正統派フレンチを知らない人こそ来てほしい。あの気鋭シェフが原点回帰した、広尾『au deco』

2019年08月18日
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正統派フレンチを知らない人こそ来てほしい。あの気鋭シェフが原点回帰した、広尾『au deco』
Summary
1.「フランス料理を気軽に食べてもらいたい」 掛川シェフが原点へ、広尾『au deco(おでこ)』
2.白仁田ソムリエールが誘うヴィンテージワインの世界も大きな魅力
3.フレンチを五感で楽しむ。上質な空間とそれを彩るクラシック音楽

フランス料理というものをきちんと味わえるお店をつくりたかった

フランス料理というと、かしこまった格好でいただくフルコースを思い浮かべる人も多いだろう。中には、マナーなどを意識しすぎて、リラックスして楽しめなかった経験がある人もいるかもしれない。

しかし、食とは本来、味や香り、盛り付けだけでなく、その場の雰囲気までひっくるめて楽しむものだ。そのことを思い出させてくれるのが、2019年に東京・広尾にオープンしたフランス料理店『au deco(おでこ)』である。

オーナーシェフを務めるのは掛川哲司(さとし)さん。箱根『オーベルジュ オー・ミラドー』や南青山『NARISAWA』で修業した後、30代で代官山の人気ビストロ『Ata』や恵比寿『グッドラックカリー』を手掛けてきた匠だ。

とはいえまだ人生半ば。40代に差し掛かったことを機に、前々から抱いていた想いを形にすることに。それが、「フランス料理というものをきちんと味わえるお店をつくること」だった。

「独立した33歳当時は、経験も人間としての厚みも足りなかった。昔ながらのクラシカルなフレンチを提供するお店をやるには、30代ではまだ早かったんです」。そう振り返ると掛川氏はさらに、「ようやくオープンできたとはいえ、このお店に対しては少し背伸びしていると思う。50歳くらいでしっくりくるようになるかな」と言葉を継いだ。

10年後、その「しっくり」を現実のものとするためにも、まずは伝統的なフランス料理の魅力を多くの人に伝えたい。そう考えて、コースではなく、一品一品に高いレベルが求められるアラカルトのみを用意することにした。もちろん、1品から気軽に利用できるので、夜遅くの来店でワイン一杯と1、2品をゆっくりと嗜むお客も多いそうだ。

熟成のおいしさを多くの人に。ヴィンテージワインを豊富にオンリスト

ワインは、熟成のおいしさを多くの人に知ってもらいたいと、1970~80年代のものを多くそろえている。さらにうれしいことには、90年代のものはグラスでもいただける。

また、「80年代のワインでも2万円前後から楽しめますよ」とソムリエールの白仁田真澄さんが教えてくれたが、掛川シェフとは中学校の幼馴染というだけあり、ふたりはツーカーの仲。シェフの作る料理の魅力も知り尽くしているだけに、ベストな一本をチョイスしてもらうのが賢明だ。

前菜で既にフレンチの世界へ引きこまれる

冷前菜のおすすめは、「仔ウサギとミル貝のテリーヌ 人参のサラダ」(写真上)。一羽のウサギからとれるさまざまな部位を使ったジュレを口にすると、ミル貝のうまみがじんわりと溶けだしていく。うさぎは脂肪分が少なく粘土が高い肉なので、しっとりとした口当たりも魅力だ。

トッピングされた白レバーのフォンダン(ふわっとした食感のムース状に仕上げたもの)とともに口に運べば、さらに奥深い味わいを堪能できる。

手前に添えているのは、ウサギのあばら肉を焼いたもの。キャロットラペは、ビネガーやワイン、クミン、レーズン、クルミなどでさっぱりと仕上げている。

温前菜からも一品ご紹介しよう。

「アナゴとリードォー 焼きナスのクーリ」(写真上)は、まず、皮を剥いた焼きナスをコンソメと煮込んでクミンとグリーンペッパーで味付け。それを蒸した後に、グリルしたアナゴ、火を通したリードヴォー(仔牛の胸腺)とともにプレートに盛り付け。そこにエシャロットのフライを飾り付けたら、アナゴのだしと赤ワインで作ったソースをとろーり垂らして完成だ。

