青唐辛子のストレートに舌に響く辛さが痛快!湖南料理をじっくり体験するなら 錦糸町『李湘潭 湘菜館』

2019年06月06日
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青唐辛子のストレートに舌に響く辛さが痛快!湖南料理をじっくり体験するなら 錦糸町『李湘潭 湘菜館』
Summary
1.中国八大料理のひとつ「湖南料理」がじっくり楽しめる店 錦糸町『李湘潭 湘菜館』
2.名物料理から激辛料理まで。湖南料理ならではの食材と料理の特徴
3.“辛さ”は「普通」「中辛」「現地辛」から選択可。好みの辛さで挑戦できる!

中国八大料理「湖南料理」を知る

中国八大料理のひとつ「湖南料理」は、中国人にとって比較的ポピュラーな地方料理である。しかし日本にある中国料理店では1カ所で四川料理や広東料理などいくつもの地方料理が食べられることが多く「どの地方の料理か」を知る機会を欠いてしまう。つまり我ら日本人にとって「湖南料理」は、まだまだ知られていないマニアックな料理ジャンルといえる。

JR錦糸町駅から徒歩3~4分のところに、2015年にオープンした湖南料理専門の店がある。

オーナーは、省都・長沙市の南、湘潭市出身の徳重勤さん。飲食業とは異なる会社を展開する事業家だが「故郷の料理が食べたい。湖南にはおいしい郷土料理がたくさんあるのに、日本で食べられる場所がほとんどない」と、故郷の湖南料理専門店の開業を思い立った。それが、この『李湘潭 湘菜館(りしょうたん しょうさいかん)』だ。

店名の由来を伺うと「李湘潭は、オーナーである父の中国名です。湘潭という名前は、湘潭で生まれたからと、祖父が街の名前をそのまま付けたらしいです」と、現在店を任されている息子の賢さんが微笑む。

▲店長の徳重賢さん(写真上・右)と、料理人の洪建軍(ホンジュングン)さん(同・左)

湖南料理は、中国で“湘菜”と呼ばれ親しまれる人気の地方料理のひとつで、“湘菜”を掲げた店は中国全土の主要都市でみかける。ここ『李湘潭』では現地湖南地方の家庭料理がそのまま楽しめると、日本に住む中国系の人々に大人気。昼は6~7割、夜は5割が中国系のお客というから驚きだ。

『李湘潭』の厨房には、湖南省出身の料理人が3名いる。長沙市出身の黄(ファン)さん、ウーピンさん夫妻と、湖南省北西部の常徳(じょうとく)市出身の洪さん。オーナーを含め全員湖南省の北部育ちで、料理のラインナップにもその特徴がでている。

ところで、湖南省とはどのような所なのだろう。
中国2大河川のひとつ、中国中部に流れる長江(揚子江)の中下流に位置し、中国で2番目に大きな淡水湖・洞庭湖(どうていこ)が北部に広がる地域だ。

▲メニュー表にある湖南省の地図。省都・長沙は北東部に位置する。

南西部・広西チワン族自治区の都市・桂林からこの洞庭湖へ、湖南省の南から北へと縦断する川が、湖南省最大の川・湘江(しょうこう)。湖南省の別名「湘」(しょう)はこの川に由来する。
気温は東京と非常に似ていてはっきりとした四季があり、夏は蒸し暑く冬は寒い。水源に恵まれたこの地は土壌がよく、古来より稲作や農業が盛ん。省都・長沙市は近年、食品加工業や工業生産物などの産業で栄え、比較的豊かな暮らしを送る人々が住む地域だという。

さあ、湖南について知ったところで、美味なる湖南料理の魅力に迫っていこう。

味付けの軸となる主な調味料

『李湘潭』における湖南料理の味付けの特徴としては唐辛子、醤油や豆豉(トウチ)がある。

料理にあわせて生の青唐辛子や赤唐辛子、乾燥朝天唐辛子、乾燥小粒唐辛子などを組み合わせ、量の加減で辛さの幅を自在に調整する。

四川料理との大きな違いはシビレ系の山椒や花椒(ホアジャオ)を使わないこと。また四川で多用される豆板醤も、使う料理はあるが隠し味程度で全面に押し出さない。あくまでも唐辛子の持つ辛さをストレートにもってくる料理が多い。

うれしいことに、『李湘潭』では辛さを選べるメニューが充実している。普通・中辛・現地辛の3段階。ちなみに日本人は中辛、中国人は現地辛を注文する人が多いという。

醤油は煮込みや炒め物に多用する。主に使われるのが甘みのあるたまり醤油(写真上)。醤油ベースの料理に粒の豆豉(黒豆を塩漬けで発酵させたもの)を合わせ加熱することで、風味とうまみをプラス。この組み合わせがほんのりと味噌のような風味であるところが、日本人の口にも非常に合うのだという。

湖南料理を知るにはこの料理という5品をチョイス!

