開店6年目の大リニューアル! 野菜中心のヘルシー中華×自然派ワインに出逢える店 横浜『カントナ』

【連載】幸食のすゝめ #091 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2019年07月17日
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開店6年目の大リニューアル! 野菜中心のヘルシー中華×自然派ワインに出逢える店 横浜『カントナ』
Summary
1.野菜たっぷりタンメンだけの店『タンメン・カントナ』が、中華料理×自然派ワインの店『カントナ』に
2.健康に配慮した無化調な中華と、造り手の顔が見える自然派のワインという新しい組み合わせ
3.横浜に増え始めた自然派ワインが飲める店。自然派ワインは、ウラヨコの新しいライフスタイル

幸食のすゝめ#091、蒸篭の湯気には幸いが住む、平沼橋。

「これ、追いパクチーお願いできますか?」、カウンターの角に腰掛けた勤め帰りの男性が、食べかけの麺を薄めのシャンディガフで流しながらリクエストする。
「パクチーお好きなんですか?」、バイトの女性が聞くと、「ここで覚えて、すっかり好きになっちゃったんです」と微笑み混じりの声。

すっかりリラックスしたのだろうか、いつのまにか白いシャツの裾をパンツから出して「オン」にしている。

続いて入って来たカップルは、揃って「七彩タンメン」を注文、男性は麺大盛りだ。
「ここのタンメンって、ヘルシーだし、無化調だし、野菜ばっかだし、罪悪感ないよね」、
「うん、大盛りにして、〆にご飯入れても、まだまだ健康的な気がするもん」。

無化調(化学調味料不使用無添加)という言葉から、たぶんふたりはラーメン通なのだろう。
塩分強め、味濃いめ、大さじで何杯も入れられる化学調味料…。いつもネガティブなイメージと隣り合わせのラーメンと対極にあるのが、『カントナ』のタンメンだ。

たくさん栄養が摂れて、身体にいいもの。

『カントナ』の基本コンセプトは、激務を極めた粂田崇宏(くめだたかひろ)さんのコック時代に既に生まれていた。
不規則な生活の報いで体調が悪く、全身がだるくなった時に、身体はたっぷりの野菜を欲していた。
当時の店主がイタリア料理のアクアパッツァにヒントを得て、賄いで試作してくれたトマトを入れた塩味の中華麺が、疲れた身体に染み渡って行った。

1人で店をやる時には、化学調味料に頼らない野菜中心の麺の店にしよう、将来への決心が固まった。

トマト、エリンギ、大葉、にんじん、白菜、ター菜、ネギ、もやし、ニンニク。たくさんの野菜で作られる『カントナ』のスープは、スープというより餡、野菜くずではないがベジブロスに近い。
健康に配慮した自然な味の中華と、添加物を極力足さずに造られる自然派のワイン。ありそうでなかった組み合わせの店が誕生するまでには、10年以上の歳月が必要だった。

『カントナ』の物語の始まりは、大学時代のアメリカ留学から始まった。場所はワシントン、元々アメリカの古着が大好きだったから、ろくに勉強もせずにスリフトショップ巡りに明け暮れた。スリフトショップは寄付された古着や家具、家電などを売っている店で
、その売上は主に慈善活動に使われる。

アメリカの日々で買い集めた古着は、帰国してからフリーマーケットで売り捌いた。その時の体験が元になり、若者の街下北沢で古着屋に就職。学生時代の経験を買われ、アメリカに買い付けに行くバイヤーを任される。
しかし、バイヤーの旅は孤独で過酷、現地に友だちもいないし、ご飯だけが楽しみだった。毎日、代わり映えがしないアメリカの食事の中で、唯一おいしかったのが各地のチャイナタウンの味。
ロスアンジェルスでも、サンフランシスコでも、チャイナタウン通いが習慣になった。

やがて街では、リーバイス501の赤耳に始まった古着ブームが終焉を迎えようとしていた。古着に未来なんてあるのだろうか?だったら、手に職を付けて、料理人になった方がいいのかもしれない。
その時、漠然と浮かんだのはチャイナタウン。そうだ、横浜中華街に就職しよう!

