冬の味覚「香箱ガニ」を味わい尽くせる「至福の幸箱丼」! 能登でたどり着いた究極の店『寿司吉』

味わう旅 #3

2018年12月10日
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冬の味覚「香箱ガニ」を味わい尽くせる「至福の幸箱丼」! 能登でたどり着いた究極の店『寿司吉』
Summary
1.豊かな自然に恵まれた能登半島、名物グルメは「能登丼」
2.46年間続く人気の寿司屋『寿司吉』、名物は”冬の味覚の女王・香箱(こうばこ)ガニ“を敷き詰めた「至福の幸箱丼」
3.店主自ら厳選した香箱ガニを、内子・外子を含む丸ごと楽しむことができる

人と豊かな自然が共生する能登半島

日本海に面し、内陸部には森林が広がる石川県・能登半島は、澄んだ冷たい海水によって身が引き締まった魚介類はもちろん、清らかな湧き水で育った米や酒、優しい風土ですくすく育った能登牛・能登豚と、まさに食に恵まれた地域だ。

JR金沢駅からローカル線をいくつか乗り継がなければならないなど、アクセスは唯一の難点であるがそれ故、同県屈指の観光地・金沢とは異なり観光客が圧倒的に少なく、のんびりした日々を過ごすにはむしろ最適と言える。

雄大な能登の自然が味わえる「能登丼」

そんな能登半島では、豊かな自然を味わい尽くせる「能登丼」なるご当地グルメがある。

・奥能登産の米「コシヒカリ」を利用している
・奥能登の水を使用している
・メイン食材に地揚げでとれた旬の魚介類、能登で育まれた肉類、野菜等または地元産の伝統保存食を使用している

など、その他にも食器や調理法などにいくつかの条件があり、それらを満たした丼のことを「能登丼」と言う。
つまりメインの食材は刺身に限らず、天ぷらや能登牛を使ったものなど、現地でしか食べることのできない多種多様な「能登丼」が存在する。
そんななかでも、写真映えどころか、一度見たら忘れられないほど圧倒的なビジュアルを誇る「能登丼」がある。

珠洲(すず)市に店を構える『寿司吉(すしよし)』の「至福の幸箱(こうばこ)丼」(写真上)だ。香箱ガニ(北陸地方で獲れるメスのズワイガニ)を身や味噌はもちろん、茶色の外子(そとこ)と呼ばれる腹に抱えた卵や、オレンジ色の内子(うちこ)と呼ばれる甲羅の内側にある未成熟卵まで、食べられる部分を丸ごと3杯分乗せた豪快な丼である。

香箱ガニは、毎年11月6日から年末までの短い期間でしか漁が行えない。なので、「至福の幸箱丼」を味わえるのは11月上旬から1月下旬まで(『寿司吉』では店内の水槽に200杯ほどのカニをストックできるため、漁時期を過ぎても提供が可能)の3カ月のみとなるが、多くのお客がこれを目当てに訪れ、毎年400杯以上もオーダーが入る”唯一無二の極上品”である。

創業1972年、地元の人にも愛される老舗『寿司吉』

『寿司吉』の創業は1972年。能登北部で獲れた新鮮なネタを使った寿司がウリで、観光客のみならず地元の人からも愛されている老舗だ。

大将の前で料理を楽しめるカウンター席に加えて、なんとカニの水槽が目の前にある個室や、最大8名まで入ることができる和室の席も用意されている。

仕入れから提供まで、本来の味を引き出すためにこだわり抜く

「至福の幸箱丼」について2代目店主の青木英樹さんは、「1年に2~3カ月しか食べることのできない香箱ガニなので、どうせなら心ゆくまで食べてもらいたいんです」と語るが、そのこだわりは量と見た目だけではない。

まずは仕入れだ。実家が寿司屋なこともあり、目利きに絶対的な自信を持つ青木さん自らが行う。
選ばれたカニは生きたまま店へ運ばれ、店の中にある水槽に放たれる。芳醇な香りが特徴の香箱ガニは、死んでしまうと”香り”から”匂い”へと変化し、身のうまみは半分ほどに落ちてしまうからだ。

使用している水は、カニの環境を変えすぎないように珠洲の海水をトラックで運び使用している。

茹で方は実にシンプルだ。海水より少し濃度を薄めにした塩水を沸騰させ、そこに14分ほどカニを沈める。茹で上がったら一度冷まして余分な水分を飛ばす。香りの邪魔にならないよう、余計なことは一切せずに、素材の味を極限まで引き立てるのが『寿司吉』流なのである。

こうして茹であがったカニは、繊維を潰さず歯ごたえを残すため、足以外の身を全て、すりこぎ棒ではなく手作業で取り除いている。ここまでの手間をかけることで、香箱ガニが本来持っている上品に漂う香りと繊細な歯ごたえを最大限楽しむことができるのである。

まずはそのまま口に運んでカニの香りと味を楽しみ、途中で少しカボスの果汁をかける。すると、香りが引き立ちより爽やかにいただくことができる。無論、醤油やワサビなどの調味料は不要だ。

丼の下を占める米は、地元で採れる「能登ひかり」を使用。通常のものより若干米粒の大きい「能登ひかり」は粘り気ともちもち感があるので、カニ味噌を絡ませて食べると、誰もが悶絶すること間違いなしの逸品となる。

身を囲む様にぎっしり並べられた粒は、すだちの周囲を囲む茶色のものが外子、その上に載るオレンジ色のものが内子だ。丼外側を大きく囲むオレンジ色のものは内子と外子を混ぜたものである。

内子はねっとり濃厚な味わいが特徴で、外子はクセがなく、プチプチと歯ごたえが良い。米や身と一緒に頬張るも良いし、酒のアテにするのも良い。ここは日本有数の酒処石川県、どうせなら能登の地酒と合わせたいところだ。内子と外子の独特の食感と香りは酒のペースを一気に加速させるだろう。

「至福の幸箱丼」をオーダーすると、高級魚であるアラを使用した味噌汁(写真上・手前左)も提供される。こちらも余計な味は足さず、アラから取れるダシと地元の味噌で味付けするのみだ。能登を代表する地酒「宗玄」でも飲みながら、風味豊かな香箱丼で腹を満たし、高級魚アラの味噌汁で贅沢に締める。どれも地元の水や食材のみを使用しているので、その調和に驚かされる。

能登の自然が生んだ最高の食材を、最高の状態でいただく。
『寿司吉』でのひとときは、能登旅行のハイライトとして強く記憶に刻まれることだろう。


【メニュー】
至福の幸箱丼 4,320 円
地酒 1合 400 円
にぎり 1,700円
上にぎり 2,400円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜きです。

寿司吉

住所
〒927-1214 石川県珠洲市飯田町15-25
電話番号
0768-82-1269
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/b47bp8zr0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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