原宿・伝説のカレー!あの人たちをトリコにした『GHEE』が久しぶりに自店舗で復活

【連載】幸食のすゝめ #020  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2016年06月15日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • カレー
  • 渋谷
  • 東京
  • 連載
原宿・伝説のカレー!あの人たちをトリコにした『GHEE』が久しぶりに自店舗で復活
Summary
1.新・個性派カレーのメッカ、神宮前で復活
2.NIGO、川村カオリ、松田ケイジを輩出し、村上春樹、安西水丸らが愛した店
3.新たな名物になりそうな「ミルク」とは?

幸食のすゝめ#020、覚醒の彼方には幸いが住む、神宮前。

鎌倉あたりから来た親子だろうか、色違いのセントジェームスのボーダーを着て、窓際の席に座る。ちょうど店名の由来になったウイリアム・ブレイクの版画の近く、窓から初夏の陽光が優しく入り込んでいる。
「辛いっ!そう、コレよ!『ビーフ』はコレじゃなきゃ!」、ポニーテールに若き日の面影が伺える母親が、突然娘に向かって話し始める。カウンターには、あの日と同じように「赤ちゃん」こと赤出川治さん、新スタッフの光ちゃんもいる。伝説のオリジネイター赤ちゃんの本家『GHEE』が、『Blakes』と名を変え、約10年ぶりに実店舗として完全復活、神宮前に帰ってきた。

優れた味覚は、忘れられないメロディーに似ている。口にした途端、あの時の、あの場所が鮮烈に蘇ってくる。きっと今、彼女の頭の中には、『GHEE』の白い外観や調度の記憶と一緒に、店内に緩やかに流れていたラバーズ系のレゲエが響いているだろう。
2004年に独立した赤ちゃんは、『GHEE』近く原宿郵便局の通りに『ファンシード』をオープン。しかし、2007年に閉店。以降、赤ちゃんが作るオリジナルのGHEEカレーは伝説となった。その後も神宮前=原宿という場にこだわり続けた赤ちゃんは、何軒かの店でランチだけ間借りし、東京のヤドカリカレーのレジェンドとなった。

いつのまにか人気カレー店の密集地になった神宮前2丁目、『ヨゴロウ』から徒歩1分、『リコカレー』真向かいの雑居ビル2階に『Blakes』はある。

新作のカレーも増え、夜はワインやビール片手に赤ちゃんオリジナルの料理やアジアンシーフード炒飯も楽しめる。数分歩けば『MOKUBAZA』と『ヘンドリクス』、千駄ヶ谷方面に少し歩けば『ディルセ』に辿り着く。
『Blakes』店内は『GHEE』を思い出させるヨーロビアンでクールな内装、華奢な照明、白い漆喰、無造作に置かれた地球儀、静かに流れる音楽。今までの間借りでは出逢えなかった赤ちゃんのセンスが行き届いた店内で、いよいよ伝説の味に酔う時間だ。

「僕のカレーはインド式」、赤ちゃんは言う。インドでも、欧風でも、洋食でもない。吉祥寺のインド料理店のアニールシェフに学んだスパイス使いを、どんどん赤出川流にアレンジしてできたGHEEのカレー。その根本は「日本人が美味しいと思う味付け」にあると言う。
「日本の甘く美味しいご飯に合うように、徹底的なバランスを考える」と言う赤ちゃんのカレーは、例えばバターチキンなら「沸点が低い生クリームと発酵が進みやすいヨーグルトのバランスを考えながら火入れして、多めのレモン汁で、味をこの一点まで持ってく」。その高度なバランス感覚こそが、どこにもない赤ちゃんのGHEEカレーだ。

時代を超え、時代を呼吸する、どこにもないカレー

複雑な香辛料使いで痺れるような辛さの中、引き締まった酸味とルーの奥底にひっそりと感じる甘さがカレーをさらに複雑に仕上げる唯一無二の「ビーフ」。クリーミーで軽快な酸味が印象的な「バターチキン」は、ご飯の甘さとカレーのコクがちょうどよいバランスに着地しコク深い。

粗めににミンチした鶏肉にスパイスを擦り込んだ「キーマ」は、鶏肉の隙間にあるコーンやグリーンピースの甘さが舌に鮮烈なコントラストを作る。ジャガイモやさつまいも、人参など、季節の根菜を中心に甘めに仕立てた「野菜」は、スパイシーな肉のカレーとの合い盛りもお薦め。もちろん、肉×肉の合い盛り人気は未だに不動だ。

作家や俳優、音楽家たちを魅了するスパイスの覚醒

そして、今回新しく加わった「ミルク」は、赤ちゃんが昔食べたペルー料理をベースにしたもの。「味はペルー式、作り方はインド式」と言うその味わいは、ミルキーなのにスパイシーなカシア(シナモン)香る逸品。

村上春樹氏や故・安西水丸さんが愛した大定番ビーフ×バターチキンに続く、新たなビーフの名相方になりそうだ。最初は別々に食べ、途中から混ぜて2通りの美味しさが味わえる合い盛りの恍惚。何と何を組み合わせるか、スパイスの迷宮の中で迷子になってしまう至福の時間だ。まずは看板メニューの「ビーフ」と肉か野菜を組み合わせて、一瞬、毛穴と頭脳が総毛立つような辛さの旅に出かけよう。覚醒の彼方には、幸いが住んでいる。


<メニュー>
バターチキン/キーマ/ビーフ/野菜/ミルクとも S800円、M1,000円
肉&肉のコンビは S1,000円、M1,300円
肉&野菜のコンビは S900円、M1,100円
ドリンク類400円(ランチタイムはカレーと注文で200円)

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら

Blakes<GHEE>(ブレイクス)

住所
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-20-13神宮前TNビル2F
電話番号
03-6721-0468
営業時間
12:00~15:30、18:00〜22:00
定休日
定休日 日曜

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

関連記事

NIGO、安西水丸、村上春樹にも縁の深いあるカレー店の物語
NIGO、安西水丸、村上春樹にも縁の深いあるカレー店の物語

【連載】幸食のすゝめ #008  食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

森一起
ライター/作詞家/ミュージシャン
早くも本年度フレンチ界最大のニュースに、伝説のあのレストランが街に帰ってきた【奥沢】

【連載】幸食のすゝめ #059 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。 ※この店舗は閉店しました

森一起
ライター/作詞家/ミュージシャン