ユニークな食材の組み合わせに思えるが、「リードヴォーとアナゴは相性がいいんです」との掛川シェフの言葉通り、アナゴのうまみが溶けたソースをまとったリードヴォーは豊潤な味わい。とろりとしたナスのクーリとのマリアージュも見事だ。

掛川シェフの想いを体現したシグニチャーメニュー

続いて紹介するのは、同店のシグニチャーメニューとして君臨する「タラバガニと蟹味噌スクランブルエッグのパイ包み焼き」(写真下)。

タラバガニと蟹味噌、細かく刻んだマッシュルームとホタテ、スクランブルエッグ状のトロリとした卵を擁(よう)したサクサクのパイに添えられているのは、マスタードやハーブのアクセントが効いたオマール海老のビスク。うまみ成分豊富な食材とバターの香り漂うパイ生地という黄金コンビに、卵のやさしさを掛け合わせてきたところはなんとも心憎い。

掛川シェフがこのメニューを推すのには3つの想いが関係している。

「フランス料理に欠かせないパイ生地を使った料理を楽しんでほしい」
「殻剥きの手間なくカニをむしゃむしゃ食べてほしい」
「おかあさんの卵焼きみたいなやさしい味を堪能してほしい」

これこそ、「いろんな人に気軽にフランス料理を食べてもらいたい」を形にした究極の一品だ。この一皿とワイン目当てに、何度もリピートする人がこれからますます増えるであろうと思わされる。

クラシカルなカスタードプリンで心地よい夢を

デザートの「カスタードプリン」(写真上)は、バニラアイス、生クリーム、スモモのコンポートを添えたクラシカルな出で立ち。しっかり固めなプリンを少しずつすくいながら、生クリームやアイスとあわせて口に運ぶと、いくつになっても幸せな気分になれる。

しかも、キャラメリゼがちょうどいい塩梅になったところで、焦げ付きを防ぐためにシェリービネガーを加えているため、甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がり、うっとりとした気分で帰路に着けそうだ。

「フレンチの魅力を次世代につないでいきたい」

一品からでもOKの気軽さがありながら、フレンチの真髄にしっかりと触れられる同店。内装やサービスやもちろん、BGMにもとことんこだわって、クラシカルなフレンチの世界に酔いしれさせてくれる。

シェフ自ら、営業時同様に照明を落とした店内でさまざまなクラシック音楽を試聴して、ぴたりとくるものをチョイスしているのだと明かしてくれたが、「音響がなかった時代、食事の場で演奏するために作曲された曲はやはりしっくりきますね」と自身も音楽の勉強を楽しんでいるようだ。

▲左から白仁田ソムリエール、掛川シェフ

そんな掛川シェフの目標は、「フレンチの魅力を次世代につないでいくこと」。
「玄人も歓迎ですが、若い方にも勉強がてらぜひ食べにきてほしいです」と語るシェフの表情から、本当にフレンチが大好きなことが伝わってきた。多くの客がその熱いパッションを受け取ることによって、シェフの想いは未来へとつながれていくのだろう。

【メニュー】
仔ウサギとミル貝のテリーヌ 人参のサラダ 2,800円/ハーフポーション1,900円
アナゴとリードヴォー 焼きナスのクーリ 2,500円/ハーフポーション1,700円
タラバガニと蟹味噌スクランブルエッグのパイ包み焼き 5,200円/ハーフポーション3,500円
カスタードプリン 1,200円
※本記事に掲載された料理はすべてハーフポーションです
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

au deco(おでこ)

住所
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-23-3
電話番号
03-6721-9218
営業時間
18:00~0:00
定休日
日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/ps4kae0m0000/
公式サイト
https://www.facebook.com/kakegawachef/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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