横浜はうなぎの名店ぞろい! 人気店から老舗まで、おすすめの「うなぎ専門店」まとめ6店

横浜でうなぎを食べるならここ! 実は神奈川県はうなぎの名店が名を連ねています。その理湯は諸説ありますが、なかでも横浜はうなぎの名店ぞろいです。幻のうなぎも、天然うなぎも、うなぎを使った一品料理も、本稿でおすすめするうなぎ店なら間違いなく美味しい! 横浜駅、関内駅、元町駅、新横浜駅の周辺に店を構える、編集部イチ押しの6軒で美味しいうなぎを堪能してみてください。

2021年06月18日
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横浜はうなぎの名店ぞろい! 人気店から老舗まで、おすすめの「うなぎ専門店」まとめ6店

横浜は実は“うなぎの街”!? 絶対に訪れたいうなぎ店6軒

うなぎといえば、江戸時代から静岡県・浜名湖の名産品として有名だが、そのお隣の神奈川県にも、明治時代から続くうなぎ店の老舗が多い。

理由としては「明治時代には湘南地方でもよくうなぎが捕獲されていた」という説や、「鶴見地区で冬にフグが獲れたためフグ屋が増え、フグが獲れない夏場にうなぎを出すようになった」という説も…。

理由はともあれ、横浜ならではの進取の気風を象徴するような個性的な店が多いのは確か。本稿ではその中から選りすぐったうなぎ店6軒を紹介する。

目次
1.『割烹蒲焼 横浜八十八(やそはち)吉田町店』
2.『竹葉亭 そごう横浜店』
3.『割烹蒲焼 わかな』
4.『スズキ』
5.『うなぎ料理 しま村』
6.『濱新』

【1】粋な辛口タレと本格和食で百余年愛され続ける『割烹蒲焼 横浜八十八(やそはち) 吉田町店』【関内】

『割烹蒲焼 横浜八十八(やそはち)』(以下『八十八』)は明治43年に、初代女将の荒井米さんが創業した割烹蒲焼料亭。『八十八』という店名は、「米」の崩し字に由来している。現在は三代目女将・荒井テイコさんが跡を継ぎ、吉田町店のほかに、石川町店、町田店、ニュウマン店(横浜駅)の4店舗を構えている。

趣きある外観に品のある白いのれんがよく似合う吉田町店(写真上)。JR根岸線・関内駅から野毛町方面へ向かう一角にある「都南ビル」の1階で、大正時代に建築された「都南貯蓄銀行」(現在の横浜銀行)の内装をそのまま使用している。

中に入ると、大正時代のロマンティックな風情が残る建築と現代的なしつらえが見事に融合した、独特の雰囲気。さりげなく飾られた直筆の絵画や揮毫(きごう)が、多くの文化人に愛された歴史を感じさせる。

ゆったりとしたフロア席のほかに個室が3室ある。そのひとつが、幕末に創業した日本最古の金庫メーカー「竹内金庫」製造の「金庫室」(写真上左)。皇室や日本銀行などでも使用されていたが、現在は流通しておらず、“幻の金庫”と言われている。その金庫室の中でうなぎを食べられるのは、日本中でもここだけだ。

吉田町店店長の福田明美さん(写真上)。「個室は3室とも広さが異なりますので、人数や用途によって使い分けていただけます。でもやはり『金庫室』が一番、人気がありますね」とのこと。

『八十八』の鰻重は貴重な純国産うなぎの中からその日により最良のものを厳選し、さらに一般的なうなぎの1.5倍のサイズのものだけを使用しているのが特色だ。

重箱にうなぎ一尾がすきまなく詰められている姿が美しい「鰻重/月丁」(写真上)。ほかに一尾半が入った「天丸」、一尾と四分の三尾が入った「特上中入れ鰻重」がある。「特上中入れ鰻重」はうなぎが重箱におさまりきらず、端を折り返して入れており、蓋を押し上げるほどの大迫力だという。

うなぎは「焼き一生」といわれるように、焼きの仕事に技量の差が最もあらわれる。「日本屈指のうなぎ職人を揃えています」という女将の荒井さんの言葉を証明するように、『八十八』のうなぎの蒲焼きは表も裏も焼き色が見事に均一。惚れ惚れするような仕上がりだ。

箸先にずっしりした重量を感じながら口に運ぶと、上質な脂を感じるねばりのある食感に驚く。とくに皮と身の間の脂の部分のとろみはうっとりするほど濃厚で、砂糖を使わずに醤油、みりんだけで仕上げているキレのいい辛口のタレと相まって、箸が止まらないおいしさだ。

うなぎばかりでなく、添えられている山椒やお茶も驚きの連続。和歌山県のみかん畑に囲まれて育った山椒は鮮やかな緑色で、蓋を開けた瞬間に柑橘類のようなフルーティーな香りが広がる。お茶は、享保年間創業の京都・一保堂謹製のほうじ茶。タレが多めに欲しい人のために追加のタレが用意されているのも、うれしい心遣いだ。

