円
・塩漬けシラウオとバターのブルスケッタ 600円
・ミルク爆弾モッツァレラ 1,800円

・肴は炙ったイカがいい 900円
・ほっこり煮た豆 800円
・ポロネギとトリュフのグラタン 900円
・羊の蒸し餃子 900円

・お肉と野菜のワイン煮 1,500円
・ウニとサーロイン牛丼 1,300円
・いろいろ米のご飯とみそ汁と水キムチ 600円

・グラスワイン 700円〜
・ボトルワイン 5,000円〜
・東京ホワイト/バラデン・ズッカ・パンプキンエール 1,200円
・ナチュラルマッコリ ホワイトマンデー 700円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税抜です

Ri.caricaランド(リ・カーリカ ランド)

住所
東京都目黒区鷹番1-4-9 小山ハイツ1F
電話番号
080-7279-2233
営業時間
朝粥9:00〜11:30、カレー12:00〜14:30、バー18:00〜23:00(Shopは終日営業9:00〜23:00)
定休日
水曜
公式サイト
https://www.instagram.com/ri.carica_land/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。