【予約が取れなくなる前に急げ】11月1日開店!羊肉とパクチーのパラダイス『味坊』の新展開『羊香味坊』

【連載】肉の兵法 第十三回  肉に向かうときに雑になってはならぬ。どこでどんな肉を食べるのか、組み立てるのが大人のたしなみであり、男の作法。「大人の肉ドリル」著者である松浦達也氏が旨い店の肉をさらに旨く食べるための作法を解説する。

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【予約が取れなくなる前に急げ】11月1日開店!羊肉とパクチーのパラダイス『味坊』の新展開『羊香味坊』
Summary
1.神田に羊好き、パクチー好き、自然派ワイン好きを集めた『味坊』の新たなフラッグシップ
2.羊串は2本からと少人数でも使いやすい&さまざまな部位をそれぞれに適した味付けで展開
3.本場から取り寄せたという肉焼き専用の自動回転マシンもスタンバイ

初めての店を訪れるときのテンションはいろいろだ。一抹の不安とともにおずおずと重い戸を引く店もあれば、訪れる前から高揚感が止められない店もある。そしてなかには、期待感満点なのにその期待を上回る店もある。
今日、11月1日(火)に上野広小路に開店した『羊香味坊(やんしゃんあじぼう)』はまさにそうした「期待以上!」の店だ。「まだ開店もしていないのに、なぜそんなことがわかるのか」といぶかる向きもあろう。だがわかるのだ。
どういうことか。実は『羊香味坊』は本オープン前から数週間に渡り、念入りにプレオープン営業をしていた。その期間に3回ほど訪れたというわけ。
最初は友人に連れられて訪れ、円卓でビールとレモンサワーを飲みながら次々に繰り出される羊に舌鼓を打った。翌日、次著の打ち合わせ終わりに、版元の担当編集者と自然派ワインを空にした。
その場で店主に「話を聞かせて」と頼み込み、その3日後、カウンターで立ち飲みをしながら話を聞いた。

↑当初は「10月末オープン」を予定していたようだが、本オープンは11月1日(火)となった。


『羊香味坊』は神田にある中国東北料理の名店『味坊』の店主、梁宝璋さんの新店である。
今年、湯島に開店した『味坊鉄鍋荘』に続く『味坊』3店舗目で、おそらくはもっとも万人に使いやすい店になるはずだ。
もちろん神田、湯島とも味は折り紙つきの、雑多な雰囲気も楽しい予約必須の繁盛店だ。
人気店ということもあって急に思い立ったときにはたいてい満席というのが困ったところだが、もうひとつ難点がある。1~2名という少人数で行きづらかったのだ。
『味坊鉄鍋荘』は鍋料理が多いから仕方がないが、そもそも元祖の『味坊』も盛りがいい。その盛りのよさが仇となって、食べられる皿数が限られてしまう。多種多様な品を食べたがり、一生の残り食事回数をいつも数えている僕のような人種には、どの皿もおいしいからこそメニュー決めの苦しさが倍増してしまう。
『羊香味坊』はそんな『味坊』ファンの悩みを解決してくれる店だ。1~2階合わせて70席という席数で宴会使いもできる。しかも立ち飲みカウンターが用意されていることからもわかるように、少人数にもやさしいメニュー構成となっているのだ。

↑取材時はプレオープンなのでメニューは未確定。取材日には、面接に来たシェフが作った品などもつまみにしながらの取材に。

メニューの中心となるのは店名からもわかるように羊肉。もっとも『味坊』自体、もともと羊肉系のメニューは充実していたが、串焼きとなると肩肉の5本か10本のセットのみ。少人数やちょい飲みには不向きなメニュー構成となっていた。対して『羊香味坊』の串焼きは2本単位となっている。しかもラインナップを激しく強化してきた。その一部をここで紹介しよう。
まずは味坊でおなじみ、定番のショルダー(2本360円)から。適度に締まったラム肉を噛みしめると、繊維の間からラムの香り高い脂がしみ出す。さらに噛み続けると味が膨らんでくるが、その頃には肉の繊維がはかない風情を漂わせてくる。ひと噛みした瞬間のインパクトも捨てがたいが、後半の味の伸びも楽しい。気づけばついつい食べ進んでしまう魔法の串だ。

↑神田『味坊』でも出されていた安定のショルダー。

しかし『羊香味坊』の本領はここからだ。ネギ間を想起させるショルダー・キノコにランプ(レッグ)・長芋など食感の楽しい串やバラスジの弾けるうまさももちろん注文したい。こうした定番は訪問するたびに入れ替えながらの注文となるだろうが、僕が必ず注文するであろう焼き物はなんと言っても次の2品。ネックとラム肉詰め青唐辛子だ。

↑一頭からわずかしか取れないネック。この串のみ、味つけに山椒醤油が使われている。

肉好きの方ならご存じ、味の濃厚なネック。火入れするとかたくなりやすい部位だが、この店のネックは心地いい弾力に落ち着くよう、巻くように仕込まれている。噛むという行為自体が楽しいのに、噛むほどにうまみがあふれだす。もう永遠に噛み続けたい咀嚼天国だが、手をかけた仕込みのせいもあって、ほどなく肉は消滅する。残念ではあるが、そのはかない一期一会が「食」の魅力の一端を担っているのだから仕方がない。まあ、どうしても欲望をなだめられなければ、注文すればいいのだ。身もふたもない結論だけれども。

