最高に美味しいフィナンシェのレシピをプロが伝授! 本格フィナンシェの作り方

【連載】洋菓子レシピは巷に溢れているが、ホンモノを知りたいなら専門家に聞くのがイチバン! 洋菓子レッスンは半年待ち、各メディアで大活躍中の洋菓子研究家・たけだかおる先生にdressing編集部が弟子入り。秘伝メソッドとこだわりレシピを大公開します!

2018年10月06日
カテゴリ
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最高に美味しいフィナンシェのレシピをプロが伝授! 本格フィナンシェの作り方
Summary
1.人気洋菓子研究家が教える、ホンモノの洋菓子レシピ
2.バターにひと手間加えることで、芳ばしい香りと濃厚な味わいに
3.表面はカリッと中はふっくら! 食感により差をつける秘訣は、ある材料にアリ!

洋菓子研究家が伝授! 最高においしい「フィナンシェ」の作り方

焼き菓子の定番の中でも人気の高い「フィナンシェ」は、しっとりとした舌触りと芳醇なバターの香りが印象的ですね。でも実は、フィナンシェが最高においしいのは“焼きたて”だったのです!!

表面はカリッと、中はふんわりの食感が味わえるのは、手作りした人だけの特権。

ということで今回は、プロがオススメする「焼きたてフィナンシェ」の感動が味わえるレシピを教わるべく、新妻グルメライターの植木祐梨子(写真・左)が、洋菓子研究家・たけだかおる先生(写真・右)に弟子入り。
たけだ先生主宰の予約がとれないお菓子教室に参加して、とっておきのレシピを教わってきました!

●祐梨子
「4月に発売された先生のレシピ本(※1)を読んで、すごく作りたいと思ったスイーツがあるんです!」

●先生
「わ~! お手に取ってくれてうれしいです。作ってみたいスイーツとは、何かしら?」

●祐梨子
「それは、ズバリ『フィナンシェ』です!!」

●先生
「涼しくなった秋にぴったりの焼き菓子ですね♪ プレーンの生地にココアパウダーを加えるだけで、こんな風にバリエーションも楽しめるから、手土産にもぴったりね! ところで、フィナンシェって、焼きたてが一番おいしいって知っていましたか?」

●祐梨子
「焼きたて!? う~ん、食べたことないなぁ……。一体、どう違うのでしょうか?」

●先生
「フィナンシェは、油分が多いスイーツなので、時間が経つほど生地がしっとりとしてきます。それももちろん、おいしいのですが、焼きたては表面がカリッとしていて、中はしっとりふわふわなの。この食感のコントラストが味わえるのは、焼きたてからせいぜい半日ほどかな。そのなかでも最高の瞬間は、焼き上がり5分後くらいなんですよ!」

●祐梨子
「食感のコントラスト! 味わってみたいです!! 焼きたてをおいしく仕上げるためのコツなどあるのでしょうか?」

●先生
「フィナンシェには、いろんな配合のレシピがありますが、今回は特に“焼きたて”がおいしく仕上がる配合で作っていきたいと思います。大切なポイントは、”焦がしバター”と”ベーキングパウダー”を加えること。
材料の調理方法や加えるものひとつで、口当たりや風味を大きく変えることができるんです。その理由も解説しながら、食感の差がより感じられるフィナンシェを作るためのポイントをお伝えしますね」

●祐梨子
「はい、よろしくお願いします!」

■「フィナンシェ」作りの押さえておきたいポイント3つ

1.バターは「焦がしバター」に! 混ぜながら火にかける
2.卵液と焦がしバターをあわせるときの温度に注意!
3.焦がしバターは濾さない!

