フランス産のブロカントと和装美人の笑顔に癒される静かなワインバー 白金台『salt & plum』

2019年06月12日
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フランス産のブロカントと和装美人の笑顔に癒される静かなワインバー 白金台『salt & plum』
Summary
1.白金台にぴったりな品が漂う空間で、和装美人のもてなしに酔う。小さなワインバー『salt & plum』
2.個性的で上質な自然派ワインや蔵付きの酵母で造られた日本酒が揃う
3.6月より新しい展開。朝9時から軽い朝食と昼食、焼き菓子やケーキ提供のコラボがスタート

白金台で出逢う、和装の女将と、朝食と、ナチュラルなワイン

港区の西南端、武蔵野台地の東縁、いくつもの公園や美術館、歴史的建造物、点在する大使館…。
白金台のイメージには、どこかノーブルで瀟洒(しょうしゃ)なイメージがある。
そんな中に1910年代の白いドアと無機質な黒の外観に包まれた、小さなワインバーがある。
門脇樹代さんの『salt & plum(ソルト アンド プラム)』だ。

salt & pepperなら塩胡椒、ひっくり返してpepper & saltなら霜降り柄。でも、塩と梅?
現在は塩梅(あんばい)と読まれる語彙(ごい)は、もともと(えんばい)と読まれていた。
食酢が一般化していなかった時代、食べ物の味付けは天然の塩と、梅干しを漬ける時の副産物であった梅酢で調味された。
いい塩梅で食を調えることは、人間関係を円滑に進めることにも通じている。
そして、その真ん中に、1杯の滋味に溢れたナチュラルワインがあったら、人生は少しだけ薔薇色に染まるかもしれない。

「あれは確か『パーネヴィーノ』の『マリポーザ』、2006年だったかな…。口に入れたとたん、そのまま身体の中に吸い込まれるように染み渡って行く。あまりのおいしさに、ワインに対する価値観が変わってしまったんです」。
その頃ワインを注いでいた四谷三丁目の『カルネヴィーノ』で、立て続けに素晴らしい出逢いがあったため、1つのワインに限定するのは難しい。でも、その一つひとつは野生の酵母を用いてノンフィルターで造られるのに、すごくきれいな味わいを持つナチュラルワインばかりだった。

フランスのブロカントで統一された店内は、ヴァンブやクリニャンクール辺りの蚤の市に紛れ込んだような錯覚に陥る。それでいてシックなのは、黒やグレイッシュなトーン、木材のカウンターなど、女将・樹代さんの美意識で統一されているからだ。よく見ると、白いワインセラーの扉までブロカント、すべてがフランスから運ばれたものだ。

黒いシャンデリアや、ポイントで使われた赤。キャンドルトレーに使われている皿まで、繊細な息遣いが伝わって来る。
そんな中にボブヘアで小紋の和装の女将、樹代さんが凛と立つ。こんなワインバーは、東京でもなかなか見つからない。

製造されてから100年以上経った美術品・工芸品を指すアンティークに対して、ブロカントは愛すべき想いがいっぱい詰まった古道具。華美な装飾や強過ぎるメッセージはないけれど、新たな場所で使われ始めた時、新しいストーリーを語り出す。

『salt & plum』の店内に入ったとたん、心が伸びやかに解されて行くのは、ブロカントなインテリアと、ナチュラルなワイン、樹代さんの付かず離れずの当意即妙な接客が離れ難く1つになっているからだ。
レストランやビストロではなく、ワインそのもののゆったりとした空気感を楽しむ場所。ここは、ワインバーの定義を具現化した理想形だ。
そう言ったら、きっと樹代さんは吹出してしまうかもしれない。

ここには決まったメニューはない。テーブルに置かれた塗り物の小箱を開けると、いくつかの品書きはあるが価格は書いてない。それでいて、未だ少し還元臭が残る強い個性のワインを飲んでいると、そっと何種かのチーズが運ばれる。
スーツケースを持ったまま、ランチもスルーして、旅帰りの1杯を飲みに来た男性には、握り立ての塩結びと、いぶりがっこがそっと置かれる。
スモーキーないぶりがっことクロアチアのワインの余韻をそのままに、旅人はまた新たな気持ちでリクエストする。

「次、何かください」、ただそう伝えるだけで、再び素晴らしい1杯に出逢える幸せ。
彼はこの店に出逢って、すっかりナチュラルワインのファンになったらしい。
「これ、今日がいちばんおいしいタイミング、カシスが香り立ってますよ」、短くて的確なアドバイスと共に注がれる1杯にはワインを楽しむためのすべてが溢れている。

何を飲むか、ではない。誰と、飲むか。誰に、注がれるのか。
どんなおいしい食卓も、1人で向かえばどこか味気ない。食欲とはまた違う地平にある酒なら、その思いはなおさら強くなる。
ブロカントなフレンチインテリアに小紋の着物、何も足さず、何も引かず造られたナチュラルなワイン。蔵付の酵母で、自然に造られた日本酒もある。

ここには、外の喧噪とは明らかに違うゆったりとした時間が流れている。だから、誰もがつい長居をしてしまう。


小休止で、枝付のレーズンや『セドリック・カサノヴァ』のドライトマトが出てくると、九谷焼のお椀の蓋に乗せられたウエットティッシュがそっと添えられる。
丁寧にドアの外まで送られて、ふと道の途中で振り返ると、いつまでも樹代さんがお辞儀をしている。

送る日常で、気持ちが少しだけカサカサしたら、哀しいことがあったら、嬉しいことがあったら、誰かと話したい夜があったら、『salt & plum』の少し重い扉を開けよう。

今、いちばん飲み頃を迎えた1杯を、笑顔で樹代さんが注いでくれるから…。

ワインバーの朝と昼は、食事もできる『Cookie girl』開店。

6月10日から、『salt & plum』に、嬉しいニュースが加わった。
Cookie girlという名前で活躍しているパティシエールのオザキリエさんが、朝9時からアフタヌーンティーの時間まで、軽い朝食と昼食、焼き菓子やケーキを出すと言う。

タテル ヨシノ』や『レフェルヴェソンス』を経て独立したリエさんの焼き菓子は、これまで『セドリック・カサノヴァ』、『DOWN THE STAIRS ARTS & SCIENCE』など一部の店舗でしか手に入らなかった。

中目黒『THEWINESTORE』のイベントで大好評だった、フォカッチャから手づくりのサンドイッチも楽しみだ。自分の好きな時間に静かな店内で楽しむのもいいし、テイクアウトして公園の陽光の下なんて使い方もできる。白金台駅のすぐそばだからランチ用に会社に持込んでも、お昼休みに豊かな気分になれるだろう。

午前と午後は、Farm to Tableの身体と心に優しいサンドイッチやデザートの『Cookie girl』。夕方からは、選りすぐりのナチュラルワイン。
昼と夜、それぞれの顔を持つ『salt & plum』で優しさに包まれる時間を…。

【メニュー】
グラスワイン 1,000円~
日本酒 500円~
各種つまみは時価。
『Cookie girl』お菓子(パウンドケーキ、ビスコッティetc) 450円〜
テイクアウト用サンドイッチ 600円〜
お昼ごはん(日替わりサンドイッチ、スープ、サラダ) 1,400円〜
デザート 800円〜
本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です

salt & plum (ソルト アンド プラム)

住所
〒108-0071 東京都港区白金台5-18-18 1-A
電話番号
070-4101-5674
営業時間
月~金9:00~15:00、18:00~24:00 土日祝日15:00~L.O.23:30
定休日
日曜

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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