送る日々に彩りを与える『ブリコラージュ ブレッド』カリスマ達が贈る最上級の優しい普通【六本木】

【連載】幸食のすゝめ #070 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。

2018年07月26日
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送る日々に彩りを与える『ブリコラージュ ブレッド』カリスマ達が贈る最上級の優しい普通【六本木】
Summary
1.『レフェルヴェソンス』『ル・シュクレクール』『FUGLEN』カリスマ達が集結したコラボを越えた幸福な店
2.きっかけは2011年の震災、おいしいものを作る意義の共感から生まれた気ままにおいしいものを愉しむ場所
3.送る日々に彩りをもたらす、出会ったことのない非日常のおいしいものたちに感動

幸食のすゝめ#070、日々のパンには幸いが住む、六本木

「こんなにハイカラでおいしいものが食べられるなら、明日からもまた生きていけるよ」
2012年、東北の地での炊き出し。
レフェルヴェソンス』の生江史伸シェフが、仮設住宅で暮らすおばあちゃんの目に溢れる涙と出会った時、『bricolage bread & co. (ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)』の前奏曲が静かに流れ始めた。

『ル・シュクレクール』の岩永歩さんが作った真っ赤な柔らかいビーツのパンに挟んだ、ホワイトソースの煮込みハンバーグ。
温度や色さえ感じにくいモノトーンの生活に、少しでも彩りを添えられたのかなと感じた時、それまで互いのことをあまり知らなかった2人の距離が急速に縮まった。

それは、これまで自分たちがおいしいものを作ろうとしていた意義を共有できる瞬間。

いつか一緒に店を作りたい、その時には2人のパンと料理に寄り添う飲み物もほしい。そうして、生江シェフ本人が通う『フグレントウキョウ』の小島賢治さんが淹れるコーヒーもブリコラージュの仲間になった。

『&カンパニー』は、パンたちと繋がる仲間たちを指している。バリスタカウンターに使われているトタンは、長野県諏訪市にある建築建材のリサイクルショップ『リビルディングセンター』の東野さん夫婦から届けられた。

店内の「森」は、『緑の居場所デザイン』の市村さん。本漆喰の壁に、福井の築100年の民家から譲り受けた床。
音響は『オーディオラボ オガワ』のバックアップで、『TANNOY社』の古い「Autograph」が投入された。

「ブリコラージュって聞き慣れないフランス語かもしれませんが、英語にするとDIY、つまりDo It Yourself。もしも、ほしい時間や場所があるのなら、目の前にあるもので、自分たちの手で、その世界を作ってしまおう、そんな思いを込めています」。そう説明してくれた生江シェフの後ろ、窓際の棚には、さりげなく立て掛けられたクロード・レヴィ=ストロースの「野生の思考」。
ブリコラージュは、レヴィ=ストロースが発見した方法だ。

雑多に集めておいたかに見える材料や道具の断片や部分たちが、次第に嵌め絵のようにひとつに収まっていく。
それはまさに『ブリコラージュ ブレッド&カンパニー』そのものかもしれない。

メインメニューであるオープンサンドは、生江シェフがコペンハーゲンで出会った「スモーブロー」にインスパイアされている。具材に覆いつくされてほとんど見えないくらいのパンの上には、サーモンやヒラメ、ウナギなどの魚介系、レバーペーストや牛タンなどの肉系まであらゆるものが乗せられる。
「なんだか自由だなぁ、これって日本のお茶漬けのようなものだなと思ったんです。普通、パンにはコレ!みたいな固定概念があって、卵サンドとかBLTとか、言葉自体に左右されてしまう。もっとパンを楽しむことに自由度を持ってほしい」。

パンには『レフェルヴェソンス』と同じく、豆腐と自家製サワークリームで造った豆腐サワークリームを合わせる。
豆腐は自然酒の蔵元『寺田本家』と同じ地下水で作られた「月のとうふ」。油脂分を補うために、少量のオリーブオイルが合わせられている。
乗せられる具は、サンフランシスコ『シェ・パニース』アリス・ウォータース考案の「Alice’s Egg Spoon」で作られた「アリスの卵」やケイジャン風パプリカ。ワカモレと紫蘇、柚子胡椒サルサや、グリルした鱧に山椒や自家製ぬか漬けでアクセントを付けたもの。さらに、赤身のづけまぐろやグリーンカレーなど、次々に変わっていくトッピングも楽しみだ。

何よりも驚かされるのは、パンと豆腐サワークリーム、乗せられる具が、分かち難い程に一体化していること。
爽やかなのに濃厚なサワークリームとひとつになったパンは、肉のような食感と味覚さえ覚え、夢中になる。

食材もカトラリーも大切な人たちから届いたもの

前菜として添えられる季節のスープとサラダに並ぶ素朴なカトラリーは、三重県松坂市の刃物鍛冶『かじ安』の赤畠さんが一つひとつ火と手で打ち込んだもの。皿は、江戸後期から大正時代に作られ、佐賀や長崎の蔵の中で忘れられていたものを、生江さん自身が集めてきたものだ。

そう言えばデンマークのスモーブローが乗せられる皿は、この時代に伊万里港から輸出された磁器に影響されたボーンチャイナ。またひとつ、興味深いブリコラージュのドラマが生まれている。
産地や生産者にこだわった身体にしみ渡るような野菜の滋味、今の時期ならではの冷たいスープも、口に入れたとたん広がる野生と洗練のハーモニーに心が躍る。

送る日常に鮮やかな彩りを与える自由なパンと空間

『フグレントウキョウ』のほかには、京都のワインショップ『エーテルヴァイン』江上さんのアドバイスで揃えられたナチュラルワインや、クラフトビールなども揃う。

午前中から夜まで、いつでも好きな時間に自由に訪れて、食も酒もコーヒーも自在に楽しめ、深呼吸できる場所。

テイクアウトしたばかりのパンを、ペットとテラスで楽しんだり、ベビーカーの乗り入れも可能。
放っておくと少しずつくすんでしまう日常に、非日常なおいしさと楽しさをプラスすることで、送る日々に彩りが生まれる。
ふと亡くなった大滝詠一の歌の一節を思い出した、「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」。

『ブリコラージュ ブレッド&カンパニー』のパンは、ありふれた日常に鮮やかな色を点けるマジックなのかもしれない。

おいしさを通して、自分を取り巻く世界を咲かせたいと考えるなら、何気ない日々のパンには、幸いが住んでいる。

撮影:平瀬夏彦


【メニュー】
bricolage bread +tofu sour cream 1,500~1,800円(パンのスモールサイズ -100円)
bricolage bread+sweet 各1,200円(パンのスモールサイズ-100円)
dessert 700円
本日のコーヒー (R)360円 /(L)460円
アイスコーヒー 600円
加賀棒茶 650円
wine グラス750円~ / ボトル4,500円~
おつまみ 300~600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

bricolage bread & co. (ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)

住所
〒106-0032 東京都港区六本木6-15-1 けやき坂テラス1F
電話番号
03-6804-3350
(左記はカフェ。ベーカリーは 03-6804-1980)
営業時間
カフェ 9:00~20:00(L.O.19:30)、 ベーカリー 11:00~20:00
定休日
月曜
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/7zfkuz0t0000/
公式サイト
https://bricolagebread.com/

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。