[point1]バターは「焦がしバターに」! 混ぜながら火にかける

●先生
「最初のポイントは、バターの焦がし(溶かし)方。より風味よく仕上げるために、私のレシピでは、ただバターを溶かすのではなく、“焦がしバター”にしてから加えます!」

●祐梨子
「たしかに、より香り高く仕上がりそうですね! ところで先生、焦がしバターってどのくらい焦がせばいいのでしょうか?」

●先生
「焦がしバターは、フランス語で『ブール・ノワゼット』と言います。ブールはバター、ノワゼットはヘーゼルナッツという意味です。焦がし具合は好みではありますが、今回は、ヘーゼルナッツの皮の色を目指しましょう」

▲左:焦がしバター、右:ヘーゼルナッツ

●祐梨子
「ヘーゼルナッツの皮の色……けっこう濃いですね! そこまでしっかり色をつけるとなると、鍋を焦がしてしまいそう…」

●先生
「そうね。鍋底をこがさないように、小さいホイッパーを使ってしっかりと混ぜていきましょう。
まず、バターが溶けはじめると、中に含まれる水分が蒸発してパチパチと音を立てはじめます。その時点からしっかりと混ぜ続ければ、鍋底にバターの焦げがこびりつくことなく、水分が蒸発しやすくなってバターも跳ねません。
逆に、火にかけたまま放っておくと、バターがバチバチと音を立てながら鍋から跳ねますよ!鍋のそばから逃げるほど危険です(笑)そのうえ、色づく頃には鍋底に焦げがこびりついて取れなくなってしまうんです。

この写真を見れば、その違いがわかるかしら?」

▲焦がしバターを生地に流し入れた後の、鍋の様子
左:放ったままにしたときの鍋底、 右:しっかりと混ぜながら焦がしたときの鍋底


●祐梨子
「わぁ。焦げのつき具合が全然違う! 右は鍋底に焦げが付着していませんが、左はべったりとこびりついてしまっていますね、バターの風味も損なわれてしまいそうです……。同じように色をつけても、混ぜ方ひとつでこんなにも差がでるなんてびっくり…」

●先生
「そうなんです。バターから気泡がでてきて、じゅわじゅわと音を立てはじめたら、小さめのホイッパーを使って、鍋底に焦げがこびりついていないことを確認しながら混ぜましょう。音がおさまったら、焦げつきをおさえる程度で大丈夫! ただし、混ぜるときは火傷しないように気をつけてくださいね」

[Point2]卵液と焦がしバターをあわせるときの温度に注意!

●先生
「焦がしバターがヘーゼルナッツ色になったら、ここからが一番重要なポイント! サクッとふんわり食感に仕上げるために大切な“生地と焦がしバターを合わせるときの温度”について解説しようと思います」

●祐梨子
「バターと生地を合わせる温度が、食感にどう影響するのでしょうか?」

●先生
「焦がしバターが冷めていると生地と馴染まず、乳化しにくくなってしまいます。バターと生地が均一に混ざっていないと、焼き上がりが油で揚げたような状態になってしまうんです」

●祐梨子
「それは、カリッと芳ばしい食感を超えて、硬そうですね……逆に焦がしバターの温度が高いと、どうなってしまうのでしょうか?」

●先生
「熱々の状態で生地に加えてしまうと、卵白に熱が入りすぎて、煎り卵状態になってしまうことがあります。そうならないためにも、温度に気をつけていきたいと思います。まず、焦がしバターが完成したら、温度が上がり過ぎないように、濡れ布巾を使ってすみやかに粗熱を取っていきます」

●祐梨子
「濡れ布巾を使うのですね! 先生、ちなみに目安となる温度はあるのでしょうか?」

●先生
「火からおろしたら、濡れ布巾の上に鍋をのせてください。ジュッと音がしたら、濡れ布巾をひっくり返してもう一度。何度が繰り返すうちに、ジュッと音がしなくなったら、冷たい水で絞り直した布巾の上にのせてもう一度試します。そこで音がしなければ、粗熱がとれた証拠。温度は80℃くらいかしら」

●祐梨子
「なるほど~! その方法なら、粗熱がとれているかどうかとってもわかりやすいです!」

●先生
「布巾を返すときは、鍋底に触れた部分はとても熱くなっているので、やけどしないようにしてくださいね」

[Point3]焦がしバターは濾さない!