ユニークなのが、口直し用の蜂蜜がけレモンが添えられていること。「うなぎを堪能された後に、お口をさっぱりとリフレッシュしてお帰りいただきたいと思い、考案しました」(女将の荒井さん)。

『八十八』の人気の理由は、こうしたうなぎ料理のクオリティの高さだけではない。通常、うなぎ専門店ではうなぎ料理の職人が一品料理も作っていることが多いが、『八十八』ではうなぎ職人とは別に専門の一流の和食職人を贅沢にも多数名揃えている。その和食職人の腕を存分に味わえるのが、季節の特選素材を使用した「八十八会席」コースや「八十八御膳料理」だ。

コース最初の一品「膳彩」(写真上)は、箸をつけるのがためらわれるほどの圧倒的な美しさ。「クルマエビ、イクラの大根みぞれ和え」「ソラマメの茶巾」「姫竹の煮物」「蕗の西京焼き」「杏とつぶあんの茶巾」といった季節感あふれる料理は、すべてが手作り。一流割烹ならではの、繊細で変化に富んだ味わいを堪能できる。

初夏の一品料理として人気の「鮎の塩焼き」(写真上)は、水の中を軽やかに泳いでいるかのような美しさ。小石を模しているのは蕗味噌で、ほろ苦さの中のほのかな甘みが鮎の繊細な苦みと香りに絶妙に調和している。

さらにこの店には、うなぎに匹敵する隠れた人気メニューがある。それが石垣牛を使用した「横濱ビフテキ重」。石垣牛は海風のミネラルをたくさん含んだ牧草を食べて育つため肉に独特のうまみがあり、とくに脂にミルクのような香りがあること、融点が低いため溶けやすく、さっぱりと食べられることで有名だ。正統な石垣牛は地元の農協を通じてのみ販売され、本州にはほとんど入ってこないが、『八十八』では希少な“本物”の石垣牛を使用している。本来はうなぎが苦手な人のために用意しているものだが、この料理を目当てに訪れる熱狂的なファンもいるほど。

また『八十八』では創業以来毎年、「うなぎ供養祭」を行っていることも特筆しておきたい。うなぎの産地の自治体で行っているところはあるが、うなぎ専門店として行っているのは全国でも珍しく、毎年他多くのうなぎ職人が参加するという。

「忘れがちですが、私たちは命あるものを日々、殺生し食物としていただくことで生かされています。うなぎ供養祭ではそのことに改めて感謝し、手を合わせて今後の無事を祈っています」(女将の荒井さん)。うなぎの絶滅が危惧される中、新しい命が生まれることを願い、法要後は大岡川に国産うなぎを放流しているという。知れば知るほど、真の美食を追求し続ける熱意と研究心に心を打たれる名店だ。

【メニュー】
八十八御膳料理 8,910円~
八十八会席(膳彩、御椀、お造り、鰻料理など6~8品)
 琴花 13,200円 ※コロナ対策としてお膳で提供しています
 料理長特選 16,500円~
鮎の塩焼き 時価
鰻重(肝吸い、お新香付き)
 月丁(一尾) 5,984円
 天丸(一尾半) 8,538円
 特上中入れ鰻重(一尾と四分の三尾)10,538円
横濱ビフテキ重 4,972円

■平均予算
昼 8,000円前後
夜 11,000円前後

割烹蒲焼 横浜八十八 吉田町店

住所
〒231-0041 神奈川県横浜市中区吉田町10 都南ビル1F
電話番号
050-5485-4448
営業時間
11:00~20:00 (L.O.19:00、ドリンクL.O.19:00)※現在、時短営業要請により営業時間を変更しております。ご了承ください。
定休日
火曜日 ※夏季は無休予定
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/s3zbbg4u0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

【2】文豪たちも愛した名店の味を、気軽にリーズナブルに味わえる『竹葉亭 そごう横浜店』【横浜】

うなぎの名店というと真っ先に名前があがる、日本有数の老舗うなぎ店のひとつが『竹葉亭』。創業は江戸末期の慶応2年(1866年)で、アジア初となる『ミシュランガイド東京 2008』では、銀座・木挽町にある『竹葉亭 本店』がうなぎ店で唯一の星を獲得している。

明治時代から多くの文化人に愛されていたことでも有名だ。グルメとして知られる永井荷風の日記『断腸亭日乗』には本店がしばしば登場するし、夏目漱石『吾輩は猫である』にも東京の名店の代表として「竹葉亭でも奢りましょう」というセリフが出てくる。

そんな超有名店だけに、憧れてはいるが気後れを感じ、足を運ぶ勇気がないという人も多そうだ。確かに数寄屋造りの名建物として知られる本店は、気軽に入るのがためらわれるような独特の佇まいだ(それが魅力でもある)が、「気軽に竹葉亭のうなぎを味わってみたい」と思っている人におすすめなのが、百貨店の中にあり気軽に入れる『竹葉亭 そごう横浜店』だ。