門を叩いたのは、中華街でも最大の店のひとつ、『萬珍樓點心舗(まんちんろうてんしんぽ)』だった。
料理はずぶの素人、とろみを付ける片栗粉さえ知らなかった。それでも皿洗いから始めて、やがて厨房に呼ばれ、コックに。10年以上の歳月、ひたすら鍋を振り続けた。腕に自信が付いた頃から、独立を決意。24席程の広さの、上大岡の町中華に移る。200席以上ある中華街の店だけでは、個人店の修業は不十分だったからだ。

そして、2012年の夏、粂田さんの新しい城『タンメン・カントナ』が始まる。
タンメンに絞ったのは、ワンオペレーションで調理しやすく、ひと皿で完結するものにしたかったからだ。
もちろん、通常のタンメンとは一線を画する野菜たっぷりのヘルシーなタンメンを創作した。

自分の店だから、自分の好きなもので一杯にしよう。買い集めていたレトロなオモチャや広告、店名の由来にもなったエリック・カントナを中心としたサッカー・グッズ。店内のモニターでは、マンチェスター・ユナイテッドの試合も流れている。
まるで、男子の玩具箱をひっくり返したような楽しさだ。

開店6年目の大リニューアル

そんな店の6年目、突然大きな転機が訪れる。ある夏の日、当時、自己の独立店準備のため粂田さんの店でバイトしていた現『金井商店』の店主・金井さんと、石川町の『鯖寅果実酒商店』に出かけた、吉田町『鯖寅酒販』の姉妹店だ。
自然な味の自分の料理に合う酒を探していて、ソムリエで酒に詳しい金井さんに質問すると、
「自然派ワインとか、いいんじゃないですか!?」という答えが帰って来た。

初めて口にした自然派ワインは、身体に沁み入るように入っていった。衝撃の味だった、これしかないと思い、帰りにもう1軒『W Yokohama(ダブリュー・ヨコハマ)』へ。そこで飲んだイタリアの『ラディコン』や『ダリオ・プリンチッチ』は、色も香りも、大好きだった上質な紹興酒を思わせるものだった。
自然な味のヘルシーな中華と自然派ワイン、店にもう1つのコンセプトが加わった。
理想の酒と出逢ったことで、合わせたい料理の幅も広がった。『タンメン・カントナ』から、『カントナ』へ。思い切って店名も変えた。

昔から思い付いたら、決断は早い方だった。「タンメン麺カントナ」と書かれていた看板は、「ワイン中華カントナ」と塗り替えた。中華模様の代表、雷文(らいもん)の中にワイングラスとボトルが並ぶ「中華料理・自然派ワイン」という暖簾も作った。提灯にも、自然派ワインの文字を入れた。店の側面には「ウラヨコの新しいライフスタイル」というキャッチと共に、「中華料理×自然派ワイン カントナ」の文字が輝いている。

「ウラヨコ」とは裏横浜の意味で、横浜駅東口を出て、横浜の象徴、崎陽軒本店と横浜中央郵便局の間を入り帷子川を渡った一帯で、『カントナ』がある昭和な平沼商店街はその中心部に位置する。

自然派ワインが繫いだ出逢い

ひと目惚れして、1年。粂田さんの情熱は、少しずつ横浜の話題になり、遠くは東京からも自然派ワインのファンが訪れるようになった。

吉田町の酒屋『鯖寅酒販』を中心に、野毛に立て続けにオープンした自然派ワイン中心の店、『金井商店』や『ワインのお店 ムー』の客たち。同じく自然派ワインをドリンクのメインに揃える割烹『おか田』からも、帰りに寄ってくれる客たちが増えてきた。
数々の名店や、歴史あるイベントなどで、自然派ワインの街として有名な鎌倉に続いて、横浜が自然派ワインの街になるのはそう遠くないだろう。

湯気を立てて運ばれて来た蒸篭(せいろ)の点心を頬張りながら、ジョージアのワインが身体中に沁み渡っていく…。

蒸篭の湯気には、幸いが住んでいる。

カントナ

住所
〒220-0023 神奈川県横浜市西区平沼1-33-12 くえーるビル1F
電話番号
045-314-4337
営業時間
月~土 【第1部】自然派ワインと中華料理 18:00〜22:00(L.O.21:30)、【第2部】バータイム営業 21:30〜22:40(L.O.23:30) ※ランチ営業はございません
定休日
日曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/au6ka3ds0000/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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森一起
ライター/作詞家/ミュージシャン
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