●祐梨子
「そういえば、完成した焦がしバターを見ると、中に黒い焦げの粒が沈殿しているのがわかります。この焦げは、一体どうすればよいのでしょうか?」

●先生
「良い質問ですね。バターを火にかけたときにできる焦げは、バターの中のタンパク質が焦げたものなんです。焦げの粒を濾すか濾さないかはお好みですが、私のレシピでは濾さずにそのまま加えます!」

●祐梨子
「え~! 取り除かなかったら、なんだか苦くなってしまいそう……」

●先生
「色を付ける工程でしっかりと混ぜていれば、焦げは風味に全く影響しないんです! また、食感がザラザラすることもないので、濾さずに生地と合わせていきましょう」

■フィナンシェの生地をふっくらと焼き上げるには?

●祐梨子
「ところで先生、レシピを見て気になったのですが、先生のフィナンシェには、“ベーキングパウダー”を加えるのですね! 」

●先生
「その通り! よく気がつきましたね。ベーキングパウダーに含まれている炭酸ガスには、生地を膨らませる働きがあるんです。入れるかどうかはお好みですが、焼き上がりが変わってきます。
この写真を見れば、その違いがわかるかしら?」

▲左:ベーキングパウダーを加えずに焼いたフィナンシェ、 右:ベーキングパウダーを加えて焼いたフィナンシェ

●祐梨子
「生地の高さが全然違う! 右はふっくらと焼き上がっているけれど、左はぺったんこ! 膨らんでいませんね。ほんの少しベーキングパウダーを加えるだけで、こんなに見た目が変わるとは知りませんでした! 味にも影響があるのでしょうか?」

●先生
「ベーキングパウダーは、入れても入れなくても失敗の原因にはなりません。ただ、加えた方が、口当たりがより軽く、加えなければよりしっとりとした生地感に仕上がるんですよ!」

■焼き型によって、焼きたての食感が変わる?

●先生
「違いといえば…! 今回は、同じ配合の生地を2種類の型で焼き上げたいと思います。一つは、フィナンシェの定番“インゴット型”。もうひとつはマドレーヌを焼くときに使う“マドレーヌ型(シェル型)”です!」

▲写真上・上:マドレーヌ型(シェル型)、下:インゴット型

●祐梨子
「先生! 初歩的な質問かもしれないのですが、フィナンシェはなぜ“インゴット型”で焼くのでしょうか?」

●先生
「“インゴット”とは、英語で金塊という意味。諸説ありますが、フィナンシェの色や形が“金の延べ棒=インゴット”に似ているからと言われています。
そもそも“フィナンシェ”とは、卵白ベースの焼き菓子のことを指すんですけどね」

●祐梨子
「そうだったんですか! では、どうして先生は“マドレーヌ型”でも焼くのですか?」

●先生
「今回は祐梨子ちゃんに、実際に食べ比べてもらいたくて。
角がなく丸みを帯びた“マドレーヌ型”と、角がある“インゴット型”では、焼きたての食感が全く異なるんです! この違いが味わえるのも、焼きたてだからこそ!」

●祐梨子
「違う型で焼いたときの違いも、試食で体験できるなんて、うれしいです!」

■ポイントを押さえたところで、さっそく実践!