「そごう横浜店」の10階にある『竹葉亭 そごう横浜店』(写真上)。「そごう横浜店」は1985年のオープン時、東洋一の売り場面積を誇っていた百貨店だけに、レストランフロアも通路が広く、ゆとりのあるゆったりしたスペース。

高級感とともに、買い物帰りに気軽に立ち寄れそうな快適さも感じられる店内(写真上)は、広々とした解放感のあるテーブル席、しっとり落ち着いた雰囲気の小上がり(座敷席)のほか、家族でゆっくりくつろげる個室があり、さまざまなシーンに利用でき使い勝手がよさそうだ。

「『本店はなかなか入りづらい』とおっしゃる方も多いのですが、『竹葉亭 横浜そごう店』なら、本店の味わいをお気軽に、リーズナブルに味わっていただけます」とにこやかに語る、『竹葉亭 そごう横浜店』店長の遠山学さん。

『竹葉亭 横浜そごう店』はうなぎ専門の料理人のほかに和食の料理人もいて、本格的な会席料理も味わえる。小付、酢の物、刺身、蒲焼き、ご飯、肝吸い、果物がセットになったお得な「うなぎ会席膳椿」(7,150円 ※蒲焼きとご飯はお重にすることも可能)は、そんな名店ならではの実力を堪能できるおすすめメニュー。だが今回はシンプルに、「鰻重」とおすすめの2品を紹介しよう。

上質なうなぎを白焼きにしてからほどよく蒸しあげ、秘伝のタレをつけて備長炭で焼く“江戸前の蒲焼き”がたっぷり味わえる「うなぎ重(小吸い物付き)」(写真上)。

技術の高さとタレの馴染みのよさが一目でわかる均一な焼き目と、美しい飴色の照り。醤油とみりんのみを使い、初代から口伝で受け継いだ配合を守り抜いているタレは、すっきりした上品な後味だ。「竹葉亭のうなぎ蒲焼きはあっさりした風味なので、ご年配の方にも好評なんですよ」(遠山さん)。

茹でたうなぎの肝を山葵ポン酢でいただく「肝わさ」(写真上)。肝吸いでは見たことのないほど大ぶりな肝に驚く。サザエの身のおいしさをぎゅっと凝縮したようなうまみと食感で、肝独特のえぐみが皆無なのは、よほど下処理を丁寧にしているのだろう。

うなぎの身の香ばしさとすっきりした脂を堪能したいなら、やはり「白焼き」(写真上)。添えられた山椒醤油で味わうと、うなぎの持つ独特の香りがさらに引き立つ。ワサビと塩でシンプルに味わうのもおすすめ。

居心地のいい空間の中にも、老舗の名店らしい美意識がすみずみまで貫かれていて、うなぎ重に添えられた香の物の盛り付け、卓上の楊枝入れの楊枝の並べ方ひとつにも、背筋が伸びるような端正な美しさがある。百貨店内のレストランらしい快適さと親しみやすさはあっても、やはりここは歴史に磨かれた特別な空間であることが感じられ、そこで食事をいただける口福に浸ることができる。

【メニュー】
うなぎ重(小吸物付)3,850円
白焼 2,860円
肝わさ 770円

■平均予算
昼 4,000円前後
夜 5,000円前後

竹葉亭 そごう横浜店

住所
神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店10F ダイニングパーク横浜
電話番号
045-465-5785
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~金
ランチ 11:00~15:00
(L.O.14:00)
ディナー 17:00~22:00
(L.O.20:30)

土・日・祝
ランチ 11:00~16:00
(L.O.15:00)
ディナー 16:30~22:00
(L.O.20:30)
繁忙期には変更の可能性がありますので、直接店舗にお問い合わせお願いいたします。
定休日
不定休日あり
(そごう横浜店に準ずる)
ぐるなび
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※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

【3】1杯の「鰻丼」に凝縮された老舗の誠実さ、『割烹蒲焼 わかな』【関内】

老舗のうなぎ店のうなぎがおいしいのは、提供された蒲焼きの数だけ、つぎ足しのタレの味が深まるから、とよく言われる。ということは、より大勢のお客が訪れる老舗のうなぎ店が、よりおいしい、という理屈になる。

それを証明するのが明治5年創業で、うなぎ店には珍しい大型店舗を持ち、丑の日などの繁忙期には1日に2,000食前後の「鰻丼」が出るという超人気店『割烹蒲焼 わかな』だ。横浜・新橋間に日本で初めて鉄道が通った直後が創業期というから、歴史の古いうなぎ店の多い横浜でも、トップクラスの老舗だ。

『割烹蒲焼 わかな』があるのは、JR根岸線関内駅北口から徒歩2分のところ。高級感のある渋い黒タイルの3階建てビルで、2階がテーブル席、3階がお座敷席になっている。

白文字で「わかな」ときりりと染め抜かれた暖簾をくぐって入ると、目の前には威風堂々たる大階段が。丑の日など繁忙期ともなるとこの大階段にぎっしり行列ができていたというから驚きだ。

