待望の再開! 日本最高峰のフレンチレストランの一軒・銀座『レカン』はどう生まれ変わったのか?

2017年07月18日
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待望の再開! 日本最高峰のフレンチレストランの一軒・銀座『レカン』はどう生まれ変わったのか?
Summary
1.日本最高峰のフランス料理店のひとつ、銀座『レカン』が6月1日に新たなスタートを切った
2.高良康之シェフが2年半の休業期間にたどり着いた新しい『レカン』の料理のあり方とは?
3.火入れやソースのあり方など、あらゆる点で進化しつつ、古くからの常連の心を掴む店

銀座『レカン』が日本を代表するフランス料理店のひとつであるという意見に異論を挟むグルマンは誰一人いないだろう。
日本のフランス料理の歴史を彩ってきたこの店が装いも新たに開店した。
プライベートで何度もこの店の扉をくぐり、誰よりもその再開を待ち望んでいた一人であるマッキー牧元さんが高良康之シェフに話を訊き、その真髄に触れた。

2年半という進化のための時間

「変わろうぜ。という声がけで始めたんです」。
新生『レカン』の構想を尋ねると、高良康之シェフはそう答えて微笑まれた。
高良シェフは、井上旭氏、城悦男氏、十時亨氏、下屋忍氏といった、数々の名シェフを排出してきた『レカン』の6代目料理長である。
創業1974年。日本フランス料理界最高のいわゆる“グランド・メゾン”の一つである銀座『レカン』は、2年半の休みを経て、2017年6月1日に生まれ変わった。

高級レストランでは、こんな事例はない。しかも古くからのお客さんも大勢いらっしゃる、老舗格のレストランである。
東京のレストランでは唯一ここだけの旧き良きアール・ヌーボー調の内装と、エレガントさに満ちた料理を愛してきた人は多い。
だが人の嗜好は得てして保守的なものである。常連客は、新しい『レカン』を体験したいと思いつつ、今までの『レカン』でもあって欲しいと、わがままに願う。
旧きを残すか、新しきをどれだけ取り入れるか。相当悩まれたと思うが、先の一言で一同が同じ方向を向けたのではないかと思う。
新しき『レカン』の扉を開け、レセプショニストの出迎えを受けると、そこにはかつてあった赤いカーペットを敷き詰めた階段はない。

出迎えるのはエレベーターである。地下二階に向かうと、エレベーターの照明が途端に赤に変わった。ああ『レカン』にやってきたと、心沸き立つ瞬間である。

「あの『レカン』」があった

地下二階はウェイティングバーとなっていて、レカンレッドのカーペットが敷き詰められ、以前の調度品などが配された“元レカン”がある。そして人は、銀座四丁目の「宝箱」に再び戻ってきたという高揚に酔うのである。

バーのシャンデリアは旧店舗で使っていたものを使い、床と壁の赤色は色番号を控えておいてまったく同じ色で統一しているという。

これまでとはまったく異なる『レカン』のモダン

やがてメインダイニングの地下一階に案内される。
するとそこは一転、シャンパンゴールドを基調とした、華やかな空間が広がる。旧来のクリムゾンレッドで統一された店内とはまったく異なる、現代のモダンである。
モダンであるが、軽さはない。しっとりとした瀟洒としていて心が座る。それは配された品々がすべて、吟味されつくした一点主義であるからだろう。
大きさの違う可愛らしい球体が連なるシャンデリア、銀座の街の灯りを模したというカーペット、座り心地の良い椅子、個室の壁の大理石、壁紙、レイノーのプラチナで作ったオリジナルのショープレート、既成では売っていないクリストフルのロワイヤルシズレーというカトラリー。物言わぬこれらの品々が、静かに語りかけてくる贅沢な空気感があって、グランド・メゾンたる風格が醸し出されているのである。

変わったこと、変わらなかったこと

こうしてすべてを変えることに不安はなかったですか?と尋ねると「いえ、ありませんでした。なぜなら店内にいるスタッフがまったく変わっていないので、空間は変わったとしても、僕たちが提供する演出、お客様への接客は変わらない。空間と時間を自分たちの方でも支配しながら、お店を好きになっていっていただけると思いました。」
そうだろう。食事していると、つい時間を忘れる安堵感がある。実際にお客さんは、「変わったね」と言いながらも、以前と同じように5時間も6時間も居て食事を楽しまれていくのだという。

カニの火入れさえ、以前とは違うものに

さて料理である。
アミューズの「ライムとジュレを纏った毛ガニのエフィロッシェと玉葱のクリーム」で目が覚まされた。新玉ネギのクリーム、毛ガニのほぐし身、毛ガニのだしのジュレ、キャビア、フィンガーライムなどを合わせた料理は、新玉ネギとキャビアの淡い塩気が精妙で、毛ガニのふっくらとした甘みを膨らます、そこへライムの爽やかさがアクセントして、品を漂わす。そのバランスや見事である。特に心が優しくさせられる、毛ガニの味の立たせ方が素晴らしい。
「今までは塩茹でしていました。塩水を使い、カニの味ではない、塩の味を入れようとしていたんですね。でも、産地で浜茹でを見ると大量のカニを茹でているわけです。それはただ茹でているのではなく、カニのダシが出たブイヨンで煮ている状態なので、身の味が違うことに気づくわけです。でも東京では同じことはできない。ですから今は蒸しています。ふっくらと火を入れたいので、細い足の火が通ったところから外していき、最後に胴体だけになったらひっくり返してやって引き続き蒸し器で火を入れます。蒸すのでカニの身から出る純粋なジュースでふっくらと出来上がった味で仕上げてます。そこに塩を入れたわけではないわけです。」
カニ本来の柔らかい味わいを生かそうと考えるからこそ、キャビアや玉ネギの塩気も決まってくるのだろう。

