日本酒は「温度」で楽しもう! 冷酒から飛び切り燗まで「日本酒」4タイプから見つける「適切な温度帯」

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#日本酒は温度で楽しもう

2019年06月14日
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日本酒は「温度」で楽しもう! 冷酒から飛び切り燗まで「日本酒」4タイプから見つける「適切な温度帯」
Summary
1.温度が変わると味わいも変わる! 日本酒の魅力
2.日本酒4つのタイプから適切な温度帯を見つけよう!
3.どんな料理が合う? 日本酒と料理のペアリングについて

日本酒は“温度”で楽しもう!【ワインナビゲーター・岩瀬大二】

日本酒の楽しみの一つが、飲む温度帯を変えられることだ。日本酒は他の酒に比べて温度帯が実に広い。そして楽しむと同時にその日本酒の魅力を感じるための生命線といってもいい。

一般的に日本酒で「常温」と呼ばれるのは20~25℃。これは平均的な室内温度のことで、ワインではおおむね18℃前後。注意しなければいけないのは、決して部屋でほったらかしておくことが常温ではなく、ある程度このあたりに一定温度で落ち着かせておくことが常温の条件。飲もうとした時点で常温だったとしても、暖房をガンガンきかせながら、暖房を切ったら極寒の冬の部屋、冷房をきかせながら留守宅では蒸し暑いままの夏、そこで陽あたりが良いところで置きっぱなしていたようなものは、今、常温としても、保存状態によって「死んで」しまっているかもしれない(保存方法については最後にまとめておく)。

この常温といわれる約20℃を境に、5℃前後までを「冷や」と呼ぶ。その中でも5~10℃前後のものを「冷酒」。10℃前後は「花冷え」、15℃前後を「涼冷え」と風流な名称もつけられている。ワインでいえばスパークリングワインから一般的な白ワイン、軽めの赤ワインといった領域だろう。

常温から冷酒まで! 日本酒の温度帯による味や香りの違い

熱燗の話は後ほどとして、まず常温から冷酒までの温度帯による味や香りの違いを見ていこう。ワイン好きであればよく似ているので理解しやすいと思う。

香りを豊かに楽しむなら15℃あたりがよく、広がりがわかりやすい。ただし酒によってはぼやけてしまう傾向もある。冷やせば香りは爽やかに感じられるが、閉じこもってわかりにくくなることもある。飲み口は、温度をあげればまろやかに感じ、冷やせばすっと入ってくる。逆に言えば高めの温度だと緩すぎて、冷やしすぎると堅い感じになる。

うまみや甘み、酸味といった風味では、温度が上がれば、ふくらみ、広がり、やわらかく感じられるし、冷やしていけばすっきり、ドライで、軽やか。ワインでいえばフィネスやミネラリティに相当する要素を感じやすくなるだろう。

どちらの方向が、その酒が本来持つ魅力なのか。温度が高いとボケて、低いと感じやすくなる酒なのか、温度が低いと閉じすぎて、高めだとわかりやすい酒なのかで、適した温度帯は決まる。自分で温度帯を変えながらテイスティングしていくのも面白いし、酒のプロがいる飲食店で最適な温度帯とあえて違う温度帯の2種で頼むのもいい。こうするとその酒が本来持つ表情や真の姿を知ることができる。

酒というのは気分と温度帯が結びつくもので、6月も初旬になれば冷たい酒が飲みたくなるが、1日中エアコンが効いたオフィスにでもいれば体の中から温めたいなんて気分にもなる。また、“酒旅”に出ると、初夏でも初秋でも夜はぐっと冷え込む地域もあって、そういう土地の酒場で飲む燗酒もいいものだ。なにより、発酵系の料理や、味噌を使った肉、魚、野菜の一皿というものにもじわじわと沁みてくれる。そして、燗酒でこそ実力を発揮する酒もある。

「日向燗」「人肌燗「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「飛び切り燗」とは?

燗酒もひと口に熱燗というのは乱暴だ。30~60℃前後までを「燗」というが、これは相当幅が広い。口当たりや風味のまろやかさを引き出す30℃あたりの「日向燗」、35℃あたりの「人肌燗」、食中酒としていろいろな温度帯の料理と合わせられる40℃あたりの「ぬる燗」、それ以上になるとだいたい5℃刻みで「上燗」、「熱燗」、そして55℃を越えれば「飛び切り燗」。寒い夜に暖簾をくぐり、駆け付けで体の奥に流し込む、なんていうときに飛び切り燗はたまらない。これも冷や同様、細かい温度帯を覚えておく必要はないだろう。

