飛騨牛を使った肉らしいハンバーガーから富山の海の宝石箱まで

【連載】マッキー牧元の「ある一週間」 第25週  日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。彼はどんなものを食べて一週間を過ごしているのか。「教えていいよ」という部分だけを少しのぞき見させていただく。

2016年03月07日
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飛騨牛を使った肉らしいハンバーガーから富山の海の宝石箱まで
Summary
1.滋賀、飛騨、富山、不便な場所でも行きたい店がある
2.東京では食べられない独特な焼きそばって?
3.なぜ焼肉にはジントニックが合うのか?

1月19日「ワイルドな大分・日田焼きそば」

「ワイルドだぜい」。
こんなにも容姿の主張が強いソース焼きそばは初めてである。
出てきた瞬間に、胃袋をつかもうとする。
ラーメン屋に鉄板があるのも、初めてである。
なにせ、ちゃんぽん麺を茹でてから鉄板の上でコテで押しながら焼き、もやし、豚肉、ネギを投入して炒めあわせ、ソースをかける。

どの焼きそばよりも、麺は過酷な試練を受けるわけだから、短くなってしまう。
しかし短くとも、カリッと焼けた面がいい音を立て、噛めばモチっとしなやかなのである。
そこにもやしがからむ、厚めの豚肉がからむ、ネギがからむ、ソースがからむ。
カリッ、シャキシャキッ、モチッ。
口の中が遊園地となって、心を弾ませる。
満腹なのに、箸を持つ手が、ああ止まらんばい。

東京にはないんかね、この「日田焼きそば」は。
ちなみに後方の白濁したラーメンスープ付きもうれしいのだな。

三隈飯店(ミクマハンテン)

住所
〒877-0044 大分県日田市隈1-5-21
電話番号
0973-22-7261
営業時間
11:00~21:00
定休日
定休日 不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/40a8ujdv0000/
公式サイト
https://www.facebook.com/mikumahanten/?fref=photo

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

1月21日「ため息の出る旨み」

優しく丸く、どこまでも優しい。
鶏ひき肉の旨みだけを信じて作られた餡を、豆腐と炊き上がり前の未成熟なご飯が受け止める。
舌の上を、熱く、静かに過ぎて、安寧へと導いていく。
食べるほどに「はあ~」と漏れる、安堵のため息が汁に溶けて、さらにまあるく、丸くなる。
三雲「しのはら」の「うずみ豆腐」。

日本料理しのはら

住所
〒520-3252 滋賀県湖南市岩根四反田2233-1
電話番号
0748-72-9323
営業時間
12:00~14:40(入店13:15まで)、18:00~21:45(入店20:00まで)
定休日
定休日 毎週水曜、3月不定休あり
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/k0xk5nvg0000/
公式サイト
http://www.shinohara.in/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

1月22日「肉にはビーフィーター!」

浜松町「ホルモン在市」は焼き台がいい。
ジンギスカン鍋のような中央が盛り上がった形で、鉄板にスリットが入っているので、ホルモンを焼くのに理想的である。
なにしろ面で焼けるのがうれしいのである。
もちろんサシの入ったサーロインにもいい。
赤身と白(ホルモン)を1:3の割合でごちゃまぜにして、甘辛い味噌ダレで和えた名物ごちゃ混ぜ焼きも、俄然やる気が出ちゃう。
今日のは、赤センマイ、ハラミ、ホソ、シマチョウというスターたち。

スターたちを迎え撃つ飲み物は、なんにしよう。
店員は「ジントニ」がオススメだという。
いわゆるジントニックに黒胡椒をこれでもかといれたカクテルである。
うむ、甘いし、それは子供向きじゃないの?とおじさんは躊躇したが、タメすことにした。
いい。
甘いが黒胡椒のキック力で脂も甘辛いタレも、すっと切ってくれる。
だから、またもう一枚、もう一皿となってしまう、危険な飲み物なのである。
ちなみにサーロインの脂も切る。
タンの脂も切る。
しかもタンは、トニックウォーターの甘みと胡椒の刺激が調味となって、タンを持ち上げる。

これを考えた人は「やった!」と叫んだに違いない。
ジントニはジンと肉とも呼ぶ。人(ジン)と肉でもある。
しかも使うは、ビーフィーター。
屈強なことで知られた、ロンドン塔の衛兵ヨーマン・ウォーダーで、給金の一部に当時は高価だった牛肉が支給されたことから(ビーフイーター、肉食い)と呼ばれた人たちにちなんだジンである。
出来すぎである。
しかし偶然ではなく、ビーフィーターはこうして肉に合わせる宿命だったのかもしれない。
実に憎い。にくたらしい。

焼肉・ホルモン在市 西新橋店

住所
東京都港区西新橋1-12-6 西山興業西新橋ビルB1
電話番号
050-5488-8701
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~金
ランチ 11:30~14:30
(L.O.14:00、ドリンクL.O.14:00)

月~土
ディナー 17:00~23:30
(L.O.23:00、ドリンクL.O.23:00)
定休日
日曜日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/nm66a94z0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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1月24日一軒目「飛騨牛ハンバーガー!」