2階にはテーブルが80席、個室には4人掛けのテーブルが3卓で12席、計92席あり、お客の年代は幅広い。

創業当初からの一番人気は、気取らずに食べられる「鰻丼」(写真上)。甘みの少ないあっさりしたタレがご飯全体に、底までまんべんなく均一に染みている。このタレがやや固めに炊いたご飯のおいしさを最高に引き立てていて、「タレがかかったご飯だけでもいい」と思えるほど。1合半のお米が入るボリュームたっぷりの鰻丼は、年配の女性でもぺろりと平らげられるほどだ。

厨房に立つのは、6代目の橋本隆さん。「ご飯の量が多いのは、先代も先々代も大食漢で、これくらいの量はふつうだったから。僕もそうですが(笑)。先代は『お客さまはわざわざ食べに来てくださるんだから、お腹いっぱいになって帰っていただきたい。お安いものじゃないんだから』といつも言っていました」(橋本さん)。

その誠実さとやさしさ、真面目さは6代目にもしっかり受け継がれている。『わかな』秘伝のタレは甘みを抑えているので粘度が低く、サラサラしていてご飯に染みこみにくい。均一にまんべんなく染みこませるには、ご飯が炊き立ての熱々の瞬間に、焼きたてのうなぎを乗せてタレをかける必要がある。そのため、お客が多く来店する時間を逆算し、細かく調整しながらご飯を炊き、蒲焼を仕上げる。「生きているうなぎを捌いて蒲焼にし、テーブルに乗せるまでに最長1時間かかります。曜日や天候による時間ごとの客数を記録した閻魔(えんま)帳が代々伝わっていて、そのデータを照らし合わせながら、調理時間を調整しています」(橋本さん)。奇をてらわず、一番大切なことに全力を尽くす。その姿勢が伝わってくる。

驚くのは、口に入れた瞬間にとろけるようなやわらかなうなぎの蒲焼きだ。身だけでなく皮までもがやわらかく、箸ですっと切れてまったく舌に残らない。年配の女性もぺろりと平らげることができるのは、この極上のやわらかさもあるのだろう。「蒸し過ぎると脂が抜けておいしくなくなるのですが、うちは45分と長めに蒸して、やわらかくふっくら仕上げています。新しく入った職人だと、やわらかすぎて焼けないこともありますね」(橋本さん)。

タイミングによっては、鰻丼ができるまでに最長1時間ほどかかることもある。その時におすすめなのが、「酢のもの」(写真上)。食材は季節によって変わるが、この日はアジ、ホタテ、タコ、サイマキエビ、ジュンサイ。代々伝わる加減酢は驚くほどまろやか。だしがきいていて、ゴクゴク飲み干したくなるうまさだ。

お腹が空いている時のおすすめは、ボリュームたっぷりの「やきとり」(写真上)。もも肉を均等な厚さにカットし、開いてタレにつけて香ばしく焼き上げている。串から抜いて食べやすくカットして出す、割烹スタイルの焼鳥だ。タレはうなぎよりもやや濃いめに仕上げていて、お酒が進む味。

すべての料理に共通するのが、盛り付けと器の美しさ。いずれも惚れ惚れする端正さがあり、その佇まいに箸をつけるのがためらわれるほど。飾らない素朴な人柄の橋本さんの中に、老舗の美意識が脈々と受け継がれているのだろう。

ベテランの女性スタッフのサービスにも、さっぱりした中に親身な温かさがあり心地よい。すべてにおいて「老舗っていいな」と心から思わせてくれる店だ。

【メニュー】
鰻丼 3,500円
酢のもの 1,900円
やきとり 1,700円
きも吸い 400円

■平均予算
昼 4,000円
夜 6,000円

割烹蒲焼 わかな

住所
〒231-0017 神奈川県横浜市中区港町5-20
電話番号
045-681-1404
営業時間
11:00~21:00
定休日
1月は1~3日、ほか月1回不定休。2月~6月、9月~11月は第1~第4水曜日。7~8月は月2回水曜、ほか不定休。12月は第1水曜日、31日 ※水曜日が祝日の場合は営業
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/58fjm1tc0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

【4】希少なブランドうなぎ「坂東太郎」を、注文後に捌いて焼く『スズキ』【新横浜】

一般的に「うなぎは天然ものが最高」というイメージが根強い。だが、「最高級の養殖うなぎは、天然うなぎに決して負けない」と言い切るのが、“究極の養殖うなぎ”といわれる「坂東太郎」を使ったうなぎ料理が食べられる『スズキ』の主人・鈴木敬二さんだ。

JR横浜線の「新横浜駅」から徒歩数分ほどの住宅街にある『スズキ』(写真上)。店頭に水槽があり、専門店でもなかなかお目にかかれないブランドうなぎ「坂東太郎」がゆったり泳いでいる姿が見られる。週に200匹から300匹ほどを仕入れているが、「坂東太郎」を目当てで訪れるお客が多いため、足りなくなることもあるという。