今回は、湖南料理といえば…という代表的な料理を紹介しよう。伝統的な名物料理2品と、『李湘潭』看板メニューの自家製ビーフン麺、辛さ爆発の激辛料理、そして名前と見栄えのギャップに驚く料理の5品。

▲毛主席紅燒肉(毛沢東が愛した角煮)
豚の角煮は中国の代表的な家庭料理。全土共通して大ぶりの皮付き豚バラ肉をやわらかく煮込んだ料理を指すが、湖南の角煮は湖南出身の中国共産党の指導者・毛沢東が大好物だったことから“毛沢東が愛した角煮”と呼ばれ親しまれている。

『李湘潭』の角煮は、八角がほのかに香る醤油味のピリ辛。砂糖は控えめで甘辛い日本の角煮とはひと味違う。使用する肉は赤身と脂身のバランスのいい豚バラ肉。2~3時間煮込んだ肉は脂っぽさがなく、張りのある皮とプニプニとした軽やかな弾力の脂が実にいい。この2層の脂身の食感を中国人は非常に好むという。

▲湘潭剁椒魚头(鯛のカマの唐辛子蒸し)※辛さ選択可
湖南の魚料理といえばこれ。魚頭を左右に開き湖南の伝統唐辛子漬け(トーラージャオ)をたっぷりのせ、料理酒をかけて蒸しあげる。現地では川魚を用いるが、仕入れと食べやすさから同店では鯛のカマを使う。日本人にとって馴染み深い鯛はこの料理に相性がよく、上品なうまみが際立つ仕上がりだ。

一面にのせられた大量の真っ赤な唐辛子漬け。一見ものすごく辛そうだが、塩漬けだからか意外とマイルド。ストレートで爽快な辛さと、ガツンと力強い塩味を感じる。

唐辛子漬けと鯛からでたうまみたっぷりのスープだしがうまい。〆にビーフンを追加注文してみよう。魚の身を食べ終わったら骨をきれいに取り除き丸麺のビーフンを投入。スープだしをビーフンにからめていただく。

自家製の丸麺ビーフン。パスタのような弾力をもつ麺だ。表面がつるつるとしていて喉ごしがよく、材料が米粉なだけにさっぱりとした味わい。塩気強めのスープだしと見事に調和する。

伝統唐辛子漬け「トーラージャオ」は主にこの「鯛のカマの唐辛子蒸し」用に自家製する。唐辛子の塩漬けにシソの葉、ショウガ、砂糖、塩、酒、醬油などと煮てうまみを重ねる。

▲味付け前の唐辛子の塩漬け(写真上・右)と、調味後の自家製トーラージャオ(同左)

▲汁米粉麺幅広麺(湖南ビーフン幅広麺)
同店こだわりの看板料理、自家製の米粉(ビーフン)麺。こちらもまた中国全土で親しまれる食材であるが、米どころの湖南省の人々にとってビーフンはソウルフード。主に朝食や夜食として食べられ、日々の生活に欠かせない料理といえる。食べ方は汁麺、汁なし混ぜ麺、炒め麺、冷やし麺など多岐にわたる。

麺は米100%の無添加で自家製で、現地から運びこんだ機材で日々麺作りをしている。長さが異なったり麺同士がくっついている箇所があったりするが、それは自家製無添加麺ならでは。

汁なら幅広麺がおすすめ。きしめんのようにしなやかで程よいやわらかさ。つるつるとした喉ごしが心地よい。

スープは鶏ガラがベース。牛スジとパクチー、青ネギをトッピングするのがポピュラーで、牛スジは薬味とともに醬油味でピリ辛に煮込んだもの。トッピングは他に豚足、鶏肉、ササゲ(細長いインゲンのようなさや豆の漬物)と豚肉の細切り炒め、五目野菜などがあり、さまざまな具で味わいの違いが楽しめる。