トリップアドバイザーにて、外国人旅行客から二番目に支持されている日本のレストランが、飛騨高山にある。.
「センターフォーハンバーガー」である。
さすがに人気が高く、11時の開店と同時に満席で、次々に客が来ては予約していく。たが外国人客で賑わっているのかと思えば、すべて日本人客である。
店にいる間も、一組だけ中国人のお客さんが予約しにきただけで、街に大勢いた欧米人観光客は、皆無である。
うむ、たまたまなのか?
ハンバーガーは、国産牛のスタンダードが760円、飛騨牛ハンバーガーがフライドポテトつきで、2,300円。
フライドポテトつきとはいえ、価格差が3倍というのは、少し解せない。
でも折角座れたのだからと、また悪いクセが出て、飛騨牛ハンバーガーを頼んでしまった.
実直そうな店主が、丁寧にバンズを焼き、パテを焼く。
やがて15分ほどして現れたのは、色艶の良きパテを乗せたバーガーである。

刻んだトマトとタマネギを入れた小鉢が添えられ、「そのまま食べても、バーガーに挟んでもお好みでどうぞ」と伝えられる。
肉の香りがしっかりと立った、堂々たるパテである。一般の人が肉汁と勘違いしている脂は少なく、肉の味が立っている。
バンズもカリッと焼いて中々いい。なにも挟まずこのレタスとパテだけで食べるのがいい。
ただしこのパテには、マヨネースは邪魔になる。
最初に「マヨネーズとマスタードが入っていますが、よろしいでしょうか?」と聞いてくれるので、マヨネーズ抜きでもらったほうがいいだろう。
おいしくよく出来たハンバーガーだが、東京にも大阪にも同等か以上のハンバーガーは、多く存在する。
高山に来る欧米人、ことにアメリカ人は、故郷の味にほっとするのではないか。店の中も外も、「アメリカが大好きなんですう」という店主の思いが溢れて、様々なものが飾られている点もくすぐるのだろう。
ブルックリンラガーを始め、アメリカのビールが置いてある点もくすぐるのだろう。
オニオンリングやピクルス、チリビーンズ等サイドオーダーも充実し、クラムチャウダーやサンドイッチもアメリカ人の大好きな料理が並んでいる。
高層ビルの建ち並ぶ都会では、和食やラーメンといった日本的な食事で非日常を楽しんできた旅人たちが、古い日本の街並みが残された高山で、ふとアメリカを思い、一息つく。
実に皮肉だなあ。

※編集部注:Trip Advisor「外国人に人気の日本のレストラン 2014」で2位に。2015年版も11位にランクインしている。

CENTER4 HAMBURGERS(センターフォーハンバーガーズ)

住所
〒506-0000 岐阜県高山市上一之町94
電話番号
0577-36-4527
営業時間
11:00~14:30 L.O.、18:00~21:30 L.O.
定休日
定休日 水曜※年末年始など
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/4269xts10000/
公式サイト
http://tiger-center4.com/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

1月24日二軒目「富山の恵みを堪能する」

ほわり。
真薯は、かろうじて形になっていて、儚くほどけた。
瞬間、蟹の精が爆発した。
ずわい蟹を口いっぱいに頬張ったかのように、甘みと香りで満たされる。
そして汁は、蟹の豊満な味を静かに見守る。
蟹のうま味と拮抗して高みに登ろうとはせずに、引いて引いて、穏やかにある。
39歳の料理人が生み出した品格が、心を包む。

「それぞれの食感と味わいをお楽しみ下さい」と出された、この日ただ一匹だけ捕獲されたという魚津のブリは、カマ、赤身、中トロ、大トロ、スナズリと分けられている。
それぞれの部位を生かす切り方が精妙で、中でも赤身とカマがすばらしい。
しなやかな身肉に、鉄分の酸味と脂の甘みを溶け込ませた赤身のたくましさに黙り、クリッとした歯応えの中から心を溶かす甘みが滲み出るカマに、打震える。
そしてスナズリは、生のエロさに続き、さっと湯通しした厚めの切り身をポン酢で食べさせる。
生とは違い、貞操と色気が同居してコーフンが収まらない。

あるいは、新湊のカサゴはどうだろう。
ゴカイや甲殻類を食べる奴なので、恐らく海老類を食べていたのではないだろうか。
ブリッと砕けゆく食感は伊勢エビに似て、その微かにねっとりとした甘みもまた、伊勢エビのようである。
または、まだ透明な、活かったヤリイカをその場でしめる。
甘い。ダレのない、小気味がいい甘みが舌の上に広がっていく。
一方、胴体より細く切りそろえられた耳は、コリコリッと小さな音を響かせ、痛快な気分を呼ぶ。

そして香箱は、緩やかに甘い脚肉であわせ、内子と外子に夢中にさせる。
その後はブリカマが、再び炭火焼きされて登場した。
焼けた皮を香ばしさを歯で突き破れば、口の中で甘い湯気が立ち登る。豊かな命の滋味が、どうだっと爆ぜる。

さらには、白子の蕪蒸しと来た。もうまいっちゃうなあ。
富山の蕪と白子を使ったというかぶら蒸しは、果てなく優しい。
白子の強い主張を蕪がなだめて、一体となっている。
ああ、ああ。何度呻いたことか。味が見事になじんで、命の沈黙を、尊さを伝え来る。
最後は、丸鍋仕立ての氷見うどん。
スッポンの凛々しい肉とプルルンコラーゲン、濃密な脂を崩して、うどんとすする。

藤井さん、幸せな夜をありがとう。
富山「ふじ居」にて。