確かに「今日はこんな気分でこの酒だから人肌燗で」なんてオーダーできれば格好良く聞こえるが、蘊蓄(うんちく)的に偉そうに言うのもなんだか粋じゃない。大体、こういうことがあると考えていただければよいだろう。こちらはお茶などと同じく、熱い方向に行くと香りは感じられにくく、ぬるめのほうが甘やかさや風味がわかりやすい。ただ、アルコールの強さを感じたいというなら飛び切り燗までいっても面白い。これも気持ちと場面と酒に合わせて。

日本酒4つのタイプから見つける「適切な温度帯」

さて、酒に合わせて、ということだが、ピンポイントで合わせるのはなかなか難しい。そこで大きな分類として4つに分け、そこからちょうどいい温度帯を見つけていこう。4つのタイプをざっと紹介すると、

・爽快なタイプ
軽快ですっきりした飲みやすさが特徴。淡麗で辛口なタイプで、主に普通酒、本醸造酒、生貯蔵酒など、辛口と呼ばれる日本酒のほとんどが該当するのがこのタイプ。

・薫り高いタイプ
大吟醸、吟醸酒など、メロン、洋ナシ、リンゴ、白や黄色い花を連想する豊かで甘くフルーティーな香りのする日本酒。ワイングラスに注いで楽しむなど、世界的に注目されているレンジ。

・コクのあるタイプ
赤ワインのフルボディ、ミディアムボディ、重めの白ワインに該当。米ならではのうまみやコクが存分に味わえ、香味も豊か。純米酒の山廃や生酛、無濾過生原酒などはおおむねこのレンジ。

・熟成タイプ
複雑なアロマ、とろりとした飲み口、濃厚な味わいで、5年以上寝かした古酒や長期熟成酒が該当。ブランデー、シェリー、紹興酒、泡盛の古酒、デザートワインなどの感覚も。

となる。酒好きであればこのキャラクターを見れば大体の温度帯は想像がつくかもしれない。

爽快なタイプはやはりキリっと冷やしたい。5~10℃がいいだろう。つまみもまずは冷菜とあわせて。ただし、こうした酒の面白いところは、本醸造や普通酒は、熱燗にしてもダレずにきりっとした芯の部分がある。炉端的な地方の酒場などを冬場に回った時は、この飛び切り燗でぐっとあっためて、その後ぬる燗でゆるゆるとその地の郷土料理を楽しむのがいい。

薫り高いタイプは、秀逸な白ワインをいただくのと同様にやや低めの10~15℃あたり。冷やしすぎると香りが閉じてしまい、高すぎると甘くてジューシーすぎてべたべた感が増す。イタリアンやフレンチといったフルコースなら最初は10℃、最後は15℃あたりで魚料理までもっていくなんてこともできる。

コクのあるタイプは赤ワイン同様、冷やし過ぎないけれど、口あたりがダレすぎてしまわないような温度帯、18~20℃といった冷やから常温にかけてがいいだろう。そしてワインにない楽しみはこれをぬる燗でも。酒の中にあるうまみが活性化し、わかりやすく感じられる。丁寧にだしをひいた少し温かみのある料理、本格的な和食店での時間、そんな場面でじっくり楽しむのもいい。

最後に熟成タイプ。濃厚、重厚なものは15~20℃で複雑なアロマや余韻を楽しむのがいいだろう。人肌に上げるとねっとり感やエキゾチックな表情が見えてくる。これにカラスミのような発酵食品、チーズ、中近東のソウルフードであるひよこ豆のペースト「フムス」などを合わせるとたまらない。

いずれも温度が上がれば酒器はゆるやかで口に当たる面積が広く、冷たくなれば口に当たる部分が薄いもの、そんな合わせ技も楽しんでいただきたい。

補足として、良い日本酒をいただいた、または買った場合。家での保存もこうしたキャラクターに合わせていただくとよりおいしく日本酒を楽しめる。生酒は冷蔵庫、冷やならできればワインセラー、冷蔵庫の野菜室でもいい。常温であればこれもセラーが理想だが、暗所、部屋の中で一番涼しいところへ。スペースの関係もあるだろうし、1年以上待って飲みたいといった趣味でもなければ、買ってからあまり日を開けずに飲んだほうがいいだろう。最近では日本酒専用のセラーが販売されている。温度帯をワインセラーよりも低くキープできるのでおススメだ。

温度という要素を加えると日本酒はより楽しくおいしく、広がりを見せる。あなたのお気に入りの酒、もう一度、温度を変えて味わっていただきたい。隠れていた素顔が見つかったり、今まで見せなかった華やかさをまとったり、一方で、今のあなたの飲み方こそ最適だという確証が得られたり。そしてそれは、季節によっても、場面によっても、気分によっても変わるかもしれない。困ったことにどんどん広がってしまうのだが、それがまた幸せだ。

写真提供元:PIXTA

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あおい有紀
フリーアナウンサー/和酒コーディネーター