●祐梨子
「“焦がしバター”の色付け具合や、生地と合わせるときの温度が、焼きたてフィナンシェの食感や風味に大きく影響しているとは知りませんでした。また、ベーキングパウダーや焼き型ひとつで、口当たりが変わることにもびっくり! 教わったコツさえ押さえておけば、とっても簡単に作れそう!」

●先生
「そうなんです。コツといっても、難しいテクニックはありません。
フィナンシェ作りは工程がとってもシンプル。だからこそ、一つひとつのポイントをおさらいしながら丁寧に作っていきましょう!」

●祐梨子
「わ~、とっても楽しみ♪ 先生、よろしくお願いします!」

■「フィナンシェ」の作り方

■材料(インゴット型 8個分)

【プレーン】
・無塩発酵バター … 70g
・卵白 … 80g(L玉約2個分が目安) 
・上白糖 … 70g
・ベーキングパウダー … 1.5g
・バニラオイル … 適量
・アーモンドパウダー … 25g
・準強力粉 … 30g(今回は、『鳥越製粉』の「フランス」を使用)

※卵白は冷凍保存しておいたものでも可能。その場合は、使用するとき冷蔵庫内に移して解凍しておく。
※今回は上白糖を使用。転化糖(ぶどう糖と果糖との等量混合物)が含まれているため、生地をしっとりさせる効果がある。
※アーモンドパウダーには、“皮付き”“皮なし”“コーンスターチ入り”“純”のものがある。どのタイプを使うかは好みだが、今回はバターの香りを引き立てたいので“皮なし・純”のものを使用。
※薄力粉ではなく準強力粉(フランス)を使うことで、しっかりとした生地感に仕上がる。

【フィナンシェ・ショコラ】
・準強力粉 … 20g
・ココア … 10g(今回は無糖タイプのものを使用)

※粉以外の材料は、【プレーン】と同様。
※ココアパウダーは、使うメーカーによって焼き色が変わる。風味や色合いが変わりやすい粉なので、直射日光の当たらない涼しいところで保管しておくこと。

■今回使用したキッチンツール

・熱伝導のよい銅やステンレス素材の厚手の鍋
・粉ふるい
・ホイッパー(今回は大と小を使用)
・ゴムベラ

《型》今回は、以下2つの型を使用。
・マドレーヌ型天板(8個付)
・インゴット型天板(6個付)

※上記は一例。
※型付きの天板はメーカーによって1個あたりの容積が違う。テフロン加工の型を使用する場合は、空焼きしないように、生地は全ての型に流し入れること。(空焼きすると型が傷みやすいため)。
※余った生地は小さいカップや単品用(写真上・右)で焼くことを推奨。
※鍋は、焦げの色が見えやすい色味を推奨。

■下準備

・型にバター(分量外)を塗って冷蔵庫へ入れておく。(型の素材によるが、バターを塗っておいた方が、キレイに型から外しやすくなる。また、塗ったバターが溶けてゆるんだ状態で流し込むと生地と一体化してしまうため、型は焼く直前まで冷蔵庫で冷やしておく)

・アーモンドパウダー、準強力粉、ベーキングパウダーは、合わせてふるっておく。(写真・左)
・【フィナンシェ・ショコラ】の場合は、粉類を合わせてふるった上から、茶こしを使ってココアパウダーをふるう。(写真・右)

■フィナンシェを作る

① 卵白に上白糖を一度に加えて、ホイッパー(大)でよくなじませる。

ポイント
・上白糖を溶かす際は、泡立てないこと。
・上白糖を溶かす際は、泡立てないこと。

② あらかじめ合わせてふるっておいた、アーモンドパウダー、準強力粉、ベーキングパウダーを再度ふるいながら①に加える。

ポイント
・ホイッパーで周りの粉をすくい絡めながら、中心から外に向けて渦を描くように混ぜるとダマができにくくなる。
・全体がなじんだら、焦がしバターを加えるまで常温で置いておく。
・ホイッパーで周りの粉をすくい絡めながら、中心から外に向けて渦を描くように混ぜるとダマができにくくなる。<br>・全体がなじんだら、焦がしバターを加えるまで常温で置いておく。