堀りごたつ式のテーブルがある庶民的な雰囲気の店内(写真上)。テーブルごとにビニールカーテン、各テーブル上にアクリル板が設置され、4人以上の会食ではフェイスカバーの貸し出しもしている(150円)。ここまで感染対策が徹底している店は珍しい。

『スズキ』のご主人の鈴木敬二さんと奥様の幸子さん(写真上)。鈴木さんは都内で10年ほど修業をした後、「居酒屋をやりたい」と昭和64年(1989年)に『スズキ』をオープンした。「だからうちはうなぎ専門店ではなく、“うなぎ居酒屋”なんですよ」と幸子さんが微笑む。確かにメニューには一般的な居酒屋料理も多い。うなぎ料理が多い理由を問うと「うなぎは酒に合うから」と言葉少なに語る鈴木さん。

当初は国産の天然うなぎを仕入れていたが、産地によって品質のバラつきが大きく、細すぎたり太すぎたりして、価格は高いのに仕入れても使えないことも少なくなかったという。そこで鈴木さんが着目したのが、“究極の養殖うなぎ”と珍重されている「坂東太郎」だった。

「坂東太郎」は霜降り状の脂があり、うまみ成分が天然うなぎの約2倍も含まれていることから、日本一といわれる利根川の天然うなぎに限りなく近いといわれているブランドうなぎだ。それだけに全国にファンが多いが、提供できる店はごくわずかで価格も高い。鈴木さんは「坂東太郎のおいしさを多くの人に知ってもらいたい」という想いから、破格値で提供。それだけに『スズキ』は「予約がとれない店」として、うなぎ通の間で知られる存在となった。

「坂東太郎」を使ったうなぎ料理は6種類あり、それぞれ「普通」「大」「肉厚」で値段が分かれている。ちなみに「坂東太郎」のかば焼きの場合、「普通」が3,280円、「大」が3,690円、「肉厚」が4,400円となる。

こちらは「坂東太郎のかば焼き(肉厚)」(写真上)。箸を入れる前から、ふっくらした身の厚みが伝わってくる。「坂東太郎」を水槽から取り出して裂き、一匹一匹の大きさを見極めて蒸し時間を調整するが、身の食感が失われるほどやわらかくなり過ぎないよう、15分から20分と短めにしている。

注文を受けてから捌く「坂東太郎」は、予約無しで訪れると40分くらいは待つことになる。「先に裂いておくとどうしても味が落ちてしまうので。お客さまをお待たせするのは心苦しいのですが…」と鈴木さんは恐縮する。

驚くほど身が厚いのに、口に入れるとひとりでにホロホロとくずれ、うなぎ特有の脂の香りがふんわりと鼻に抜ける。そしてもうひとつの特徴が、皮のカリカリとした食感と香ばしさ。蒸しあげていったん皮までやわらかくした後、最上級の備長炭でカリカリとした焦げ目がつくまでほどよく焼き上げているという。「うちでは鹿児島産のうなぎも出していて、それも本当においしいんですが、坂東太郎はやっぱり身の後味がよくて、食べるほどに後をひく不思議な魅力があるんですよ」と鈴木さん。

焼きあがるのを待つ間の肴としてぜひ食べて欲しいのが、「ヒレ焼き」(写真上)。うなぎの細長い背ビレと腹ビレを集めて、備長炭でこんがり焼いている。1串にうなぎ5~6匹分のヒレを使うため、専門店でも出しているところは少ない。カリカリのクリスピーな部分とゼラチン質のねっとりした部分、しっかり弾力を感じる部分があり、かみしめるとうなぎの脂と溶け合ったタレがじゅわっとしみだしてくる。日本酒の肴として、最高だろう。

もうひとつ、『スズキ』に来たらぜひとも食べてほしいのが、鈴木さんが川崎の市場から仕入れてくるマグロの中トロの刺身。出て来た瞬間にその豪勢な厚みに目を見張り、口に入れれば一瞬でとろける脂のうまみに悶絶する。高級すし店でもなかなかお目にかかれないほどの逸品だが、『スズキ』ではこの刺身を一年中、提供している。

壁に貼られたお酒の品書きの多さもまた、この席数の店としては驚異的。入手困難な日本酒や焼酎の銘酒もあれば、ワインは赤白合計で20種類。店の奥には立派なワインクーラーも置かれている。

「うちは接待に使われるお客さんが多いので、『あのお酒を入れておいて』という要望が多く、自然に種類が増えてしまったんです」と鈴木さん。確かに、こんな店を知っていたら人に自慢したくなるだろう。接待に使って驚く顔が見たい人の気持ちが、よくわかる。