日本のテロワールと向き合った2年半

シェフは、新生『レカン』の料理を新しく考えていく上で、こうした生産者の元へ足繁く通ったのが、大きく影響したと語る。食材のよりピュアな部分を出そうと考え始めたという。
「獲れる場所のテロワールを日本各地で見て触れることができて、素材の見方が変わりました。今までは、東京で現物を手に取って、これはいいよねと感じていました。すると、それを前面に出したくなる。でも今は素材感をちゃんと残しながら召し上がっていただいて、最後にちょっと塩が芯に来てる感じの味のつけ方に変わりました。ソースは、アルコールだったらアルコールのエッセンスを引き延ばしてあげて、骨格があるけど軽いソースという、今の捉え方のソースにしようと思いました。」
その際たる料理が、オコゼの料理であり、愛農ナチュラルポークのロティだろう。

オコゼのエレガンス

例えばオコゼは、衣としてつけられたカダイフが軽快に砕け、白き身に歯が当たると、繊細な肉が甘く舞う。その瞬間、触れてはいけない高貴なものに触ってしまったような感覚が胸を突く。ふんわりと歯が包まれ、身が剥がれてはらりと舌を転がっていく。穏やかな甘さの中に、命の尊さを伴った脆弱な美がある。たおやかでありながら、たくましい。
それは、一見凛々しいオコゼからエレガンスを引き出した、高良シェフの知見であり、愛である。オコゼは、品のある酸味を含んだトマトソースや、ペルノーの香りを潜ませたアメリケーヌと合わさって色香を膨らませ、心に深く刻まれる。

「美味しさ」の2つの方向性

以前の高良シェフの料理だったら、もう少しソースの量が多く、アメリケーヌも少し重く、ペルノーの香りも少し強かったろう。しかし今は、単純に軽くなったのではなく、オコゼを大事に思ってソースを作り、量を決めている。そんな思いが伝わってくる。
「美味しさって、濃縮した美味しさと、エレガントに広がっていくものと二つあると思うんです。フランス料理はしっかりした風味に持っていこうとする。でも、それをやるんだったら今のテクスチャに合わせるべきだと思うんですよね。どうやって風味だけ拾おうかという点です。風味を拾い、食材も加熱調理して、食材主義になり過ぎないように、オコゼの顔が出てくるんだけど、ソースが添えられてる意味がある。今までのソースはたっぷりとつけて召し上がっていただく仕立てになっていたのですが、今は一緒に食べていて違和感無く、食べていく中でいろんな要素が顔を出し、様々な風味があって、最後にいろんな経験したな、と言う一皿に仕立てたい。食べ飽きない料理ですよね。」

愛農ナチュラルポークとキュイッソン

高良シェフといえば、肉の加熱にも一際高い評価を得ている料理人である。今までも完璧なキュイッソンで魅了してきた。その真価が愛農ナチュラルポークである。そのロティもまた、驚きに満ちた料理だった。
実は休まれている間に高良シェフの焼いた愛農ナチュラルポークは何回か食べた。しかし今回の愛農ナチュラルポークのロティはまったく別の天体である。愛農ナチュラルポークだけではなく、今まで食べたあらゆる豚肉料理の中で、あのような感覚を呼び起こす料理はない。

「命の芯」を食べている感覚

脂に魅力ある愛農チュラルポークの脂部分を薄くカットし昆布締めにする。昆布と抹茶の粉をつけ、脂で巻いた赤身をロティにする。口にすれば、深山の湧き水のように清い肉汁が湧き出るのだが、うまみがどこまでも澄んでいる。
「この豚は圧倒的に脂が美味い。美味しい脂身と一緒に融合している赤身は美味しいということでは無くて、実はクリアな味なんだ、と気づいたわけです。」

新生『レカン』で料理を食べて感じることは、魚も肉も野菜も、命の芯を食べている感覚である。今まで僕らが知っていた食材の、気がつかなかった純真な味わいに気づいて、心打たれる。
食べながら、自然に食材への感謝が体の底からせり上がってくる、そんな料理とも言えよう。二年半の間、高良シェフが現地へ出向いて、風や土、匂いや触覚、味覚や香り、そして生産者の考えや哲学を吸いこんで昇華した料理は、どこまでも健やかながら、正当フランス料理としてのエレガンスに満ちている。そしてなにより色香がある。こんな贅沢なことはあるまい。何しろ我々は、シェフが経験した二年半の結晶を、一緒に享受できるのだから。

銀座レカン

住所
〒104-0061 東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1
電話番号
03-3561-9706
営業時間
11:30~14:00L.O.、17:30~22:00L.O.
定休日
日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/dkd5g4f50000/
公式サイト
http://www.lecringinza.co.jp

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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