そしてもうひとつのラム肉詰め青唐辛子。

↑唐辛子に空いた穴からも、串焼きだということがわかる。串焼きではこの品のみ1個からの注文が可能。

いやもうこれがうまいのなんの。きちんと辛いけど、辛すぎない青唐辛子にミンチにしたラム肉を詰めた。ピーマン肉詰めを愛し、辛いものを好む方ならハマること請け合い。なぜナス科トウガラシ属の連中はこんなに挽き肉と合うのだろうか。肉のうまみが唐辛子の奥底に眠る味を覚醒させるような味わい。ちなみにきっちり辛いので、食べ手も覚醒すること間違いなし。1本あれば、ジョッキ一杯楽勝で空にできてしまう。まったくビール泥棒もいいところだ。

そしてここまで書いておいて何だが『羊香味坊』の本領はまだこの先にある。本場から取り寄せたというこのアイテムだ。

↑肉焼き専用の回転マシン。下には炭火。回転軸に塊肉を刺すと、電動でゆっくり回っていく。
※回っている様子は下の動画をどうぞ

下部は炭火の遠赤外線で火が入り、上部は休ませるという無限ループで肉にじわじわ火を入れていくのだ。肉焼きには「焼きと休ませを繰り返しながら、じっくり火を入れる」という手法がある。だが実際に巨大なかたまり肉を焼くとなると手間がかかる。そこで自動化だ。ブラジルにもシュハスコ用に似たような機材があるが、生活のなかに肉が溶け込んだ地域では、似たような発想になるということなんだろうか。

さて、焼きあがったスペアリブはこちら。

そしてランプはこちらである。

かたまり肉から切り出した、この肉こそがこの店の真骨頂。とかくやわらかく、レアな肉ばかりがもてはやされるが、きっちり火入れをされ、しっかりした繊維あってこその味わいがある。ちなみに本オープン時には骨付きのラックもメニュー入りする予定だという。

塊肉用に6種の薬味(1種類30円)が用意されている。パクチー、きのこの醤、焼き唐辛子粉醤、山椒醤油、落花生と唐辛子の粉醤、発酵唐辛子の醤。最初は全部頼んで好みの味を見つけたい。酒呑みなら薬味が余っても大丈夫。この薬味自体がつまみにもなる。

↑酒好きならこれだけで延々酒が飲める

ちなみに“羊香”であっても“味坊”なのだから、いつものメニューもばっちり健在。もちろん名物の「老虎菜(ラオフーツァイ)」(青唐辛子ときゅうりとパクチーのサラダ)も注文できる。

↑神田『味坊』では塩ベースの味だったが、こちらは味噌ベース。個人的には味坊が日本のパクチー文化発展に一役買ったと信じて疑っておりません

前菜・小皿料理には、昆布の冷菜、押し豆腐の冷菜、ジャガイモの冷菜などもあるし、点心メニューもばっちり充実。ラム肉小籠包や蕎麦粉ブレンドの皮の蒸し餃子、ラム肉のお焼きも軽い食感が実に楽しい。

ちなみに取材日にも「レバーを網脂で包んだ串焼きを出そうと思ってるんだけど、名前どうしたらいい?」と相談され、正直「ネーミングの相談はいいから、食わせてよ」と思ったのはここだけの話ということで。プレオープン中は毎日のようにメニューが変わっていたし、ほかにも、黒板メニューなども提供される模様。これはまたひょっこり伺わなければなりません!(プレオープン中か、本オープン後かは未定)

↑巨大な蒸し器に、オーブン(中央下)や北京ダックなどの烤鸭用オーブンの(右)の姿も。

<DATA>
店主は言わずと知れた神田『味坊』、湯島『味坊鉄鍋荘』の梁宝璋さん。「前から少ない人数で来れる店出してよって、ずっと言われててね」と構想はずいぶん以前からあった模様。串焼きはショルダー(塩・味噌)2本360円、ショルダー・キノコ(塩・味噌)2本360円、バラスジ(塩・味噌)2本400円、ネック(山椒醤油)2本500円、にんにく2本200円、ラム肉詰め青唐辛子1本200円など。羊焼き(かたまり肉の切り出し)はラック1本800円、スペアリブ、ランプ各1,000円。前菜はチチハル風おから炒め400円~。点心は羊香水餃(5個)500円~。〆の炒飯やスープもある。ビールはサッポロ黒ラベル500円、サッポロラガー(中瓶)550円のほか、黒烏龍ハイ400円など。冷蔵庫の自然派ワインは2,500円~。

※価格は税別

羊香味坊(やんしゃんあじぼう)

住所
〒110-0005 東京都台東区上野3-12-6
電話番号
03-6803-0168
営業時間
11:30~14:30、17:00~24:00(L.O.23:00)、土曜14:00~23:00(L.O.22:00)、 日・祝 14:00~22:00(L.O.21:00)
定休日
無休

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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