【メニュー】
坂東太郎 蒲焼(肉厚) 4,400円
ヒレ焼き(2本) 330円
マグロ刺身(中トロ) 1,380円

■平均予算
昼 1,500円~
夜 5,000円~

スズキ

住所
〒222-0026 神奈川県横浜市港北区篠原町2803
電話番号
050-5485-7999
営業時間
月~土 ランチ:11:30~13:30 月~土 ディナー:16:00~22:00(L.O.21:00)(緊急事態宣言による時短営業のため、ディナーは16:00〜20:00(ラストオーダーは19:00)となります。)
定休日
毎週日曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/b955000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

【5】うなぎ一筋50年の卸問屋の心意気! 選び抜いた天然うなぎを味わう『うなぎ料理 しま村』【高田】

今や“幻”とも呼ばれるほど希少な存在となっている、国産天然うなぎ。ただでさえ入手困難な国産天然うなぎの中から、さらに選び抜いた極上品をリーズナブルな価格で味わえるという驚きの店が、『うなぎ料理 しま村』だ。

地下鉄グリーンラインの「高田駅」から歩いてすぐのところにあるうなぎ専門店『しま村 横浜高田本店』(写真上、以下『しま村』)。飲食店の常識を超えたスケールの面積とスタイリッシュな外観から、オープン前には近所で「美術館が建つらしい」という噂も広まったとか…。

1階にはテーブル席の個室が5室あり、2階には畳敷きのテーブル席の「嵯峨野」(写真上)のほか、広さの異なる和室が合計6室ある。

1階と2階合わせて全82席だが、とにかく館内が広いのと、どの席も窓に接していて庭が見えるので、光があふれるのびのびとした雰囲気の中で食事ができる。小ぢんまりとした古民家風、といううなぎ店のイメージを覆され、目を白黒させてしまう人も多そうだ。

「じつはそれが狙いなんですよ」と微笑むのは、オーナーの島村享男(たかお)さん。島村さんはうなぎの卸問屋「島淡水魚」も経営しており、長年にわたりうなぎの仲買をしてきた超ベテラン。日本全国のうなぎを訪ね歩く傍ら、蒲焼専門店『しま村』も経営し、百貨店などで販売をしていた。だが卸の仕事を通じてさまざまな高級割烹に触れるうち「これまでのうなぎ店のイメージを変えたい」「高級割烹に匹敵するようなクオリティのうなぎ店を作りたい」と考えるようになり、2006年に初の路面店『うなぎ料理 しま村 高田店』をオープン。

目の肥えた島村さんが惜し気なく揃えただけあって、食器や什器も特級品ばかり。箸ひとつとっても、一本の木からくりぬいて作っている超高級品で、その価値がわかる人は食べ終わった後にそっと持ち帰るほど。

また店内が広いため、調理場からテーブルに運ぶ間にうなぎが冷めないよう、岡持ち(写真上)に入れて運ぶが、これもまた漆塗りの特注品だ。

さっそく、島村さんが選んだうなぎの蒲焼きをいただいてみよう。最初に、うなぎ蒲焼き入りの熱々の茶碗蒸しが運ばれてくる。これは「そろそろうなぎが焼きあがる」という合図。

うなぎの「お重箱」は、茶碗蒸し、吸い物、香の物、甘味付き。「竹」(3,630円)からあり、「特上」(上の写真)でも6,050円と、意外にカジュアルな価格で食べられることに驚く。

うなぎは産地から生きたまま入荷するが、それを島村さんが毎朝、一匹一匹自分の手でつかんで、気に入ったものを店に出している。惚れ惚れするほどたっぷりした身の厚みは、「さすが」のひと言。均一な美しい飴色の焼き目からは、職人の技術の確かさもうかがえる。素材の上質さと職人の技を引き出すタレのバランスも絶妙。ご飯の量はかなり多めだが、吸い込まれるようにお腹に入っていく。

「私はうなぎ屋というのは、基本的には“飯屋”だと考えているんです。だから『もう食べられない』というほど満腹になって帰って欲しい」(島村さん)。

タイミングがうまくあえば、天然うなぎを食べることもできる(店に要確認)。天然物が食べられる時季は以前は5月~12月頃までと限られていたが、最近は地球温暖化により、場所によって多少の漁があるという。『しま村』では徳島県の旧吉野川で獲れる天然うなぎを主に仕入れているが、こうした希少な天然うなぎのお重箱も、なんと7,150円から食べることができるというから驚きだ。

「養殖うなぎは、栄養豊富な飼料で育てられるので、基本的には“脂ののり”を楽しむもの。それに対して天然うなぎは生まれてから7~8年間も川の小エビや藻を食べて育つので、育った川の“香り”を楽しむものなんです」(島村さん)。

うなぎ料理だけでなく一品料理も、非常にクオリティが高い。「『しま村』は京都と縁が深いため、肝吸いをはじめその他の一品料理も味付けはすべてさっぱり上品な京風なんです」(島村さん)。

