北ローヌでフランス人からも尊敬される日本人醸造家の一本。

【連載】東京・最先端のワインのはなし verre12  ヴァンナチュール。自然派ワインとも訳されるこのワインは、これまでのスノッブな価値観にとらわれない、体が美味しいと喜ぶワイン。そんなワインを最先端の11人が紹介する。

2016年01月06日
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北ローヌでフランス人からも尊敬される日本人醸造家の一本。
Summary
1.11人全員に回って、2周目のワインは?
2.フランスでも有名な日本人醸造家
3.ラ・ピヨッシュ林さんの恩人と言える存在

TOKYO NATURAL WINE ELEVEN、11人の男たちの選んだワインが出揃い、今回から2周目がはじまる。トップバッターに戻り、日本橋・蛎殻町にある炭火焼きと自然派野菜、そしてワインのラインナップで人気の「ラ・ピヨッシュ」店主・林真也さん。第一回は、自らが栽培に携わった造り手、ジャン・イヴ・ペロンの1本を紹介していただいたが、今回はそのジャン・イヴ・ペロンとも関わりの深い人物のワインが登場する。

La Grande Colline LE CANON Rouge(ラ・グランド・コリーヌ ル・カノン)

林さんが選んだのは、フランス・北ローヌ地方でワイン生産を行っている大岡弘武さんのワイン。大岡さんは、明治大学理工学部を卒業後渡仏し、ボルドー大学醸造学部でワインについて学んだ後にGUIGAL社の、ジャンルイ・グリッパが所有していたサンジョセフの区画での栽培責任者を務めた人物。
その後、北ローヌはもちろん、フランスを代表するナチュラルワイン生産者の一人であるティエリー・アルマンのもとで栽培長を任され、独立し、La Grande Colline<=大きな丘(岡)>を立ち上げた。
そんな大岡さんと林さんの関係とは?

<林さん>
僕の中では勝手に恩人のように思っている存在が大岡さんです。
2006年のことです。たまたま、うちの奥さんと一緒にワーキングホリデーのビザが取れたのでフランスに発ちました。
最初はなんのツテもなく、とりあえずフランスに触れるというのが目的だったので、1カ月半くらいはパリでプラプラしていたのですが、お金が尽きてきて、働かないとやばいと思い、働き口を探したんです。
それで、最初に連絡したのが大岡さんのところ。ところが、メール自体にやる気が無いと思われ(笑)、採用は叶いませんでした。それでも彼に会ってみたかったから、北ローヌ、サン・ペレの大岡さんのもとに出向いたんです。
メールとは違い、会うと優しい人で(笑)、働き口としてレストランを紹介してくださったんですが、そこは枠がいっぱいでダメでした。すると、翌週サヴォワで試飲会があり、そこに友達がいると言われ、現地で紹介されたままジャン・イヴ・ペロンのところで働くことになったんです。

当時の私は、ナチュラルなワインについて、そこまで深く入り込むとは思っていなくて、1人のワイン業界の人間として、そういうワインが好きで、現場が見たいと思っていただけのことでした。そういった意味では、この出逢いはナチュラルワインの世界に深く入り込むきっかけとなりました。
店のコンセプトすら、大岡さんにディレクションしてもらったと勝手に思っているほどですから。

今思えば、それまでに私が飲んでいたワインはいろんな「マスキング」を施した、「素晴らしい味に作り上げている」ワインでした。それが、大岡さんの造るル・カノンを飲んだことで、ワインはブドウからできているんだということを再認識させてくれたんです。
現地で飲んだのは03か04ヴィンテージでしょうか。
まさに、ブドウジュースでした。大岡さんのワインはイチゴとか他の果実ではなく、完璧にブドウがイメージ出来たんです。

彼のワインの味の特徴は、毎年味わいが違うのことが特徴と言えるかもしれません。
赤にしろ、白にしろ、凄まじく美味しい時期もあれば、飲む人を選ぶ時期もある。ブドウの出来が良かったからといって、微生物的にどうかというのは別問題。
そこまで自然任せにワインを作れるという人は極僅かしかいないと思います。
ル・カノンよりさらに上のクラスのキュヴェなどは意味がわからないほどの時間をかけて樽の中などで味わいが出るまで瓶詰めを待っている。
例えば、サン・ペレなどは、8年とか10年とか平気で発酵・熟成させる勇気と度胸と信念がある人。フランスのナチュラルなワインの業界で名の知られた人物の中でそのような人はフィリップ・ジャンボンと大岡さんくらいなもの。

あるとき、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(いわゆるDRC)の共同オーナーであるアンリ・フレデリック・ロックさんにローヌ地方にそんなつくり手がいるということを伝えたら、「それは僕らには出来ない、すごく尊敬しうることだ」と答えたほどです。

何千年というワイン造りの歴史をもつところで日本人がワインを造りはじめ、今ではローヌのナチュラルなワインの生産者からは尊敬を集めるほどになった人物、それが大岡弘武さんなんです。

<「ラ・ピヨッシュ」での価格>
ボトル4,800円+税

La Pioche (ラ・ピヨッシュ)

住所
〒103-0014 東京都中央区 日本橋蛎殻町1丁目18−1
電話番号
03-3669-7988
営業時間
月~金 17:30~L.O.23:00、土・日・祝 16:00~L.O.23:00
定休日
不定休 (1月は~12日、18日、26日がお休み)
公式サイト
https://www.facebook.com/2013lapioche

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。