■焦がしバターを作る

③ バターを鍋に入れ、火をつける。鍋肌から炎がはみ出さない程度の中強火で溶かす。

④ パチパチと水分が蒸発する音がでたら、ホイッパー(小)で混ぜ始める。絶えず静かに混ぜながらヘーゼルナッツ色になるまで煮詰める。

ポイント
・小さめのホイッパーを使うことで、バターが鍋の端に飛び跳ね、焦げつくのを防ぐことができる。
・水分の蒸発音が出なくなるまで、しっかりと混ぜ続ける。音が出なくなったら、スローダウンしてよい。

⑤ ヘーゼルナッツ色になったら、温度があがりすぎないよう濡れ布巾の上に置いて粗熱をとる。ジュッという音がしなくなるまで、布巾をひっくり返しながら何度か繰り返す。

ポイント
・何度か繰り返して音がしなくなったら、冷たい水で絞り直した布巾の上でもう一度試す。音がしなければ粗熱がとれた証拠(目安は80℃)。
・火傷しないよう、布巾は鍋底が当たっていない端を持つ。
・何度か繰り返して音がしなくなったら、冷たい水で絞り直した布巾の上でもう一度試す。音がしなければ粗熱がとれた証拠(目安は80℃)。<br>・火傷しないよう、布巾は鍋底が当たっていない端を持つ。

■生地と焦がしバターを合わせる

⑥ 粗熱がとれて80℃ほどになった焦がしバターを②に加えて、バターの筋を残さぬようきちんと混ぜる。

ポイント
・焦がしバターの温度が下がりすぎてしまうと、生地と馴染まず乳化しにくくなってしまうため、粗熱がとれたら速やかに加える。
・ボウルをまわしながらホイッパーのワイヤーの間に絡めるように混ぜる。
・焦がしバターの温度が下がりすぎてしまうと、生地と馴染まず乳化しにくくなってしまうため、粗熱がとれたら速やかに加える。<br>・ボウルをまわしながらホイッパーのワイヤーの間に絡めるように混ぜる。

⑦ バニラオイルをおよそ3滴加えて混ぜる。

■生地を寝かせる

⑧ ラップをして最低でも1~2時間ほど(できれば一晩)冷蔵庫で休ませる。

ポイント
・今回の生地は休ませることで生地がしまり、扱いやすくなる。混ぜ合わせてすぐに流し込んだ場合、同じグラムを入れても型からはみ出す場合がある。
・生地の配合によっては、休ませない方がよい場合もある。

■型に流し、焼き上げる

⑨ 休ませておいた生地を、もう一度混ぜて均一にしてから型に流し込む。

ポイント
・生地は、型の8分目まで入れる。
・メーカーによって型の容積が変わるため、生地が余った場合はカップなどに流して焼く。
・生地は、型の8分目まで入れる。<br>・メーカーによって型の容積が変わるため、生地が余った場合はカップなどに流して焼く。

●祐梨子
「生地の弾力がすごい…。うまく型に流せられません……」

●先生
「そんなときは、スプーンを2本使って、生地をそーっと型に置くように流しましょう! 型に流す量は、8分目ずつくらいがちょうどよいですよ」

●祐梨子
「先生~! きちんと寝かせたのに、生地が少し余ってしまいました。どうしよう…」

●先生
「容積は型によって違うので、心配ありませんよ。余った生地は、小さいカップや単品用のインゴット型で焼きましょう。型に流したら、布巾を敷いた上でトントンと叩いて、型の中で生地を均等に広げていきます。美しい焼き上がりに仕上げるため、左右均等に力を加えてくださいね」

●祐梨子
「左右均等に…。力加減が難しい~!」

●先生
「途中で型を左右持ち替えてトントンすると、よりキレイに仕上がりますよ♪」

⑩ 160℃の余熱で温めたオーブンに生地を入れる。160℃で約12分、天板の奥と手前を入れ変えてさらに3分程度焼く。

(今回はガスオーブンを使用。電気オーブンの場合は、180~190℃で約17分、向きを変えて3分程度焼く)

ポイント
・使用するオーブンによって焼き時間が多少異なるため、焼き色を見ながら焼く。型と生地の間にわずかに隙き間ができたら、中まで焼けている証拠。

「きれいに焼けました~!」

●祐梨子
「ふっくらときれいな黄金色に焼き上がりました! ん~~焦がしバターのいい香りっ♪」

●先生
「良い色ですね! すぐに型からはずして、網の上で粗熱をとりましょう♪ 続いて食べ比べ用の、ベーキングパウダーを入れないフィナンシェとマドレーヌ型(シェル型)で焼いたフィナンシェも焼いていきましょう!」

カリッとふわふわ食感の焼きたて「フィナンシェ」が完成!