明石焼きをイメージした「う巻き」(写真上)は、明石焼き風にだしをかけて食べる趣向。たっぷりのうなぎが射こまれているが、卵は軽く繊細な食感だ。

「串焼盛り合わせ」(写真上)は、この店に来たら絶対に食べないと損といえるほどの逸品。右から「肝焼」「レバー焼」「つくね焼」「ひれ焼」「かぶと焼」。一品料理としても人気の「う蒲鉾」も添えられている。

「肝焼」は、うなぎの心臓。「レバー焼」はうなぎの肝臓。まったく雑味のない洗練された味だが、さらに驚くのは「つくね焼」。一般のつくねと違い、開いた時に胸の部分の細かい骨が集まっている部分をそぎとり、集めて串にさして焼いている。非常に手間がかかるうえ、1串作るのに70~80匹ものうなぎが必要なため、なかなか食べることができないもの。さまざまな食感が複雑にいりまじり、かむほどに味わいが深まる。

「ひれ焼」は、うなぎの背ビレを焼いたものだが、特有のにおいを消すために芯にニラを入れている。とろけるようにやわらかいニラと、タレがからんだヒレの相性のよさ!

「かぶと焼」は、うなぎの頭の部分を1串に7~8個使い、くちばしだけをはずして圧力釜で1時間以上煮込み、たれ焼きしている。

これほどの手間と食材をかけていることを考えると、2,970円という価格は奇跡のよう。島村さんは「正直、手間代にしかなりませんが、このおいしさを知って欲しくて出しています」と苦笑する。

そのほかに、だし茶漬けにしたりとろろをかけたりと4種類の食べ方ができる「鰻釜」や、お得な「レディスコース」など、5,000円以下で豪華なコースが食べられるメニューもある。この空間と什器の高級感、選びぬかれたうなぎと職人の技を考えると、心配になるほどの価格設定だ。

外観の豪華さに気後れする人が多そうだが、「うなぎ好きなら、一度はここで食べないと損をする」と断言できる。それでも敷居が高いと感じる人は、東急田園都市線の「青葉台」駅にある青葉台店がおすすめ。同じ料理が、カジュアルな雰囲気で味わえる。

【メニュー】
お重箱 3,630円~
天然うなぎのお重箱 7,150円~ 
う巻き 2,200円
串焼盛り合わせ 2,970円
肝焼 660円
レバー焼 660円
つくね焼 660円
ひれ焼 495円
かぶと焼 495円
鰻釜 4,180円~
レディスコース「あやめ」 4,730円 ※平日昼のみ

■平均予算
昼 5,000円前後
夜 6,000円前後

しま村

住所
〒223-0065 神奈川県横浜市港北区高田東3-4-11
電話番号
045-549-0880
営業時間
月曜~金曜 11:00~15:00(L.O. 14:00 ※コース料理は 13:00、天然うなぎ料理は13:30)、17:00~21:30(L.O. 20:30 ※コース料理および天然うなぎ料理は 20:00)、 土・日・祝日 11:00~21:30(L.O. 20:30 ※コース料理および天然うなぎ料理は 20:00)
定休日
毎週水曜日 ※(祝日の場合は翌日休み)
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/1eg8rckt0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

【6】現代の嗜好をしなやかに取り入れながら進化を続ける老舗『濱新』【元町】

昭和4年(1929年)、横浜の表玄関としてにぎわっていた伊勢佐木町に開店した老舗日本料理店『濱新』。横浜の政界人や財界人、文化人などに愛されてきた名店だったが、東日本大震災での店舗の損傷が激しく、2014年6月に元町に移転。新たな店舗で、うなぎ専門店として再スタートを切った。

移転先は、元町からフェリス女学院前の山手本通りに続く汐汲坂(しおくみざか)の下で、「ポンパドウル」本社ビルの向かいにある路地を少し入ったところ。もともと古民家だったという木造2階建ての店舗は、お洒落でマニアックな店の多いこの通りの雰囲気にしっくりと溶け込んでいる。

うなぎ専門店に業態を変える決意をしたのは、京都の懐石料理店で修業した後、『濱新』の跡を継いだ三代目店主の山菅浩一郎さん(写真上)。自分の店を外から見る機会を持ったことで、そのスタイルが今の時流に少しずつ合わなくなってきていることを感じたからだという。

移転前もうなぎが名物のひとつではあったが、全国ふぐ連盟の会長職を務めていた2代目(山菅武司さん)が作るフグ鍋や、初代が考案したオリーブ油だけで揚げる「串天ぷら」など幅広く提供していた。「でも今は昔と違い、特定のジャンルに関してはお客さまのほうが知識や情報を豊富に持っています。何かに特化して一番のものを出す必要があると感じたのです」(山菅さん)。

そこには山菅さんの、浜っ子としてのプライドもあった。横浜は観光地というイメージが強く、東京の料理店よりも軽くみられることが多いのを常々、悔しく思っていたという。「そのイメージを覆すために、わざわざ東京から足を運んで食べにきてもらえるような、最高級の料理を出せる店にしたいと思いました。それで選んだのが、うなぎだったのです」(山菅さん)。

