“自分なりの天ぷら”を揚げるために独立を決意
サクッと軽い食感の中から海や大地のうまみが溢れ出す天ぷらには、日本料理の真髄が詰まっている。料理人の友利真一さんが、その極みをさらに高めたいと考えてオープンに至ったのが、代々木上原の天婦羅専門店『喜わ(きわ)』だ。
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友利さんが料理人として天ぷらと出逢ったのは、浅草の料理屋で研鑽を積んでいた20代のころ。そこで天ぷらの魅力を知るや、東京の天婦羅専門店に入店。10年強の修業期間に、「自分なりの天ぷらを揚げたい」との想いが膨らみ、2020年3月6日、遂に念願が叶うこととなった。
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選んだ物件は全面ガラス張り。その造りを活かして、ガラスの手前から向こう側まで途切れることなく続いていく庭園を表現しているため、開放的な気分に酔いしれることができる。
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カウンターに座れば、目の前で天ぷらが揚がる様を楽しむこともできるし、家族連れや気の置けない仲間との会食なら、テーブル席でゆったりと時間を過ごすのもいいだろう。
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メニューは、海の幸・山の幸にさまざまなアプローチをきかせた「なごみコース」と、魚介の天ぷらの品数を増やしたワンランク上の「ゆかしコース」の2つのみ。
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食材の仕入れ先は、友利さん自ら全国に足を運んで選定し、100%ゴマ油を使用して油の温度や揚げ方も工夫しながら「軽さ」を追求している。では、さっそくコースの一部を紹介しよう。
ふっくらジューシーな身とカラッと揚がった骨せんべいの対比が楽しい
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対馬から仕入れた穴子(写真上)は、丁寧に開き、骨せんべいとともに盛り付け。ふっくらジューシーに仕上がった身と、カラリと揚がった骨の異なる食感を一皿で楽しめるお得な一品だ。
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身は、大根おろしをたっぷり入れた天つゆ、骨せんべいは塩と、調味料を使い分けるのもオツ。甘すぎずシャープに仕上げてある天つゆは、大根おろしが加えることでマイルドになり、穴子のおいしさを増幅させてくれる。沖縄産の海塩は、岩塩のようにほんのりとピンク色に色づいているが、塩気が強すぎずまろやかな味わいを楽しめる。
海老天の新しい楽しみ方を満喫できる裏メニュー
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こちらは、海老の天ぷらの裏メニューである「生春巻きバージョン」(写真上)。ライスペーパーで包んであるのは、揚げたての海老と香り高い大葉だ。さっとポン酢をつけていただくと、口の中に海老のうまみとフレッシュな大葉の香りがふらっと広がっていく。ライスペーパーはもちもち感が強いものを使用しているため、天ぷらのカラリとした食感と相まった新鮮な驚きがもたらされるのも一興。使っている車海老は、現在は沖縄から取り寄せているが、季節に応じて熊本や長崎から仕入れるという。
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ちなみにこちらのメニューは通常は提供していないが、要望があれば応えてくれるとのこと。試してみたい人はぜひスタッフに声をかけてみよう。
天然の山菜は香りも心地よい苦みも別格
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続いては、旬の山菜を天ぷらで。取材時に供されたものは「ふきのとう、セリ」(写真上)。どちらの山菜も仕入れ先は新潟県上越市の虫川(むしがわ)。この地で採れる山菜が美味だと聞きつけた友利さんが、実際に現地に足を運んでおいしさを確かめ、取引を決めたのだという。
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天然ふきのとうの香りの豊かさは別格。口にした瞬間、大自然の息吹が身体の中にまで伝わり、雪どけの野に力いっぱい根をはる姿が目の奥に浮かんでくる。上品な苦みは、身体の隅々の細胞まで目覚めさせてくれるようだ。
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セリは根っこつき(写真上)。実は根がうまいとされるセリだが、そうそう味わう機会はないもの。大地の力をいっぱいに蓄えた根っこごと口に含むことで、シャッキリとした食感や胸いっぱいに広がる春の香りを堪能してほしい。
ワインで洗った鳴門金時は洗練された表情に
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家庭の食卓の定番である「芋の天ぷら」(写真上)も、友利さんの腕にかかると別物に。芋の天ぷらは、季節ごとに品種を変えるほどこだわっているというが、取材時は石川県産の鳴門金時を使用。主に四国で栽培されているこの品種は、一般的に糖度が高いと言われるが、友利さんはあえて糖度が低めのものを選び、従来の芋の天ぷらとは異なるスッキリとした味わいの一品へと昇華させている。
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ポイントは、芋をワインで洗うことで皮目を締め、ほどよい香りを付けていること。締めた皮は剥くことなくそのまま残しているため、きゅっと締まった皮目の食感や甘い香りも堪能できるのだ。
砂糖を使わずに作った独自配合のタレもおいしい〆ごはん
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〆の食事メニューからは、砂糖を使わずに酒、みりん、醤油、カツオ節のみで作ったタレのやさしい甘みを堪能できる「天丼」(写真上)を紹介。ネタはシンプルに車海老のみ。プリプリ食感の海老、タレが絡みしっとりとした衣を一緒に口に運ぶと、うまみがハーモニーを奏で始める。〆としてちょうどいいサイズ感なので、香の物、赤だしのおつゆと一緒に余韻ごと楽しんでほしい。
ワインとのマリアージュも楽しみの一つ
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お酒は、日本酒やビールもオンリストしているが主力はワイン。赤、白、泡とそろえているが、友利さんと共に店を切り盛りする料理人の佐々木さんは、ビオがイチオシとのこと。天ぷらとの相性を考えてチョイスしたワインなので、ぜひマリアージュを楽しんでほしい。
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▲右から、友利真一さん、佐々木さん
「自分たちは日々できることをやるだけです」と泰然として食材に向き合うふたり。一人ひとりのお客に食事の時間を存分に楽しんでもらえるよう、誠実に向き合うことを大切にしていることが伝わってくる。
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「みんなに喜んでもらいたい」との想いを込めて命名した『喜わ』で、「なごやかな気分で過ごしてほしい」との想いが詰まった「なごみ」のコース、および、食の場で人の縁をつなぐ「ゆかし」のコースを、ぜひ多くの人に堪能してほしい。
【メニュー】
▼コース
・なごみ 12,000円(先付け、海老2尾、魚3品、野菜4品、かき揚げ、お食事~香の物・赤だし~、甘味)
・ランチ 5,000円(海老1尾、魚2品、野菜3品、かき揚げ、お食事~香の物・赤だし~、甘味)
※要予約、前日まで承ります
▼お酒
・グラスワイン 白・赤 各1,200円
・白ワイン 8,000円~
・赤ワイン 7,000円~
・スパークリング ハーフ 7,000円
※本記事に掲載された情報は、取材日(3月26日)時点のものです。また、価格はすべて税別です
※詳細は店舗へご連絡ください
撮影:榊智朗
喜わ
- 電話番号
- 03-5738-7550
- 営業時間
- 17:30~23:00(L.O.22:00)
- 定休日
- 水曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。