辛さを愉しむ湖南料理の代表格

前述のように『李湘潭』では辛さを“普通・中辛・現地辛”から選ぶことができる。写真下は同じ料理の“普通”と“現地辛”だ。色はそっくりだが辛さが全く異なる。

▲辡椒炒肉(豚バラと唐辛子の激辛炒め)
写真上・左が「辡椒炒肉(ラージャオチャオロウ)」の“普通”。緑色の食材はピーマンで、赤色はパプリカ。強烈な辛さをもつ青唐辛子は使わず、少量の赤唐辛子で調理する。対して同・右が“現地辛”。辛いもの好きならお気づきであろう、緑色の斜め切りにした食材は、全部青唐辛子だ。

青唐辛子だけを取り出してみるとこの通り、8本もの青唐辛子が入っているという。「青唐辛子を残さず食べるのは中国人でも辛いものが得意な人だけ。たいていは青唐辛子を残されます。いや、本当に辛いので残していいんです(笑)」と店長の徳重さん。種ごとゴロゴロ入った青唐辛子。全部食べたら猛烈な辛さで口の中が大変なことになるだろう。安心して、青唐辛子は食べたい量だけにしておこう。

味付けは甘みのあるたまり醤油と粒の豆豉。湖南料理でよく使う炒め物の組み合わせだ。薄切り豚バラ肉と青唐辛子、赤唐辛子にニンニクをゴロゴロと投入。これぞ辛さの湖南料理、好みの辛さで挑戦してみてほしい。

▲正宗?湖南麻婆豆腐(ある意味本当の湖南の麻婆豆腐)
日本人が大好きな中国料理といえば、やはり麻婆豆腐が筆頭であろう。見慣れたあの四川風麻婆豆腐を想像したら必ずびっくりするであろう、本当の湖南風は写真上のような似ても似つかない料理なのだ。

豆腐からして様子が違う。絹豆腐を薄切りにスライスし、素揚げすることで水分をとばしたものを使用。

素揚げ豆腐、パプリカとピーマン、赤唐辛子に塩をふり醤油を加えて炒め、鶏ガラスープを少し加えて強火で煮含める。最後に鍋をあおって炒め、汁はほとんどない状態に仕上げる。ピリ辛でご飯がすすむ、醤油ベースのしっかりとした味わいだ。

豆腐はさまざまな下ごしらえをする。例えば写真上は“干豆腐”をスライスした炒め物。他に冷凍豆腐や燻製豆腐など、下ごしらえで変化する豆腐の食感が楽しい。そのほか、ダイス状にカットしたやわらかい豆腐の麻婆豆腐もメニューにあるが、こちらのお店に来たら、まずは湖南ならではの麻婆豆腐を試してみよう。

今、未体験の中国料理がおもしろい

本場さながらの味を求め来店する客で連日賑わう『李湘潭』。近々秋葉原付近に2号店を出店予定という。

未知なる分野の体験はワクワクと同時に「口に合うだろうか」という不安も伴うものだ。『李湘潭』には、比較的馴染みある調味料や食材を使った料理がある一方、今まで知らなかった湖南独特の食材を使うメニューが、いいバランスで混在する。辛さも自分好みに合わせながらおいしく新ジャンルに挑める。
まず行くべき店として『李湘潭』を推薦するには、そこに理由がある。

【メニュー】
毛主席紅燒肉(毛沢東が愛した角煮)6個入り 1,180円
湘潭剁椒魚头(鯛のカマの唐辛子蒸し)※辛さ選択可 1,250円
汁米粉麺幅広麺(湖南ビーフン幅広麺) 850円~
辡椒炒肉(豚バラと唐辛子の激辛炒め)※辛さ選択可 1,080円
正宗?湖南麻婆豆腐(ある意味本当の湖南の麻婆豆腐) 980円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

李湘潭 湘菜館(りしょうたん しょうさいかん)錦糸町

住所
東京都墨田区錦糸2-7-12 徳重ビル1F
電話番号
050-5487-0471
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
火~木
ランチ 11:30~14:00
ディナー 17:30~23:00
(L.O.22:00)

金・土
ランチ 11:30~14:30
ディナー 17:00~23:30
(L.O.22:30)


ランチ 12:00~14:30
ディナー 17:00~22:00
(L.O.21:00)
定休日
月曜日
月末最終週の火曜日は定休日となります。
ぐるなび
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