店内は、古民家風の落ち着いた空間に、ゆったり16席が配置されている。桔梗、桐などの絵が描かれたペンダントライトは前の店舗でも使っていたもので、今はその絵がテーブル席をあらわす符丁となっている。

カウンター席では、目の前で生きたうなぎを捌くところから焼き上げるところまで、すべて見ることができる。

うなぎ蒲焼きは、サイズ別に「五本口」「六本口」の2種類から選ぶ。「五本口」とはキロ当たりに5尾入る大ぶりなうなぎで、身に歯ごたえがあり、脂ののったうなぎ本来の味が楽しめる。「六本口」はやや小ぶりで、身がやわらかく、あっさりしているのが特徴だ(「六本口」は取り扱いがない日もあるので、事前に確認を)。

「うな重」(写真上)は、野菜の小鉢・お漬け物・お吸物付き。野菜の小鉢はその時々で変わるが、取材当日は蕪の煮物。

うなぎは、愛知県西尾市(旧一色町)産を主に使用。一色産のうなぎは全国的にも珍しく河川水を利用しており、天然うなぎに近い環境で育てられていることで知られている。そのため時季によって脂ののりが大きく変わるので、蒸し時間や焼き時間を分単位で調整している。一番脂がのっているのは2月頃のうなぎで、身だけでなく皮までとろけるほどやわらかくなる。春先から夏にかけては脂が少なくなるので、蒸し過ぎないよう細心の注意をはらっている。

「その時季なりのおいしさを最大に引き出すのは本当に難しいのですが、そこが腕の見せどころ。うちに1年間通ってくださったお客さまが『うなぎって四季があるんだね』とびっくりされるんですよ」(山菅さん)。

一般に関西のうなぎのタレは甘口で、関東は辛口だが、『濱新』の初代は関西風の割烹で修業をしたので、タレは関西風と関東風の中間。すっきりした甘辛さが、ふわっとやわらかな身と白飯を最高に引き立てている。“皮までとろけるやわらかさ”にこだわる店も多いが、『濱新』では皮の食感もまたうなぎの持ち味と考え、適度に食感を残している。うなぎの皮好きな人にはたまらない味だ。

この店の魅力は、うなぎだけではない。シンプルな一品料理も抜群においしいのだ。

その筆頭が「自家製玉子焼き」(写真上)。玉子焼きというと「だし巻き玉子」を出す店が多いが、『濱新』の玉子焼きは初代から伝わる、関東風の「厚焼き玉子」。玉子にしっかり味をつけて焼いているので、醤油を足さずに食べるスタイルだ。

しっかり焼き固められうまみが凝縮した玉子をかみしめると、甘辛いだしがじゅわっとしみ出す。甘辛い玉子焼き好きには、間違いなくストライクゾーンだろう。「昔はもっと固くて甘みも少なかったのですが、ここ20年くらい、お客さまの好みがどんどん甘口になっているので、それに合わせて甘みを足しています」(山菅さん)。

「野菜のおひたし」(写真上)は、一年を通して小松菜が多い。というのも意外に知られていないが、小松菜は横浜市が収穫量全国1位。横浜が誇る地場野菜なのだ。茎の部分はしゃっきりみずみずしく、葉の部分はほろ苦くやわらかい。「小松菜ってこんなにおいしかったのか!」と目を見張ること請け合い。「茹で方を教えて欲しい、とおっしゃるお客さまも多いんですよ」(山菅さん)。こちらのだし醤油も、野菜の味を邪魔しない程度に、みりんで甘みをつけている。

「老舗だからといって、ずっと昔の味を守り続けているだけではお客さんは離れていってしまうと思っています。お客さまの好みに合わせて、その時に一番おいしいと感じられるものをお出ししなければ」(山菅さん)。老舗であっても進化を止めないその姿勢は、進取の気性に富んだ横浜そのもの。まさに『濱新』という名にふさわしい。

【メニュー】
うな重五本口 4,950円
自家製玉子焼き 880円
野菜のおひたし 440円

■平均予算
昼 6,000円~
夜 8,000円~

元町 濱新

住所
〒231-0861 神奈川県横浜市中区元町3-143
電話番号
045-681-1808
営業時間
水曜~金曜 12:00〜14:30 (L.O.) 17:00~20:30 (L.O.)、 土曜・日曜・祝日 11:30〜14:30 (L.O.) 17:00~20:00 (L.O.)
定休日
月・火曜 *祝日の場合は営業
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/53fs4vcm0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

最初に紹介した『八十八 吉田町店』の店内には、「日々是好日 うなぎ食う」と書かれた揮毫(きごう)が飾られている。「いいことがあった日はうなぎを食べる」という意味にも、「うなぎを食べるといい日になる」という意味にもとれるが、どちらにもうなぎを食べる時の高揚感をよくあらわしている。いいことがあった特別な日はもちろん、日常的にもうなぎを食べて毎日を“いい日”にしたい。

撮影:山中菜摘