予約が取れないカンテサンス、そして老舗の仕事について

【連載】マッキー牧元の「ある一週間」 第23週  日本を代表する食道楽の一人、マッキー牧元さん。彼はどんなものを食べて一週間を過ごしているのか。「教えていいよ」という部分だけを少しのぞき見させていただく。

2016年02月22日
カテゴリ
レストラン・ショップ
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予約が取れないカンテサンス、そして老舗の仕事について
Summary
1.ラードを自ら作る「ぽん多」の職人仕事
2.「カンテサンス」が今も予約が取れない訳
3.すっぽんの食べ方

1月10日「油は店の味。そんな『ぽん多』の丹念な仕事」

「あの店はいい。なんたって油がいいからネ」。
一昔前の人たちは、洋食屋やとんかつ屋を薦めるのに、こんな言葉を交わしていた。
「油は店の味だと思います」。四代目主人の島田良彦さんは、そう静かに語られた。
「ぽん多本家」では、毎日、少量ヘットを混ぜたラードを1時間弱かけて炊く。

混ぜながら炊いて炊いて濾し、濾し残った脂をマッシャーでつぶして、最後の一滴まで絞り出す。
「こうしてやると、脂も往生します」

できた油は琥珀色で、甘く丸い、優しい香りがした。
脂カスをつまんでみると、健やかな甘さが広がる。
健康に育った豚のラードは、体にいい。
恐らく日本の洋食屋やとんかつ屋で、自らラードを作っているのは、この店だけではないだろうか。

炊きが甘いとトンカツを入れた時に泡が出すぎて溢れそうになり、炊きすぎると焦げそうになる。
最良の一点を見極めて、炊いていく。これもまた、初代から続く職人仕事なのである。

この国のある甘い油をまとった衣が、豚肉を、穴子を、キスを、エビを、牡蠣を、小柱を包むのだから、こりゃあたまったもんじゃありませんぜ旦那。

ぽん多本家

住所
東京都台東区上野3-23-3
電話番号
050-5492-8353
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
火~日・祝前日・祝日
ランチ 11:00~14:00
(L.O.13:45)

火~土・祝前日
ディナー 16:30~20:20
(L.O.19:45)

日・祝日
ディナー 16:00~20:20
(L.O.19:45)
定休日
月曜日
その他(2024年4月11日)
その他(2024年5月8日)
※月曜が祝日の場合は営業し、翌火曜休み
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/g608200/

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※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

1月13日「カンテサンスの栗」

栗はまだ、起こされたことを知らない。
寝息をたてたまま、穏やかな甘味を忍ばせる。
1℃で氷温熟成させた栗のフランに、煮出した渋皮のムースが、てろんとしなだれる。
栗以上に栗にさせない。
微かに入れられたカスタードも、栗の甘みを気づかれないように下支えをしている。

その計算は精緻だが、人間の手がかかっているようにも思えない。
栗そのものの実直なうまが、朴訥に語り、打ち寄せる。
舌というセンサーを通じて、遠い記憶を呼び起こす。
そこにはどこまでも自然に近づこうという、敬意があった。
僕らは、気がつかないうちに食べていた。
知らないうちに、体に溶けていった。
それが自然なんじゃないかな。
と、栗がつぶやいた。
「カンテサンス」にて。

レストラン カンテサンス

住所
〒141-0001 品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川御殿山1F
電話番号
03-6277-0090
営業時間
ランチ12:00~15:00 (L.O.13:00)、ディナー18:30~23:00 (L.O.20:00)
定休日
定休日 日曜中心に月6日、年末年始、夏期休暇
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/azg07a4w0000/
公式サイト
http://www.quintessence.jp/

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1月14日「すっぽんとヒレ酒の旨さ」

「今夜は冷え込んで寒いでしょう.まず熱いものであたたまってください」。
博多の「畑瀬」では、そうご主人が言って最初にスッポン鍋を出してくれた。
それも、肉より肝や心臓や、卵等、スッポンの内蔵がゴロゴロ入った鍋である。
スッポンの濃い出汁の中で、さっと火が通されたモツ類をいただき、すかさず熱燗を飲む。
体は上気し、脳はコーフンし、ご主人の思いやりが心に染みる。
おかげさまで今朝は、肌はツルツルではないですが、心身はピカピカです。

ヒレ酒は、飲む度に、なぜか旨みが増していく。
酒と溶けた、丸く、品のある旨みがぐんぐん膨らんで、滋味が濃くなっていくのである。

こいつと、ふぐ刺しや唐揚げと食べたら、もうたまらんばい。
旨みと旨みが手を繋ぎ高みに登って、もうやめてといいたくなるのだね。
聞けば、同じヒレでも白いフグの腹ビレしか使わないという。
さらには、ただ室内で干しただけでは、臭みが取れない。
一年置いて、夏に天日干ししてこそ、臭みが消え、クリアな旨みがでるという。
なるほど、今まで飲んできた一部のひれ酒に合点がいかなかったのは、その理由だったのね。
僕は嬉しくなって、もう、三杯も飲んでしまいました。

畑瀬(ハタセ)

住所
〒810-0022 福岡県福岡市中央区薬院2-3-31
電話番号
092-714-3385
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/b1agy8f20000/

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1月15日「猛々しいすっぽん」

「NARISAWA」の焼きスッポンは、雄々しい。
水の中でぬぼうっとしている亀とは思えないほど、凛々しい味が迫ってくる。
揺るぎない野生の凄みが味にあって、鼻息を荒くさせる。

レストランなのだが、もう箸もフォークも使ってられんとばかり、一同手で持って齧りつき、脇目も振らずにしゃぶって、骨だけを唇から抜き出して、皿に置くのであった。

NARISAWA(ナリサワ)

住所
〒107-0062 東京都港区南青山2丁目6-15
電話番号
03-5785-0799
営業時間
ランチ12:00~13:00(L.O.)15:00閉店、18:30~20:00(L.O.)
定休日
定休日 日曜、祝日不定休
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/pjyd7ckh0000/
公式サイト
http://www.narisawa-yoshihiro.com/

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