●祐梨子
「全部焼けました~! バターとカカオの濃厚な香りがすごいっ! 早く食べたい!」

●先生
「昨日焼いてすでにしっとりとしたフィナンシェも用意してありますよ。さっそく、食べ比べてみましょう!」

●祐梨子
「はい! 先生に教わったポイントを守るだけで、ワンランク上のフィナンシェが作れました♪ まずは、ベーキングパウダー入りのインゴット型で焼いた、焼きたてのフィナンシェからいただきまーす!」

●祐梨子
「わ~! 表面がカリカリ! 生地の口当たりが軽くて、ふわっと消えていく~! この食感のメリハリは、初体験です♪」

●先生
「そうなんです! この食感の差は、焼きたてでないと味わえないのよ♪ 次は、ベーキングパウダーの入っていないインゴット型で焼いたプレーン味を食べてみましょう!」

●祐梨子
「あ! 生地がキメ細やかでぎゅっと詰まっているみたい。食べごたえがありますね~。ベーキングパウダーが入っているかいないかで、こんなにも食感が違うとは、びっくり!」

●先生
「では、ベーキングパウダー入りのマドレーヌ型(シェル型)はどうかしら?」

●祐梨子
「インゴット型に比べて、マドレーヌ型(シェル型)は角が丸みを帯びているからか、カリッとした縁の感触が、どこをかじっても均等でバランスがよく感じます♪ また、インゴット型よりも厚みがでるから、よりふんわりとしているような……」

●先生
「そうなの。実は私は、焼きたての表面のカリッと感と、ふんわりとした中の生地との対比が一番感じられる、マドレーヌ型(シェル型)が好みなんですよ♪」

●祐梨子
「そうだったのですね! わたしもマドレーヌ型(シェル型)がおいしいと思いました。型を変えるだけでこんなに食感が変わるなんて、本当に楽しい~!」

●先生
「いろいろなパターンで焼いてみると、自分好みのフィナンシェが見つかりますよ♪ それも手作りの特権ですね。1日おいたフィナンシェも食べてみましょう!」

●祐梨子
「一晩経つと、しっとりした、食べ慣れたフィナンシェの食感です。1日おいたものもマドレーヌ型(シェル型)の方が、口当たりもカカオの風味も軽やかに感じます! 実際に食べ比べをしてわかりました、焼きたての食感は最高ですね! 夫にも焼きたてを食べさせてあげたくなっちゃった♪」

●先生
「本当に仲良しね♪ 焼きたてがオススメですが、密閉容器にいれて保存すれば2~3日は日持ちします。フィナンシェはくっつきやすいので、個包装がオススメですよ」

●祐梨子
「ちょっとした手土産やプレゼントにもぴったりですね♪ プレゼントといえば! クリスマスの季節が近づいてきましたね。昨年のロールケーキは大成功だったので、今年も夫の喜ぶクリスマススイーツを何か手作りできたらなぁ…」

●先生
「そうね! 次回のレッスンは、クリスマスの定番スイーツを作りましょう。とっておきのレシピを伝授しますよ」

●祐梨子
「わ~い! 次回のレッスンも楽しみ! よろしくお願いします♪」

取材・文/植木祐梨子、写真/岡本寿

(※1)『たけだかおる洋菓子研究室のマニアックレッスン』 河出書房新社:2018/4/19発売