大阪にあった!「きつねうどん発祥の店」に見る、 店には通わないとわからない「だし」の味

【連載】正しい店とのつきあい方。  店や街とのつきあい方がわからない人が増えている。初めてなのに常連と同じように扱われないと怒る人や金さえ払えば何でもしてくれると思う人。お客様は神様、などではない。客としてのあり方を街と店に深い考察を持つ江弘毅氏が語る。

2017年01月02日
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大阪にあった!「きつねうどん発祥の店」に見る、 店には通わないとわからない「だし」の味
Summary
1.創業100年超!大阪・南船場にある「きつねうどん発祥の店」
2.たった420円とは考えられないこだわりがだしに込められたかけうどんの凄み
3.百点満点の腕を持ちながら、どこかを引くことで、九十点か八十五点の味を出すという矜持

京・大阪の料理は「だし」が基本だとはよく言われることである。
とくに「うどん」は圧巻で、他の地域のうどんを圧倒している。

「あそこのうどんは、だしがうまい」
まるでダシを食べているような言い方で「うまいみせ」をほめたり表したりする。
同じうどんでも腰の強い麺それ自体を楽しむ讃岐うどんとは違う文化のものだ。

そもそもうどんは「つゆ」「かけ汁」で食べるものだが、上方では「だし」ベースに醤油や味醂など調味料を加えて仕上げた「かけ汁」そのものを「だし」と称している。
吸い物や味噌汁になど「汁物」にしても「ええだしや」と、ベースとなる昆布や鰹でとった「だし」のことをストレートに言及する。

うどんがうまいのは「だし」がうまいからであり、丼やかやくご飯、おでん、たこ焼きまで「だし」についてとやかく言う「だし王国」だ。

明治26年創業の大阪・南船場の「うさみ亭マツバヤ」は、きつねうどんの発祥の店として知られている。
580円とまるで値段まで歴史が止まったままきつねうどんは、観光客グループが全員同じ物を食べているのを目にしたり、地元大阪人もわざわざうどんの代金より高いタクシーに乗って食べに来る逸品だ。

だしのベースとなる昆布は利尻昆布。これについては、まったりとコクのある真昆布や羅臼昆布が大阪で、澄んだだしがとれる利尻昆布は京都の料亭がほぼ買い切っているというようなことも書かれたりしているが、大阪最古級のこの店は利尻産を使っている。
鰹節(削り節)は本鰹、カビつきメジカ、鯖を毎朝店でひいている。醤油は松江の生醤油、酒や味醂は蔵元に別注しているオリジナルだ。
420円のかけうどんにこのこだわりようであるが、「あたり前に手をかけている」「絶対妥協したらあかん、妥協したら負けや」の昔からの職人気質と支店など出さない家族経営の為せるわざだ。

以前勤務していた『ミーツ・リージョナル』編集部が、マツバヤから歩いて50メートルのところにあったことがある。
この店のユニークなところは、デュラムセモリナ粉を使った細麺に豚の天ぷら入りの「まつばうどん」、冬になるとファンが押しかける南部鉄鍋で出される「おじやうどん」、カレーうどんにしても2種類、茶そばや絶品の「木の葉丼」始めとする丼も多数ある、うどん屋にしてみたらとても品書きが多いことだ。

それが飽きないこともあって毎日のように行っていた。
昼に肉入りのカレーうどんを食べて、夜は天丼とビールと、1日に2回行くこともあった。
するとここの「だし」が、日常のあたり前のようになってくる。よその店に行くと「何かちょっと違う」。
どこの町にもうどん屋があまたある大阪は、「だしがうまくないと店が潰れる」土地柄でありうまい店が多い。そこが大阪のすごさで、確かに行ったその店もおいしいのだが、どうもしっくりこなくなっているのだ。

それをうどん名人職人として知られる先代の宇佐美辰一さんは「うどんは百点満点やと窮屈でおいしない。百点満点の腕を持ちながら、どこかを引くことで、九十点か八十五点の味を出す(『きつねうどん口伝』(ちくま文庫))と表し、現実のものにしていたのだ。

店には通わないとわからない味というか、身体に馴染むタイプの味というものがある。
その代表が大阪の「だし」なのであろう。

うさみ亭マツバヤ

住所
〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場3丁目8-1
電話番号
06-6251-3339
営業時間
11:00~19:00(L.O.)、金・土曜~19:30(L.O.)
定休日
日・祝、1月1~4日

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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